公爵令嬢に婚約破棄されましたが『歌』とチートスキルで無双して見返してやりたいと思います!

花月風流

文字の大きさ
上 下
65 / 72
歌い手の旅

第65話 約束が、増えたのです

しおりを挟む
「ロイ……なの?」

 エメラダを見た時、胸が痛かった。
 酷い別れ方をした相手だ……痛みは感じる。
 その声も姿も、あの時と変わっていない。

「……うん、お久しぶり」

「…………」

 ローア王が頭を拭きながらエメラダと僕を見比べる。

「娘、良かったな。迎えが来たから直ぐに国へ帰れるぞ」

「……」
「……」

 沈黙が流れる。

「おい、お前等幼馴染みで友人なんだろう? その2人が再会して何故こんな空気になる」

「色々とありまして……すみません」

 ローア王が困ったような顔をしているのを見て思わず苦笑してしまう。

「娘、この男は危険を冒してまでお前を連れ帰りに来たのだ。うちの兵も眠らされるわ、脅されるわ、凍らされるわで大変だったのだぞ」

「ロイが……そんな事を?」

「……そう、間違い無いよ。別に君の為じゃ無い。僕は僕の役目の為にやった事だから」

「……私のせいね、きっと」

「おいおい……」

 ローア王が溜息をつく。

「口出しすることでは無いが……お前達、国へ帰ったらしっかり話し合ったらどうだ? ……見てられんぞ」

「……はい」

「そうですね」

 デュランともエメラダともしっかり話さないといけない。
 じゃないとまた後悔する。

「ロイ、と言ったな。こちらからの条件は先程伝えた通りだ。前向きな検討をして貰えると助かる」

「はい、確かに伝えます」

 ローア王が頷く。
 手を差し出されたので握手を交わした。

「お前の強さと勇気は尊敬さえ出来るものだ。……中身は見た目相応のようだがな。落ち着いたらまたこの国に来い。次は客として迎えよう」

「ありがとうございます。その時は是非……普通の歌を歌わせて下さい」

 我儘を押し通す覚悟をして来た。
 敵として相対される事も突然だろうと。
 結果は会話で通じ合うことが出来て、こうして再会の約束までして帰ることになった。

 僕の旅は……幸せだ。
 それぞれの想いを抱えながら、優しさを持った人ばかりに出会えて。
 何も持たない僕に、温もりをくれた。

 再会した時に情けない顔は見せられない。

「行こう、エメラダ。君を連れて帰る」

「……ええ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「~~♪」

 ローアの城を出て魔竜を呼ぶ。

 グルルルルルル……

 魔竜はエメラダを睨み唸り続ける。

「落ち着いて、エメラダは悪い人では無いんだ」

 鼻の辺りを撫でて落ち着かせようとするが、一向に鎮まらない。

「……この子はきっと、ロイが好きなのね。ゴメンなさい。私のせいでロイを危ない目に遭わせて」

「一緒に旅をしてきた大切な相棒だからね。もしそうだったら……嬉しいなぁ」

「そう……ね」

 エメラダが一瞬何か言いたげな表情をした気もするが……僕は魔竜を宥めるのに必死だった。

 魔竜がようやく大人しくなり、僕とエメラダを背に乗せてくれる。

 飛び始めた魔竜の背の上で、城の上階から手を振るローア王が見える。

 (また必ず来よう。そしてもっと彼と話してみよう)

 竜は南へと向かい、ゆっくりと飛ぶ。



 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。 神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。 職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。 神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。 街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。 薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

転生したオネェさんは最強のチートを持ってウルフと一緒に旅をする

マルさん♥世界一初恋
ファンタジー
女神様の手違いで事故死したオカマのお兄さん通称:オネェさんは最強のチートを持って転生する。目が覚めたところは森の中で探検していたら、目の前に狼がいた。その狼はビッグウルフという種類でそのビッグウルフと一緒に旅をする物語。 *ハーレム無し *最強のチート持ち *主人公人間(神級) *主人公男(オネェ) 周3~5ペースであげていきます。初心者なので少し誤字があると思いますが頑張っていきます!! あまり期待はしないでください!

処理中です...