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歌い手の旅
第59話 怒り、心頭です
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……想定以上だった。
奇襲的にローア王国へ侵攻した為に序盤は押せていた。
だが、ローアの兵は強かった。
統制が取れた動きでどんどん兵が集まってくる。
「陛下、これ以上は危険です! どうか撤退を!」
言いたい事は解る。
最初から無謀な事なのは理解している。
愚かな父のせいでラミレアの兵は減り、周りの国は敵だらけだ。
単独では力が足りず、応援を求められる相手は居ない。
ではどうする、時を待つのか?
エメラダを放っておいて、明日どうなるか判らない国を守って。
「俺は退かんぞ!」
「陛下!」
愚か者だと言われても良い。
それでも俺は……
「だ、だめだ……もう前衛が崩れます!」
「すまなかった……全員、退いてくれ」
どうしようも無いというならこれ以上の巻き添えを増やさなくても良い。
後始末は自分の身で……
「ガアアアアア!」
覚悟を決めようとした瞬間、戦場が静止する程の波が訪れる。
(音と……感情の波?)
足が震えそうになる程の怒りや悲しみ……色々な感情が勝手に湧いてきて、胸が痛い。
(なんだこれは……)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(何を……してるんだよ……)
戦場は酷いものだった。
怪我人もいる、動いていない者もいる。
(何を……してるんだよ)
直ぐに解る、解ってしまう姿。
諦めたように剣を下ろしている『元』親友。
(何をしてるんだよ)
君は僕から奪った幸せで笑ってると思ってた。
こんな所でそんな顔してるなんて思って無かった。
やれるだけの仕返しはした。あとはいつか見返せるようになれれば良いと思ってた。
「何してるんだよ!」
「ガアアアアア!」
感情のままの叫びに魔竜の咆哮が重なる。
静止した戦場へ降りた僕は……怒っている。
戦争の馬鹿馬鹿しさに、『元』親友に、自分自身に。
どうしようも無く、腹が立っていた。
奇襲的にローア王国へ侵攻した為に序盤は押せていた。
だが、ローアの兵は強かった。
統制が取れた動きでどんどん兵が集まってくる。
「陛下、これ以上は危険です! どうか撤退を!」
言いたい事は解る。
最初から無謀な事なのは理解している。
愚かな父のせいでラミレアの兵は減り、周りの国は敵だらけだ。
単独では力が足りず、応援を求められる相手は居ない。
ではどうする、時を待つのか?
エメラダを放っておいて、明日どうなるか判らない国を守って。
「俺は退かんぞ!」
「陛下!」
愚か者だと言われても良い。
それでも俺は……
「だ、だめだ……もう前衛が崩れます!」
「すまなかった……全員、退いてくれ」
どうしようも無いというならこれ以上の巻き添えを増やさなくても良い。
後始末は自分の身で……
「ガアアアアア!」
覚悟を決めようとした瞬間、戦場が静止する程の波が訪れる。
(音と……感情の波?)
足が震えそうになる程の怒りや悲しみ……色々な感情が勝手に湧いてきて、胸が痛い。
(なんだこれは……)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(何を……してるんだよ……)
戦場は酷いものだった。
怪我人もいる、動いていない者もいる。
(何を……してるんだよ)
直ぐに解る、解ってしまう姿。
諦めたように剣を下ろしている『元』親友。
(何をしてるんだよ)
君は僕から奪った幸せで笑ってると思ってた。
こんな所でそんな顔してるなんて思って無かった。
やれるだけの仕返しはした。あとはいつか見返せるようになれれば良いと思ってた。
「何してるんだよ!」
「ガアアアアア!」
感情のままの叫びに魔竜の咆哮が重なる。
静止した戦場へ降りた僕は……怒っている。
戦争の馬鹿馬鹿しさに、『元』親友に、自分自身に。
どうしようも無く、腹が立っていた。
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