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歌い手の旅
第56話 北の国、ただいまです
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出発の日、僕達は城の皆に見送られて旅立った。
馬車と騎兵で北のアルバスタを目指すのだ。
僕とフィアナさん、シャルロットさん、シャルロットさんの騎士であるマリアさんが馬車に乗っている。
「アルバスタまで、馬車だと3日ほどかかりますか」
「休みを入れながらだと、そのくらいね」
マリアさんとシャルロットさんが外を眺めている。
外を流れるのは平和そのものな風景だ。
街道近くの村が見え、そこで家畜を放牧しているのが見える。
(こんな時じゃ無かったら寄り道して見てみたいんだけどな……)
通りがかり、通り過ぎて、遠くなる景色を見て、落ち着いたら見に来ようと心に留める。
そんな景色には目を向けず、フィアナさんは楽器の手入れをしている僕の手元がきになるようで、真剣な眼差しだ。
(よし、磨き終わったし音の調整も大丈夫だと思うんだけど)
「少しだけ、音の確認をしても良いですか?」
僕が聞くと3人とも頷いてくれた。
いつ使う事になるか解らないので今の内に確認しておきたかったのだ。
ポローン……
「~~♪」
ポロローン……
「~~♪」
声と音を比べて、微量に調節する。
「ありがとうございます。調整は上手くいってるみたいです」
3人とも、視線が僕の手元に集まったままだった。楽器に興味がある訳じゃ……無いかな?
「……ご迷惑で無ければ何か歌でも……」
パチパチパチパチ
「あはは……」
長い時間馬車にいるのだから、退屈しのぎにしてもらえれば良いか。
その後、アルバスタに着くまでに20曲以上歌う事になるとは……流石に思っていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「フィアナ様! ロイ殿! お帰りなさいませ!」
アルパスタの城に着くとルキさんが迎えてくれた。
「シャルロット姫も、アルバスタまで来て頂けるとは! マリアも久しぶりだな」
「ルキ、シャルロットは姫では無く王女になったのよ。戴冠式はまだだけど」
フィアナさんは嬉しそうな顔でルキさんに伝える。
「おお……これは失礼致しました。シャルロット女王、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
笑顔で答えるシャルロット姫の後ろでマリアさんがルキさんに微笑む。
「ふ……ルキよ、これでお互いに女王の騎士になった訳だ。次の戦いはより誇り高いものになるだろうな」
「そうだな。楽しみだ」
馬車の中で聞いた話だとこの2人、良いライバルなのだそうで。2年に1度開催される武芸の大会で毎回首位を争う間柄だそうだ。
「ルキ、早速なのですが……集落を襲った者の情報はつかめましたか?」
「はい……状況はあまり良くありません。どうやらローア王国へ逃げ去ったようなのです」
確かに良い情報とは言えなかった。
害意を持つ相手が、ラミレアだけでは無いかもしれない……という事なのだから。
馬車と騎兵で北のアルバスタを目指すのだ。
僕とフィアナさん、シャルロットさん、シャルロットさんの騎士であるマリアさんが馬車に乗っている。
「アルバスタまで、馬車だと3日ほどかかりますか」
「休みを入れながらだと、そのくらいね」
マリアさんとシャルロットさんが外を眺めている。
外を流れるのは平和そのものな風景だ。
街道近くの村が見え、そこで家畜を放牧しているのが見える。
(こんな時じゃ無かったら寄り道して見てみたいんだけどな……)
通りがかり、通り過ぎて、遠くなる景色を見て、落ち着いたら見に来ようと心に留める。
そんな景色には目を向けず、フィアナさんは楽器の手入れをしている僕の手元がきになるようで、真剣な眼差しだ。
(よし、磨き終わったし音の調整も大丈夫だと思うんだけど)
「少しだけ、音の確認をしても良いですか?」
僕が聞くと3人とも頷いてくれた。
いつ使う事になるか解らないので今の内に確認しておきたかったのだ。
ポローン……
「~~♪」
ポロローン……
「~~♪」
声と音を比べて、微量に調節する。
「ありがとうございます。調整は上手くいってるみたいです」
3人とも、視線が僕の手元に集まったままだった。楽器に興味がある訳じゃ……無いかな?
「……ご迷惑で無ければ何か歌でも……」
パチパチパチパチ
「あはは……」
長い時間馬車にいるのだから、退屈しのぎにしてもらえれば良いか。
その後、アルバスタに着くまでに20曲以上歌う事になるとは……流石に思っていなかった。
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「フィアナ様! ロイ殿! お帰りなさいませ!」
アルパスタの城に着くとルキさんが迎えてくれた。
「シャルロット姫も、アルバスタまで来て頂けるとは! マリアも久しぶりだな」
「ルキ、シャルロットは姫では無く王女になったのよ。戴冠式はまだだけど」
フィアナさんは嬉しそうな顔でルキさんに伝える。
「おお……これは失礼致しました。シャルロット女王、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
笑顔で答えるシャルロット姫の後ろでマリアさんがルキさんに微笑む。
「ふ……ルキよ、これでお互いに女王の騎士になった訳だ。次の戦いはより誇り高いものになるだろうな」
「そうだな。楽しみだ」
馬車の中で聞いた話だとこの2人、良いライバルなのだそうで。2年に1度開催される武芸の大会で毎回首位を争う間柄だそうだ。
「ルキ、早速なのですが……集落を襲った者の情報はつかめましたか?」
「はい……状況はあまり良くありません。どうやらローア王国へ逃げ去ったようなのです」
確かに良い情報とは言えなかった。
害意を持つ相手が、ラミレアだけでは無いかもしれない……という事なのだから。
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