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アルバスタ王国
第50話 戻って、きたのです
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遠くの空が明るくなり始めた頃、僕達は聖オフェリア国の側まで来ていた。
途中で海上を見た時から気にはなっていた。
はっきり見える距離と明るさになり、大変な事態に気付く。
「……ラミレアの海軍が」
水上に漂う大量の木片。
聖オフェリア国の船も混ざっているのかも知れないが、ラミレア側の損害が圧倒的なのだ。
「正直……聖オフェリア国の方が押されているものとばかり思っていました」
フィアナさんが言う通り、僕もそうだとばかり思っていた。
この結果に関係していそうな物も目に入る。
オフェリアの港から少し離れた位置で、通常の帆船より倍は大きい黒い船が浮いているのだ。
恐らくは……見たこともない形のあの船がこの結果に関わっているのは間違いないだろう。
「切迫した戦況では無さそうなので、予定通り城から少し離れた位置に降ります」
そう伝えた後、魔竜の首元に触れると願った通りの場所に降りてくれる。
(いつもありがとう)
魔竜の鼻先を撫でると、そっぽを向いてから消えていく。
噛まれはしなかったが、今度何かお詫びをした方が良いかも知れない。
来てはみたが、どの様に城へ行くべきか。
女王とシャルロット姫は味方だと思ってはいるが、エリス姫が害意を持っていた場合……正面から城に行って大丈夫なのか?
(……まずは安全な場所へ行って状況を聞くべきだ)
「フィアナさん、まずは僕の……友人に話を聞きに行きたいのですが」
彼女は迷わず頷く。
(行くならあそこしかない)
街の入り口はこんな時間でも警戒しているようだった。
門番の兵に止められたが自分の服の胸元を指して言った。
「鍛冶の国の大使へ急用なんです」
こうして街へはあっさり入る事が出来た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なるほど、そんな事があったんすね」
鍛冶の国と草原の国で使用している屋敷の中で、僕とフィアナさんは朝食を頂いていた。
早朝にも拘らず迎え入れてくれた彼は草原の国の人だった。
ギンさんの友人である彼は僕からの説明に対してうんうん頷いている。
「そういえば、ギンさんは?」
「ああ、ギンの奴ならあそこっすよ。海の上っす」
海の……上?
「まさか、ギンさんも戦争に参加を!」
彼は笑顔で答える。
「ああ、そうなんですけど……心配はしなくて大丈夫っす。被害は出てないし、定時連絡も『腹減った』だけだったんで。じきに燃料補給のためにも戻ってくるっすよ」
そこから話を聞いて驚いた。
あの大型の船らしき物は鍛冶の国で作られた「汽船」という物だった。風が吹く力でも無く、人が漕ぐ力でもない。
燃料を使って動くものだそうだ。
天候や人の体力に依存せず、速度も速い上に大きく力が有り荷物も積める。
(ギンさんが秘密にしてたのは船だったのか)
船はとても興味深いけど、僕とフィアナさんが聞くべきなのはそこでは無い。
「……僕と彼女が城へ向かったら邪魔されたり危険だったりするでしょうか?」
「そうっすね……自分達もお城の中までどうなってるかは解らないんすけど、うちの国はオフェリアに協力してますし、少なくとも女王様が悪巧みして……とかは無いはずっすよ。あと、エリス姫って人は城の人達も探してるみたいっすから、今は城に居ないんじゃ無いっすかね」
フィアナさんの顔を見ると、彼女は目を閉じて大きく息を吐いていた。
これで彼女にとって一番大きな不安は解消された。
僕達は館の人々に見送られ、城へと向かった。
途中で海上を見た時から気にはなっていた。
はっきり見える距離と明るさになり、大変な事態に気付く。
「……ラミレアの海軍が」
水上に漂う大量の木片。
聖オフェリア国の船も混ざっているのかも知れないが、ラミレア側の損害が圧倒的なのだ。
「正直……聖オフェリア国の方が押されているものとばかり思っていました」
フィアナさんが言う通り、僕もそうだとばかり思っていた。
この結果に関係していそうな物も目に入る。
オフェリアの港から少し離れた位置で、通常の帆船より倍は大きい黒い船が浮いているのだ。
恐らくは……見たこともない形のあの船がこの結果に関わっているのは間違いないだろう。
「切迫した戦況では無さそうなので、予定通り城から少し離れた位置に降ります」
そう伝えた後、魔竜の首元に触れると願った通りの場所に降りてくれる。
(いつもありがとう)
魔竜の鼻先を撫でると、そっぽを向いてから消えていく。
噛まれはしなかったが、今度何かお詫びをした方が良いかも知れない。
来てはみたが、どの様に城へ行くべきか。
女王とシャルロット姫は味方だと思ってはいるが、エリス姫が害意を持っていた場合……正面から城に行って大丈夫なのか?
(……まずは安全な場所へ行って状況を聞くべきだ)
「フィアナさん、まずは僕の……友人に話を聞きに行きたいのですが」
彼女は迷わず頷く。
(行くならあそこしかない)
街の入り口はこんな時間でも警戒しているようだった。
門番の兵に止められたが自分の服の胸元を指して言った。
「鍛冶の国の大使へ急用なんです」
こうして街へはあっさり入る事が出来た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なるほど、そんな事があったんすね」
鍛冶の国と草原の国で使用している屋敷の中で、僕とフィアナさんは朝食を頂いていた。
早朝にも拘らず迎え入れてくれた彼は草原の国の人だった。
ギンさんの友人である彼は僕からの説明に対してうんうん頷いている。
「そういえば、ギンさんは?」
「ああ、ギンの奴ならあそこっすよ。海の上っす」
海の……上?
「まさか、ギンさんも戦争に参加を!」
彼は笑顔で答える。
「ああ、そうなんですけど……心配はしなくて大丈夫っす。被害は出てないし、定時連絡も『腹減った』だけだったんで。じきに燃料補給のためにも戻ってくるっすよ」
そこから話を聞いて驚いた。
あの大型の船らしき物は鍛冶の国で作られた「汽船」という物だった。風が吹く力でも無く、人が漕ぐ力でもない。
燃料を使って動くものだそうだ。
天候や人の体力に依存せず、速度も速い上に大きく力が有り荷物も積める。
(ギンさんが秘密にしてたのは船だったのか)
船はとても興味深いけど、僕とフィアナさんが聞くべきなのはそこでは無い。
「……僕と彼女が城へ向かったら邪魔されたり危険だったりするでしょうか?」
「そうっすね……自分達もお城の中までどうなってるかは解らないんすけど、うちの国はオフェリアに協力してますし、少なくとも女王様が悪巧みして……とかは無いはずっすよ。あと、エリス姫って人は城の人達も探してるみたいっすから、今は城に居ないんじゃ無いっすかね」
フィアナさんの顔を見ると、彼女は目を閉じて大きく息を吐いていた。
これで彼女にとって一番大きな不安は解消された。
僕達は館の人々に見送られ、城へと向かった。
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