49 / 72
アルバスタ王国
第49話 夜中の、決意です
しおりを挟む
フィアナさんと共に建物を出て、集落の外れに向かう。
丁度良い切り株が並んでいるのを見つけたので腰掛けて話す事にする。
木々の間を抜ける真夜中の風は少しの寒さと森らしい湿った土の匂いを運んでくる。
呼び出したのに話し出せずに俯いている彼女の肩が寒そうで、背負い袋から出した外套をかける。
「……すみません」
「いえ……」
再び風が吹いた後、彼女が口を開いた。
「……集落を襲った者は確かに聖オフェリア国の兵だったそうです」
「そうですか……」
僕は考えていた可能性の一つを提示する。
「もしかして、戦争が始まった事で逃げ出した脱走兵でしょうか? そういう人達なら略奪を行うのも……納得は出来ませんが」
それでも、逃走用の食料や金品の強奪というならまだ動機として理解できる。
もちろん正当化されるような事では無い非道だけれど、生きるためだと言うのなら当人にとっては仕方の無い行動なのかも知れないのだ。
フィアナさんは弱々しく首を振る。
「兵達を指揮して略奪を行った人物は『エリス様』と呼ばれていたそうです」
「っ! そんな……馬鹿な事!」
兵を指揮出来てエリス『様』と呼ばれて……それじゃあ、こんな事をしたのがオフェリアのエリス姫だと?
「……シャルロットは私の大切な友人です。ロイ様を遣わしてくれたのも彼女で……オフェリアが国としてこんな事をしている訳が無い……そう信じて……信じたい……のに」
「フィアナさん……」
動揺して当たり前だろう。関わりが深いとは言えない僕でさえこれほど心が乱されるのだから。
一介の兵士が暴れて行ったわけじゃ無い。
友好国の姫に指揮された軍隊が略奪を行ったというのなら、真意なんて解りようが無い。
すー……はー……
「僕はフィアナさんやルキさんにお話した通り、情けない人間です。後悔……しています。本当に……」
「ロイ様……?」
「もっと、話しておけば良かった。そんな当たり前のことを今更後悔しているんです」
綺麗な瞳で見つめられる。
シャルロット姫も、同じ目をしていた。
だから……
「だから、同じ後悔はしないで下さい。シャルロット姫と話をしに行きましょう! 彼女や女王様が全く知らない事なのかも知れないんです。すれ違わないためにも行きましょう。もし……もしも危険な事があったなら僕が命懸けで守ります」
きっと僕は滅茶苦茶な事を言ってるのだろう。
感情のまま、勝手な気持ちを押しつけて。
でも、2人の友情は本物だと僕は信じる。
だからこそ……理不尽な誰かの思惑や行動があるのなら、そんなものに負けたくない。
フィアナさんは僕の目を見て、手を差し出して来る。
「貴方とシャルロットを信じます……だから私を……」
「その気持ちに応えさせて下さい」
フィアナさんの手を取る。
「~~♪」
[神技・具現を使用します]
現れた魔竜は僕達2人を見て鼻からため息を吐く。
(……ごめんね、またお願いしなきゃいけなくなった。腹が立ったなら、後で少しくらい噛み付かれても我慢するから)
魔竜の背に乗り、フィアナさんを引き上げる。
「行きましょう。オフェリアへ!」
丁度良い切り株が並んでいるのを見つけたので腰掛けて話す事にする。
木々の間を抜ける真夜中の風は少しの寒さと森らしい湿った土の匂いを運んでくる。
呼び出したのに話し出せずに俯いている彼女の肩が寒そうで、背負い袋から出した外套をかける。
「……すみません」
「いえ……」
再び風が吹いた後、彼女が口を開いた。
「……集落を襲った者は確かに聖オフェリア国の兵だったそうです」
「そうですか……」
僕は考えていた可能性の一つを提示する。
「もしかして、戦争が始まった事で逃げ出した脱走兵でしょうか? そういう人達なら略奪を行うのも……納得は出来ませんが」
それでも、逃走用の食料や金品の強奪というならまだ動機として理解できる。
もちろん正当化されるような事では無い非道だけれど、生きるためだと言うのなら当人にとっては仕方の無い行動なのかも知れないのだ。
フィアナさんは弱々しく首を振る。
「兵達を指揮して略奪を行った人物は『エリス様』と呼ばれていたそうです」
「っ! そんな……馬鹿な事!」
兵を指揮出来てエリス『様』と呼ばれて……それじゃあ、こんな事をしたのがオフェリアのエリス姫だと?
「……シャルロットは私の大切な友人です。ロイ様を遣わしてくれたのも彼女で……オフェリアが国としてこんな事をしている訳が無い……そう信じて……信じたい……のに」
「フィアナさん……」
動揺して当たり前だろう。関わりが深いとは言えない僕でさえこれほど心が乱されるのだから。
一介の兵士が暴れて行ったわけじゃ無い。
友好国の姫に指揮された軍隊が略奪を行ったというのなら、真意なんて解りようが無い。
すー……はー……
「僕はフィアナさんやルキさんにお話した通り、情けない人間です。後悔……しています。本当に……」
「ロイ様……?」
「もっと、話しておけば良かった。そんな当たり前のことを今更後悔しているんです」
綺麗な瞳で見つめられる。
シャルロット姫も、同じ目をしていた。
だから……
「だから、同じ後悔はしないで下さい。シャルロット姫と話をしに行きましょう! 彼女や女王様が全く知らない事なのかも知れないんです。すれ違わないためにも行きましょう。もし……もしも危険な事があったなら僕が命懸けで守ります」
きっと僕は滅茶苦茶な事を言ってるのだろう。
感情のまま、勝手な気持ちを押しつけて。
でも、2人の友情は本物だと僕は信じる。
だからこそ……理不尽な誰かの思惑や行動があるのなら、そんなものに負けたくない。
フィアナさんは僕の目を見て、手を差し出して来る。
「貴方とシャルロットを信じます……だから私を……」
「その気持ちに応えさせて下さい」
フィアナさんの手を取る。
「~~♪」
[神技・具現を使用します]
現れた魔竜は僕達2人を見て鼻からため息を吐く。
(……ごめんね、またお願いしなきゃいけなくなった。腹が立ったなら、後で少しくらい噛み付かれても我慢するから)
魔竜の背に乗り、フィアナさんを引き上げる。
「行きましょう。オフェリアへ!」
21
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる