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アルバスタ王国

第49話 夜中の、決意です

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 フィアナさんと共に建物を出て、集落の外れに向かう。
 丁度良い切り株が並んでいるのを見つけたので腰掛けて話す事にする。
 木々の間を抜ける真夜中の風は少しの寒さと森らしい湿った土の匂いを運んでくる。
 呼び出したのに話し出せずに俯いている彼女の肩が寒そうで、背負い袋から出した外套をかける。

「……すみません」
「いえ……」

 再び風が吹いた後、彼女が口を開いた。

「……集落を襲った者は確かに聖オフェリア国の兵だったそうです」
「そうですか……」

 僕は考えていた可能性の一つを提示する。

「もしかして、戦争が始まった事で逃げ出した脱走兵でしょうか? そういう人達なら略奪を行うのも……納得は出来ませんが」

 それでも、逃走用の食料や金品の強奪というならまだ動機として理解できる。
 もちろん正当化されるような事では無い非道だけれど、生きるためだと言うのなら当人にとっては仕方の無い行動なのかも知れないのだ。

 フィアナさんは弱々しく首を振る。

「兵達を指揮して略奪を行った人物は『エリス様』と呼ばれていたそうです」

「っ! そんな……馬鹿な事!」

 兵を指揮出来てエリス『様』と呼ばれて……それじゃあ、こんな事をしたのがオフェリアのエリス姫だと?

「……シャルロットは私の大切な友人です。ロイ様を遣わしてくれたのも彼女で……オフェリアが国としてこんな事をしている訳が無い……そう信じて……信じたい……のに」
「フィアナさん……」

 動揺して当たり前だろう。関わりが深いとは言えない僕でさえこれほど心が乱されるのだから。
 一介の兵士が暴れて行ったわけじゃ無い。
 友好国の姫に指揮された軍隊が略奪を行ったというのなら、真意なんて解りようが無い。

すー……はー……

「僕はフィアナさんやルキさんにお話した通り、情けない人間です。後悔……しています。本当に……」

「ロイ様……?」

「もっと、話しておけば良かった。そんな当たり前のことを今更後悔しているんです」

 綺麗な瞳で見つめられる。
 シャルロット姫も、同じ目をしていた。
 だから……

「だから、同じ後悔はしないで下さい。シャルロット姫と話をしに行きましょう! 彼女や女王様が全く知らない事なのかも知れないんです。すれ違わないためにも行きましょう。もし……もしも危険な事があったなら僕が命懸けで守ります」

 きっと僕は滅茶苦茶な事を言ってるのだろう。
 感情のまま、勝手な気持ちを押しつけて。
 でも、2人の友情は本物だと僕は信じる。
 だからこそ……理不尽な誰かの思惑や行動があるのなら、そんなものに負けたくない。

 フィアナさんは僕の目を見て、手を差し出して来る。

「貴方とシャルロットを信じます……だから私を……」

「その気持ちに応えさせて下さい」

 フィアナさんの手を取る。

「~~♪」

[神技・具現を使用します]

 現れた魔竜は僕達2人を見て鼻からため息を吐く。

 (……ごめんね、またお願いしなきゃいけなくなった。腹が立ったなら、後で少しくらい噛み付かれても我慢するから)

 魔竜の背に乗り、フィアナさんを引き上げる。

「行きましょう。オフェリアへ!」
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