公爵令嬢に婚約破棄されましたが『歌』とチートスキルで無双して見返してやりたいと思います!

花月風流

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アルバスタ王国

第48話 昔の、話です

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 ポロローン♪

「僕は森へと遊びに行き……そこで怪我した狸を見つけます。……狸を哀れに思った僕は……家に連れて帰ります」

 動物の話が好きなのか、何人かは身を乗り出すようにしている。

「怪我を手当てし早ひと月……狸の怪我は無事治り……別れの日が訪れます」

 ポロロロローン♪

「寂しいけど、元気でね! またいつか会えるまで、元気でね!」

 言いながら手を振ってみせる。

「そんな別れから早いつ月……庭で遊んでいた時に……あの子は突然やってきた」

 ポロローン♪

「ああ! 君はあの時の? 随分大きくなったじゃないか……近くで顔を見せておくれ!」

 ジャン♪

「なんとあの子の後ろから……子狸達が顔を出す。子供が出来たんだね!……随分たくさん……1、2、3、4、5……なんと15匹!」

「うわー、すごいなぁ」
「ふふふ、たくさん」

 子供達の半分に笑顔が見え始める。

 ポロローン♪

「僕は慌てて家に入って……お菓子を見つけて持ち出した……狸の親子は喜んで食べ……ひと声鳴いて帰って行った。幸せな気持ちだった僕……だけど夜に聞かれたよ」

 ジャン♪

「ねえ、ロイ? お客様にと買って置いた焼菓子が無いんだけど、知らないかしら?」
「ぼぼぼ僕は知らないよ! 狸になんてあげてないよ!……なぜか嘘がバレた……」

「お兄ちゃん、嘘つくの下手すぎ!」
「狸って言っちゃってるー」

 子供達が指差して笑っている。

「狸達は時々遊びに来て……庭の端を掘っていく……そうした日々から1年後」

 ポローン♪

「庭の端にはお花畑が出来ました」

「狸がお花植えたのー?」
「うん、お菓子のお礼なのかな? お花の種を沢山沢山持ってきてくれたみたい。今でも家の庭には毎年お花が咲いているよ」

「キャー、お花良いなぁ」
「狸もお礼をして偉いね」

 子供達が笑顔になってくれた。
 勝手な気持ちだけど、やっぱり怯えているより笑っていて欲しい。


「ロイさん、少しよろしいですか?」

 階段からフィアナさんに呼ばれて、そちらへ向かう。

「どうしたんですか?」

 笑顔の子供達を見て微笑んだ後、表情を改めて僕の耳元で囁く。

「……村を襲った人達の話が聞けました。ここでは話せないので……」
「解りました。行きましょう」

 子供達に手を振ると、皆も笑顔で手を振ってくれる。

 ……こんな子供に悲しい思いをさせるのはどんな人なのか。

 階段を降りながら、僕は見えない相手に怒りを覚えた。
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