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アルバスタ王国
第46話 悩みは、尽きないです
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僕は婚約破棄されて旅に出て以降の事を大まかに話した。
何があって、どう思って行動したのかを。
「普通、ですね」
「……驚く事も多いですが、悩み自体は普通ですね」
フィアナさんと大柄な男性……ルキさんが首を捻る。
不思議な少女から力を貰った件については驚かれたが、僕の悩みについては普通だったらしい。
「力を得た。理不尽な思いをした分は仕返ししたい。それは当然だと思う。私でも……行動するかもな。器が小さいと言われても、腹が立つものは腹が立つ。むしろ何故直接的な制裁を」
「ルキ、熱くなりすぎです。でも、確かに急で一方的過ぎて……私なら理由を問いただしますね。納得いくものであれば平手で、納得のいかないものであれば拳で……」
「フィアナさん?」
思ったより過激なフィアナさんの発言に動揺するが、確かに納得も出来る。
この後悔のような気持ちは、勢いに任せて行動してしまったからなのかも知れない。
恋人を愛していて、親友が大切だったなら殴り合ってでも向き合うべきだったのかも知れない。
そう思えるようになったのは旅を続けて来た中で出会った人々のおかげなのだろう。
旅中で出会えた友人達は、皆真剣に向き合ってくれたから。
「なので、再会することがあれば……思い切り殴って差し上げて下さい。こう、こう」
拳を作ってぶんぶん振り回す。
頬を膨らませて腕を振るフィアナさんを見て、笑顔になれる。
(そうだね。エメラダは無理でもデュランは殴ってやろう。そして殴られよう。そうやって、話をしないと)
ルキさんは眉間にシワを寄せて腕を組んでいる。
「しかし、南方の2国にオフェリア、そして我がアルバスタ……ラミレアは一体何を考えているのだろうな。東の国はオフェリアの友好国であり巻き込まれているようなものとして……世界に対して戦争を仕掛けるような無謀じゃないか」
「そうですね。元々力のある国でしたが、これほど強引な行動に出るなんて。それに、思っていたよりも遥かに兵が多いようで……ロイ様はラミレアが軍を強化しているなどの噂をご存知では?」
「全く、知らなかったです」
フィアナさんの発言に首を振って答える。
たかが男爵家、と言われるかも知れないが一応は貴族。そして、戦いが起これば戦場に立つ可能性がある家だ。そのような気配があれば父が何か言わない筈がないと思う。
家族想いの父ならば『用心するように』と言わないとは思えないからだ。
コンコン
僕達の考察を中断させるようにノックの音が響いた。
「ご会談中に申し訳ございません。ルキ様、急ぎのご報告が……」
「む……」
ルキさんが扉を開けて報告を聞いている。
小声なので内容までは聞こえないが、緊張感が伝わってくる。
話が終わったらしく扉を閉じたルキさんは、椅子にも座らないまま口を開いた。
「……南の集落が略奪に遭い怪我人が多数出たそうです。略奪を行った者たちは武装しており……鎧には聖オフェリア国の紋章が刻まれていたそうです」
ガタン!
「そんな……どうして」
驚きの表情を浮かべたフィアナさんは、一瞬だけ目を閉じて俯くと、すぐに顔を上げて歩き出す。
「何かの間違いかも知れません。集落には私が行きます。ルキ、留守をお願いします」
「そんな、フィアナ様お一人では!」
「僕も行きます!」
立ち上がり、フィアナさんの横へ並ぶ。
オフェリアの戦いがどうなっているのか気になる自分もいる。
南へ向かえば海に出られるし、魔竜の背からなら戦いの様子も確認できる筈だ。
それに何より、こんな顔をした女の子を放っておけない。
「~~♪」
まだ痛む喉で歌えば、応えるように魔竜の鳴き声が聴こえる。
「行きましょう」
フィアナ姫の手を取り、僕は城の外へ向かうべく駆け出した。
何があって、どう思って行動したのかを。
「普通、ですね」
「……驚く事も多いですが、悩み自体は普通ですね」
フィアナさんと大柄な男性……ルキさんが首を捻る。
不思議な少女から力を貰った件については驚かれたが、僕の悩みについては普通だったらしい。
「力を得た。理不尽な思いをした分は仕返ししたい。それは当然だと思う。私でも……行動するかもな。器が小さいと言われても、腹が立つものは腹が立つ。むしろ何故直接的な制裁を」
「ルキ、熱くなりすぎです。でも、確かに急で一方的過ぎて……私なら理由を問いただしますね。納得いくものであれば平手で、納得のいかないものであれば拳で……」
「フィアナさん?」
思ったより過激なフィアナさんの発言に動揺するが、確かに納得も出来る。
この後悔のような気持ちは、勢いに任せて行動してしまったからなのかも知れない。
恋人を愛していて、親友が大切だったなら殴り合ってでも向き合うべきだったのかも知れない。
そう思えるようになったのは旅を続けて来た中で出会った人々のおかげなのだろう。
旅中で出会えた友人達は、皆真剣に向き合ってくれたから。
「なので、再会することがあれば……思い切り殴って差し上げて下さい。こう、こう」
拳を作ってぶんぶん振り回す。
頬を膨らませて腕を振るフィアナさんを見て、笑顔になれる。
(そうだね。エメラダは無理でもデュランは殴ってやろう。そして殴られよう。そうやって、話をしないと)
ルキさんは眉間にシワを寄せて腕を組んでいる。
「しかし、南方の2国にオフェリア、そして我がアルバスタ……ラミレアは一体何を考えているのだろうな。東の国はオフェリアの友好国であり巻き込まれているようなものとして……世界に対して戦争を仕掛けるような無謀じゃないか」
「そうですね。元々力のある国でしたが、これほど強引な行動に出るなんて。それに、思っていたよりも遥かに兵が多いようで……ロイ様はラミレアが軍を強化しているなどの噂をご存知では?」
「全く、知らなかったです」
フィアナさんの発言に首を振って答える。
たかが男爵家、と言われるかも知れないが一応は貴族。そして、戦いが起これば戦場に立つ可能性がある家だ。そのような気配があれば父が何か言わない筈がないと思う。
家族想いの父ならば『用心するように』と言わないとは思えないからだ。
コンコン
僕達の考察を中断させるようにノックの音が響いた。
「ご会談中に申し訳ございません。ルキ様、急ぎのご報告が……」
「む……」
ルキさんが扉を開けて報告を聞いている。
小声なので内容までは聞こえないが、緊張感が伝わってくる。
話が終わったらしく扉を閉じたルキさんは、椅子にも座らないまま口を開いた。
「……南の集落が略奪に遭い怪我人が多数出たそうです。略奪を行った者たちは武装しており……鎧には聖オフェリア国の紋章が刻まれていたそうです」
ガタン!
「そんな……どうして」
驚きの表情を浮かべたフィアナさんは、一瞬だけ目を閉じて俯くと、すぐに顔を上げて歩き出す。
「何かの間違いかも知れません。集落には私が行きます。ルキ、留守をお願いします」
「そんな、フィアナ様お一人では!」
「僕も行きます!」
立ち上がり、フィアナさんの横へ並ぶ。
オフェリアの戦いがどうなっているのか気になる自分もいる。
南へ向かえば海に出られるし、魔竜の背からなら戦いの様子も確認できる筈だ。
それに何より、こんな顔をした女の子を放っておけない。
「~~♪」
まだ痛む喉で歌えば、応えるように魔竜の鳴き声が聴こえる。
「行きましょう」
フィアナ姫の手を取り、僕は城の外へ向かうべく駆け出した。
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