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アルバスタ王国
第42話 北に、来たのです
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魔竜の背に乗り、北を目指して飛ぶ。
城を離れる前に見た海には、確かに多くの船が迫って来ていた。
どうか耐えて欲しい。僕が出来るのは少しでも早くアルバスタに辿り着く事だけだ。
空気が冷たくなって暫くした頃、城が見えてきた。聞いていた方向を間違えて無ければあれがアルバスタの城で間違いない筈だ。
僕は魔竜に乗ったまま、城へ近づき声を上げる。
「僕は聖オフェリア国から来ました! 女王とシャルロット姫から書簡を預かっています! 代表の方とお話をさせて下さい!」
弓を引く兵士達を静止した大柄な男性が応えてくれる。
「解った! 取り敢えずそのまま広場へ降りてくれ!」
言われた通り、城の前の広場に降りて具現を解く。消える前に頭を撫でた魔竜は少し心配そうに鳴いた。
「驚いた……今のはまるで物語に出てくる竜のようだったが……君は何者だ?」
「僕は旅人のロイです。オフェリアの女王よりの書簡がこちらです。時間が無いので、あとは代表の方が同席して下さった方が……」
書簡を受け取った男性は書簡が本物である事を確認して頷いた。
「解った。ついて来てくれ」
男性について行った先で出会ったのは、可憐な少女だった。
年齢はシャルロット姫と同じくらいだろう。
彼女は僕に微笑むと女王からの書簡を開き、読み進めた。
「……状況は解りました。聖オフェリア国も攻撃を受けるのであれば援軍は無理でしょう。ありがとうございます、貴方のお陰で覚悟が決まりました」
「では……フィアナ様……」
大柄な男性が少女……いや、アルバスタの女王フィアナさんを見る。
「私達は私達の誇りをもって、最後の1兵まで抗いましょう。私達が簡単に負けてはここのラミレア兵までが聖オフェリア国へ向かってしまうでしょう。シャルロットのためにも、簡単に負けられないわ……貴方もお役目ご苦労様です。早めに逃げて巻き込まれないよう気をつけて下さいね」
落胆は見せず笑顔を見せるフィアナさんに僕はもう1つの書簡を差し出す。
「これは? ……シャルロットからなのね」
こんな時なのに嬉しそうに書簡を開けたフィアナさんは、驚いた顔をする。
「どうされたのですか、フィアナ様?」
そう聞いた大柄な男性に笑いながら書簡を渡す。
「親愛なるフィアナ、私はあなたを信じるようにこの人を信じた。あなたも私を信じるようにこの人を信じて欲しい。……短い上によく解りませんが」
書簡と僕とを交互に見ながら、男性がこぼす。
「……私はどうしたら良いのでしょう?」
僕の目を見てフィアナさんが問う。
ここへ来るまでの間、ずっと考えていた作戦……僕の歌で出来ること……
「戦える兵士に全員集まって貰い、戦いましょう。そして……フィアナさんにはその先頭に立って欲しいのです」
言い終わった瞬間、大柄な男性が怒る。
「兵の先頭に立つなど、女王がされるような事では無い! お前はフィアナ様に……真っ先に命を捨てろと言うのか」
「僕も行きます。フィアナさんと並んで先頭に立ちます。……上手くいくかどうかなんて解らないような事ですから、何か良い手があるなら他の方法でも良いのですが」
「わかりました」
「フィアナ様!」
即答するフィアナさんに僕も驚く。
「これ以上無いお墨付きですもの。あなたを信じます」
言い切ったフィアナさんは迷いの無い目をしていた。
城を離れる前に見た海には、確かに多くの船が迫って来ていた。
どうか耐えて欲しい。僕が出来るのは少しでも早くアルバスタに辿り着く事だけだ。
空気が冷たくなって暫くした頃、城が見えてきた。聞いていた方向を間違えて無ければあれがアルバスタの城で間違いない筈だ。
僕は魔竜に乗ったまま、城へ近づき声を上げる。
「僕は聖オフェリア国から来ました! 女王とシャルロット姫から書簡を預かっています! 代表の方とお話をさせて下さい!」
弓を引く兵士達を静止した大柄な男性が応えてくれる。
「解った! 取り敢えずそのまま広場へ降りてくれ!」
言われた通り、城の前の広場に降りて具現を解く。消える前に頭を撫でた魔竜は少し心配そうに鳴いた。
「驚いた……今のはまるで物語に出てくる竜のようだったが……君は何者だ?」
「僕は旅人のロイです。オフェリアの女王よりの書簡がこちらです。時間が無いので、あとは代表の方が同席して下さった方が……」
書簡を受け取った男性は書簡が本物である事を確認して頷いた。
「解った。ついて来てくれ」
男性について行った先で出会ったのは、可憐な少女だった。
年齢はシャルロット姫と同じくらいだろう。
彼女は僕に微笑むと女王からの書簡を開き、読み進めた。
「……状況は解りました。聖オフェリア国も攻撃を受けるのであれば援軍は無理でしょう。ありがとうございます、貴方のお陰で覚悟が決まりました」
「では……フィアナ様……」
大柄な男性が少女……いや、アルバスタの女王フィアナさんを見る。
「私達は私達の誇りをもって、最後の1兵まで抗いましょう。私達が簡単に負けてはここのラミレア兵までが聖オフェリア国へ向かってしまうでしょう。シャルロットのためにも、簡単に負けられないわ……貴方もお役目ご苦労様です。早めに逃げて巻き込まれないよう気をつけて下さいね」
落胆は見せず笑顔を見せるフィアナさんに僕はもう1つの書簡を差し出す。
「これは? ……シャルロットからなのね」
こんな時なのに嬉しそうに書簡を開けたフィアナさんは、驚いた顔をする。
「どうされたのですか、フィアナ様?」
そう聞いた大柄な男性に笑いながら書簡を渡す。
「親愛なるフィアナ、私はあなたを信じるようにこの人を信じた。あなたも私を信じるようにこの人を信じて欲しい。……短い上によく解りませんが」
書簡と僕とを交互に見ながら、男性がこぼす。
「……私はどうしたら良いのでしょう?」
僕の目を見てフィアナさんが問う。
ここへ来るまでの間、ずっと考えていた作戦……僕の歌で出来ること……
「戦える兵士に全員集まって貰い、戦いましょう。そして……フィアナさんにはその先頭に立って欲しいのです」
言い終わった瞬間、大柄な男性が怒る。
「兵の先頭に立つなど、女王がされるような事では無い! お前はフィアナ様に……真っ先に命を捨てろと言うのか」
「僕も行きます。フィアナさんと並んで先頭に立ちます。……上手くいくかどうかなんて解らないような事ですから、何か良い手があるなら他の方法でも良いのですが」
「わかりました」
「フィアナ様!」
即答するフィアナさんに僕も驚く。
「これ以上無いお墨付きですもの。あなたを信じます」
言い切ったフィアナさんは迷いの無い目をしていた。
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