公爵令嬢に婚約破棄されましたが『歌』とチートスキルで無双して見返してやりたいと思います!

花月風流

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聖オフェリア国

第40話 歌と、拍手です

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 歌を終え、楽器を弾く指もゆっくり止まる。
 静まり返った謁見の間の静寂が耳に痛い。
 今までの歌と違う、自分だけの歌。
 失敗も成功も無い、ただ聞き手の気持ちに委ねられる歌。


 パチパチパチパチ

 拍手をくれたのはシャルロット姫だった。
 頬を紅潮させて一心に手を叩いてくれる。
 あの日と同じように、ただ1人……。

「素晴らしい歌でした! ここに居ながら、会ったことの無い人達の息遣いまで感じられるような……歌が生きていました!」

「ありがとうございます」

 嬉しいような、くすぐったいような気持ちだ。
 出会った人達の優しさ、強さを少しでも伝えられたなら良いと思う。
 僕の正面に座る女王は目を閉じたままだ。

「母上……」

 エリス姫は決意の表情で僕を指差す。
 後ろを振り返ってみたけど誰も居なかったので僕で間違い無いはずだ。

「この者は危険です。ただの旅人? まんまと騙される所だったわ。こんな物を視せられる者がただの旅人なものか。さっさと拘束してラミレアへ送りつけましょう!」

 その言葉に違和感を感じた。

(僕が危険? だとしたら……)

「僕は処刑されるべきなのではないでしょうか?」

 疑問をそのまま口にする。
 勿論僕は処刑されたい訳じゃ無い。
 何を受け取って危険と判断したかは置いておくとして……危険だと思う人間を威圧的な外交をしてくる相手にそのまま送るのは変じゃないだろうか。

 僕の言葉に女王が目を開け、何か言おうと口を開ける。

 バン!

「し、失礼致します!」

 謁見の間の扉が勢いよく開けられ、兵士が駆け込んでくる。
 僕と並ぶような位置で膝をついた彼は慌てた様子で発言する。

「北の友国アルバスタがラミレア王国より攻撃を受けているとの報せが入りました。かなりの数により劣勢のため援軍を望まれるとの事です!」

 謁見の間が一瞬で騒がしくなる。
 誰も彼もが動揺している。

「報告です!」

 また1人兵士が駆け込んで来る。

「監視塔の者より報告です。我が国の沖合に多数の帆船を確認! 数と国旗よりラミレア王国の海軍だと思われます!」

「……そうですか」

 蜂の巣を突いたような騒ぎの中、女王と2人の姫だけがおかしな程に冷静だった。
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