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聖オフェリア国
第34話 思わぬ、再会です
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「え……ギンさん?」
もちろん見間違えたりはしない。でも、ここに居るとは思えない。ボクの頭は混乱しそうになる。
「……ロイ君か! まさか本当にこんな所で会えるなんて。大頭領の勘も当たる事があるんだな」
上司に対して大胆な発言をしながら、ギンさんが笑う。
「で、これはどんな状況なんだい?」
僕と番兵さんの言い分をふんふん聞きながら、ギンさんがお腹をさする。
「なるほど、理由は解った。君達はロイ君の見た目では怪しいし、警戒を解けない。ロイ君は中の人に手紙を届けたい。」
「はい」
「うむ。それはそうなんだが、貴方はどこのどなたですかね? 我々も仕事でやっている以上、関係の無い人間の介入は……」
「はいこれ」
ギンさんは胸元から腕章らしい物を取り出して腕に着ける。
その腕章には鍛冶の国の紋様が入っていた。
「この国のいちばーん偉い人と外交しに来た田舎者だよ」
少し意地悪そうな顔で笑う。
「も、申し訳ございません! 大使殿とは」
番兵さんと巡回中だった衛兵さんは揃って敬礼する。ギンさんは手をヒラヒラさせてそれに応えると、僕を見て苦笑する。
「俺も見た目で判断するのは良くないと思うけど、そこは東の国の領事館だからね。東の国の人間には見えないロイ君を警戒するのは仕方ない部分もあるから、許してあげなよ」
「あ、はい……すみません。僕も少し意地になりました」
番兵さんも衛兵さんも自分の仕事に忠実だっただけだ。僕も配慮や準備が足りなかったのだと思う。
「……それでさ、ロイ君。俺はお腹が減っちゃったんだ。一緒にご飯でも食べない? その後改めて出直せば、きっと快く通して貰えるよ」
「解りました。すみません、出直します」
番兵さんに頭を下げて、歩き出したギンさんの後を追う。
聞きたい事が沢山ある。
「ギンさん、あの!」
「うんうん、顔に書いてあるよ。どうしてここに居るんだとか大使って何だとか」
そんなに判り易い顔をしていたのだろうか。
少し恥ずかしくて自分の頬を抓ってみる。
「よーし、そこの角を曲がってみてごらん」
「はい?」
言われた通りに道を曲がってみると道は直ぐ突き当たり、そこには綺麗な屋敷が建っていた。
そしてその屋敷には……鍛治の国の国旗と草原の国の国旗が掲げられていた。
「ようこそ、我らが合同大使館へ。まあ、まだ荷物を運び込んでる途中なんだけどね。簡単な食事くらいは食べられるから」
すたすた歩くギンさんを他所に
僕は口を開けたまま国旗を見上げていた。
もちろん見間違えたりはしない。でも、ここに居るとは思えない。ボクの頭は混乱しそうになる。
「……ロイ君か! まさか本当にこんな所で会えるなんて。大頭領の勘も当たる事があるんだな」
上司に対して大胆な発言をしながら、ギンさんが笑う。
「で、これはどんな状況なんだい?」
僕と番兵さんの言い分をふんふん聞きながら、ギンさんがお腹をさする。
「なるほど、理由は解った。君達はロイ君の見た目では怪しいし、警戒を解けない。ロイ君は中の人に手紙を届けたい。」
「はい」
「うむ。それはそうなんだが、貴方はどこのどなたですかね? 我々も仕事でやっている以上、関係の無い人間の介入は……」
「はいこれ」
ギンさんは胸元から腕章らしい物を取り出して腕に着ける。
その腕章には鍛冶の国の紋様が入っていた。
「この国のいちばーん偉い人と外交しに来た田舎者だよ」
少し意地悪そうな顔で笑う。
「も、申し訳ございません! 大使殿とは」
番兵さんと巡回中だった衛兵さんは揃って敬礼する。ギンさんは手をヒラヒラさせてそれに応えると、僕を見て苦笑する。
「俺も見た目で判断するのは良くないと思うけど、そこは東の国の領事館だからね。東の国の人間には見えないロイ君を警戒するのは仕方ない部分もあるから、許してあげなよ」
「あ、はい……すみません。僕も少し意地になりました」
番兵さんも衛兵さんも自分の仕事に忠実だっただけだ。僕も配慮や準備が足りなかったのだと思う。
「……それでさ、ロイ君。俺はお腹が減っちゃったんだ。一緒にご飯でも食べない? その後改めて出直せば、きっと快く通して貰えるよ」
「解りました。すみません、出直します」
番兵さんに頭を下げて、歩き出したギンさんの後を追う。
聞きたい事が沢山ある。
「ギンさん、あの!」
「うんうん、顔に書いてあるよ。どうしてここに居るんだとか大使って何だとか」
そんなに判り易い顔をしていたのだろうか。
少し恥ずかしくて自分の頬を抓ってみる。
「よーし、そこの角を曲がってみてごらん」
「はい?」
言われた通りに道を曲がってみると道は直ぐ突き当たり、そこには綺麗な屋敷が建っていた。
そしてその屋敷には……鍛治の国の国旗と草原の国の国旗が掲げられていた。
「ようこそ、我らが合同大使館へ。まあ、まだ荷物を運び込んでる途中なんだけどね。簡単な食事くらいは食べられるから」
すたすた歩くギンさんを他所に
僕は口を開けたまま国旗を見上げていた。
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