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東の国
第23話 人に、出会います
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「これは……凄い景色だ……」
皆と別れて東へ向かう僕は眼下の海を見て圧倒されていた。
海は勿論見たことがある。でも、それは平坦だった。
眼下の景色はそんな常識を裏切り……割れていた。
海の中に滝があると表現するべきか、海の底が抜けたようだと言うべきか。
この景色を歌にするなら何と歌えば良いのだろうか。
いつか自分の言葉で、自分の想いで歌を作ってみるのも良いかも知れない。
もっと近寄って見たいか? と言うかのように魔竜が目を向ける。
「大丈夫、ここからでも良く見えるよ」
それに、迫力がありすぎて近寄るのは少し怖いしね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「思ったより遠いな……魔竜が居てくれなかったらどれだけ時間がかかったんだろう」
魔竜のお陰で東に真っ直ぐ飛んでいるが、ようやく大陸が見えて来たところだ。
船だと海の割れ目を越えられないし、ずっと北か南を迂回しないと辿りつけないだろう。
お腹が減って来たのでデューイさんから貰った袋を開ける。
良い匂いの元は丸いパンだった。
手に持つとふわふわした感触に加え少し重みを感じる。
「頂きます!」
齧ってみると、口の中に濃厚なクリームの甘味と果実の鮮烈な酸味を感じる。
「美味しいですよ、デューイさん! 今すぐ感想を伝えたいくらいです」
きっとこのパンみたいに、2つの国が引き立てあって行くのだろう。優しくて力強いパンはそんな風に思わせてくれるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
東の大陸に着いた時には、日が傾き始めていた。
「今日はここで野宿するしかないな」
この大陸は空から見ても木々が多く、僕が来た方角からは街が見えなかった。
日が落ちてから灯りを頼りに飛んでみるのも良いかも知れないが、ゆっくり休んで朝から街を探す方針をとる。
一応病み上がりの体力を過信するわけにもいかないからだ。
枯れ木を集めて腰のポーチから出した石同士を打ちつけ火をつける。
旅を始めてそれなりに日にちが経ったのに、自分で火を起こすのは2回目だ。
火を起こした僕は、革張りの箱から楽器を取り出す。
「早く触ってみたかったんだよね」
金属の糸を指で弾く
ぼーん
「~~♪」
突起を回して音を調整する
ポーン
「~~♪」
おお、いい感じになった!
面白くなってしまい、どんどん調整していく。
ジャラーン
「~~♪」
良い、これは良い!
曲を弾くためには練習が必要だけど、楽器があると何か気持ち良く歌える。
よし、練習を兼ねて一曲歌ってみよう!
ジャララーン
ガサガサ
「ーーーーー!」
楽器を鳴らし歌おうと口を開けた瞬間
木々を掻き分けて人が現れた。
「ーーーーー?」
「え? 何でしょうか?」
「ーーーーー!?」
言葉が……通じないようだった。
皆と別れて東へ向かう僕は眼下の海を見て圧倒されていた。
海は勿論見たことがある。でも、それは平坦だった。
眼下の景色はそんな常識を裏切り……割れていた。
海の中に滝があると表現するべきか、海の底が抜けたようだと言うべきか。
この景色を歌にするなら何と歌えば良いのだろうか。
いつか自分の言葉で、自分の想いで歌を作ってみるのも良いかも知れない。
もっと近寄って見たいか? と言うかのように魔竜が目を向ける。
「大丈夫、ここからでも良く見えるよ」
それに、迫力がありすぎて近寄るのは少し怖いしね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「思ったより遠いな……魔竜が居てくれなかったらどれだけ時間がかかったんだろう」
魔竜のお陰で東に真っ直ぐ飛んでいるが、ようやく大陸が見えて来たところだ。
船だと海の割れ目を越えられないし、ずっと北か南を迂回しないと辿りつけないだろう。
お腹が減って来たのでデューイさんから貰った袋を開ける。
良い匂いの元は丸いパンだった。
手に持つとふわふわした感触に加え少し重みを感じる。
「頂きます!」
齧ってみると、口の中に濃厚なクリームの甘味と果実の鮮烈な酸味を感じる。
「美味しいですよ、デューイさん! 今すぐ感想を伝えたいくらいです」
きっとこのパンみたいに、2つの国が引き立てあって行くのだろう。優しくて力強いパンはそんな風に思わせてくれるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
東の大陸に着いた時には、日が傾き始めていた。
「今日はここで野宿するしかないな」
この大陸は空から見ても木々が多く、僕が来た方角からは街が見えなかった。
日が落ちてから灯りを頼りに飛んでみるのも良いかも知れないが、ゆっくり休んで朝から街を探す方針をとる。
一応病み上がりの体力を過信するわけにもいかないからだ。
枯れ木を集めて腰のポーチから出した石同士を打ちつけ火をつける。
旅を始めてそれなりに日にちが経ったのに、自分で火を起こすのは2回目だ。
火を起こした僕は、革張りの箱から楽器を取り出す。
「早く触ってみたかったんだよね」
金属の糸を指で弾く
ぼーん
「~~♪」
突起を回して音を調整する
ポーン
「~~♪」
おお、いい感じになった!
面白くなってしまい、どんどん調整していく。
ジャラーン
「~~♪」
良い、これは良い!
曲を弾くためには練習が必要だけど、楽器があると何か気持ち良く歌える。
よし、練習を兼ねて一曲歌ってみよう!
ジャララーン
ガサガサ
「ーーーーー!」
楽器を鳴らし歌おうと口を開けた瞬間
木々を掻き分けて人が現れた。
「ーーーーー?」
「え? 何でしょうか?」
「ーーーーー!?」
言葉が……通じないようだった。
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