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鍛冶の国、草原の国
第16話 お酒は、怖いです
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魔竜の背に乗り、東の国を目指す僕は無性に腹が立っていた。
ラミレア王国にも、大頭領にも、自分にも。
もしかしたら初めて飲んだお酒の影響もあるのかも知れない。
『大人は嫌な事から逃げたくて呑む事もある』と以前聞いたのは本当なのかも知れないと思う。
国境に差し掛かると話に聞いていた砦が見える。
戦争中でも無いのに、篝火が、何人もの兵士が見える。
あっという間に砦の上を通り過ぎそのまま東へ向かうと、すぐに大きな街が見えて来た。
「あそこだ……魔竜、お願い」
街の中心にある一際大きな建物目掛けて魔竜に飛んで貰う。
目指した建物に着いた時、当然だけど騒ぎになる。
「なんだあれは!」
「空飛ぶ獣? ……いや、竜じゃないのか?」
「馬鹿な事を言うな! 竜なんている訳ない」
「鍛冶の国の兵器なんじゃないか!」
魔竜はどんどん高度を下げ、地面に脚を着く。僕と魔竜を囲むように見ていた人を押し除け衛兵らしき人達が集まって来る。
「なんだお前は! なんだその生き物は!」
武器を突き付けられるけど、そんなのどうでも良い気分だった。
「僕はロイ、ただの旅人です。鍛冶の国から来ました! この子は魔竜……暴れたりしないので安心して下さい。どうしてもお話したい事があります。この国の代表という方に会わせて頂けませんか?」
「はあぁあぁ!? お前、客観的という言葉を知ってるか? そんなモノに乗って現れるただの旅人が居るか!」
「……ごもっともです」
何も言い返せなかった。もう少し冷静になって途中から徒歩にするべきだったかも知れない。この状況では怪しくない訳が無い。
認めないといけない。僕は酔っている。もう二度と飲まないでおこう……。
僕は両手を挙げる。
[神技・具現の効果を解除します]
魔竜の姿が消える。
「消えた? お前何をした! ますます怪しい奴め……」
敵意の無い証に消したつもりだったのに更に警戒度が上がってしまう。
「配慮に欠けてました。安全のために僕を牢に入れてくれても良いですし、鎖に繋いでくれても構いません。抵抗しないと約束します。代わりに、どんな形でも良いので代表の方と話をさせて下さい!」
僕は頭を下げる。
「よ、よし。動くなよ」
武器を持った衛兵の輪が僕を中心に狭くなっていく。
「待ちたまえ。そんな子供を寄ってたかって虐めるものでは無いよ」
声の方を見ると、誰も居なかった。確かにこちらから声が……
「お約束の反応をありがとう。そのまま目線を下にずらしてみようか。そうそう。はい、やっと出会えたね。僕がこの国の代表だ。ようこそ、派手な旅人さん」
そこには僕より頭ひとつ背の小さな男性が立っていた。
ラミレア王国にも、大頭領にも、自分にも。
もしかしたら初めて飲んだお酒の影響もあるのかも知れない。
『大人は嫌な事から逃げたくて呑む事もある』と以前聞いたのは本当なのかも知れないと思う。
国境に差し掛かると話に聞いていた砦が見える。
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あっという間に砦の上を通り過ぎそのまま東へ向かうと、すぐに大きな街が見えて来た。
「あそこだ……魔竜、お願い」
街の中心にある一際大きな建物目掛けて魔竜に飛んで貰う。
目指した建物に着いた時、当然だけど騒ぎになる。
「なんだあれは!」
「空飛ぶ獣? ……いや、竜じゃないのか?」
「馬鹿な事を言うな! 竜なんている訳ない」
「鍛冶の国の兵器なんじゃないか!」
魔竜はどんどん高度を下げ、地面に脚を着く。僕と魔竜を囲むように見ていた人を押し除け衛兵らしき人達が集まって来る。
「なんだお前は! なんだその生き物は!」
武器を突き付けられるけど、そんなのどうでも良い気分だった。
「僕はロイ、ただの旅人です。鍛冶の国から来ました! この子は魔竜……暴れたりしないので安心して下さい。どうしてもお話したい事があります。この国の代表という方に会わせて頂けませんか?」
「はあぁあぁ!? お前、客観的という言葉を知ってるか? そんなモノに乗って現れるただの旅人が居るか!」
「……ごもっともです」
何も言い返せなかった。もう少し冷静になって途中から徒歩にするべきだったかも知れない。この状況では怪しくない訳が無い。
認めないといけない。僕は酔っている。もう二度と飲まないでおこう……。
僕は両手を挙げる。
[神技・具現の効果を解除します]
魔竜の姿が消える。
「消えた? お前何をした! ますます怪しい奴め……」
敵意の無い証に消したつもりだったのに更に警戒度が上がってしまう。
「配慮に欠けてました。安全のために僕を牢に入れてくれても良いですし、鎖に繋いでくれても構いません。抵抗しないと約束します。代わりに、どんな形でも良いので代表の方と話をさせて下さい!」
僕は頭を下げる。
「よ、よし。動くなよ」
武器を持った衛兵の輪が僕を中心に狭くなっていく。
「待ちたまえ。そんな子供を寄ってたかって虐めるものでは無いよ」
声の方を見ると、誰も居なかった。確かにこちらから声が……
「お約束の反応をありがとう。そのまま目線を下にずらしてみようか。そうそう。はい、やっと出会えたね。僕がこの国の代表だ。ようこそ、派手な旅人さん」
そこには僕より頭ひとつ背の小さな男性が立っていた。
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