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鍛冶の国、草原の国
第13話 山に、連れて行かれます
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「あの、僕何もして無いですし、怪しい者でも無いです」
「ああ。うん。話は後でするからね」
困った、対応は優しいけど逃しては貰えないらしい。
山に向かって半ば引き摺られるように歩く。
そのまま岩山に開けられた大きな穴に入っていくと、幾つも机と椅子が並んでいて、その中の1つにゴツゴツした男が座っていた。
「大頭領、面白いのを見つけたので拾ってきました」
大頭領と呼ばれた男がこちらを見る。
「だい、とうりょう?」
「ああ、この国は鍛冶屋の国だからね。職人を束ねる頭領の上に更に頭領を束ねる大頭領がいらっしゃるわけだ。そして、こちらの方がその大頭領……簡単に言えばこの国で一番偉い人だね」
警備の人が胸を張る。
「おい、ギン。俺は忙しいんだ。子守なら他をあたれ」
「いや、大頭領に子守だなんて。違います、例の話です」
大頭領が僕の目を見る。なんだか綺麗な目の人だな。
「……歌えるのか?」
「えと、一応歌いながら旅をしています」
「街で歌ってる所を見たんですが、大したものでした」
話が見えないので何とも答えにくい……
「そうか。明日の夜、ちょっとした集まりがある。そこで歌って欲しい。勿論、報酬も払う」
報酬が貰えるのは嬉しい。
これでデューイさんにパンの代金が支払える!
「解りました。僕はロイといいます。」
「頼む。俺はエルバンだ」
差し出された手を握ると、見た目の通り岩のような感触だった。
「ギン、ロイに宿を用意してやれ。ロイ、宿には俺が払うから今日は好きな物を食べろ……子供が痩せているのは見ていて辛い」
(僕、割と標準だと思うのですが……確かにこの街の人達から見ると枯れ枝みたいなものかも知れないけど)
「ありがとうございます」
好意で言ってくれたのは間違い無いので素直にお礼を述べる。
ギンさんと歩いて宿に向かう途中、少しだけ明日の事を話してくれた。
今この国の根幹を揺るがすほどの危機があり、明日はその対応について全ての親方と街の代表を集めての話し合いが有る。
その話し合いの前に宴席を設けるので、その場で歌って欲しいとの事だった。
(なるほど。うーん、何の歌を歌おうかな)
「全く、ラミレア王国も嫌な時機に汚い真似をしてくれるよ」
「えっ?」
思わぬ所で祖国の名が出て動揺する。
「ああ、一応話しておくか。明日の主題の1つはラミレア王国が仕掛けて来た圧力についてだ。しばらく先延ばしにしていたんだけど、いい加減に返事をするよう突かれたらしいよ」
僕の知らない所で何かが動いている。
何かとても嫌な予感がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「バイン公爵よ、あの両国からまだ返書が届かんようだな」
「……はっ」
「公爵自らの献策なのだ、失敗など無いであろうな?」
「……当然にございます」
「うむ、ではもう暫くは待つとするか。下がって良い」
「はっ」
公爵は薄暗い廊下を歩く
「ここまで来たのだ……失敗など……」
「ああ。うん。話は後でするからね」
困った、対応は優しいけど逃しては貰えないらしい。
山に向かって半ば引き摺られるように歩く。
そのまま岩山に開けられた大きな穴に入っていくと、幾つも机と椅子が並んでいて、その中の1つにゴツゴツした男が座っていた。
「大頭領、面白いのを見つけたので拾ってきました」
大頭領と呼ばれた男がこちらを見る。
「だい、とうりょう?」
「ああ、この国は鍛冶屋の国だからね。職人を束ねる頭領の上に更に頭領を束ねる大頭領がいらっしゃるわけだ。そして、こちらの方がその大頭領……簡単に言えばこの国で一番偉い人だね」
警備の人が胸を張る。
「おい、ギン。俺は忙しいんだ。子守なら他をあたれ」
「いや、大頭領に子守だなんて。違います、例の話です」
大頭領が僕の目を見る。なんだか綺麗な目の人だな。
「……歌えるのか?」
「えと、一応歌いながら旅をしています」
「街で歌ってる所を見たんですが、大したものでした」
話が見えないので何とも答えにくい……
「そうか。明日の夜、ちょっとした集まりがある。そこで歌って欲しい。勿論、報酬も払う」
報酬が貰えるのは嬉しい。
これでデューイさんにパンの代金が支払える!
「解りました。僕はロイといいます。」
「頼む。俺はエルバンだ」
差し出された手を握ると、見た目の通り岩のような感触だった。
「ギン、ロイに宿を用意してやれ。ロイ、宿には俺が払うから今日は好きな物を食べろ……子供が痩せているのは見ていて辛い」
(僕、割と標準だと思うのですが……確かにこの街の人達から見ると枯れ枝みたいなものかも知れないけど)
「ありがとうございます」
好意で言ってくれたのは間違い無いので素直にお礼を述べる。
ギンさんと歩いて宿に向かう途中、少しだけ明日の事を話してくれた。
今この国の根幹を揺るがすほどの危機があり、明日はその対応について全ての親方と街の代表を集めての話し合いが有る。
その話し合いの前に宴席を設けるので、その場で歌って欲しいとの事だった。
(なるほど。うーん、何の歌を歌おうかな)
「全く、ラミレア王国も嫌な時機に汚い真似をしてくれるよ」
「えっ?」
思わぬ所で祖国の名が出て動揺する。
「ああ、一応話しておくか。明日の主題の1つはラミレア王国が仕掛けて来た圧力についてだ。しばらく先延ばしにしていたんだけど、いい加減に返事をするよう突かれたらしいよ」
僕の知らない所で何かが動いている。
何かとても嫌な予感がした。
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「バイン公爵よ、あの両国からまだ返書が届かんようだな」
「……はっ」
「公爵自らの献策なのだ、失敗など無いであろうな?」
「……当然にございます」
「うむ、ではもう暫くは待つとするか。下がって良い」
「はっ」
公爵は薄暗い廊下を歩く
「ここまで来たのだ……失敗など……」
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