9 / 72
乾いた村
第9話 いいえ、人間です
しおりを挟む
[神業・魔歌の熟練度が上がりました]
[神技・具現の熟練度が上がりました]
頭の中の声が抑揚無く聴こえてくるが、今はそれどころじゃない。
腰を抜かす村人達が凄い顔をしてこちらを見ている。
(ま、魔法使い?そんなのいるわけないよな)
(じゃ何よ!? まさか神様の御使いとか……)
(或いは豊穣の神様そのものやも知れんぞ……)
村人達が小声で言い合う。
とんでも無い扱いになってる……
僕はただの人間です。
(やりすぎた。もしかすると絵本の中の魔女みたいに石を投げられたりするかも知れない)
いつでも逃げられるように距離を取るべきか?
でも、ここで魔竜を呼ぶと怪我人を出してしまうかも知れない。
僕はすぐ走れるよう足に力を入れて地面を踏む。
「こらー! めっ、でしょ! お兄ちゃんが歌を歌ってくれたんだから、終わったら拍手しないとダメなんだよ!」
パチパチパチ
リラちゃんが拍手をくれる。
「あ、すみません。歌は以上で終わりです。聴いて下さりありがとうございました」
村人に向けお辞儀をする。
パチパチパチパチパチパチ!!
「良い歌だったぞ!」
「素敵な声だった♪」
「ワシにゃ負けるが、中々良かったぞ」
良かった。まだ複雑そうな顔をした人も居るけど、取り敢えず飲み込んでくれたみたいだ。
僕は拍手と歓声に応えてもう一度頭を下げるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
すっかり日が落ちた村の広場には大きな焚き火が燃えていた。
村人が歌い、踊り、収穫した野菜などを堪能している。
皆、とても嬉しそうな顔をしている。
完全に時期外れの収穫祭になっていた。
僕の元にもリラちゃんが色々な料理を運んできてくれたので、お腹一杯食べさせて貰う。
それらはどれも素晴らしくて、貴族として食事していた頃の料理より美味しく感じた。
僕が満足感の詰まったお腹をさすっていると、村人の歌が終わり次の歌に移るところだった。
(この曲は……)
村人の吹く笛が奏でるのは[豊饒の実りと豊穣の恵み]だった。
「お兄ちゃんも踊ろう!」
「あ、うん」
リラちゃんに手を引かれ、火を囲み踊りながら歌う村人の輪に加わる。
「~~♪」
あまり踊りの得意では無い僕は、小さな少女に手を引かれながら踊り、歌う。
僕はこの村に来て初めて、何の力も使わず歌うのだった。
[神技・具現の熟練度が上がりました]
頭の中の声が抑揚無く聴こえてくるが、今はそれどころじゃない。
腰を抜かす村人達が凄い顔をしてこちらを見ている。
(ま、魔法使い?そんなのいるわけないよな)
(じゃ何よ!? まさか神様の御使いとか……)
(或いは豊穣の神様そのものやも知れんぞ……)
村人達が小声で言い合う。
とんでも無い扱いになってる……
僕はただの人間です。
(やりすぎた。もしかすると絵本の中の魔女みたいに石を投げられたりするかも知れない)
いつでも逃げられるように距離を取るべきか?
でも、ここで魔竜を呼ぶと怪我人を出してしまうかも知れない。
僕はすぐ走れるよう足に力を入れて地面を踏む。
「こらー! めっ、でしょ! お兄ちゃんが歌を歌ってくれたんだから、終わったら拍手しないとダメなんだよ!」
パチパチパチ
リラちゃんが拍手をくれる。
「あ、すみません。歌は以上で終わりです。聴いて下さりありがとうございました」
村人に向けお辞儀をする。
パチパチパチパチパチパチ!!
「良い歌だったぞ!」
「素敵な声だった♪」
「ワシにゃ負けるが、中々良かったぞ」
良かった。まだ複雑そうな顔をした人も居るけど、取り敢えず飲み込んでくれたみたいだ。
僕は拍手と歓声に応えてもう一度頭を下げるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
すっかり日が落ちた村の広場には大きな焚き火が燃えていた。
村人が歌い、踊り、収穫した野菜などを堪能している。
皆、とても嬉しそうな顔をしている。
完全に時期外れの収穫祭になっていた。
僕の元にもリラちゃんが色々な料理を運んできてくれたので、お腹一杯食べさせて貰う。
それらはどれも素晴らしくて、貴族として食事していた頃の料理より美味しく感じた。
僕が満足感の詰まったお腹をさすっていると、村人の歌が終わり次の歌に移るところだった。
(この曲は……)
村人の吹く笛が奏でるのは[豊饒の実りと豊穣の恵み]だった。
「お兄ちゃんも踊ろう!」
「あ、うん」
リラちゃんに手を引かれ、火を囲み踊りながら歌う村人の輪に加わる。
「~~♪」
あまり踊りの得意では無い僕は、小さな少女に手を引かれながら踊り、歌う。
僕はこの村に来て初めて、何の力も使わず歌うのだった。
16
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
うどん五段
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる