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第41話 広場にて
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広場には大勢の人々が集まっていて、その視線の先には台のような物まで作られていた。
台の上には2人の人間が立っていて、いかにも悪そうな顔をした男性とローブを着てフードを目深に被った小柄な人物が辺りを見回している。
「お姉様、あの男が議会を乗っ取ったデズンです」
台上の人物と同じように顔を隠したローサが小声で告げて来る。
「なるほど……もう1人は誰だか解る?」
「恐らく聖女信仰の話を広めた人だと思うのですが……私は直接話した事もありません」
(聖女信仰という言葉を聞く度に微妙な気持ちになるけど、今は我慢するとして)
「集まって貰った諸君よ、感謝する。議会代表のエンデ殿が病により動けぬ為、このデズンが代理として皆に伝えたい事がある」
台上でデズンが話し始めた。
よくも抜け抜けと……とローサが呟いたのも聞こえた。
「我がヴォラスは隣国デュシス王国に対して聖戦を挑むべし! そう聖女様からのお告げがあった」
「おいおい、西と戦争するのか?」
「聖女様のお告げって……ねぇ」
デズンの言葉に広場へ集まった民衆がざわつく。
ほぼほぼ否定的な反応のようで安心する。
次に目深にフードを被った人物が語り出した。
「西にいる……聖女は……偽物です。聖女の……皮を被った……悪女である……マリアンヌ……彼女の……存在は……神も聖女様も……お許しになりません……」
ゆっくりと、小さな声で語っているようなのに耳まではっきりと聴こえて来る。
ローサや弟達と同じか……もしかしたらもっと幼いかも知れないと思わせる、幼さの残った声だった。
「これは……風魔法を応用して声を運んでいるようです。攻撃に転用されないとも限らないので……全員僕から離れないで下さい」
ニュクスが警戒を促し、皆の中心に立つ。
「心配をしなくて良いのだ! 我々の勝利は約束されている。聖獣と契約していない偽の聖女など恐れる事は無いのだ! 我々は聖女様より頂いた力で聖獣を従える事に成功したのだから!」
台の上で手を挙げたデズンの背後、人を除けるように縄が張られていた場所に突然……小屋程に大きな亀が現れた。
(ブーちゃん!)
「ッブアァァァァ!」
突如現れた聖獣に歓声を上げる者、腰を抜かす者、逃げ出そうとする者と反応は様々だった。
私は混乱する人々の間を縫うようにして駆ける。
隠れていた袋を破って出てきたハクも一緒だ。
『この状況で迷わず駆け出すのは危ないのである』
『ハクこそ、折角隠れてたのに出てきちゃうと台無しじゃ無い』
微かに笑ったのは私だろうか、ハクだろうか?
最前列に辿り着いた私とハクはデズンへと向かい声を上げる。
「聖獣を解放して!」
「今なら頭髪を半分毟るくらいで勘弁してやるのである」
思ったより過酷そうな刑を予告するハクを思わず見ていると、台上のデズンが目を剥いていた。
「何だお前は……! 喋る獣……まさかお前も聖獣か!」
私達に追いついて来たローサがデズンへ指を突きつける。
「デズン! 貴方の悪巧みもここまでです。本物の聖女様と聖獣様により裁かれるが良いのです!」
「何を馬鹿な事を……衛兵! 何をしている、此奴らを捕らえよ!」
デズンの命令を受けた兵達が近寄って来る。
「姉ちゃんには触れさせ無いぜ」
「愚かだな。姉さんが戦うまでも無い」
次の瞬間、兵達は空を舞っていた。
プロイが兵を投げ飛ばし、ニュクスが魔法で吹き飛ばしたに違い無い。
「はあ!? な、何が起きて……」
一瞬で衛兵達が倒されデズンが狼狽えている。
しかし、横に立つローブ姿の人物がデズンを庇うように前に出た。
「聖女を騙り……人心を惑わす悪党……聖獣の力の前に……懺悔しながら逝きなさい……」
そう言い放ち、懐から出したナイフを後方へと投げる。
投げられたナイフはブーちゃんを囲っていた縄へと当たり、それを断ち切った。
「ブアァァァァァァァ!」
身体を揺らすような振動と共に、聖獣が向かって来る。
「……何か考えはあるのであるか?」
ハクが聞いて来る。
「……私もハクに聞こうと思ってたの」
お互いに顔を見合わせて苦笑してしまう。
「まあ、なんとかするしか無いよね」
「うむ。なんとかしよう」
私達は正面へと向き直り、困難達との戦いを始めるのだった。
台の上には2人の人間が立っていて、いかにも悪そうな顔をした男性とローブを着てフードを目深に被った小柄な人物が辺りを見回している。
「お姉様、あの男が議会を乗っ取ったデズンです」
台上の人物と同じように顔を隠したローサが小声で告げて来る。
「なるほど……もう1人は誰だか解る?」
「恐らく聖女信仰の話を広めた人だと思うのですが……私は直接話した事もありません」
(聖女信仰という言葉を聞く度に微妙な気持ちになるけど、今は我慢するとして)
「集まって貰った諸君よ、感謝する。議会代表のエンデ殿が病により動けぬ為、このデズンが代理として皆に伝えたい事がある」
台上でデズンが話し始めた。
よくも抜け抜けと……とローサが呟いたのも聞こえた。
「我がヴォラスは隣国デュシス王国に対して聖戦を挑むべし! そう聖女様からのお告げがあった」
「おいおい、西と戦争するのか?」
「聖女様のお告げって……ねぇ」
デズンの言葉に広場へ集まった民衆がざわつく。
ほぼほぼ否定的な反応のようで安心する。
次に目深にフードを被った人物が語り出した。
「西にいる……聖女は……偽物です。聖女の……皮を被った……悪女である……マリアンヌ……彼女の……存在は……神も聖女様も……お許しになりません……」
ゆっくりと、小さな声で語っているようなのに耳まではっきりと聴こえて来る。
ローサや弟達と同じか……もしかしたらもっと幼いかも知れないと思わせる、幼さの残った声だった。
「これは……風魔法を応用して声を運んでいるようです。攻撃に転用されないとも限らないので……全員僕から離れないで下さい」
ニュクスが警戒を促し、皆の中心に立つ。
「心配をしなくて良いのだ! 我々の勝利は約束されている。聖獣と契約していない偽の聖女など恐れる事は無いのだ! 我々は聖女様より頂いた力で聖獣を従える事に成功したのだから!」
台の上で手を挙げたデズンの背後、人を除けるように縄が張られていた場所に突然……小屋程に大きな亀が現れた。
(ブーちゃん!)
「ッブアァァァァ!」
突如現れた聖獣に歓声を上げる者、腰を抜かす者、逃げ出そうとする者と反応は様々だった。
私は混乱する人々の間を縫うようにして駆ける。
隠れていた袋を破って出てきたハクも一緒だ。
『この状況で迷わず駆け出すのは危ないのである』
『ハクこそ、折角隠れてたのに出てきちゃうと台無しじゃ無い』
微かに笑ったのは私だろうか、ハクだろうか?
最前列に辿り着いた私とハクはデズンへと向かい声を上げる。
「聖獣を解放して!」
「今なら頭髪を半分毟るくらいで勘弁してやるのである」
思ったより過酷そうな刑を予告するハクを思わず見ていると、台上のデズンが目を剥いていた。
「何だお前は……! 喋る獣……まさかお前も聖獣か!」
私達に追いついて来たローサがデズンへ指を突きつける。
「デズン! 貴方の悪巧みもここまでです。本物の聖女様と聖獣様により裁かれるが良いのです!」
「何を馬鹿な事を……衛兵! 何をしている、此奴らを捕らえよ!」
デズンの命令を受けた兵達が近寄って来る。
「姉ちゃんには触れさせ無いぜ」
「愚かだな。姉さんが戦うまでも無い」
次の瞬間、兵達は空を舞っていた。
プロイが兵を投げ飛ばし、ニュクスが魔法で吹き飛ばしたに違い無い。
「はあ!? な、何が起きて……」
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しかし、横に立つローブ姿の人物がデズンを庇うように前に出た。
「聖女を騙り……人心を惑わす悪党……聖獣の力の前に……懺悔しながら逝きなさい……」
そう言い放ち、懐から出したナイフを後方へと投げる。
投げられたナイフはブーちゃんを囲っていた縄へと当たり、それを断ち切った。
「ブアァァァァァァァ!」
身体を揺らすような振動と共に、聖獣が向かって来る。
「……何か考えはあるのであるか?」
ハクが聞いて来る。
「……私もハクに聞こうと思ってたの」
お互いに顔を見合わせて苦笑してしまう。
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「うむ。なんとかしよう」
私達は正面へと向き直り、困難達との戦いを始めるのだった。
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