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第39話 暴走するのは馬車か中身か
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「そこの馬車、止まれ!」
追手の声に馬車の速度が落ちるのを感じる。
相手が馬に乗る騎兵ならどの道馬車では逃げきれない。
シルバと荷馬車が居るので尚のこと速度を上げきれなかったのかも知れない。
「馬車の中を調べさせて貰うぞ」
そう声が聞こえたのと同時に馬車の扉が開かれる。
中を見に来た兵士が2人、ローサを見て頷く。
「代表の御子女ローサ様ですね? 我々とご同行頂きたい」
「……理由は何でしょうか?」
「お父君と共に国家に対する反逆罪の疑いがかかっております。ご自身が潔白であられるならご同行頂き釈明して頂くべきでしょう」
「貴方達はデズン殿の企みを知って、その上で加担しているのですか?」
「……国の繁栄の為です。全ては聖女の御心のままに」
その言葉を聞いた瞬間に私は身体の中が燃えたような気持ちになる。
飾らずに言えばとてもとても腹が立っていた。
「聖女の御心とやらで聖獣を強制的に隷属させていると?」
「うん? なんだお前は……使用人は黙っていろ」
なるほど、使用人と思われていたらしい。
「黙りません。もう一度聞きますが、聖女がそんな事を望んでいるのですか? それならその聖女と話させて頂きたいです」
「馬鹿な事を! 聖女様が我々などとお会いになられるものか。ましてやお前のような使用人などと……」
ふしゅ~……
「いい加減にするのである。それ以上吾輩の前で下らぬ宗教を語り、アイリスを愚弄するならお前達の命をもって償って貰う事になるのである」
私の持つ袋からハクが飛び出して来る。
「な、猫? いや、今こいつ喋った?」
「アイリスさん、この子は?」
兵士とローサが困惑する中、ハクが兵士を睨む。
「吾輩は西の聖獣ハク。今はすこぶる機嫌が悪いのでな……これ以上下らぬ問答をするなら命は無いのである」
確かに、とても機嫌が悪い。
前世と今世と……どちらを通して考えてもここまで怒るハクを見た事が無い……。
「まさかこれは魔法か? お前、魔法で猫が喋っているように見せかけて……」
ベコ!
言いながらハクを摘み上げた兵士から嫌な音がする。
ハクを摘んでいた兵士の恐らく鉄製であろう胸当てがハクの脚形にへこんでいる。
「かっ……」
「愚かなり」
解放されたハクが馬車を飛び出た瞬間、馬車内にまで刺さるような光と馬車さえ揺らす程の咆哮が起きる。
(何だろう、やっぱりハクらしく無い)
私は驚きで動けないでいるローサに肩を貸して馬車を出る。
突然現れた小屋ほど大きなハクに対し、兵士達は動揺している。
「な、なんだこいつ……」
「あの毛色と波打つみたいな光り方って、物語で見たあれみたいじゃないか……」
「もう一度名乗ろう。我が名は西の聖獣ハク。お前達の信じる偶像では無く生きる聖女と絆を結んだ者である」
「な……聖女様……だと?」
「アイリス、吾輩に命じよ。此奴らを刈りとれと。なに……瞬きひとつの間に済ませてやろう」
ハクが見下ろしつつ兵士達を睥睨すると、全員が武器を捨てて両手を上げた。
「おい、ふざけるでない。吾輩の怒りは収まって……ニャ! ……アイリス?」
ニコリ
「ハクは少し落ち着いて。いつも優しいハクらしく無いよ」
私はハクに微笑んでから兵士の前に立ち、全員を順番に睨む。
「あ……アイリス……その、落ち着くのである」
「ハクは少し黙ってて。私だって頭に来てるんだから。皆で好き勝手言うし、暴れるしさぁ……」
「姉ちゃん待ったぁ!」
「落ち着いて下さいアイリスさん!」
いつの間にか追いついてきたプロイが私を羽交い締めにする。
何故かローサまで必死に宥めようとして来る。
「……お前達、命は拾いしたな。姉さんが本気になっていたらお前達の首はあの山の彼方まで旅に出ている所だった……姉さんが暴れたら聖獣でも止められはしない……」
「ひ……そんな……。まるで悪魔だ……」
「離しなさいプロイ! あとニュクスも何を言ってるのよ!」
必死で私を止めるプロイとローサ。
震えているハク、ニュクス、兵士達。
呆然と立っているバースさん。
「はなせー!」
混乱を極めた街道に私の叫びが響き渡った。
追手の声に馬車の速度が落ちるのを感じる。
相手が馬に乗る騎兵ならどの道馬車では逃げきれない。
シルバと荷馬車が居るので尚のこと速度を上げきれなかったのかも知れない。
「馬車の中を調べさせて貰うぞ」
そう声が聞こえたのと同時に馬車の扉が開かれる。
中を見に来た兵士が2人、ローサを見て頷く。
「代表の御子女ローサ様ですね? 我々とご同行頂きたい」
「……理由は何でしょうか?」
「お父君と共に国家に対する反逆罪の疑いがかかっております。ご自身が潔白であられるならご同行頂き釈明して頂くべきでしょう」
「貴方達はデズン殿の企みを知って、その上で加担しているのですか?」
「……国の繁栄の為です。全ては聖女の御心のままに」
その言葉を聞いた瞬間に私は身体の中が燃えたような気持ちになる。
飾らずに言えばとてもとても腹が立っていた。
「聖女の御心とやらで聖獣を強制的に隷属させていると?」
「うん? なんだお前は……使用人は黙っていろ」
なるほど、使用人と思われていたらしい。
「黙りません。もう一度聞きますが、聖女がそんな事を望んでいるのですか? それならその聖女と話させて頂きたいです」
「馬鹿な事を! 聖女様が我々などとお会いになられるものか。ましてやお前のような使用人などと……」
ふしゅ~……
「いい加減にするのである。それ以上吾輩の前で下らぬ宗教を語り、アイリスを愚弄するならお前達の命をもって償って貰う事になるのである」
私の持つ袋からハクが飛び出して来る。
「な、猫? いや、今こいつ喋った?」
「アイリスさん、この子は?」
兵士とローサが困惑する中、ハクが兵士を睨む。
「吾輩は西の聖獣ハク。今はすこぶる機嫌が悪いのでな……これ以上下らぬ問答をするなら命は無いのである」
確かに、とても機嫌が悪い。
前世と今世と……どちらを通して考えてもここまで怒るハクを見た事が無い……。
「まさかこれは魔法か? お前、魔法で猫が喋っているように見せかけて……」
ベコ!
言いながらハクを摘み上げた兵士から嫌な音がする。
ハクを摘んでいた兵士の恐らく鉄製であろう胸当てがハクの脚形にへこんでいる。
「かっ……」
「愚かなり」
解放されたハクが馬車を飛び出た瞬間、馬車内にまで刺さるような光と馬車さえ揺らす程の咆哮が起きる。
(何だろう、やっぱりハクらしく無い)
私は驚きで動けないでいるローサに肩を貸して馬車を出る。
突然現れた小屋ほど大きなハクに対し、兵士達は動揺している。
「な、なんだこいつ……」
「あの毛色と波打つみたいな光り方って、物語で見たあれみたいじゃないか……」
「もう一度名乗ろう。我が名は西の聖獣ハク。お前達の信じる偶像では無く生きる聖女と絆を結んだ者である」
「な……聖女様……だと?」
「アイリス、吾輩に命じよ。此奴らを刈りとれと。なに……瞬きひとつの間に済ませてやろう」
ハクが見下ろしつつ兵士達を睥睨すると、全員が武器を捨てて両手を上げた。
「おい、ふざけるでない。吾輩の怒りは収まって……ニャ! ……アイリス?」
ニコリ
「ハクは少し落ち着いて。いつも優しいハクらしく無いよ」
私はハクに微笑んでから兵士の前に立ち、全員を順番に睨む。
「あ……アイリス……その、落ち着くのである」
「ハクは少し黙ってて。私だって頭に来てるんだから。皆で好き勝手言うし、暴れるしさぁ……」
「姉ちゃん待ったぁ!」
「落ち着いて下さいアイリスさん!」
いつの間にか追いついてきたプロイが私を羽交い締めにする。
何故かローサまで必死に宥めようとして来る。
「……お前達、命は拾いしたな。姉さんが本気になっていたらお前達の首はあの山の彼方まで旅に出ている所だった……姉さんが暴れたら聖獣でも止められはしない……」
「ひ……そんな……。まるで悪魔だ……」
「離しなさいプロイ! あとニュクスも何を言ってるのよ!」
必死で私を止めるプロイとローサ。
震えているハク、ニュクス、兵士達。
呆然と立っているバースさん。
「はなせー!」
混乱を極めた街道に私の叫びが響き渡った。
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