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第13話 朝食を1人分追加で
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聖女マリアンヌの襲来(?)より一晩明けた朝、私はいつも通りの時間に目を覚ます。
(……息苦しいと思ったら)
顔の上で寝ていた毛玉聖獣を寝台に置き部屋を出る。
「あふぅ……少し眠い……昨日は大変だったからな~……」
聖女が邪魔をしてくれたお陰で農作業も食事の用意も全て遅れて、弟達にハクが成長獣である事と私が聖女になった事を伝えるのにも時間がかかってしまった。
お陰で寝不足なのだ……
(聖女になったと言うより……聖女のままだったみたいだけど、流石に前世の話までする訳にはいかないもんね……)
信じられても頭がおかしくなったと思われてもどちらも困るから。
いつものように顔を洗い、朝食の仕度をする。
早朝のこの時間、窓から差す朝日に照らされたこの空間で……鍋の立てる音だけが響く。
朝の澄んだ空気が熱気に温められて生活感のある空気に変わって行く。
この時間が堪らなく好きで……これが当たり前の日々になった幸せだけは忘れずにいようと毎日思う。
「姉ちゃんおはよー。腹減ったぁ」
いつも通りにプロイが起きて来る。
そして顔を洗ってシルバにご飯をあげるために出て行く。
(あ~、幸せだな)
「姉さん、おはようございます。……来客です」
「え?」
いつもより早起きなニュクスが目元を擦りながら窓を指差す。
「おはようございます。良い匂いですね……外まで香ってますよ」
そこには笑顔のエーゲルさんが立っていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「いやあ、美味しいな! 君達が羨ましいよ。こんな可愛いお姉さんの美味しい料理をいつも食べられるなんて」
ニコニコ顔のエーゲルさんが料理を食べている。
予定に無いお客様ではあるけど、あまりに興味津々に料理を眺められるので朝食に招待したのだ。
「良いだろ~? でも姉ちゃんはあげないぞ」
「プロイ、余計な事を言うな。鼻から匙(さじ)を生やしたくなければな」
「2人とも、朝から喧嘩しないでよ?」
弟達のやり取りを見たエーゲルさんは更に笑顔になる。
「いやぁ、頂けるなら頂きたいくらいだけど……」
「頂かれません」
私の言葉にもめげずに笑う。
(中々掴みどころの無い人だなぁ)
「いや、昨日はごめんね。今日は皆に謝りたくて来たんだよ」
「別にエーゲルさんに謝られる事では無いと思いますけど……助けてもらいましたし」
エーゲルさん達の下手な演技で救われたのも事実なので、感謝はしても怒ってはいない。
「そう言って貰えると助かるよ。中々ね、立場上大変なんだよこれでも」
ため息を吐く騎士。
(申し訳無いけど……あまり聞きたく無いなぁ)
心中で苦笑する私を余所に、彼は語り出す。
「聖女の言ってた事も一部の貴族にとっては正しい話でね。緊張が高まっている隣国との有事に備えて聖獣を利用するべきだと主張する者達がいる」
昔は人同士で争う余裕なんて無かった。
魔王と魔王が使役する魔物と戦うのが精一杯で、主義主張が違う人同士……国同士が手を組んで戦っていたのだ。
世界は平和になった。だから人同士が争う事になったのだとしたら……。
あの日々は何だったのだろう。
「それでね……」
言いかけた所で止めた騎士が席を立つ。
「エーゲルさん?」
「押し掛けた私が言うのも何だけど、望まない来客のようだよ」
「出てこい悪魔め! 今度は負けねえ!」
あ~……なんだか聞き覚えのある声だ……。
「お呼びのようだけど……悪魔って?」
プロイは腹を抱えて笑い、ニュクスは目を逸らす。
「え、ええ?」
エーゲルさんは私の顔を見て半笑いだ。
……だっ
「誰が悪魔よ! こらぁ!」
私は勢いよくドアを開けるのだった。
(……息苦しいと思ったら)
顔の上で寝ていた毛玉聖獣を寝台に置き部屋を出る。
「あふぅ……少し眠い……昨日は大変だったからな~……」
聖女が邪魔をしてくれたお陰で農作業も食事の用意も全て遅れて、弟達にハクが成長獣である事と私が聖女になった事を伝えるのにも時間がかかってしまった。
お陰で寝不足なのだ……
(聖女になったと言うより……聖女のままだったみたいだけど、流石に前世の話までする訳にはいかないもんね……)
信じられても頭がおかしくなったと思われてもどちらも困るから。
いつものように顔を洗い、朝食の仕度をする。
早朝のこの時間、窓から差す朝日に照らされたこの空間で……鍋の立てる音だけが響く。
朝の澄んだ空気が熱気に温められて生活感のある空気に変わって行く。
この時間が堪らなく好きで……これが当たり前の日々になった幸せだけは忘れずにいようと毎日思う。
「姉ちゃんおはよー。腹減ったぁ」
いつも通りにプロイが起きて来る。
そして顔を洗ってシルバにご飯をあげるために出て行く。
(あ~、幸せだな)
「姉さん、おはようございます。……来客です」
「え?」
いつもより早起きなニュクスが目元を擦りながら窓を指差す。
「おはようございます。良い匂いですね……外まで香ってますよ」
そこには笑顔のエーゲルさんが立っていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「いやあ、美味しいな! 君達が羨ましいよ。こんな可愛いお姉さんの美味しい料理をいつも食べられるなんて」
ニコニコ顔のエーゲルさんが料理を食べている。
予定に無いお客様ではあるけど、あまりに興味津々に料理を眺められるので朝食に招待したのだ。
「良いだろ~? でも姉ちゃんはあげないぞ」
「プロイ、余計な事を言うな。鼻から匙(さじ)を生やしたくなければな」
「2人とも、朝から喧嘩しないでよ?」
弟達のやり取りを見たエーゲルさんは更に笑顔になる。
「いやぁ、頂けるなら頂きたいくらいだけど……」
「頂かれません」
私の言葉にもめげずに笑う。
(中々掴みどころの無い人だなぁ)
「いや、昨日はごめんね。今日は皆に謝りたくて来たんだよ」
「別にエーゲルさんに謝られる事では無いと思いますけど……助けてもらいましたし」
エーゲルさん達の下手な演技で救われたのも事実なので、感謝はしても怒ってはいない。
「そう言って貰えると助かるよ。中々ね、立場上大変なんだよこれでも」
ため息を吐く騎士。
(申し訳無いけど……あまり聞きたく無いなぁ)
心中で苦笑する私を余所に、彼は語り出す。
「聖女の言ってた事も一部の貴族にとっては正しい話でね。緊張が高まっている隣国との有事に備えて聖獣を利用するべきだと主張する者達がいる」
昔は人同士で争う余裕なんて無かった。
魔王と魔王が使役する魔物と戦うのが精一杯で、主義主張が違う人同士……国同士が手を組んで戦っていたのだ。
世界は平和になった。だから人同士が争う事になったのだとしたら……。
あの日々は何だったのだろう。
「それでね……」
言いかけた所で止めた騎士が席を立つ。
「エーゲルさん?」
「押し掛けた私が言うのも何だけど、望まない来客のようだよ」
「出てこい悪魔め! 今度は負けねえ!」
あ~……なんだか聞き覚えのある声だ……。
「お呼びのようだけど……悪魔って?」
プロイは腹を抱えて笑い、ニュクスは目を逸らす。
「え、ええ?」
エーゲルさんは私の顔を見て半笑いだ。
……だっ
「誰が悪魔よ! こらぁ!」
私は勢いよくドアを開けるのだった。
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