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第11話 契約
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睨み合う私達の間にエーゲルさんが立ち、宥めるように笑う。
「まあまあ、聖女様もお嬢さんも落ち着いて。聖女様は聖獣を探せれば満足、お嬢さんは一方的な物言いをされなければ良い……別に争わなくても良い内容だと思うのですが?」
「ええ、この平民が礼を尽くした謝罪をして聖獣の捜索に協力するのであれば不問にしてあげても構いませんわ」
「……」
謝るのは正直とても嫌だ。
間違った事を言ってるつもりなんて無いから。
それでも貴族や権力者と争う馬鹿馬鹿しさについては考えないといけない。
そんな不毛な事のために、文字通り命懸けで手に入れた生活を脅かされるなんて……。
「まずは平伏して許しを乞うべきでしょう? さっさとなさい」
弟達が近寄って来るのが見える。
それを宥めるためにエーゲルさんがそちらへ向かうのも見えた。
(……意地を張る事じゃ無い)
私が膝を折って謝罪するだけで弟達との生活を守れるのだ。
その為に頭を下げるならいくらでも出来る。
……ハクさえ見捨てられるならだ。
聖女の契約には拘束力がある。
彼女と契約したならハクは人間同士の戦争に駆り出されて武器として扱われるだろう。
『悩む事では無いのである』
頭の中に声が聴こえたと同時に脚にくすぐったいものが触れる。
『ハク!』
『世話をかけたのである』
私の足元から離れ、聖女の元へと歩いて行く。
「人の子よ、吾輩の力を使って何を成す?」
「ああ……聖獣! ようやく会えましたわ……さあ、私と契約を」
「吾輩の問いに答えよ。この力をもって何を成す?」
ハクを見て嬉しそうだったマリアンヌの顔が醜く歪む。
「貴方と共に世界を手に入れるわ。聖獣がいれば隣国どころか世界だって夢じゃ無いでしょう?」
「そんな事……陛下は望んで無いんですけどねぇ」
エーゲルさんの言葉はマリアンヌに届いていないようだった。
「さあ、契約を。我が名は聖女マリアンヌ。貴方の主人になる者よ!」
「……愚かなり。我が力はお前に破滅をもたらすやも知れんな」
聖女の手から光が差し、ハクへと降り注ぐ。
一瞬こちらを振り返ったハクと目が合う。
(仕方ない。ハクは聖獣で……聖女には逆らえない。そして私は自分の生活を守らなければいけない。……だからこれで良い……)
「わけないでしょ……!」
『私の名はアイリス。聖獣ハクと契約を望む者よ。応えなさいハク、あなたはどうしたいの!』
『……お前は馬鹿なのである。吾輩のために苦労などしなくとも』
『十分悩んだわよ……。私は悩んで答えを出したの! 次はハクの番よ!』
『聖獣ハク、アイリスへ我が力を捧げ共に歩むを誓う』
辺り一面を染め上げる白光が溢れ、目を閉じる。
目蓋さえ通すほどの光が収まって目を開けると、小屋ほど大きな獣が居た。
純白の毛並みは水面のように静かな光を放ち、模様のように走る黒い毛並みは波紋のように光る。
「ふふ……ふふふふふふ。やりましたわ……とうとう聖獣を手に入れましたわ!」
聖女マリアンヌの勝ち誇ったような高笑いが辺りに響き渡った。
「まあまあ、聖女様もお嬢さんも落ち着いて。聖女様は聖獣を探せれば満足、お嬢さんは一方的な物言いをされなければ良い……別に争わなくても良い内容だと思うのですが?」
「ええ、この平民が礼を尽くした謝罪をして聖獣の捜索に協力するのであれば不問にしてあげても構いませんわ」
「……」
謝るのは正直とても嫌だ。
間違った事を言ってるつもりなんて無いから。
それでも貴族や権力者と争う馬鹿馬鹿しさについては考えないといけない。
そんな不毛な事のために、文字通り命懸けで手に入れた生活を脅かされるなんて……。
「まずは平伏して許しを乞うべきでしょう? さっさとなさい」
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それを宥めるためにエーゲルさんがそちらへ向かうのも見えた。
(……意地を張る事じゃ無い)
私が膝を折って謝罪するだけで弟達との生活を守れるのだ。
その為に頭を下げるならいくらでも出来る。
……ハクさえ見捨てられるならだ。
聖女の契約には拘束力がある。
彼女と契約したならハクは人間同士の戦争に駆り出されて武器として扱われるだろう。
『悩む事では無いのである』
頭の中に声が聴こえたと同時に脚にくすぐったいものが触れる。
『ハク!』
『世話をかけたのである』
私の足元から離れ、聖女の元へと歩いて行く。
「人の子よ、吾輩の力を使って何を成す?」
「ああ……聖獣! ようやく会えましたわ……さあ、私と契約を」
「吾輩の問いに答えよ。この力をもって何を成す?」
ハクを見て嬉しそうだったマリアンヌの顔が醜く歪む。
「貴方と共に世界を手に入れるわ。聖獣がいれば隣国どころか世界だって夢じゃ無いでしょう?」
「そんな事……陛下は望んで無いんですけどねぇ」
エーゲルさんの言葉はマリアンヌに届いていないようだった。
「さあ、契約を。我が名は聖女マリアンヌ。貴方の主人になる者よ!」
「……愚かなり。我が力はお前に破滅をもたらすやも知れんな」
聖女の手から光が差し、ハクへと降り注ぐ。
一瞬こちらを振り返ったハクと目が合う。
(仕方ない。ハクは聖獣で……聖女には逆らえない。そして私は自分の生活を守らなければいけない。……だからこれで良い……)
「わけないでしょ……!」
『私の名はアイリス。聖獣ハクと契約を望む者よ。応えなさいハク、あなたはどうしたいの!』
『……お前は馬鹿なのである。吾輩のために苦労などしなくとも』
『十分悩んだわよ……。私は悩んで答えを出したの! 次はハクの番よ!』
『聖獣ハク、アイリスへ我が力を捧げ共に歩むを誓う』
辺り一面を染め上げる白光が溢れ、目を閉じる。
目蓋さえ通すほどの光が収まって目を開けると、小屋ほど大きな獣が居た。
純白の毛並みは水面のように静かな光を放ち、模様のように走る黒い毛並みは波紋のように光る。
「ふふ……ふふふふふふ。やりましたわ……とうとう聖獣を手に入れましたわ!」
聖女マリアンヌの勝ち誇ったような高笑いが辺りに響き渡った。
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