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第2章

*衝撃

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突然転移して来た変態教師の所為で、教室中が大パニックだ。
俺はセレストに見せたくなくて、気まずいとか無視して彼女を腕に抱く。他の女子も全員避難完了…よし。


「まあ待て少年達よ。これはな~、新作テレポーターの実験で。どうやら肉体にしか作用しなかったみたいだな…」

当の変態はブツブツと分析してやがる!肉体だけ…だから眼鏡や髪ゴムすらも無えんだな。髪を下ろしてると、一瞬誰か分からんかったわ。


 ずだだだだ、ガラッ!!!

「なんですか今の叫び声はっ!!………何してんだアンタァーーー!!?」

「おおブレイズ先生。聞いてくれ、実は…」

「死ねっっっ!!!」

「ぎゃふっ!!」

騒ぎを聞きつけた別の教師が飛び込んで来て、P・Cに踵落としを喰らわせ沈黙させた。
そしてカーテンを無理矢理引っ張り、変態をぐるぐる巻きにして。魔法で浮かせて運び…

「このクラスのホームルームはカット!1限目に備えとけ!!」

と言い残し…嵐が去って行った…。



なんだったんだ…。新作テレポーターの実験、とか言っていたが。改良でもしたのか?まあいい。

「大丈夫か、セレ…」

「………………」

あ?セレストが小刻みに震えている…俺は彼女を横抱きにして、教室の隅に移動した。
ふっ、昔は出来なかったが今は余裕だ!あれから筋トレを欠かさなかったからな、軽い軽い。


クラスメイトが徐々に混乱から復活する中、俺はセレストを床に下ろして向かい合う。
変なモン見てショックなのかもしれねえ。彼女の肩に手を置き、視線を合わせると…。

「「………………」」

…セレストの眉は下がって、口元は微妙に震えて。怯え…じゃないな。首まで赤く染まって…俺の事を、熱を帯びた視線で見上げて…。
その可愛らしい姿に、無意識に喉をごくりと鳴らしてしまった。



セレストが俺を、弟程度にしか見ていないのは知っていた。俺がどんだけアプローチしても…「一生懸命で可愛い~」と流されるから…。
だが、俺も15歳。王国の法律で成人は18歳だが、結婚は15歳からできるんだ。だからもう、世間的に俺らは大人なんだよ。

それを分かっていないのは彼女だけ。今朝の事もそうだが…これまで散々、無自覚に俺を煽ってやがった。何度押し倒してやろうかと思った事か…。
でもようやく、俺を異性として意識し始めたか?


「……セレスト」

「っ!!」

顔を近付けて…耳元で名前を呼ぶ。セレストは肩を跳ねさせ、俯いてしまった。

「セレスト」

「な…なんですか…っ」

彼女は俺の制服を握り締めている。まるで縋っているようで…。
……落ち着け俺、ここは学校だしまだ朝だ…。ふう、深呼吸。
でも折角なので、彼女の耳にキスをした。すると一歩退がって逃げるので、その分詰める。

すぐ壁にぶつかり、これで逃げ場は無くなった。

「ふあ…!」

「…セレスト。俺達婚約して、大分経つよな?」

「はい…」


じゃあ…キスくらいしても、いいよな?
俺本当、ずっと我慢してるんだけど。健全な男として…好きな子が目の前にいるのに手が出せないの、一種の拷問だぞ?


俺は肩に置く手に力を入れて、ゆっくりと顔を近付けた。
彼女は抵抗せず…2人の唇が触れそうになった、その時。


 ガラー…ン ガラーン…


「「っ!!!」」


校舎全体に鳴り響く鐘の音。驚いた俺達は、弾かれたように距離を取った。

「(ああくそっ!あと少しだったのに…!!)」

「(い、いま私、エルムと…!きゃーーー!!!)」

ここまでか…セレストに背を向けて席に戻る。俺多分…すっげえ変な顔してるから。見られたくない…。


「あー、朝から疲れたな。カーテンレールぶっ壊れてるし…あれ?
エルム、顔赤くね?風邪?」

「…ほっとけクリフ」

余韻に浸っていたのに…ここは人が多くて駄目だな。
しかし担任がアレで、これからの学校生活が不安だが…各々1限目の準備をする。

チラッとセレストの様子を見ると。どうにか女子3人を壁にして隠れようとしている…バレバレだが。
完全に俺を意識している。ついに…この日が…!俺は拳を握り、心の中で涙を流した。





夜が楽しみだな~と浮かれながら、何食わぬ顔で1日を過ごす。初日の授業など、どれも説明で終わった。
そしてP・Cは午後になり戻って来やがった…そのままクビになりゃよかったのに。

「いや先生今ね、消耗品じゃなくて、繰り返し使えるテレポーター作ってんの。でも毎回魔力流す必要あるから、魔法使いしか使用出来ないけど」

ホームルームそっちのけで、朝の言い訳をする。今度は女子4人は最後列で、俺達男連中が前を陣取っている。

「つー訳で、改良の為誰か実験手伝ってくんない?誰とは言わないけど、親切な女子とか」

「「「死ねっ!!!」」」

「君達、先生に死ねはないだろぉ」

俺達はこいつを教師として敬うのはやめた。
そもそもなんでこいつは教師になれたんだ?昨日オースティン殿下に聞いた話じゃ…去年から女子にセクハラ発言を連発しているとか。それだけ実力があんのか…?


「はあ…いいか?今朝のはぶっちゃけ実験の失敗だ。だが…逆に考えるんだ」

「「「?」」」

何言ってんだ?P・Cは教卓に両手を突き、真剣な顔をしてみせる。

「例えばだな。先生の身体の一部…頭だけ、腕だけ、内臓だけ…転移して来たらどうする…?」


 ぞく… 


その光景を想像し、俺達は戦慄した…。
有り得ない話ではない。全裸はまだマシだったのか…!

「その通りだ諸君。だからこそ…君らは先生に感謝すべきだろう?五体満足でいてくれて、トラウマを植え付けないでくれてありがとう…!と」

「く…言えてる…!」

「ああ。全裸だったお陰で、ちょっとパニックになった程度で済んだんだな…」

「一歩間違えたら、朝から凄惨な事件になっていた訳か…!」

俺達はこいつが最悪の未来を回避した、という事実を認めるしかない。P・C先生…ありが…



「いや、論点すり替えられてるよ。先生が公共の場で全裸を晒したのは、紛れもない事実だよ」

「「「………………」」」


教室の後方から…冷静なセレストの声が俺達を正気に戻した。
ふう………よし。


「「「死ねーーーっ!!!」」」

「あちゃー。あとちょっとだったのに~!」

俺達は一斉に、ペンやら教科書やらを教壇に投げつけた。


「(うーん…エルムもすっかりクラスに馴染んでるね。男の子達がぎゃーぎゃー騒いでるの、遠くから見てる分には面白いな~)」





はあ、はあ…。疲れた。
逃げ回ってたはずのP・Cは元気いっぱいなのがムカつく。

「じゃあお知らせな~。この学校、放課後はクラブ活動があんだけど。先生今年からクラブ作ったから、女子は入ってね」

「入らん!!!」

「ブロウランには言ってねーよ。仕方ねえ、セレストのついでに君も許可しよう」

「俺の婚約者を名前で呼ぶな!!」

「いーじゃん。クラブは強制じゃないけど、まあ青春しとけや。学内の掲示板に、どんなクラブがあるか書いてあっから読んどいて」

…青春。セレストとなら…うん。ただしこいつのクラブは却下だ。


「あと朝するつもりだったんだけど。君達の魔力量を調べるから、整列~」

魔力量?それは入学前にやっただろう?
まあ俺の眼には全部見えてるが…1年生トップはセレストだ。次いで俺、その次は…クリフとロロット嬢が同量程度か。

「入学前の検査は、あくまでも魔力を持ってるかどうかだけ。コレで細かい検査すっから」

P・Cは教卓に天秤を置いた。これは…?俺も初めて見る。

「魔力の測定器で、最新のやつ。
台座に宝石埋め込まれてんだろ?ここに触れればいい。えーと、君らから見て左側に、触れた者の魔力が顕れる。この天秤では、5段階で評価している。支柱の上に方に目盛りあるでしょ」

どれどれ。生徒は席を立ち、代わる代わる天秤を観察する。注目を浴びながら、P・Cの説明は続く。

「大体この数字通りに決めるんだけど…左の皿が揺れるだけの場合。目盛りが動かないので評価は1マイナス。0ってのは、本当に魔力無しの人だから。
逆に目盛り振り切って、皿が地に付くレベルまで落ちる事もある。それでも5以上にはならないんだ。だから、もっと正確なのを作製中~。
で、限りなく4に近い3でも、評価は3。基本切り捨て方式ね」

ふうん…精密でなくとも、大体は判別可能か。面白い。


「お手本見せっから、注目~」

そう言ってP・Cは、宝石の部分に人差し指の腹を当てた。
すると…カタン と皿が落ち。目盛りは、3をちょっと超えた辺り。

「はい、先生は平均的です。じゃ、やってみよっか~」



俺達は順番に、魔力を測定していく。結果が出る度に歓声や落胆の声が上がり、P・Cは全て記録していく。やはり俺の予想通り…クリフとロロット嬢は4。それ以外は3以下だ。

そして残すは俺とセレストのみ。では俺から…皿が教卓に付いた。その反応に、クラスメイトから驚きの声が上がる。

「ほほう。ブロウラン、5プラス

振り切ると+が付くのか。セレストはどうなるだろう。

「よーし、やるぞっ!」

ふんす!と無駄に腕まくりをして気合を入れている。可愛い…が。


 ゴズンッ!!


「「「ええぇーーーっ!!?」」」

い、今ゴズンッって言った!天秤からしちゃいけない音だぞオイ!!
天秤の皿が、教卓にめり込む勢いで落ちたのだ。セレスト本人も驚いている。

「ふむ、セレスト5++ね……おっ、丁度時間だ」

教室の興奮冷めやらぬまま、鐘が鳴る。
今日は特に約束も無いし、真っ直ぐ帰るか。P・Cもいなくなったし、皆帰り支度を始めた。


「セレスト、帰るぞ」

「はーい」

それぞれカバンを持ち、クラスメイトに挨拶をして教室を出よう…と…。


「「………?」」


なんか、忘れてるような。
セレストも同じようで、眉間に皺を寄せて首を傾げている。


「セレストちゃーん」

「ん?なあに、オリビア」

呼び止めたのはセレストの友人で、背が低めのメイシー嬢。頬を染めてセレストと俺を見比べる。

「今夜、頑張ってねっ!」

「こんや……………ああっ!!?」

思い出した!!マイクロビキニ…!!!俺もセレストも口を大きく開けて、固まった。


「「………………」」

「…あ、あれ?わたし、余計な事言っちゃったかしら…?」

「帰りましょうオリビアさん!」

「じゃあねセレストっ!!」

呆然とする俺達を尻目に、女子3人は教室を飛び出した。
ちら…と視線を落とすと。セレストが…目を泳がせて汗をかいている。


「ひょえ…!」

とりあえず、帰る!!俺はセレストの手を握ってずんずん歩く。途中「ヒューッ♪」という茶化す声が聞こえるが無視!!


「ん?お熱いですねえ、坊っちゃん」

「やかましい!帰るぞ!」

「「?」」

「あわわ、はわ~!」

朝同様、会話も無く歩く。マイクロビキニ…めっちゃ見たい!!
でも、本気で嫌がっているなら…やめ……いやいやいや!セレストが自分で見せつけてきたんだ、俺は乗っただけ!!



屋敷に着くと、事情を知ってるメイド2人はニヤニヤ。
夕飯時…シャディが俺にすすす…と近寄った。

「坊っちゃん。お嬢様のお部屋には、何時にお見えになりますか~?」

「ぐっ、ぶ…!!…………8時」

「はーい♡」

危ない…俺は口の端から溢れた水を、袖で拭った。
その会話が聞こえていたのか、セレストは硬直している。





そして現在、夜7時半。俺は自室のベッドの上で正座している。

「………………」


 カチ… コチ…


時計の針が…やたらと気になる…。

「……もう1回…風呂入っとこうかな…?」

さっき念入りに、全身洗ったけど。
正直に言って。俺は…期待している。セレストのあられもない姿を見たら、理性を保つ自信が無い。
だが余裕が無い男と思われるのも癪だ。ここはビキニ姿をスマートに褒めて…おやすみ、とキスをして。大人しく部屋を出るべきだな。怖がらせたくないってのもあるし。


俺は15歳になって、閨教育を受けた。大体王族や公爵家の男は、義務的に受けるものだ。
だから未経験という訳ではない、が。

「相手の女性を…セレストだと自分に言い聞かせていた、なんて。誰にも言えるか…」

自己嫌悪やら期待やら、頭がぐるぐるしてきた。が…時間だ…。



なんとなく。廊下をそろ~っと歩き。誰にも見つからないよう…セレストの部屋の前まで来た。
懐中時計を確認…8時だ。深呼吸………覚悟を決め、扉をノックした。

「セレスト。俺だ」

「ちょ…!あ、あの、えっと…!」

中から、バタバタと音がする。数分後…カチッと鍵が開く音がした。

「……入るぞ」

「…………」

返事が無いのは肯定とみなす。扉を開けると…夜行石の明かりで、セレストの姿がよく見える。扉とベッドの中間地点辺りで、気もそぞろに立っているようだ。
彼女はガウンを着ているが…その下は…?俺は喉を鳴らした。

扉を、閉めて。鍵も…

「なっ、なんで鍵閉めるんですかっ!?」

「あ」

何してんだ俺!!慌てて開ける。



「「…………………」」


気まずい。ドラゴン様は…?いない…。
いざという時、俺を止めてくれる人がいない…!くそ…!勢いで行くぞ俺!!!

「……えっと」

「ひゃいっ!!」

セレストに目を向けると、赤面して自分の体を抱き締めている。やめろ、意識させるな!!

「……着てるのか?例のやつ…」

「…………はい。下に…」

「「……………………」」


どうしよう。多分俺は今、彼女に劣らず赤面してる。だって顔があっちいんだよ!!!
……もうどうにでもなれ!!!大股で歩き、超ビビってるセレストの襟を掴んだ!

「きゃあっ!?」

「こうなったらさっさと終わらせるぞ!!早く、脱……」

襟を広げると。白い肌が見えた…それと肩に伸びる紐。紐…。


「…………………」

セレストは観念したのか。目を伏せて…唇を結び。自分でガウンの腰紐を解いた。
俺は直立不動で硬直していたが。視線だけは目まぐるしく活動していた。


静寂の中、心臓と衣擦れの音のみ脳内に響く。
セレストは前を広げて。一瞬の戸惑いの後…まず肩を露わにさせて…。脱衣が進むにつれ、俺の呼吸は荒くなる。


「……あんまり…見ないで。恥ずかしい…です…」

「……………………」


ついに全て脱ぎ。ガウンは彼女の身を離れて、俺が掴んだまま。


華奢な身体だと思っていたのに…着痩せするタイプだったのだろうか。
豊満な胸にくびれ。…肉付きのいい尻…多分大多数の男は大好きです。

そして。大事な部分のみ守る…心許なさすぎる小さな布。ほんの少しズラしたら…ごくり。


「…な、何か言ってください…」

もじ…と身体を捩るセレスト。
両腕を自分の腹部に当てて、恥ずかしげに太腿を擦り合わせる。


あ、ヤバい。頭に血が上ってクラクラしてきた…。
何か、何か言わなきゃ。「ふん、まあまあだな。これに懲りたら、もう男を誘惑なんて馬鹿な真似するなよ。次は…こんな布すら纏っていられないと思え」とか…うん、それがいい。



だが、俺が絞り出した言葉は。


「エッロ…」

「はい?」


だけだった。それと同時に視界がぐにゃりと歪み、後頭部に衝撃が。


 ドスンッ!


「エルムーーー!!?」


 バタバタ…ガチャッ!

「おい!!なんだ今の鈍い音と悲鳴……セレスト様。なんて格好してんだ…?」

「きゃあああああーーーっ!!?やだ見ないでっ、エルムガウン離してー!!!着れない、返してー!!」



俺の意識はそこで途絶えた。








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