23 / 49
2章
カロンの決意
しおりを挟む僕は弱い。けれど…未来を知っているというのは、何よりも大きな武器になる。
エリオット陛下は必ず姉上を迎えに来る。だからこそ、強気に『成人を迎えたら除籍する』という提案をした。その部分に関して、両親は諸手を挙げて喜んだよ。
けどヴィクトルはそんな事を知らないから、子供の短絡的な行いとしか見えないだろうね。
「………嬢ちゃんよ。18歳になったらどうするつもりだ?」
僕の部屋にやって来て、ベッドに並んで座る。彼の優しい心につけ込むのは良心がチクチクするけど、どうにかして味方になってもらいたい。
だからこそ同席してもらい、僕の覚悟を示した。僕らを哀れな子供と思うなら…いつか姉上が窮地に立たされた時、助けて欲しい。
「嬢ちゃんがあの書類によって、今後は公女として何不自由ない暮らしを送れるのは理解したつもりだ。
で…成人後の生活についても考えてんだろ?「それまでに結婚相手か仕事も見つかると思う~」なんて、不確かなモンじゃねえだろうな?(オレ子供に何聞いてんだろ…)」
うーん…どう答えるべきか。「大丈夫、17歳になったらお兄さんが迎えに来るよ!」なんて言えん。ヴィクトルも納得させるには…
「その時は…僕と結婚してもらうつもり」
「…………………ん?」
「あくまで形だけ、ね」
ヴィクトルは目を点にして固まった。
いや、咄嗟に浮かんだにしてはいい案じゃない!?僕が年下だから、1年待ってもらう事になるけど。その間の生活くらい、17歳になった僕ならどうにでも支援出来る。
僕の結婚に関しても、親の同意なんていらないんだからね。何も心配はいらない。
姉上が誰とも結婚せず、やりたい事が見つからないのなら…僕が最後の逃げ場になる。その後好きな人が出来たりしたら、離婚してくれればいいし。
だから僕は、誰とも婚約をしない。姉上の行く末を見守ってから考えるよ。
という事を説明すると。
「……(いや最終手段が公爵夫人て…)もしかして。除籍云々も、結婚の為か?」
「いや…そうそう!!血が繋がっていなくとも、養子縁組された姉弟じゃ結婚できないもんねっ!!」
ありがとう、そのアイデアいただき!!
「…嬢ちゃんがずっと坊主と一緒にいたいと願ったら?」
「え」
「形式だけでなく、本当の夫婦になりたいと言ったら?」
「……………」
それは、あり得ない。だって姉上はアルフィー様と恋をするんだから。皇国に帰った後、皇女として王太子殿下に嫁入りするんだから。でもそれは僕しか知らない未来…
だから、僕の答えは…
「…………いいん、じゃない…かな…?」
姉上が、僕なんかを好きになってくれたなら。僕は大喜びで……なんだろ。胸が、ドキドキしてギチギチ悲鳴を上げている。顔が熱い…風邪かな?
「………?」
「(坊主のこの顔…ははーん?
こいつ…自分の初恋を自覚してねえな~?)」
わっ!?ヴィクトルはその大きな手で、僕の頭を乱暴に撫でた。いたた、首もげる!!てかそのにやけ面、ムカつくなあ!?
「こぉのマセガキがよ~。まあオレもガキん頃は、近所の美人なお姉さんに夢中になったしな~」
「?何言って…」
「逃げ道になるとか、後手に回ってんじゃねえぞ?他の男にかっ攫われたくなきゃ、今のうちにアピールしときな。はははっ!」
???
「なんか勘違いしてない?」
「はは…は?」
手を止め、ポカンと間抜け面をしている。やっぱり…
「あのねえ。僕は姉上に特別な感情はないよ。全く、人をロリコンみたいに言わないでくれる?」
「………ん?」
「子供に邪な想いを抱く訳ないでしょ。もうっ」
「……(あれ?坊主のが年下、だよな?)」
失礼しちゃうなあ!僕の恋愛対象は15歳以上です!!
………だよね?
「………???(なんだろ、心臓に矢が刺さってる気がする。病院行くかな…)」
「(今時のガキ、マジわかんねえ~…)」
僕らは同時に大きく息を吐いた。
その直後。
ばたーーーんっ!!!
「たのもーーーっ!!」
「「!?」」
びっくりした!!カリアが、ノックもせずに扉を開けたのだ。
「こらカリア!ノックしなさい!!」
「う…ごめんなさい…」
シュンとし、一応反省しているようだ。で…用件は?ツカツカと歩いて来て…止まったのは。
ヴィクトルの前?
「?オレに用事か?」
「はい!!…ヴィクトルさま!!」
「「ヴィクトル様!?」」
呆気にとられる僕ら。カリアは意に介さず、その場に両手と膝を突いたと思ったら。声高に言い放った。
「おねがいします!!カリアを…わたくしを!!
あなたの弟子にしてください!!ししょー!!!」
と。
ヴィクトルはひっくり返り、僕はベッドの上から転がり落ちた。
12
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる