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番外編

いつか見た夢

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 シャルティエラ※$歳 イ#%か£繧い

 ******


 瞼を刺激する光。
 鳥の囀り。
 朝特有の空気。
 そして…。


「……ぃ、おい、朝だぞ」

「…あら…?」


 わたしを見下ろす、最愛の人。

「ふあぁ…おはよう、オーバン。貴方が先に起きるなんて、珍しいわね」

「なんだか目が覚めてな。
 …おはよう、イェシカ」

 ゆっくりと起き上がると同時に、寝室の扉がノックされる。


「おはようございます。旦那様、奥様。アイシャですが…お嬢様方がお見えですよ」

「あらあら」

 オーバンが扉を開けると…

「「おはよう、お父さま!!」」

「うおっ!?ははっ、おはよう!」

 6歳になる愛娘。シャルティエラとシャルロットが、オーバンに勢いよく抱き着いた。そして一通り終えると、今度はベッドに駆け寄ってくる。

「おはようお母さま!おねぼうさんだね、わたしもー!」

「あっ、ずるいわお姉さま!わたしもっ!」

「あはは、くすぐったいわ!」

「んじゃ俺も…」

「「お父さまはダメーっ!」」

「…………そか…」

 あらまー。ピシャリ!と断られたオーバンは肩を落とし、唇を尖らせる。
 大丈夫よオーバン。2人共、本当にお父様大好きなんだから。



 ※



 慈善活動の一環として、わたしは毎週孤児院を訪れている。最近は娘達も一緒よ。

「おじょうさま、待ってたよー!」

「おーバジルー。今日もいっぱいあそぼうね!」

「わーい!」

「シャルロットおじょうさま!今日も色々教えてください!」

「ええ、任せなさい。今日のテーマは「将来有望そうな男の見分け方」よ!!!」

「「「おーーーっ!!!」」」

 だ…大丈夫かしら…?ちっちゃい子に囲まれるシャーリィと、大人びた女の子に囲まれるロッティ。まあ、楽しそうだしいいかな?

 子供達は皆、娘達を慕ってくれている。特にあの子は、毎回花冠やらお菓子を娘達に貢ごうと…彼の将来が心配だわ。


「ねえおじょうさま。ぼくおやしきではたらきたい!」

「む?いいね!じゃあ毎日会えるね!」

「うん!」

 ふむ…確かにいいかもしれないわね?オーバンはどう思うかしら。


「いーんじゃねー?バジル、ありゃ将来化けるよ~!」

「バティストさん!まあ、貴方がそう言うなら間違いないわね」

「お褒めに預かり光栄でーす♡んじゃ、もうちょい大っきくなったらオーバンに言ってみよっか~」

「賛成~!」

 彼の見る目は確かだもの。きっと…騒がしすぎる程、賑やかな毎日になるわ。



 ※



 今日はローランお義兄様に誘われて、皇宮までやって来たわ。大人達は中庭でお茶にしながら、談笑していたのだけれど。

「あー?あいつまだ懲りてねえのか…」

 オーバンの視線の先には…
 顔を真っ赤にして大量の汗をかいて、ガーベラの花束を手に持つ紫髪の少年が。


「シャ…シャーリィ!ここ、これを…受け取ってくれないか!?」

「わたしに…?ありがとう、ジスランさま!」

「……!!」

 あらあら、可愛いわね。受け取ったシャーリィは、花束の意味に気付いてなさそうだけど。
 彼はお父様である伯爵について来たのかしら?あら…?もう1人、遠くから走って来るわ。


「待ってくれシャーリィ!あの、これ!」

「パスカルさま。わっ、お花がいっぱい!くれるの?」

 こくこくこく、と一生懸命首を振る青い髪の少年。彼も大臣であるお祖父様と一緒かしら?
 うちの娘ったらモテモテね!まあ全部、ロッティが間に立ってカットしてるのだけど…。

「あんた達ねっ!お姉さまのお相手は、もっとも~っとスペシャルな男じゃないと認めないわー!!」

「「そんなーっ!?」」

「仲いいねえ」


「まだ嫁にゃやらねえぞ…」

「オーバン、親馬鹿とシスコンは程々にしとけよ」

「…うっせ!」

 ふふ。いくつになっても仲良し兄弟ね。
 そうしていたら、皇子様達も遅れてやって来たわ。


「いらっしゃい。叔父上、叔母上」

「おう。お前らもあっちで遊んでやってくれ」

「僕らはこっちにいますね。ルシアン、行ってあげてください」

「はーい!おーい、私もまぜてくれー!」

「ルシアンさまー。何してあそぶ?」

 あの子達は皆、同い年で仲良しさん。大人になるのが楽しみだわ。

「もうすぐルネも来るし、揃ったら女の子4人でお茶会しましょうっと。お母様と叔母さまもいかが?」

「ありがとう、ご一緒させていただきますね」

 そんな約束をしていたら…子供の大きな声が聞こえてきた。何か争ってる?


「おれの父上は世界一つよいんだ、おれはそんな父上よりつよいんだぞっ!スペシャルな男だろ!」

「あらあ~?とてもそうは見えないわね!と言うより、世界一強いのは総団長さまでしょ!」

「ちがう父上だ!!父上~!!そうですよねっ!?」

「え。え?えー…え~?う、うん」

 ご指名を受けた第5騎士団長である伯爵。あら…お義兄様とオーバンが悪い顔してるわ?


「誰か。第1騎士団長~第4騎士団長、及び総団長と総副団長を呼んで来るように」

「陛下ーーーっ!!?」

 伯爵の絶叫もなんのその。あっという間に騎士団長が集まってしまったわ。
 かくかくしかじか オーバンが説明すると…


 全員、ニヤ~…と笑った。

「「「「グラト卿、覚悟ーっ!!!」」」」

「何ィーーーっ!?」

 第1~第4騎士団長が、木剣を手に伯爵に迫る!同様に木剣を構える伯爵は…!

「そ、そおいっ!!!」

「「「「ぐわあああっ!!!」」」」

「すごい、4人相手に勝ってしまったわ!(棒)」

「やるじゃねえか、伯爵!(棒)」

「棒読み夫婦だなー…」

 お気になさらずー。大人も子供も、手に汗握る勝負に夢中になっているわ!


「や、やるわねジスランさまのお父さま…!」

「だろ!?父上、がんばれー!!」

 可愛い息子の応援に、伯爵は親指を立てて応える。
 残りのお相手は…2人!

「ふふふ…私は簡単にやられん!」

 と言った直後、総副団長は地面に沈んでいた。

「やーらーれーたー」

「やったー!」

 ご子息はぴょんぴょん跳ねて大喜び。残るは…総団長、ニコラス・クザン様!!


「…………(総団長はお堅い方だし…どうしよ?)」

「…………(ふむ…ここは…)」

 じりじり…と両者動かず。場に沈黙が落ち、誰もが固唾を飲んで見守っている。


「あー、ちょうちょ。かわいー、待って~!」


 ずるっ。シャーリィの声が、やけに大きく響いた。

「(えーい、なるようになれっ!!)参ります団長っ!!」

 それを合図に、ブラジリエ伯爵が突っ込んだ!さあ、どう出るニコラス卿…!!

「………………!」

 ガン ガッ! ゴスッ! と、暫く打ち合いが続いた。
 しかし最終的に…ニコラス卿が木剣を落とし、膝を突いた!


「ふ…儂の負け…だ」

「お…おおっ!見たかジスラン!父上の勇姿を!(ありがとうございます総団長!)」

「わーい!!やっぱり父上はサイキョーだっ!!」

 うおおおおおっ!!と観衆が沸いた!これで一件落着…


「じゃあ父上、最後におれと勝負だ!おれが勝ったら、シャーリィにプロポーズするんだっ!!」

「「「「おおおおーーーっ!!」」」」

 あらあら。ご子息は頑張って、大きな木剣を構えているわ。


「おうグラト卿……ぜってえ勝てよ…?」

「そうよおじさま…?余裕で勝てるわよねえ…?」

「ええ…期待してますよ…?」

「で…殿下…。シャルロット嬢…パスカル君…」

「いいやグラト卿。貴卿程の人物が…大人気ない真似をすまい…?」

「陛下ぁ…」

 哀れ伯爵、板挟み。どうするのかしら…!?


「見ていてくれシャーリィ!!おれは必ず勝ってみせる!!」くるっ

「あ。シャーリィなら蝶々を追いかけてどっか行っちゃたわよ」

「えーーーーーっ!!!?」

 いや…口出しできる雰囲気じゃなかったから、黙ってたんだけど。
 それに伯爵の次男も一緒に行ってくれたし、大丈夫かなーと思って。

 流れで解散したので、わたしはシャーリィを追ってみようっと。


「最後は拍子抜けだったな、つまらん。
 そうだオーバン。今日は箏の国王と、御子が3人程お見えになるから。お前も皇弟として公爵として挨拶しろよ」

「ぶっ!!?聞いてねえぞコラァ!!」

「今言った」

「先に言えっ、馬鹿兄貴!!」

「サプラ~イズ」

「準備は万端だけれど、そろそろお見えになる時間ね。行きましょうか」

「義姉さんまで!あーもう、仕方ねえ…!」

 ?なんか後ろから騒がしい声がするわね。まあいいか。




「ちょうちょ~。あれ、どっか行っちゃった」

「こらシャルティエラ。あまり遠くに行くなよ」

「はーい、ジェイルさま」


 いた。2人で手を繋いで歩いてるわ。
 彼らは中庭を突っ切って、開けた場所に出た。そこに…

「あれ、シャルティエラ?とジスランの兄ちゃん」

「エリゼさま!ルネちゃんも!」

「お久しぶりですわ、エラちゃん。わたくしたち、遅れてしまいましたか?」

 彼は魔術師総団長のお孫さんね。子供達の中で1番のしっかり者さん、そして苦労人。
 公爵家の可愛らしいお嬢様と一緒に、こちらに合流しようとしていたらしい。

「え、今日集まんの?オレ何も聞いてないんだけど」

「ボクも知らん。いつも通りおじいさまについて来ただけ」

「?他国の王族がいらっしゃるって聞きましたわ。それで年の近い王子さまと王女さまがいるから、と遊び相手に呼ばれたのでしょう?」

「「何それ!?」」

「あ、ちょうちょいた!」

 え、わたしも初耳なんだけど!?急いで戻らなきゃ…ってまたシャーリィがいない!





『…兄上ー、ここどこ?』

『…迷ったかな?』

『えー!どーするのよー!?』

『大丈夫だって少那、木華。人の声がするほうを目指せば…ん?』

『あ。兄上の肩にちょうが止まったね』

『はじめて見るしゅるいね』

『…待った、誰か来る』



「ちょうちょー!どこ…あれぇ?だあれ?」

『わ…か、可愛い子だよ兄上!?どどどうしよう…!』

『スクナ兄上、おちついて。……ミコト兄上?』

「……………」

『……………』



「……わたし、シャルティエラ。あなたは?」

「…?しゃ、る?」

「あっ。んとね…シャーリィ。わたし、シャーリィ!」

「…シャーリィ?……ミコト。ミ コ ト」

「ミコト、さま?うん、ミコトさま!ね、一緒にあそぼう!」

「わわっ!」



 あ。シャーリィが…誰か、異国の男の子と手を繋ぎ、頬を染めて笑っている。
 もしかして、彼は──…












「…カ。イェシカ。朝だぞ、イェシカ」

「ん…?」

 ゆっくりと瞼を開ければ…最愛の人がわたしを心配そうに見つめていた。もう朝か…。

 なんだか…夢を、見ていた気がする。


「夢?どんな?」

 オーバンがコーヒーを淹れてくれて、お揃いのマグカップで飲んだ。


「ん~…よく覚えてないわ。でも…きっと、幸せな夢だったの」

「……そっか」


 ええ、そうよ。でも…。



「……いつか。正夢になる気がするの」


 その時わたしは、そこにいないのだろうけど…。



 ねえ、会った事のない貴女。

 …どうか、オーバンをお願いね。





 *****





「お父様ー、これ本当に僕達も触っていいの…?」

「ああ、いいよ。遺品整理…手伝わせて悪いな」

「何言ってるのさ、家族でしょ!」

「ええ。お母様の事を知れて嬉しいわ」

「…ありがとな。服とか小物とか、気に入ったのあったら持っていきな」

「「はーい」」

「……あれ」

「どうしたの、お姉様?」

「んーん。ただ、このリボン…」

「え?あら、刺繍入り?しかも…『C・R』私達のイニシャルだわ」

「偶然だね。それにこっちのハンカチにも同じ刺繍がされてる」

「リボンは2本、ハンカチは1枚。どういう事かしら…?」

「…………………」

「お姉様?」

「……リボンは僕らで貰おっか。ハンカチは…一応僕が預かっておくね」

「?ええ…分かったわ」


「おーい、今日はこの辺にして帰るぞ」

「あっ、はーいお父様!行きましょう、お姉様」

「うん。


 …………ありがとう。イェシカお母様。
 お父様は…僕達に任せてね!」




 ******

 決して叶わない、夢のおはなし


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みんなの感想(4件)

2023.05.30 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
辰砂
2022.12.23 辰砂

見つけて最新話まで一気読みしました♡

とても面白くて切なくて、涙が……

素敵なお話をありがとうございます♡

これからも読ませていただきます♡

解除
猫屋敷
2021.10.04 猫屋敷
ネタバレ含む
解除
1 / 5

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