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学園4年生編
その頃の男達
しおりを挟む少那視点
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『男子チームも猥談とかしてるのかな』
『エラちゃんやめなさい!!』
「「「………………」」」
開けられた窓から…女性陣の会話が聞こえてくる。
こっちも自然と男性陣で集まっていて、お風呂上がりは暑いね~なんて窓を開けた瞬間だった。
「……窓、閉めようか」
私はその手で、すぐに閉めようとしたのだが…。
「いやほら、暑いのを我慢するのは体によくありませんよ?」
と、満面の笑みのパスカル殿に止められた。
そのまま彼は、身を乗り出して完全に聞く体勢。私はルシアンと顔を見合わせ、なんだか笑ってしまった。
だが…シャーリィは「わたしの話は今更でしょう」とシャルロットさんに話を振る。
パスカル殿は頬を膨らませて不機嫌顔、名前を出されたジスラン殿は頬を染めた。
そこで…学園を卒業するまで手を出さないと宣言されたが、たまに怪しい時がある…とか。
嫉妬で口付けをしてしまったり、大きな手で触れられるとドキドキするとか言われてた。
「ロッティ…もう、勘弁してくれ…」
ジスラン殿は大きな体を縮こまらせて、部屋の隅で羞恥に悶えている。が、シャルロットさんは止まらない。
ある日突然ムカデが降ってきて、3階から窓を破り飛び降りて逃げたとか。(咫岐兄上が深く頷いていた)
近くに誰もいないと思い、野良猫に対して「にゃー。にゃー?にゃにゃー、にゃん」と話し掛けていたらしいとか。(ジェルマン卿が普通に聞いてしまったみたい)
暴露されている間何度も「可愛い」という単語が出てきており、ジスラン殿は真っ赤な顔を膝に埋めた。
次にルネさん。ふむ…私はオスワルド殿とは、まだ2回しか会っていない。
確か彼は、ルネさんがいない所では…すっごい惚気てたっけ。
年上の彼氏、という流れから。木華とルキウス殿に話題が移行。これには私も、パスカル殿と並んで身を乗り出した。
え、何。口付けしたいって言っちゃったの?あら…我が妹ながら、なんて大胆な。
命兄上と咫岐兄上も、慈愛の目をして気まずそうに微笑んでいる。
『最後まではしてないわよ!?シャーリィと違って!!!』
「「「………………」」」
部屋中の視線が、パスカル殿に集まる。
「………最後まで、したの…?」
「…………………合意の上です………」
パスカル殿はやや赤い顔を逸らした。
そっか…というか。女性陣は、意外と…その。そういう話を…するんだね?
「いや…なんか俺の態度が分かりやすかったらしくて。
全員、察したようで…」
「ああ、分かりやすかったぞ。妙にスッキリした表情というか。
隠しきれない喜びと余裕が、全身から溢れてたな」
ルシアンのその言い方、なんか卑猥だな…。
わ、私は当然、女性経験なんて無いけど。そっか、パスカル殿は…そっか。
「ど…どうだった…?」
「…………よかった、です」
ごくり…具体的に、聞きたいような怖いような。
どうしても想像してしまう…。ベッドの上で、2人が…!
「そうなんだ…。あの、シャーリィの反応は…」
「すみません後にしてください!友人の色事想像したくないんで!!!」
ありゃ、エリゼ殿に怒られちゃった。
命兄上もすっごい顔を顰めているので、ここでやめておこう…。
上でもきゃーきゃー大騒ぎしている所為か、こっちの声は届いてなさそうだった。
木華は布団にでも丸まってるのか、あれ以上何も聞けなかった。
まあ、私も妹の恋愛事情に首を突っ込むのはやめておこう。
ただシャーリィの声で、「やるやんルキウス様ぁ~っ!!フゥーーーッ!!!⤴︎」とか響いてる。
ルキウス殿…妹に何をしたんですか?
私が部屋に引っ込んだ頃、ペトロニーユさんに話が振られた。
へえ、好きな人がいるのかな?4人が問い詰める様子が伝わってくる。
すると、ルシアンが窓の外に身を乗り出した?
「どうしたんですか殿下」
「別に…彼女は私の秘書だ。誰か想う相手がいるなら、上司として把握しておく必要があるだろう」
ああ…結婚とかなったら、秘書を辞めるかもしれないしね。
と、私が1人納得していたら…パスカル殿が、すっごくニヤニヤしてる?
命兄上と、バジルも同じ顔。え…何?
しかし、いい加減彼女達が可哀想になってきたぞ。まあ私達が窓を閉めればいいだけなんだが、ね。
通信機を取り出し、『シャルティエラ』にコールする。
ピピピピピピ…
『『『『だあああーーーーーっっっ!!!!』』』』
ふふっ。思わず笑ってしまう。
それで、話聞こえてるよ~と教える。数秒後…。
「「あっ」」
ん?身を乗り出していた2人が、慌てて引っ込んで左右から窓を閉めた。
「まずい、シャーリィに見られた」
「呆然としてて可愛かった…」
あちゃ…。更に数秒後…上から複数の絶叫が聞こえてきた。
何を言ってるかは分からないけど、声からしてシャルロットさん、ルネさん、木華だ。同時に、大きな足音が…。
またまた数秒後。
ドンドンドン!!!
「ちょっとおお!!全員いるの!?誰にも言わないでよっ!!?きーてんのーーー!!?」
「ど、どうしたんすか?シャルティエラ嬢?」
来ちゃったか。パスカル殿が足取り軽く、扉を開ける。
そこには…汗をかいたシャーリィと、びっくり顔のハーヴェイ卿がいる。
で…彼女は部屋の中を覗き込み、「全員揃ってるじゃねーか!!!」と叫び。
パスカル殿と言葉を交わし。腕を掴まれて…隣の、パスカル殿とエリゼ殿の部屋に連れて行かれて?
「ちょ、ちょちょちょ、パスカル?」
「……折角の恋バナなのに…俺の話題が無いなんて。じゃあ…沢山話題を提供しなきゃな」
「いや、ちが…ぎゃーーーっ!!!ば…っ!……う、んむぅ…!」
「……はぁ…可愛い、シャーリィ、シャーリィ…」
……部屋の外で、ハーヴェイ卿と一緒に聞き耳を立てていたんだけど。
シャーリィは絶叫した後…くぐもった声を出した。
そしてパスカル殿の、切なそうな声…。
…私達はそっと離れた。
たっぷり10分後。フラフラのシャーリィが出て来た。
後ろを歩くパスカル殿は、対照的に元気そう…というか、肌がツヤツヤしてる。ナニしてたんだろう…?ごくり。
彼女が上に戻り、私達も解散しようか?という流れに。
「ところで提案なんだが、部屋の交換をしませんか?
俺とシャーリィ、ジスランとロッティ。それ以外は適当で」
「断る!!!」
ジスラン殿はそう言って、部屋を出て行った。
「お前オレも泊まる部屋で何してたんだよっ!?」
「ええ~?別に、キス以上はしてないぞ?あとちょっと触っただけで…」
「ふざけんなお前っ!!バジル、オレと部屋交換してくれ!!」
「はあ…構いませんが…」
エリゼ殿はブチ切れながら枕を投げた。それ私の!
それから少しずつ解散し、部屋には私とルシアンのみ残る。
「もう寝るか…ん?」
ん?カーテンを閉めようとしたルシアンが、その手を止めて声を上げた。
なになに?外に何か…と、私も窓に近付くと。
「「………………………」」
そこには…無言で庭を歩く、ジェルマン卿と薪名姉上の姿が…?ちなみにここは2階だよ。
「何してるのかな?」
「……まさか?そっか、そういう事か…」
え、何?なんで納得してるの?
「少那。大丈夫、彼は影は薄いけど…それ以外は文句の付け所がまるで無い人物だ」
「あ、うん…」
それは、なんとなく分かるけど。
もう一度、窓の外に目を向ける。彼らは…暗闇でも分かる程、真っ赤な顔で…え?
「ま…まさか?」
「さ、寝るぞ」
えーーー!?そ、そっか。姉上…そっかあ!
2人はウロウロ同じ場所を歩く。互いを気にしつつ、会話は無く。
姉上は…何度も手を伸ばして、高速で引っ込める。腕を組みたいんだね!
うーん微笑ましい。彼らがうまくいきますように…と心の中で祈りながら。カーテンを閉め……
「ああもう、何してるんだ薪名は!!」
「もう少し、あと一押し…!」
ぶっ!!! 噴き出しそうになったのを、咄嗟に両手で口元を押さえる。
彼らの後方に…咫岐兄上と命兄上が!!コソコソと追っている…!私もっ!
「まーぜーてっ!!」小声
「「少那!」」
えへへ~、間に割り込んでみた。
兄上達は呆れながらも、私を追い返す事はしなかった。
「ねえねえ、あの2人いつから?」
「おれ達もさっき知った。けど…フェイテとバジルは気付いてたんだなあ…」
「まあ…ジェルマン卿だったら。きっと…大丈夫だ」
おお…咫岐兄上すらもこの発言。普段はそっけないけど、実は誰よりも薪名姉上を大事に思っているんだ。
「「…………あの、あっ、どうぞ!……あ」」
肝心の2人だけど。全然会話が弾まないなあ。
じれったい!けど…楽しい。
「……くしゅんっ!」
「あ!寒かったですよね、中に入りましょう」
「す、すみません。あ…」
今は3月で、まだまだ寒い。ジェルマン卿は姉上に上着を掛けて、反射だろうが手を繋いだ。
「「………………」」
繋いだまま…さっきよりも身を寄せて歩き出し。
ゆっくり、ゆっくり時間を掛けて歩き。
姉上の部屋の前で…別れて。
「……マキナさん」
「…はい…」
「明日、帰る前に、ちょっと。ふ…2人で──…」
私達はそこまで聞いて、そっと離脱した。
なんかいいなあ、こういうの。3人で、誰からともなく笑った。
…シャーリィ。彼女と結婚したかった、っていうのは本気。結ばれなくても、彼女を愛しく思う気持ちは変わらない。
いつか…私の隣にも、誰かが立っていてくれるかな?
そんな事を考えて、空を見上げる。
ああ…今日は。月がとっても、綺麗だなあ。
応援ありがとうございます!
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