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学園4年生編

レッツ・ガールズトーク!

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 終業式の翌日、わたし達は首都から程近い温泉宿に来ていた。

「「わあ…!」」

 着替えた少那と木華は、グランツの温泉に感嘆の声を上げた。咫岐と薪名も感心したように眺めているぞ。やっぱ向こうは…露天風呂が主流なのかなあ?それか銭湯みたいなのとか。
 今回はお父様から「若者だけで楽しんで来い」という事で、最年長がデニス(28)というチームで遊びに来た。

「ペレちゃん。今だけは…全部忘れて楽しもう!帰ったら忙しいんだから!」

「は、はいっ!」

 休む事なんて許されない、自分は働き続けるべきだ。と考えているペレちゃんも連れて来た。少しでも…笑顔になって欲しいから。

「ジェイル、サウナ対決しないの?」

「流石に…今回は皇族もいらっしゃいますし。丸腰だけど、きちんと仕事はしますよ」

 前回、3人揃ってぶっ倒れたのを気にしているようだった。ところでお父様も元皇族じゃ…まあいいか。
 夏に行った温泉よりも小さいけれど楽しそう!皆それぞれ自由に回っているが、どの温泉から入ろっかな~と考えていたら…


「シャーリィ、あの泡風呂入ろう!」

「わっ、少那!」

「殿下ー!!女性に無闇に抱き付いてはいけません!!」

 少那がわたしの腕を掴み、泡風呂へ向かう。咫岐がぷんすこ注意しているが…眼鏡を外さないもんで曇ってらあ。相当目が悪いらしく、曇っていても掛けていたほうがいいんですって。難儀ねえ。
 少し近い…と思っていたら、パスカルがわたしと少那の間に入った。

「殿下。互いに薄着の状態で、この距離は見過ごせません」

 はうあっ!!大事にされてるぅ…キュンキュンしちゃううう!!そしてしっかりとパスカルの筋肉を目に焼き付けておかねば。ナイスカット!!

「ん?俺の身体なんて…ベッドの上でいつでも見せてあげるよ?」

「…!そそそそーいう事言うんじゃねーーー!!!」

「はははっ」
 
 パスカルが耳元でエロ発言をし、わたしは真っ赤になって殴り掛かった。全くのノーダメ…悔しい!逞しい!!好きい!!!


「……咫岐、私も彼女欲しくなってきた…」

「………私もですよ」

「一緒に婚活しよっか…」

「………旅先で?」

「(………俺も恋人欲しくなってきた…)」

 遠い目をする少那、咫岐、師匠。彼らは放っておいて…仲良く泡風呂を楽しむのでした。



 ※※※



 夜。若い人がいっぱいで、なんとなく修学旅行味を感じるわたし。では夜する事と言えば、当然枕投げ!
 ではありません。ベッドだし、皆気品溢れる貴族ですから。

 そう、もう1つの定番。そ・れ・は…!

「恋バナ!!するよー!」

「「きゃーーーっ!!」」

 ノってくれたのはロッティとルネちゃん!女子は2人部屋で、わたし&ペレちゃん。ロッティ&ルネちゃん。木華&薪名である。夕飯後もう一度お風呂に入って、今は木華達の部屋に集まっている。

「でもこのメンバー…今更感無いかしら?皆バレバレよ」

「まあ…ね。男子チームも猥談とかしてるのかな」

「エラちゃんやめなさい!!」

「はあい」

 今は皆わたしをシャーリィと呼ぶが、ルネちゃんはエラちゃんと呼ぶ。最初シャリちゃんになりそうだったので…やめてもらった。寿司になった気分だから。
 とにかく!皆ベッドやソファーに腰掛け飲み物とお菓子の準備もおっけい!さあ語りましょうか!

「ま、わたしの話は今更でしょう。ロッティは最近ジスランどうなの?」

「どうって…べ、別に…」

「「ほう……?」」

 こいつぁ洗いざらい吐いてもらうしかねえなあ。今ほどカツ丼が欲しいと思ったことはない。
 わたし達の圧に負けたのか、ロッティは頬を染めて口を尖らせてから話し始めた。


「……ジスランは卒業するまで手を出さないって言ってるもん。でもたまに…ちょっと雰囲気が…って時もあるわ。彼は「頭を冷やして来る」って、滝に打たれに行くのだけれど」

「「ほお…!」」

 つい前のめりになってしまう。それでそれで!?

「他は…ジスランって嫉妬とかしなそうだな~って思ってたのよ。でもこの間私がクラスメイトの男子と少し話してたら…横からやって来て「距離が近いんじゃないか?」って相手を睨んだの。
 完全に勘違いだけど…きゅんとしたわ…!(※相手は天使同盟メンバー)そ、その後キス…とか、したし…。
 あと、やっぱり逞しいって言うか…彼の大きな手とか、ドキドキしちゃうわ」

 ほほう…!ジスランの事を語るロッティは超可愛い。
 最近ジスランって、可愛いんじゃないかって気付いたとか色々惚気てもらったぞ。


「も、もう!これくらいで良いでしょう!?次、ルネ!!」

「わ、わたくしですかっ!」

「そうよ!お相手は大人の男性だし…さぞかし進んだ仲なのでしょうねえ…?」

 次のターゲットに狙いを定める。さて、その辺どうなのルネちゃ~ん?

「えっと…実は…キスもまだですの…」

「「ずこーーーっ!!」」

 思わず姉妹でスライディングしてしまった。これには他のメンバーも身を乗り出す。

「なんで!?あの人ルネちゃんにベタ惚れじゃん!」

「べ…!そ、それは置いといて。多分大人すぎて…未成年の私に手を出しづらいんだと思いますわ。
 いつもお優しくて紳士で…た、たまに…私に魅力が無いのかしら…?って思っちゃいますの」

「いやいやいや、可愛いよ!」

「そうね、ルネさんはとっても魅力的だと思うわよ?」

「姫様はどうなんですの!?ルキウス様も大人じゃありませんか!」

「ここで私に振るの!?私は……ノーコメント…」

 逃がさん!!!ルネちゃんの次にたっぷり語ってもらいます。

「ですからぁ…!オスワルド様が奥手過ぎるんです!手を繋いでアンティークショップとか、お買い物で精一杯ですわ。
 たまにいい雰囲気になっても、すぐ顔を赤くして逸らしてしまうし!だけど聞いた話では、お友達には「ルネさんが可愛い」「超幸せ」とか惚気ているらしくて。なんで本人に言ってくれないのかしら…!?
 でもこっちから要求するなんて、出来ませんわ…」

「あら、姫様はルキウス殿下に「口付けしたいです」って要求したらしいですよ?」

「薪名あぁーーーっっ!!!」

「「「詳しく!!!」」」

 3人で団子になって木華に詰め寄った。彼女は薪名の胸倉を掴んでいるが、当の本人は無表情でダブルピースをしている。


「く…!言っておくけど、最後まではしてないわよ!?シャーリィと違って!!!」

「わたしを出さないで!!それより、手前までは行ったって事!?」

 興奮気味に問い詰めると、木華は真っ赤になって寝転がった。


「…だってぇ…ルネさんと同じよ。すごく大事にしてくれるけど…物足りないって言うか。それにアタックしたのも私からだし…本当に彼は、愛してくれているのかしら…?って不安になって。
 はしたないとは思ったけど…私も16歳よ?箏では15歳で成人で、結婚だってしてる歳だもの。だから…」

「「「だから!?」」」

「………勇気を振り絞って、2人きりの時に…「ルキウス様が欲しいです」って…言った…」

「「「きゃあああ~~~っっっ!!!!」」」

 テンション最高潮のわたし達は、両手で頬を押さえて叫んだ。やるねえ、木華!!

「で…ルキウス様は一瞬目をまん丸に見開いて…微笑んでくださったの。そして私を膝に乗せて…じょ、情熱的なキスを沢山してくれたわ…」

 あかん、あかん!!!わたしは枕をボスボス叩き、ロッティは床で転げ回り、ルネちゃんはシーツを雑巾のように絞ってそれぞれ悶えている。ちなみにペレちゃんは言葉を発していないが、真っ赤な顔で全部聞いているぞ。
 その後は!!?布団に潜る木華の周囲に集まり耳を澄ませる。

「……ごにょ、ごにゅ…ごにゃら………で。最後に蕩ける表情で「これ以上は…籍を入れてからな?」って…優しく頭を撫でて…くださっ、て…」

 くぅぅあ~~~!!ルキウス様、ひいやあ~!!!


 ふう…落ち着けわたし。淑女としてはしたなくてよ、うふ。
 何よりペレちゃんが大変だ、恋愛耐性の無い彼女は話だけで茹で上がっている。

「こほん…ペレちゃんはどう?」

「へっ!!?私ですか!?えと…ご存知の通り、今まで恋愛なんて余裕なくて…」

「これからいっぱい時間はありますわよ?」

「そうよ。好き…とまでは行かなくても、気になる男性とかいないの?」

 ロッティの質問に、ペレちゃんは顎に手を当てて考える。


「…………………」

 ん…?彼女は目を伏せて…皆に背を向けた。その反応は………!


「いるんだね!!?誰誰!!!?」

「グランツの人、セフテンスの人!!?」

「年上!?年下!!?」

「何してる人!!?」

 薪名以外の4人で幼気な少女に迫る。あらいやだ、わたくし達も少女でしてよ?と、大騒ぎしていたら…


 ピピピピピピ…


「「「「だあああーーーーーっっっ!!!!」」」」


 突然機械音が響き、わたし達は飛び上がった。何処から…ってわたしの通信機!!!画面を見ると『スクナ』と表示されている。なんじゃあ一体!!!


「キャッチ!なんじゃい今いい所なんだけど!!」

『うん、ごめんね。でも……あの。会話…丸聞こえだから…やめたほうが、良いよって…言いたくて…ね?』

「「「「は………?」」」」

『流石に小声の部分は聞こえないけど…通常の声量だと聞こえてるよ。ジスラン殿とか部屋の隅で膝抱えてるし。
 あの…お風呂上りで暑いのは分かるけど、窓閉めたほうがいいよ。それと私達は猥談してないから。それだけ、エンド』


 ブツっと通話が切れる。窓……?全員の視線がそっちに向かう。そういや…男子は下の部屋に集まってんだっけ?
 わたしがフラフラと窓辺に向かい、下を覗き込むと……


「「あっ」」

 
 パスカルとルシアンが…身を乗り出していた。わたしと目が合うと急いで引っ込み、窓をバタン!と閉め…………え?


 6人共頭の整理が追いつかず、その場に固まった。……とにかく、窓閉めよ。カーテンもシャッとね、ふう。
 とりあえず全員ベッドの上に正座して……3人が勢いよく頭を抱えた。



「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーーっ!!!明日、ジスランとどんな顔を合わせればいいのよお!!!?」

「オスワルド様がいなくてよかった…!!でも恥ずかしいですわ~~~!!!」

「私なんて、全部喋っちゃったのよおおお!!!?」

「大丈夫ですよ、姫様。貴女は小声でしたから、聞こえてませんて」

「そりゃ薪名は余裕でしょうねえええ!!!!」

「(な、名前出さなくてよかったぁ~…!)」


 それぞれリアクションを取る中、わたしは部屋を飛び出していた。

「ぶっ!!!」

「あれ、ジェイル!?そっか扉の前にいたんか!!」

 思いっきり扉で彼を吹っ飛ばしてしまった。悪いけど無視してその場を後にする。男子が集まっているであろう真下の部屋、ルシアンと少那の部屋をドンドンドン!!!とノックした。
 扉の前にいたハーヴェイ卿はびっくり顔。彼には聞かれていないな、よし!


「ちょっとおお!!全員いるの!?誰にも言わないでよっ!!?きーてんのーーー!!?」

 ガチャリと開けたのはパスカル。爽やかな笑顔で「口外しないと全員誓うよ」と言う。いや君あの姿見られた後に、よくそんな顔出来るね!!?
 部屋を覗き込むと…少那と咫岐、バジルが困り顔をしている。ルシアンは笑顔で、グラスは遠い目でエリゼは憐れみの目をしているし、ジスランは本当に膝抱えてらあ。
 この時間、デニスと師匠は他の騎士と外で警備してるはずだから…全員揃ってるじゃねーか!!!

「酷いじゃないか、シャーリィ。どうして俺の話をしてくれないんだ?」

「どうしてって…!そりゃ…」

 普段から惚気まくってるからだよ。とは言えない…!パスカルは笑顔でわたしの腕を取って…部屋に連れ込み………ぎゃああーーーっ!!!




 ※※※




「た…ただ、いま…」

「お帰りお姉様。どうしたの…?」

「やっと、解放された…」

 熱~いキッスはされたが。それより皆、なんとか冷静さを取り戻したみたいね、よかった。メンズに口止めもして来たし、そろそろお開きにするかー?


「あ、そうだ。薪名は?好きな人とかいないの?」

 扉を開けながら何気なく聞いてみたら…彼女は大きく肩を跳ねさせた。……ん?

「ああ、いるわよー」

「姫様あぁーーー!!!」

 おお、今度は薪名が木華の口を手で塞いだ。真顔のままだが、大量の汗をかいて…それでは皆様ご一緒に。


「「「誰(ですの)っ!!!?」」」

「ひえ…!」

 その場を離れて、シュバっと距離を詰めた。薪名は頬を染めて目を泳がせる。このままじゃ気になって眠れないよう!!どうしても言いたくないなら無理強いはしないけど!!!
 まごつく薪名を見て、木華が優しく微笑んだ。

「本当に彼が好きなら、言ったほうがいいわよ?もし国を離れている間に…あの方が結婚でもしたらどうするの?貴女、何もしなかった事を後悔するんじゃない?」

「姫様……」


 ああ…この国の人なのか。確かにそれは嫌だよね…待っていてくれますか?って、言っておきたいよね。
 任せて、超協力するから!!!薪名は良い子だって、わたし知ってるから!!

 基本無表情だけど、本当はノリが良くて仕事もきっちりこなすし。何よりも木華をすごく大事にしている。そんな彼女が好きになった人…気になる!!


「もうね、アタックが弱すぎるのよ。お相手は全然気付いていないわ」

「姫様…さっきの仕返しですか?」

「うふふ~?」

 へえ…薪名は注目されている事に圧されながらも……ゆっくりと、口を開いた。



「……その。…………ジェルマン卿…です…」

「「「「え」」」」


 木華以外、呆けた声を出してしまった。ま、まさかの?薪名は俯いて頭から煙を上げながら教えてくれた………マジ?ていうか…ちょっと待って。


「あ、あの…ちょ」

「ど、何処に惹かれたの!?」

 わたしの言葉を遮り、ロッティが興奮気味に訊ねる。

「えっと…最初は、いつもシャーリィ様達に振り回されているところ…です。呆れながらも楽しげで…優しそうな人だなあ…と」


「ま、待って」

「他にはありますの!?」

 落ち着いてルネちゃん。誰かわたしの話聞いて!!

「色々ありますけど…やはり剣を振るう姿は雄々しく魅力的です。とっても気さくだし、笑顔を見せてくれると…胸が弾むのです。
 以前私は…姫様達を学園まで送った帰りに子犬を拾ったのです。困っていたら偶然ジェルマン卿が通り掛かり…嫌がる素振りも見せずに一緒に里親を探してくれました。
 好き…と自覚したのは、その時かもしれません…」


 それは知らなかった…!詳しく聞けば、咫岐はまだ少那に1日中くっ付いていた頃。デニスはタウンハウスに戻り、ジェイルは皇宮で訓練をしようとしていた日らしい。
 薪名は両手で口元を押さえて、まるで恋する乙女。可愛い…じゃ、なくて。

 きゃーきゃー盛り上がるロッティとルネちゃん。ペレちゃんも目を輝かせているが…


「ごめん、一旦待って!!聞いて!!」

「え…。シャーリィ、まさか。ジェルマン卿って…お相手が、いる…とか…?」

 木華の発言に、薪名が顔を青くさせた。違う、あの男に限ってそれは無い!!!そうじゃなくて…!!


「あの…そのう。本当にごめんね…これは事故だから…」

 皆首を傾げている。わたしはそっと……扉を指差した。そこには………



「………………………」


 扉の向こう…ジェイルが立っているのだ。ごめん、さっきわたしが薄く開けてそのままなのよ…


「………………へ?」


 そっと廊下を覗き込むと…後ろ姿しか見えないが、ジェイルが耳から首まで赤く染めている。こりゃ…


「…薪名、ごめん。本人に、全部聞かれてる………」

「…………………………」


 薪名は口を金魚のようにパクパクさせて立ち尽くす。わたし達は全員……頷き合って部屋を出た。

「ま、待ってください!?姫様ーーー!!?」

「………頑張って!」


 狼狽える薪名だけ残して、木華も一旦外に出る。で、わたしは石のように動かないジェイルの背中を押して部屋に入れ…


「「……………………」」


 茹でダコ2人のお見合いがスタートした。未婚の男女ですから、扉はちゃんと開けておりますよ。
 

 わたし達はその場を離れたので、彼らがどんな会話をしたのか知らない。
 ん、上手くいったのかって?…ふっふーそれはまた後日、ね!!

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