192 / 224
学園4年生編
レッツ・ガールズトーク!
しおりを挟む終業式の翌日、わたし達は首都から程近い温泉宿に来ていた。
「「わあ…!」」
着替えた少那と木華は、グランツの温泉に感嘆の声を上げた。咫岐と薪名も感心したように眺めているぞ。やっぱ向こうは…露天風呂が主流なのかなあ?それか銭湯みたいなのとか。
今回はお父様から「若者だけで楽しんで来い」という事で、最年長がデニス(28)というチームで遊びに来た。
「ペレちゃん。今だけは…全部忘れて楽しもう!帰ったら忙しいんだから!」
「は、はいっ!」
休む事なんて許されない、自分は働き続けるべきだ。と考えているペレちゃんも連れて来た。少しでも…笑顔になって欲しいから。
「ジェイル、サウナ対決しないの?」
「流石に…今回は皇族もいらっしゃいますし。丸腰だけど、きちんと仕事はしますよ」
前回、3人揃ってぶっ倒れたのを気にしているようだった。ところでお父様も元皇族じゃ…まあいいか。
夏に行った温泉よりも小さいけれど楽しそう!皆それぞれ自由に回っているが、どの温泉から入ろっかな~と考えていたら…
「シャーリィ、あの泡風呂入ろう!」
「わっ、少那!」
「殿下ー!!女性に無闇に抱き付いてはいけません!!」
少那がわたしの腕を掴み、泡風呂へ向かう。咫岐がぷんすこ注意しているが…眼鏡を外さないもんで曇ってらあ。相当目が悪いらしく、曇っていても掛けていたほうがいいんですって。難儀ねえ。
少し近い…と思っていたら、パスカルがわたしと少那の間に入った。
「殿下。互いに薄着の状態で、この距離は見過ごせません」
はうあっ!!大事にされてるぅ…キュンキュンしちゃううう!!そしてしっかりとパスカルの筋肉を目に焼き付けておかねば。ナイスカット!!
「ん?俺の身体なんて…ベッドの上でいつでも見せてあげるよ?」
「…!そそそそーいう事言うんじゃねーーー!!!」
「はははっ」
パスカルが耳元でエロ発言をし、わたしは真っ赤になって殴り掛かった。全くのノーダメ…悔しい!逞しい!!好きい!!!
「……咫岐、私も彼女欲しくなってきた…」
「………私もですよ」
「一緒に婚活しよっか…」
「………旅先で?」
「(………俺も恋人欲しくなってきた…)」
遠い目をする少那、咫岐、師匠。彼らは放っておいて…仲良く泡風呂を楽しむのでした。
※※※
夜。若い人がいっぱいで、なんとなく修学旅行味を感じるわたし。では夜する事と言えば、当然枕投げ!
ではありません。ベッドだし、皆気品溢れる貴族ですから。
そう、もう1つの定番。そ・れ・は…!
「恋バナ!!するよー!」
「「きゃーーーっ!!」」
ノってくれたのはロッティとルネちゃん!女子は2人部屋で、わたし&ペレちゃん。ロッティ&ルネちゃん。木華&薪名である。夕飯後もう一度お風呂に入って、今は木華達の部屋に集まっている。
「でもこのメンバー…今更感無いかしら?皆バレバレよ」
「まあ…ね。男子チームも猥談とかしてるのかな」
「エラちゃんやめなさい!!」
「はあい」
今は皆わたしをシャーリィと呼ぶが、ルネちゃんはエラちゃんと呼ぶ。最初シャリちゃんになりそうだったので…やめてもらった。寿司になった気分だから。
とにかく!皆ベッドやソファーに腰掛け飲み物とお菓子の準備もおっけい!さあ語りましょうか!
「ま、わたしの話は今更でしょう。ロッティは最近ジスランどうなの?」
「どうって…べ、別に…」
「「ほう……?」」
こいつぁ洗いざらい吐いてもらうしかねえなあ。今ほどカツ丼が欲しいと思ったことはない。
わたし達の圧に負けたのか、ロッティは頬を染めて口を尖らせてから話し始めた。
「……ジスランは卒業するまで手を出さないって言ってるもん。でもたまに…ちょっと雰囲気が…って時もあるわ。彼は「頭を冷やして来る」って、滝に打たれに行くのだけれど」
「「ほお…!」」
つい前のめりになってしまう。それでそれで!?
「他は…ジスランって嫉妬とかしなそうだな~って思ってたのよ。でもこの間私がクラスメイトの男子と少し話してたら…横からやって来て「距離が近いんじゃないか?」って相手を睨んだの。
完全に勘違いだけど…きゅんとしたわ…!(※相手は天使同盟メンバー)そ、その後キス…とか、したし…。
あと、やっぱり逞しいって言うか…彼の大きな手とか、ドキドキしちゃうわ」
ほほう…!ジスランの事を語るロッティは超可愛い。
最近ジスランって、可愛いんじゃないかって気付いたとか色々惚気てもらったぞ。
「も、もう!これくらいで良いでしょう!?次、ルネ!!」
「わ、わたくしですかっ!」
「そうよ!お相手は大人の男性だし…さぞかし進んだ仲なのでしょうねえ…?」
次のターゲットに狙いを定める。さて、その辺どうなのルネちゃ~ん?
「えっと…実は…キスもまだですの…」
「「ずこーーーっ!!」」
思わず姉妹でスライディングしてしまった。これには他のメンバーも身を乗り出す。
「なんで!?あの人ルネちゃんにベタ惚れじゃん!」
「べ…!そ、それは置いといて。多分大人すぎて…未成年の私に手を出しづらいんだと思いますわ。
いつもお優しくて紳士で…た、たまに…私に魅力が無いのかしら…?って思っちゃいますの」
「いやいやいや、可愛いよ!」
「そうね、ルネさんはとっても魅力的だと思うわよ?」
「姫様はどうなんですの!?ルキウス様も大人じゃありませんか!」
「ここで私に振るの!?私は……ノーコメント…」
逃がさん!!!ルネちゃんの次にたっぷり語ってもらいます。
「ですからぁ…!オスワルド様が奥手過ぎるんです!手を繋いでアンティークショップとか、お買い物で精一杯ですわ。
たまにいい雰囲気になっても、すぐ顔を赤くして逸らしてしまうし!だけど聞いた話では、お友達には「ルネさんが可愛い」「超幸せ」とか惚気ているらしくて。なんで本人に言ってくれないのかしら…!?
でもこっちから要求するなんて、出来ませんわ…」
「あら、姫様はルキウス殿下に「口付けしたいです」って要求したらしいですよ?」
「薪名あぁーーーっっ!!!」
「「「詳しく!!!」」」
3人で団子になって木華に詰め寄った。彼女は薪名の胸倉を掴んでいるが、当の本人は無表情でダブルピースをしている。
「く…!言っておくけど、最後まではしてないわよ!?シャーリィと違って!!!」
「わたしを出さないで!!それより、手前までは行ったって事!?」
興奮気味に問い詰めると、木華は真っ赤になって寝転がった。
「…だってぇ…ルネさんと同じよ。すごく大事にしてくれるけど…物足りないって言うか。それにアタックしたのも私からだし…本当に彼は、愛してくれているのかしら…?って不安になって。
はしたないとは思ったけど…私も16歳よ?箏では15歳で成人で、結婚だってしてる歳だもの。だから…」
「「「だから!?」」」
「………勇気を振り絞って、2人きりの時に…「ルキウス様が欲しいです」って…言った…」
「「「きゃあああ~~~っっっ!!!!」」」
テンション最高潮のわたし達は、両手で頬を押さえて叫んだ。やるねえ、木華!!
「で…ルキウス様は一瞬目をまん丸に見開いて…微笑んでくださったの。そして私を膝に乗せて…じょ、情熱的なキスを沢山してくれたわ…」
あかん、あかん!!!わたしは枕をボスボス叩き、ロッティは床で転げ回り、ルネちゃんはシーツを雑巾のように絞ってそれぞれ悶えている。ちなみにペレちゃんは言葉を発していないが、真っ赤な顔で全部聞いているぞ。
その後は!!?布団に潜る木華の周囲に集まり耳を澄ませる。
「……ごにょ、ごにゅ…ごにゃら………で。最後に蕩ける表情で「これ以上は…籍を入れてからな?」って…優しく頭を撫でて…くださっ、て…」
くぅぅあ~~~!!ルキウス様、ひいやあ~!!!
ふう…落ち着けわたし。淑女としてはしたなくてよ、うふ。
何よりペレちゃんが大変だ、恋愛耐性の無い彼女は話だけで茹で上がっている。
「こほん…ペレちゃんはどう?」
「へっ!!?私ですか!?えと…ご存知の通り、今まで恋愛なんて余裕なくて…」
「これからいっぱい時間はありますわよ?」
「そうよ。好き…とまでは行かなくても、気になる男性とかいないの?」
ロッティの質問に、ペレちゃんは顎に手を当てて考える。
「…………………」
ん…?彼女は目を伏せて…皆に背を向けた。その反応は………!
「いるんだね!!?誰誰!!!?」
「グランツの人、セフテンスの人!!?」
「年上!?年下!!?」
「何してる人!!?」
薪名以外の4人で幼気な少女に迫る。あらいやだ、わたくし達も少女でしてよ?と、大騒ぎしていたら…
ピピピピピピ…
「「「「だあああーーーーーっっっ!!!!」」」」
突然機械音が響き、わたし達は飛び上がった。何処から…ってわたしの通信機!!!画面を見ると『スクナ』と表示されている。なんじゃあ一体!!!
「キャッチ!なんじゃい今いい所なんだけど!!」
『うん、ごめんね。でも……あの。会話…丸聞こえだから…やめたほうが、良いよって…言いたくて…ね?』
「「「「は………?」」」」
『流石に小声の部分は聞こえないけど…通常の声量だと聞こえてるよ。ジスラン殿とか部屋の隅で膝抱えてるし。
あの…お風呂上りで暑いのは分かるけど、窓閉めたほうがいいよ。それと私達は猥談してないから。それだけ、エンド』
ブツっと通話が切れる。窓……?全員の視線がそっちに向かう。そういや…男子は下の部屋に集まってんだっけ?
わたしがフラフラと窓辺に向かい、下を覗き込むと……
「「あっ」」
パスカルとルシアンが…身を乗り出していた。わたしと目が合うと急いで引っ込み、窓をバタン!と閉め…………え?
6人共頭の整理が追いつかず、その場に固まった。……とにかく、窓閉めよ。カーテンもシャッとね、ふう。
とりあえず全員ベッドの上に正座して……3人が勢いよく頭を抱えた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーーっ!!!明日、ジスランとどんな顔を合わせればいいのよお!!!?」
「オスワルド様がいなくてよかった…!!でも恥ずかしいですわ~~~!!!」
「私なんて、全部喋っちゃったのよおおお!!!?」
「大丈夫ですよ、姫様。貴女は小声でしたから、聞こえてませんて」
「そりゃ薪名は余裕でしょうねえええ!!!!」
「(な、名前出さなくてよかったぁ~…!)」
それぞれリアクションを取る中、わたしは部屋を飛び出していた。
「ぶっ!!!」
「あれ、ジェイル!?そっか扉の前にいたんか!!」
思いっきり扉で彼を吹っ飛ばしてしまった。悪いけど無視してその場を後にする。男子が集まっているであろう真下の部屋、ルシアンと少那の部屋をドンドンドン!!!とノックした。
扉の前にいたハーヴェイ卿はびっくり顔。彼には聞かれていないな、よし!
「ちょっとおお!!全員いるの!?誰にも言わないでよっ!!?きーてんのーーー!!?」
ガチャリと開けたのはパスカル。爽やかな笑顔で「口外しないと全員誓うよ」と言う。いや君あの姿見られた後に、よくそんな顔出来るね!!?
部屋を覗き込むと…少那と咫岐、バジルが困り顔をしている。ルシアンは笑顔で、グラスは遠い目でエリゼは憐れみの目をしているし、ジスランは本当に膝抱えてらあ。
この時間、デニスと師匠は他の騎士と外で警備してるはずだから…全員揃ってるじゃねーか!!!
「酷いじゃないか、シャーリィ。どうして俺の話をしてくれないんだ?」
「どうしてって…!そりゃ…」
普段から惚気まくってるからだよ。とは言えない…!パスカルは笑顔でわたしの腕を取って…部屋に連れ込み………ぎゃああーーーっ!!!
※※※
「た…ただ、いま…」
「お帰りお姉様。どうしたの…?」
「やっと、解放された…」
熱~いキッスはされたが。それより皆、なんとか冷静さを取り戻したみたいね、よかった。メンズに口止めもして来たし、そろそろお開きにするかー?
「あ、そうだ。薪名は?好きな人とかいないの?」
扉を開けながら何気なく聞いてみたら…彼女は大きく肩を跳ねさせた。……ん?
「ああ、いるわよー」
「姫様あぁーーー!!!」
おお、今度は薪名が木華の口を手で塞いだ。真顔のままだが、大量の汗をかいて…それでは皆様ご一緒に。
「「「誰(ですの)っ!!!?」」」
「ひえ…!」
その場を離れて、シュバっと距離を詰めた。薪名は頬を染めて目を泳がせる。このままじゃ気になって眠れないよう!!どうしても言いたくないなら無理強いはしないけど!!!
まごつく薪名を見て、木華が優しく微笑んだ。
「本当に彼が好きなら、言ったほうがいいわよ?もし国を離れている間に…あの方が結婚でもしたらどうするの?貴女、何もしなかった事を後悔するんじゃない?」
「姫様……」
ああ…この国の人なのか。確かにそれは嫌だよね…待っていてくれますか?って、言っておきたいよね。
任せて、超協力するから!!!薪名は良い子だって、わたし知ってるから!!
基本無表情だけど、本当はノリが良くて仕事もきっちりこなすし。何よりも木華をすごく大事にしている。そんな彼女が好きになった人…気になる!!
「もうね、アタックが弱すぎるのよ。お相手は全然気付いていないわ」
「姫様…さっきの仕返しですか?」
「うふふ~?」
へえ…薪名は注目されている事に圧されながらも……ゆっくりと、口を開いた。
「……その。…………ジェルマン卿…です…」
「「「「え」」」」
木華以外、呆けた声を出してしまった。ま、まさかの?薪名は俯いて頭から煙を上げながら教えてくれた………マジ?ていうか…ちょっと待って。
「あ、あの…ちょ」
「ど、何処に惹かれたの!?」
わたしの言葉を遮り、ロッティが興奮気味に訊ねる。
「えっと…最初は、いつもシャーリィ様達に振り回されているところ…です。呆れながらも楽しげで…優しそうな人だなあ…と」
「ま、待って」
「他にはありますの!?」
落ち着いてルネちゃん。誰かわたしの話聞いて!!
「色々ありますけど…やはり剣を振るう姿は雄々しく魅力的です。とっても気さくだし、笑顔を見せてくれると…胸が弾むのです。
以前私は…姫様達を学園まで送った帰りに子犬を拾ったのです。困っていたら偶然ジェルマン卿が通り掛かり…嫌がる素振りも見せずに一緒に里親を探してくれました。
好き…と自覚したのは、その時かもしれません…」
それは知らなかった…!詳しく聞けば、咫岐はまだ少那に1日中くっ付いていた頃。デニスはタウンハウスに戻り、ジェイルは皇宮で訓練をしようとしていた日らしい。
薪名は両手で口元を押さえて、まるで恋する乙女。可愛い…じゃ、なくて。
きゃーきゃー盛り上がるロッティとルネちゃん。ペレちゃんも目を輝かせているが…
「ごめん、一旦待って!!聞いて!!」
「え…。シャーリィ、まさか。ジェルマン卿って…お相手が、いる…とか…?」
木華の発言に、薪名が顔を青くさせた。違う、あの男に限ってそれは無い!!!そうじゃなくて…!!
「あの…そのう。本当にごめんね…これは事故だから…」
皆首を傾げている。わたしはそっと……扉を指差した。そこには………
「………………………」
扉の向こう…ジェイルが立っているのだ。ごめん、さっきわたしが薄く開けてそのままなのよ…
「………………へ?」
そっと廊下を覗き込むと…後ろ姿しか見えないが、ジェイルが耳から首まで赤く染めている。こりゃ…
「…薪名、ごめん。本人に、全部聞かれてる………」
「…………………………」
薪名は口を金魚のようにパクパクさせて立ち尽くす。わたし達は全員……頷き合って部屋を出た。
「ま、待ってください!?姫様ーーー!!?」
「………頑張って!」
狼狽える薪名だけ残して、木華も一旦外に出る。で、わたしは石のように動かないジェイルの背中を押して部屋に入れ…
「「……………………」」
茹でダコ2人のお見合いがスタートした。未婚の男女ですから、扉はちゃんと開けておりますよ。
わたし達はその場を離れたので、彼らがどんな会話をしたのか知らない。
ん、上手くいったのかって?…ふっふーそれはまた後日、ね!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
337
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる