【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野

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学園4年生編

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「はあ…つまり。
 動物園に行くのに、男3人だと微妙だという理由で。視覚的にだけでもなんとかしようと思い、セレスタンが女装をしたのがきっかけか。
 それでクリスマス…エリゼとセレスタンが参加する事で、ナハト夫妻をデートさせる事に成功。
 だがそのままだと夫人が3人の男を連れ歩いているように見えて嫌だから…またもセレスタンが女装し、男女半々の形を取ったと。
 
 それを俺が見てしまい…エリゼは本人の了承も得ず女装の事実を伝えてはいけないと考え。
 咄嗟に自分の婚約者だと言ってしまったと…」

「まあ大体そんな感じ…ごめんね、説明するのすっかり忘れてた…」



 あの後なんとかフルーラちゃんを泣き止ませ、ルシアンもタイミングよく合流したので落ち着ける場所に移動した。

 そこはバティストの元事務所兼居住地、路地裏にひっそりと佇む小さなビルである。
 以前「好きに使っていーよ」と言ってもらったので、遠慮なく使わせてもらっています。定期的に掃除に来てるし、秘密基地みたいで楽しい。秘密じゃないけど。
 1つの部屋を談話室みたいに改装してあるので、そこに皆で腰を下ろして話し合いが始まったのだ。
 そうして僕とエリゼとルシアンで他の皆に説明した。ちょっと省略したがまあよかろう。
 
 ロッティとジスランは納得してくれたご様子。パスカルはものすんごい渋い顔をしているが…。


「ではお話のデュラン様とは、こちらのセレスタン様のことなのですね?
 でもそれはやむにやまれぬ事情のためのウソ。エリゼ様のフィアンセは、わたくしだけですね!?」

「そうだよ!オレの婚約者はフルーラ・アッシュだけだ!!……はっ!?」


 ニヤニヤニヤ。情熱的ぃ~なエリゼの告白に、僕らは全員頬が緩んでしまう。
 フルーラちゃんも両手で頬を押さえてニッコニコですし。エリゼは顔を真っ赤にして丸まってしまったが。


「でもエリゼ、どうしてこんなに可愛い婚約者さんを私達に紹介してくれなかったのよ?」

「………聞かれなかったからだ」

 それよそれ。
 話を聞けばエリゼとフルーラちゃんが婚約したのは、僕らが1年生の秋頃だというじゃない。2年以上も内緒にするなんて!


「そうでしたの…?わたくしはエリゼ様からいつも、ご友人様のお話を聞いておりましたが…。
 わたくしのことは、お話してくださらなかったのですか…?わたくしは、隠したい存在でしたか…!?」

 あああああ!!?折角泣き止んだフルーラちゃんが…また目に涙を浮かべて…!!
 エリゼはそんな彼女の頭を撫でて言い訳を始めた。

「違う、隠したかった訳じゃない!!ただ…あの、お前の人格に多大な影響、いや被害をもたらす可能性のある存在が」

「もういいです!どうせわたくしは、エリゼ様や皆様に比べたらお子様ですもの!こんな子供がフィアンセで恥ずかしいと思っていらしたのでしょう!?」

 うわあああん!!と、また彼女は泣き出してしまった…。



 彼女はエリゼ達にお任せして…僕とルシアンは、もう1人の拗ねている男をどうにかせねば。
 パスカルはずっと眉間に皺を寄せて、口をへの字にしている。


「パスカル~…?怒ってる……?」

「………………」

 パスカルは無言でストローを齧っている。ちょっと、それ僕のオレンジジュース!!


「……………(クリスマスって、俺が断った時だよな。結果エリゼが同行したって事は…俺のほうに先に声を掛けてくれたんだよな…!?
 俺の馬鹿野郎!!!折角、女装したシャーリィとデートするチャンスだったのに…!!)」

 今度は頭を抱えて床に転がった。


「(確かその日にデュラン嬢…シャーリィの写真を拾って。彼の想い人だと勘違いしたんだよな。
 いくら髪と目の色が違うからといって…好きな人に気が付かなかったなんて…)」

 暫く転がっていたと思ったら、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かなくなった。忙しいやっちゃ。
 2人でパスカルの背中をぺしぺし叩きながら話し掛ける。本当に騙す気は無かった、言うタイミングを逃してそのまま忘れてただけだ…と。
 完全に言い訳ではあるが、紛れも無い事実。いつか彼には必ず、全て打ち明けるつもりだったのだから。


「マクロン。騙していた私達が言える事では無いが…私とエリゼはともかく、セレスは許してやってくれ。
 女装を思いついたのも実行させたのもエリゼだし、面白がって乗っかったのは私だ」

 ルシアンの言葉に、ずっと無反応だったパスカルがゆっくりと顔を上げた。

「………許すも何も、最初から怒っていません…。ただ、自分の不甲斐なさに嫌気が差しているだけで」

 不甲斐なさってなんだ?別にパスカルに落ち度は無いと思うけれど。

 パスカルは大きなため息をつき、エレナの写真が見たいと言い出した。
 確か…僕の部屋(仮)にあったはず。動物園で、3人で撮ったのが…見っけ!


「これこれ。僕もルシアンも金髪でー、兄妹設定なの。お忍びルシアンはエリクって名乗ってて…」

 写真を見せながら解説した。彼は僕と見比べ、「確かに同じ顔だ…」と呟く。
 そんでまたいじけた表情になって、床に座り込んでしまった。やっぱ怒ってんのかな…。

「……怒っては、ないけど……殿下はエレナの写真を全部ください。エリゼは記憶を全部消させる。魔術でも殴ってでも…」

 なんか年々パスカルがバイオレンスになっているような。特にエリゼへの当たりがキツい。

「どうしていつもエリゼは…俺を差し置いてシャーリィとデートしたり…裸見たり…」

 ブツブツ何か言っている。うーん…そんなに僕の女装が見たいのなら、明日はエレナになろうか?と半分冗談で言ってみたら。
 パスカルはたっぷり悩んだ後…確かに小さく頷いた。


 おぉう…了承されるとは……まあ、いいか。でも明日は高級店とか、貴族向けのお店に行くつもりなんだよねえ。
 1日目はお忍びで街に降り、2日目は優雅に食事やショッピングを楽しみ、高台からパレードや花火を見て。3日目は領地で過ごす…というのがここ数年の建国祭の過ごし方。
 だから明日は礼服で集合の予定だったんだが…僕、ドレス着なきゃじゃない?タウンハウスには持って来てないし、ロッティに借りるか。
 
「いいや。そういう事なら…俺に贈らせて欲しい」

「はい!?いやいや、それは悪いって!」

 僕は全力で遠慮したのだが、パスカルがどうしても譲らないので…後でドレスを見に行く事に。どうしてこうなった…。
 一応話はそれで纏まったが、エリゼとフルーラちゃんはどうなったのかな?


「………ではこれからは、エリゼ様のご友人様にわたくしのことを紹介してくださいますか?」

「するから…(というかシャルロットにバレた時点で、もう隠す意味無いし…)。
 オレは一度もお前を恥だと思った事は無い。ただ(女帝と女王から)守りたかっただけだ」

「エリゼ様…!!」

 お。なんとかご機嫌になった様子。
 ふう…軽く修羅場になりかけたが、なんとか円満解決!とか思っていたら…もう1時半だ!

 2時からショーが始まるのにい!エリゼとフルーラちゃん、ルシアンも巻き込んで全員でビルを飛び出した。
 早く行って場所確保しときたかったのに!!僕背が低いから、後ろからじゃ見えないよー!!






「はあぁ……予想通り…」

 急いで会場までやってきたが、時間は開演10分前。人気の一座らしく、すでに超満員…なんとか前に入りたくも、人がみっちりで隙間が無いぃ…!フルーラちゃんとかを揉みくちゃにさせる訳にもいかないし。
 

「どうしましょう…遠くからだったら、あの建物から観れるわよ?」

「近くで観たかった…」

「なら俺が肩車でもしようか」

 キリっと言い放つパスカルはガン無視し、僕は肩を落とす。諦めて遠くから観ようかー…と言っていたら。

 誰かが、ぽんっと僕の肩を叩いた?


「…おわっ!」

 それはさっきチラシを配っていたピエロだった。彼は僕の顔をじー…っと見て。次いでルシアン、エリゼの顔を見た。するとにっこり笑って話し掛けてきた。

「「「???」」」

「お待ちしておりました皆様。さあさ特等席へご案内!お連れ様もどうかお越しくださいませ」

 ?????ピエロさんはクルクル回りながらそう言った。
 知らない人について行っちゃいけません!なんて子供でも分かる事だが…ピエロさんが「早く早く、開演です!」と言うもんだから、つい追ってしまった。なんかあっても余裕で逃げられるし。
 そうして最前列、ってロープで隔たれた内側やん。そこまで入っちゃっていいの…?
 しかも人数分の椅子を用意してくれた。よく分からんが……皆で並んで観賞する。




「おお…おぉ~…!!」


 ショーはジャグリングとかナイフ投げとか、コンビネーションとかサーカスって感じ。
 動物はもちろん精霊もお手伝いし、火や水を操り派手に魅せてくれた!
 わ~…あの虎、どうやって玉乗り仕込んだんだ!?魔術で補助してるのかなあ?すごい、虹が掛かった!!

「「「おーーー!!」」」

 僕、ルシアン、フルーラちゃんが全力で楽しみ、ジスランは「ほぉ~…」と感嘆の声を漏らしていた。
 そしてロッティ、エリゼ、パスカルは保護者のように…僕らの反応ごとショーを楽しんでいましたとさ。




 楽しい時間はあっという間。もう閉演の時間らしい。
 面白かったな~!また来年も来てくれないかなあ?とか思いながら拍手をしていたら…最後スタッフさんが全員で手を振って挨拶をしている時。ピエロさん…座長がこっちを見た。
 
 そうそう、なんで特等席に案内してくれたのか聞きたかったんだ。僕は先隣に座るルシアンに小声で聞いてみた。

「ねえ…もしかして、ルシアンが皇子だってバレてるんじゃない?」

「どうだろう…今は髪も染めてるし…」

 ルシアンは茶色に染められた髪をいじりながら言った。とりあえず座長に挨拶するかーと全員立ち上がると、向こうのほうから近寄って来たぞ。


「ご覧いただきありがとうございました。楽しんでいただけましたか?」

「ああ、有意義な時間を過ごす事が出来た。ところで…何故私達をこの席に?」

 代表してルシアンが応対をする。そして座長は、クスッと笑って「長くなりますが…」と前置きをしてから答えてくれた。



「この一座は元々、私1人と2体の精霊しかいなかったのです。大道芸人として各地を巡り、その日暮らしの生活をしていました。
 しかし数年前。この地でいつものように芸をしていたら…お客様をかき分けて、貴族と思しき3人の少年が最前列へやって来ました」

 ……んんん?

「あ!!!お前、あの時の大道芸人じゃないか!!」

 エリゼがビシッと座長を指差した。こら、駄目でしょう!
 しかし同時に僕とルシアンも思い至った。1年生の時…まだルシアンと仲良くなる前の事件を!!


「思い出していただけましたか。あの時貴方様が金貨を投げ入れてくださって…お2人が慌てて引き摺って立ち去られましたね。
 私も他のお客様方も皆呆然としていましたよ」

 いや~あの後大変だったんですよ~。破落戸に絡まれるわルキウス様激おこになるわ。
 まあそれから紆余曲折あって、僕らは仲良しになりましたが。

「私は戴いた金貨を元手に設備を整え人を雇い…少しずつ、確実に手を広げていきました。
 そして今。16人ものスタッフを抱えた旅芸人一座と成長いたしました。スタッフはほぼ全員、行く当てのない者ばかりで…それも全て、皆様のお陰でございます。
 いつかお礼がしたいと、何度かこの地に来ては芸をしていましたが…皆様にお会いする事は叶いませんでした」

 
 僕らは座長の話を、口を半開きにしながら聞いていた。そんな事情があったとは…。


「そして今日。皆様はまた観に来てくださいました。変装をしていてもすぐ分かりましたよ。今こそどうか、受け取ってくださいませ。
 
 ありがとうございました。私達は最高のパフォーマンスをお見せする事でしか御恩を返せませんが…皆様の心遣い、決して忘れません」


 いつの間にか彼の後ろには、一座の皆さんも集まっていた。そして座長と共に頭を深々と下げるのであった。


「……顔を上げてくれ。其方の芸を私は素晴らしいと思った、だからその対価として金貨を投げ入れた。
 だから…うん。これからも最高の芸を見せて欲しい」

 というルシアンの言葉に…彼らは「はい!!」と、笑顔で応えてくれたのだ。



 そうして別れた後。僕らは不思議な縁もあるもんだねえ、と笑い合う。

 フルーラちゃんはもう帰るそうで、今度改めてゆっくり会おうね!と約束をしてお別れをした。ルシアンも時間だと言うので、護衛さんと一緒に帰ったぞ。

 で、僕らはドレスを見に行くのだが…途中からパスカルが、また無口になっている。
 彼は機嫌が悪くなっても八つ当たりとかはしないけど…明らかにテンションが下がるのだ。
 

「……お兄様、私達はもう少し屋台を回りたいわ!」

 と、ロッティはジスランの腕を引っ張って行ってしまった。気を使われた…。
 少し2人きりになりたかったので…セレネに乗っけてもらい、またバティストのビルに戻って来た。
 ソファーに並んで座り、彼の肩に頭を預けて問い掛けてみる。


「ねー…今度はどうかした?」

「………俺……君との思い出が、少ないなあって…思って」

「へ?お、思い出?パスカルとだってクリスマスは2人で過ごしたり、皆と遊びに行ったり…思い出はいっぱいあるよ?」

「うん…ごめん、分かっているんだ。ただ…さっきから俺の知らない一面を、他の誰かが知っているっていうのが…悔しいだけ。
 …いや、これは俺の我儘なんだ。忘れてくれ…」

「………………」


 パスカルは手で顔を覆ってしまった。
 僕はそんな彼の手を取って…ゆっくりと、頬にキスをした。

 いつもこういう事はパスカルからしてくれるので、彼は目を丸くしている。これちょっと照れくさいな…!

「えっと…上手く言えないけど。
 僕もね、君の色んな顔を見たいって思うよ。でも女の子が僕の知らない君を語っていたら、悲しくなっちゃうな。
 とはいえ僕らは結局のところ、今までそれぞれの人生を歩んで来たんだから。互いに知らない事だって、いっぱいあるでしょ?

 でも…。君の隣に座って、触れて笑い合えるのは…僕だけの特権だと思ってる」

 今のパスカルはすごく不安定っぽい。
 なので…恥ずかしいけども!僕は意を決して両手で彼の頬を包み…唇に軽く、触れるだけのキスをした。


「……こ、こういうのだって…パスカルにしか許してないんだから…!
 まだ秘密を打ち明けられない僕が言えた義理じゃないけど…信じて欲しい。僕にどんな一面があろうと…好きなのは。
 僕が愛しているのは…パスカル・マクロンだけ…でえっ!?」

 
 最後まで言い切る事も出来ず、僕はソファーに押し倒されてしまった。
 そしてパスカルはさっきの僕と違い、深いキスをしてきた。角度を変えて、何度も…!!
 最初は大人しく受け入れていたが…不意に下唇を噛まれ、僕はびくーっ!と全身を跳ねさせた。


「ん…っ!…ス、ストップ!!もう無理ぃ…!」

 恐らく今の僕は真っ赤な顔をしているだろう。
 すっかりご機嫌になったパスカルは、フッと余裕そうに笑って僕の上に倒れ込んできた。


「…うん、信じる。すまない…今までも疑っていた訳じゃないんだけど、少し不安になっていた。でも、もう大丈夫。
 ……本当は、唇だけでなく…身体を重ねたいと思っているけどね?」

 びくーん!!とまた大袈裟に反応してしまった。すると彼は肩を震わせ…笑っているようだ。
 
 しかし、それは困る…!秘密がバレる以前に、キスでもギリギリな僕じゃその先はまだまだまだ早い!!
 そう伝えたら、彼は優しく僕の頭を撫でたのであった。


「君の心の準備が出来るまで待つけど…あまり長くは保たないから。なるべく早めに覚悟を決めて欲しい」

 と言われても…僕は曖昧に笑う事しか出来ないのであった。




 その後暫くそうしていたけど…窓の外を見れば茜色に染まり始めていた。
 急がないと店が閉まる!と思い、足早にドレスの専門店に向かうのであった。
 そこはロッティと一緒によく行く店なので、「妹への贈り物」と言い訳をした。パスカルは僕の友人で、選ぶのを手伝ってもらうと。
 早く…こんな言い訳や人の目を気にせず、彼と歩ける日が来るといいなぁ。


「……セレスタン、これがいいと思うが」

「どれ…………パスカル、胸元が開いてないやつ探して…」

「あ」

 彼が指していたのはオフショルダーのドレス。いや一般的なデザインですけどね?出来れば首まで隠れてるやつがいいなー!それなら腕や肩が出ててもいいから!

 とまあ色々見て回り、理想的なドレスを見つけたぞ。ラウルスペード家のタウンハウスに届けてもらい、そろそろ帰る事に。




「そういえば、俺は君と身体を重ねたいと言ったけど…男同士ってどうするんだ?と思って、調べようとした事があるんだ」

「ブフォアァッッッ!!!」

 ゆっくり歩きながら雑談をしていたら、突然のパスカルのカミングアウトに盛大に噴き出してしまった。作品のジャンル変わってまう!!

「で…なんかそれ以来男性に誘われるようになって…怖くなってやめた…」

「何してんだ君はっ!!?そんな知識いらんっっっ!!」

「それはつまり……君がリードしてくれると…!?」ごくり

「そういう意味じゃ無いけど…!とにかくいらん!!!」

 僕は笑えばいいのか心配すればいいのか分からんよ!!……あれ?


「パスカル…君は男性が好きなんじゃないの?」

「………!!あ、いや…それは…ん~…と」

 
 ?彼は目を泳がせ、なんだか言葉を濁していたが…観念したようで、僕の目をじっと見た。


「その……実は、あの時の言葉は…!」


「…バジルのバカーーー!!!」

「おぶっっっ!」

「「!!?」」

 
 パスカルの言葉に被せて、すぐ近くから…男女の声とバチーン!!という音が響いた。
 反射的に揃って目を向ければ、涙目のモニクが右手を胸の前で浮かせていた。
 そんな彼女の前には、あわあわしているバジルが…。左頬を赤くして…もしかして、ビンタされた?


「モ、モニク。ごめ…」

「もう知らないもん!!ず~~~っと他の女の子ばっかり見て!!
 彼女は私なのに、一緒に歩いているのは私なのに!!」

「ごめん!!つい目が…」

「知らないったら知らない!!!」

 モニクはカンカンでタウンハウスに入って行った。僕らもいつの間にか家まで来てたか。
 バジルは「ごめんってば~!」と慌てて追い掛けている。そういえば…


「バジルって…結構惚れっぽいんだよね…」

「そ、そうか…意外だな…」
 

 そうである。普段真面目な彼だが…可愛い女の子に目が無いのである。
 もちろん浮気まではしないが…僕だってデート中、パスカルが他の子ばっかり見てたら怒りたくもなるぞ。


「学園じゃ周りは令嬢ばっかりだからねー…鼻の下伸ばしちゃいられないからあまり知られて無いけど。そういう男だよ、バジルは」

「そ…か…」


 うん。ていうか…今から僕、あの家に帰るんですが。超気まずいんですが。


「…さて、明日迎えに来るから!!じゃっ!」

「薄情者ーーー!!」

 パスカルはさっさと逃げ帰ってしまった。泊まっていくと言われても困るからいいんだけどさ!



 その後バジルはお詫びとして最高級洋菓子を差し出し、ようやくモニクの怒りが解けたのであった。

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