【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野

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学園4年生編

05

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「お姉様、忘れ物は無い?ちゃんと歯ブラシ持った?お着替えは?おやつ持って行く?」

「遠足かな?大丈夫だよう…」

 
 という訳で、明日から合宿です。僕が支度をしていたら、ロッティが心配して見に来た。
 終いにゃ「私も男装して、合宿所のスタッフとして働くわ!!」とか言い出したぞ。うーん、お嬢様のロッティに炊事洗濯掃除は出来ないかなー。

「ああ…心配だわ。女子禁制でなければ私もついて行くのに…!
 バジル、エリゼ!!なんとしても飢えた狼共から麗しいお姉様をお守りするのよ!!!」

「は、はい!!」

「オレは侍従でもなんでも無いけどな?なんでお前んちに呼ばれてんの?」

 そう、なんでエリゼいんの?
 ロッティは2人を正座させ、注意事項をつらつらと挙げている。ここ、僕の部屋だけどね?


「頭数は多いほうがいいでしょうが!!!
 あ゛ーーー!!!心配過ぎる…!!もしも同室がパスカルだったら亡き者にするところだったわ…!!あいつは絶対に手を出す!!」

 よかった、パスカルの尊い命は守られた…部屋割りを決めた人にグッジョブと言わざるを得ない。
 にしてもロッティがなんか面白い事になってるので、こっそり写真撮っておこうっと。
 
「いい!?お姉様がシャワーを浴びている間は、外で警備に当たるのよ!」

「言われなくてもやるっての…」

「それと…あと…そうだ…で…」


 さて…支度も終えて、話し合いをする3人を放置して部屋を出る。
 居間で休憩、グラスがお茶を淹れてくれたので喉を潤す。ふう…。

「しかし…おれも心配です。スタッフに紛れましょうか?」

「大丈夫だって。いざとなったら精霊もいるしね」

 皆心配性過ぎるよ。…僕が呑気過ぎるのかな?


 授業に関しては心配していない。ジスランに鍛えられ、今も鍛錬を怠ってはいないので腕に自信はある!
 問題は、生活のほうか…。お風呂問題に関しては「幼い頃に負った火傷の痕があって、誰にも見られたくない…」という設定で行く事に。
 ただ、その話を聞いた少那が本当に辛そうな顔をするから…僕の良心はボロボロだ。嘘ついてごめんよ…!!

 とはいえその延長で、僕が着替えてるのも見ないと約束してくれた。彼はきっと約束を守るだろう。
 それに養護教諭としてラディ兄様も同行するし、いざとなったら彼の部屋を使わせてもーらおっと。




 ※※※




「おー、いい所!」

 合宿所があるのは、首都を少し離れた自然の中。ちょびっと古い建物だが広さは充分!


「各自荷物の整理をし、午後1時にこの広場に集合!!」

 と先生の指示を受け、早速少那と共に部屋に向かった。
 ちなみに咫岐は生徒じゃないのでここにはいない。王族だろうとこの合宿には、使用人禁止なのだ。


「んーと…あ、ここだ!」

 部屋はちょっと狭め、8畳くらいでベッドが2つ並んでいる。「どっちのベッドにするー?」なんてはしゃいでいると…旅行っぽい!!
 僕は向かって右側のベッド。で、荷物を広げていたんだが…ふと、ルームメイトの荷物に目が行った。


「………なんで釣り竿持ってんの…?」

「ああ、これかい?」

 それだい。遊びに来たんじゃ無いんだけど…少那は竿をジャキンと伸ばしながら言った。

「ルキウス殿下とルクトル殿下がね、近くに綺麗な川があると教えてくれたんだ。
 休憩時間にでも釣ろうと思って、持って来たんだ!」

「そ、か…」

 彼が満面の笑みでそんな事言うもんだから…僕はそれ以上何も言えなかった…。

「ルシアンは網と餌担当だよ」


 何やってんだろうこのロイヤルコンビ…。




 さて…話をしていたら時間は12時45分。15分前行動は基本だね、広場に向かう。
 廊下を歩いていたら、エリゼとバジルがちょうど部屋から出て来た。んで合流したら、少那がとある事に気付いてしまった。

「あれ…セレス、貴方縮んでないか?確か私より少し低いくらいじゃ…」

「ボフォッ!」

 彼は僕の頭に手を置きながら言った。痛い所を突いてくれる…!そこ!!2人共笑うんじゃあないよ!
 そーですよ、運動するのに5cm増のシークレットシューズなんて履いてられないでしょう!?今はぺったんこな運動靴だから縮んだんだよ!!

「少那…それは触れちゃあいけない、いいね…?」

「え…えーと……わかっ、た…」

 ふう…なんとか納得してもらえた。
 身長か…右隣を歩くエリゼを見上げる。


「…?なんだ?」

「んーん、なんでも」

 前は可愛い少年だったのに…背も伸びて横顔もすっかり青年になっちゃって。漫画の一部読者から「ラブリーちゃん」なんて呼ばれてたとは思えないね。
 口は悪いけど優しくて頼りになって…パスカルがいなかったら、僕惚れちゃってたかもね?なーんて。

「…変な奴だな…」


 
 広場にはすでに、半分くらい集まっていた。
 時間になると剣術の先生であるクザン先生が全員を整列させる。


「それではまず走り込みを行う!!
 その後は素振り、終えたら初級者・中級者・上級者に分かれるぞ!!」

 ふむ。4年生の男子は30人ちょい。それを3分割して、3人の先生が1チームずつ見るんだな。
 準備運動をし、並んで走り込みスタート!



 コースは合宿所の敷地内をぐるっと二周。半分を過ぎると…チラホラとスピードが落ちてきた人達が。
 ひー、僕もしんどくなってきた…!!でも……



 ここ最近、前世を思い出す事なんて無かったけど…こうやって運動していると、否が応でも当時の光景が脳裏に浮かび上がる。

 自身の身体に繋がれた幾つもの管。年々心と身体は乖離していった。

 外から聞こえて来る笑い声…いつか自分も、思いっきり外を走り回りたい!と願った子供時代。


 自由な弟が…羨ましくて、嫉妬した。



 そんな僕が今、息を切らして大自然の中を走っている。
 ああ、それはとても……


「……ふふっ」

「どうした、セレス?ニヤけて…オレはもう、キツくなって、来たんだが…っ」

 僕が1人笑っていると、近くを走っていたエリゼが声を掛けてきた。
 エリゼも前は、ちょっと全力疾走しただけで死に掛けてたのに…今はなんとか食らい付いている。


「…なん、でも!走れるって、嬉しい、ことなんだね…って!」

「?」


 僕が何を言っているかわかんないだろうね。それでいいんだよ。今の僕は、自由だ!!






「…大丈夫か?」

「はあ、はっ、は、ぁ………ジ、ス、ラ…ン…っ、げほっ」

 走り終われば…僕は息も絶え絶え。対してジスランはちょっと汗をかいている程度…この体力おばけめ…!
 あー、やっぱ僕…腕力と体力が、ネックだな…。

 少し休憩の後、間隔を空けて木剣で素振り。いつもやっている事だ、同じようにやれば大丈夫!
 ふぅ…体の軸をずらすな、呼吸を意識しろ。腕の振り方…何千何万回と繰り返した事。


 ジスランやパスカルのように恵まれた体躯でもない。
 体力も腕力もない僕は…数を重ねるしか、出来ることは無いんだから!


「…ほう」


 なんか今クザン先生の声が聞こえたような。集中!



 50回の素振り終了。ここでレベルに応じて鍛錬の内容が変わってくる。休憩時間中に、3人の先生が決めるらしい。
 ランク分けの基準は、事前の授業成績・自己申告・剣術大会の功績・素振りの巧拙なんかで決まるらしい。僕は…

「上級コース。ジスラン・ブラジリエ。セレスタン・ラウルスペード。カイ・アゼマ。中級…」

「………!!」



 じょ…上級!?確か上級は、現役騎士と遜色ない実力の持ち主のみ選ばれるんだよね!?そこに、僕が…!
 
「やったな、セレス!」

「ジスラン…!」


 ジスランも、我が事のように喜んでくれた。上級は3人のみ…僕も…!
 僕は、今までの努力が報われたようで…自分は間違って無かったって言ってもらえたようで。
 自分の手の平を見つめる。マメができては潰れて治ってを繰り返した、女子にしては硬い手。これは…僕の人生を表している。

 僕は認められたのが嬉しくて…泣きそうなのを必死に堪えた。泣いてる場合じゃない、これからが問題なんだから!

「よっし!!」

 ふんすと気合いを入れる!上級コースはキツいだろうけど、頑張るぞ!!



 結果的に他の友人達は中級だった。初級ってのは、本当に未経験者なんだって。
 だから多くが中級。ここで一旦ルシアン達とは別れる。


「よろしくお願いします、ラウルスペード様、ブラジリエ様」

「よろしくね!様付けなんてしなくていいよ、同級生なんだから!」

 そして残るもう1人の上級者は、隣のクラスのカイ・アゼマ男爵令息。去年、剣術大会でジスランと決勝を争った相手だ!
 僕?去年は1回戦でジスラン相手だったよちくしょう!!!




「ではまず全員の実力を直接見せてもらおう!」

「「「はい!!」」」


 上級者コースの先生はクザン先生。まずアゼマ君から相手だ。
 アゼマ君から斬りかかるも、すぐに形勢逆転。彼は防戦一方になってしまい、剣を飛ばされ終わり。

「く…!ありがとうございました!!」

「よし!次!!!」

「はい!!」

 僕だ!礼をし、先手必勝!!

 
 ガッ、ガスッ!

「ふっ、はあっ!!」

「軽い!!」

 すいませんね!先生ってばさっきアゼマ君の相手したばっかりだってのに、全然疲れて無いな!?
 ガガガガッ!!と猛攻を浴びせるも、全部躱され流され受けられる!

 集中しろ…相手が先生だから、負けるのは仕方ないとか考えるな!!どんな相手でも、勝つ気で臨め!!

「……そこだっ」

「うあっ!?」

 んな…!下から振り上げられ、木剣が吹っ飛んだ!くっそー…!

「ありがとうございました!」


 こうなったら、ジスラン頑張れ!!

 ジスランもずっと鍛錬を続けてきたから、相当強いんだが…おお、先生のほうが一枚上手!暫く打ち合った後、ジスランの剣を弾き飛ばしちゃった!凄いな先生!?

 

「ふへー…まだまだ強い人はいっぱいいるねえ」

「そうですね…自分ももっと精進しないと!」

「くそ…!俺もこの程度で終わる気は無い!!この手で大事な人を守る為、更に力をつける!」

 …うん!僕ら3人は、合宿中に先生から一本取るぞ!!と誓い合ったのだ。




 ※※※




「お前達は、騎士を目指しているのか?」

 さっきまで散々剣を振っていたが、今は休憩時間。水を飲み汗を拭く。休む時はきっちり休め、と言われたので地面に座って体をリラックスさせる。
 すると先生が世間話のようにそう聞いてきた。


「俺はロッティと結婚しますので、ラウルスペード騎士団に入団します」

 おお、言い切った!ロッティは任せたぞ義弟よ!

「自分は…皇室騎士団に入団希望です」

 やっぱそうなんだ。彼は男爵家の三男坊だから、自立しないといけないらしい。



 で、僕は?僕は…なんで剣術を続けている?3人の視線が集まるなか、青空を見上げ考える。


 最初は、無理矢理。それと意地。
 次は、生きる為に必要だと思ったから。

 じゃあ、今は?僕は…



「僕……はい、僕も…騎士になりたいです!」

「…そうか」

 僕の力強い返答に、先生はフッと笑った。


 そうだ、今続けているのは。大好きな人達を守れるようになりたいから。
 だけでなく。自分が強くなるのが、純粋に楽しい!
 
 ずっと敵わないと思っていたジスランを追い詰めた時は、本当に嬉しかった。
 それに刀を振っていると、侍になった気分で楽しい。詰まる所、僕って結構カッコつけなのかも。
 

 うん…それでもいいじゃない?強くなりたいって思いは本物だもの。誰かを守りたいって感情もね。
 


「よし、では鍛錬を再開する。騎士になりたければ、食らい付いてみせろ!」

「「「はい!!」」」

 
 僕達は立ち上がる。騎士になる前にまず…この合宿を乗り越えないとね!


 
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