【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野

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閑話

セレスタンのクリスマス☆大作戦

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 3年生クリスマス。

 ******



「ジングルベール ジングルベール 鈴が鳴るー♪」

 ふんふふふーん♪今日は楽しいクリスマス!
 今年は僕、セレスサンタが街に降りちゃうぞ!


 まあ現在25日夜だけど。昨日は誕生日で忙しかったからね!パーティーでは酔っちゃって、サッパリ覚えてないんだけど。
 そんで本日、昼間はパスカルとデートを楽しんだのです。何故か…彼は目を合わせてくれなかったが。

 それは置いといて。


「おいセレス。このツノはなんなのだ?」

「トナカイのツノです」

「全くわからん…まあよいか」

 クリスマスといえばサンタ!サンタと言えば赤い鼻のトナカイ!とソリ!!
 ソリは用意できなかったので…トナカイ(に扮したヘルクリス)に直乗りですが。

 僕が「皆にプレゼントを配りたい!」とお父様にお願いしたのは先月のこと。
 サンタクロースを軽く説明したら…「さんた…プレゼント?俺には無いのか?そうか…子供だけか…」としょんぼりされた。ごめんて。代わりにハグしたら喜んでくれたけど。


 本日のターゲット達には前もって「25日の夜行くから!」と通達済み。皆首を傾げていたぞ。

『枕元に赤いくつした用意しといてね!こんな感じの』

 僕が絵に描いて説明すると、なんで靴下?と当然の疑問が。

『この中にプレゼント入れるから!中身は大きさに合わせて僕がセレクトするね。
 それとセレスサンタが部屋に侵入した時、もし起きてても寝たフリしてよ!それがサンタに対する礼儀だよ!!
 鍵は外からヨミが開閉出来るから、安心して寝てていいよ』

『いや、それより…女性が夜中に、男の部屋に侵入するんじゃない!』

『僕世間的には男だもーん』

『う…!じゃあ、女性の部屋とかも入れないだろ!!』

『本当は女ですしー』

『ああ言えばこう言う!!』

 こんな反応が多かったけど、精霊もいる!ってことで納得させた。
 ま、楽しみにしといてや!



 ふぅ…ただ今午後11時、作戦決行の刻!!
 自室にて最後の会議である。メンバーは…

「本当にこんな夜中に行くんですか…?」

「そうだよ!行こうかジェイルサンタ!!」

「へいよ…」

「ヨミサンタとヘルクリストナカイもね!」

「おー」

「ふむ」

 精霊がいるとはいえ、1人では夜中の外出許可をくれなかった。なので護衛のジェイルを連れて、いざ行かん!!
 本当はミニスカサンタにしたかったがやめといた。ジェイル、ヨミとお揃いの赤い服で、白い袋を肩に担ぐ!つけ髭も忘れずにっと。

 まずは屋敷内にプレゼントを配るぞ!!ここは窓じゃなく扉から入ります。鍵束を手に、廊下をずんずん進む。


 よし…最初はロッティ!女性のお部屋なので、僕のみお邪魔しております。

「………くう」

「よく寝てる…ふふ」

 我が妹は寝顔も可愛いなあ。癒されてからお仕事しますか。
 どれ…あったくつした!うーん…ちょっと小さいな。

「ガサゴソ…おっ、これなら…」

 沢山のプレゼントユメが詰まったサンタ袋。今日の為にウッキウキで用意しました。


「ロッティ、メリークリスマス!」

 喜んでくれると、嬉しいな!




「……もういいかしら?ふふ、お姉様ったら」

 僕が出た後、ロッティは枕元を確認した。
 そこには…くつしたにぶっ刺さる、可愛い日傘!夏になったら使ってちょうだいな。

「……い、入れ方…。もっと大きいほうがよかったかしら…?」



 ※



 よし次、バジル&グラス&フェイテ!3人同室なので纏めて行くぞ。
 今回のターゲットは10代以下なので、成人は関係無いよ。

「「「………………」」」

「おっじゃま~…うし、寝てるね」

 今度はお供のサンタも一緒に侵入。どれ…

 バジルは文庫本サイズのくつした。
 グラスは普通の赤靴下。
 フェイテはやや大きめで細長いくつした。なんか性格出てるような。

「ちっ…折角エロ本用意したのに、どれも入んないじゃん…」

 つまらん。と言ったら、誰か咳き込んだ。起きるなこら。

「お嬢様、令嬢がエロ本言うんじゃありません。大体どこで入手した?」

「生徒会で没収したやつ、1冊貰ってきたの」

「あー…確かに一定数いるよな、そういう生徒…」

 さて、何をプレゼントしようかな?ごそごそっと。


「じゃ、メリークリスマス!」

 夜は短い、どんどん行くぞ!!




「……行ったか?」

「行ったな…」

「バジル、エロ本貰えなくて残念だったな」

「やかましい!!」

 どうやら反応したのはバジルだったか。
 皆早速プレゼントを確認し始めたぞ。


「おれのは…伊達眼鏡?高そう」

「僕は…動物園のペアチケットだ」

「デートして来いってことか。俺は…マフラーが詰まってる…」

 3人は顔を見合せ、笑ってくれた。よきかな。



 ※



 さ、お次はモニク&ネイ!
 眠っているのを確認し、いざくつした。

「…ネイのくつしたデカっ!かっ、かわいい~!」

 っとと、起こさないように。でもでかい、長さ1mはあるんじゃない?手作りしたのか、拙い縫製だけど…きゅんとするぅ!!!
 きっといっぱいプレゼント欲しかったんだね!うんうん、任せんさい!!

 よーし、大っきいくまさんのぬいぐるみ!まだ隙間が…お菓子詰めとこう。皆で食べてね!と思いながらぎっちぎちに。
 そんでモニクには、オシャレな靴を。さらば!




「…わあ、素敵な靴!やーん、履くのもったいない!
 あら…ネイはぐっすりね。ふふ、おやすみ」


 翌朝ネイは…くまさんを抱き締めて喜んでくれたそうだ。うへへ~。



 ※



 よーし、これでラウルスペード家は終わったぞ。
 次は近場から攻める。そう…ブラジリエ家だ!!

「……寝てるかな?」

「こんな形で帰省するとは…」

 小サイズのヘルクリスにジェイルと並んで乗り、夜空を駆けて参りました。暖炉のお陰で凍えず快適だったぞ。
 さーて…ジスランの部屋久しぶりだなあ。超絶可愛い婚約者のいる男だからな、手早く済ませよう。

「ふむ…あれ、くつしたどこ?」

 無い、無いよ?枕元に置いとけって言ったのに!
 僕がムスッとしていたら、ジェイルが「もしかして…」と足元の布団を捲った。そこには…

「ぶっ!!?ん…っひ、はひっ、ひゅい…!!」

 は…履いとる!!!赤い靴下、両足に履いてやがる!!

「多分…「赤い靴下」ってキーワードしか覚えてなかったんだろうな…ぶふっ!」

 あはははは!!!もう、このばかちん!!


 数分掛けて呼吸を落ち着かせて…ごほん。
 えっと…羽根ペンを靴下の隙間にねじ込んどこう。反対側にはロッティの傘とお揃いのハンカチ。

「じゃあね、人の話ちゃんと聞きなさいよっ!」

 どうせ起きてるんだろうし、最後に頭をべしんと叩いて脱出!あー面白かった。




「……むう、俺は何か間違えたか。くすぐったかった…」



 ※



 よし、エリゼの部屋にやって来たぞ。
 頭まで布団を被って寝てる…今のうちに。

「む…単行本サイズか。どれにしよっかな…」

 ごそごそ。袋を漁っていたら、ジェイルが覗き込んできた。

「その袋、傘やらぬいぐるみやら出て来たけど…中と外で大きさ違うのか?」

「いんや。こうやって手を突っ込むと、僕の影の延長って認識可能なんだって。だから僕が欲しがってるのを、ヨミが影から出してるだけ」

「ああ…それで「確かアレあったよね…コレにしよう」って呟いてたのか。精霊様も姿見えねえと思ったら。
 …最初から、袋要らなくないか?」

「お馬鹿、サンタには必須なの!剣と鞘レベルの一心同体なんだから!」

「ほう…なるほど」

「(……人の部屋で何してんだこいつら。早く済ませてくれ…)」

 ジェイルは無意識なのかたまにこうやって、主従じゃなくお兄ちゃんのような態度になる。
 僕はそれが嬉しい。なんだか、昔に戻ったみたいだし。

 よし、エリゼにはこれだ!じゃ、おやすみー。




「やっと行ったか…なんだこれ?」

 彼にはペンダントをあげた。おしゃれに無頓着だから…少しは飾りなよ、格好いいんだし!

「こういうのは…彼氏パスカルにやれよ。
 ま、貰ってやるか」

 エリゼは微笑みながら箱を握り締める。素直じゃないなー。



 ※



 お次は首都までやって来たぞ。
 さあ行くぞ、ラディ兄様!

 …とはならないんです。流石のサンタさんも、若夫婦の寝室には入れねえゼ…へへっ。
 なので玄関先に吊るしとくよう言っといた。
 おお…兄様のくつしたはフェルト製で、まさに理想的な形!何入れよっかなー。


「……これかな」

 この世界のクリスマスに、ツリーは存在しない。
 だけど…偶然にも、飾りの付いたモミの木柄マグカップを見つけたのだ。

「メリークリスマス、ラディ兄様!…ん?」

 よく見ると、くつしたが膨らんでる?中には…


『サンタさんへ プレゼントありがとう』

 というカードと共に、暖かそうなニットの帽子が入っていた。

「……えへへ」

 帽子を貰い、マグカップを突っ込む。
 ありがとう、兄様。



 ※



 さーて、皇宮までやって来ました!侵入するのはハイリスクなので、門からお邪魔します。

「こんばんはー、セレスタン・サンタクロース入りまーす」

「いらっしゃーい、姫!」

 やめろや!!門番さんもご存知なので、堂々と通過します。その後また飛びましたが。
 じゃ、上から行くか。


「ひー…皇太子殿下の寝室に窓から侵入て、中々出来ない体験だな…」

「確かにねー」

 ルキウス様のお部屋は広くて、シックな家具で統一されている。お…棚にお酒も並んでる。
 ベッドに接近…寝てる時まで眉間の皺が!
 ぐぐぐ…と指で皺を伸ばす。すると益々深まり…ジェイルと同時に吹き出してしまった。

「ぐ…っ!これ以上は危険だね、早く終わらせよう…っ」

「(殿下、口の端震えてる…完全に起きてるな)」

 ルキウス様のくつしたはラディ兄様と同じ物。彼に相談したんだなー、というのが窺える。
 なんでも手に入る皇太子殿下ですし…何あげよう。

「ねージェイル。ルキウス様と同い年の男性として、どんなの貰ったら嬉しい?」

「(ぶっちゃけ、可愛い女の子から貰えたらなんでも嬉しいが)そうだな…難しいなあ。
 あ、酒飲む時用のグラスとかいいんじゃね?」

「よし採用」

 食器類はいくらあっても困らないしね!
 ではさようなら~。




「これは…ははっ、早速明日使わせてもらおうかな」



 ※



 続いてルクトル様。小物が多いけど、綺麗に整頓されてるお部屋でございます。

「こんばんは~…」

「いらっしゃ…おっとと」

 返事きちゃった!!もー、これだから真面目さんは!!
 ルクトル様は寝返りを打って背中を向けた。そのまま演技してくださいね。

 ではくつしたの確認。予想通り、兄様とルキウス様とお揃いだった。

「そんでは…ルクトル様も食器シリーズで。
 このカトラリーセットとカップ&ソーサー、どっちがいいかな?」

「うーん…カップの柄による」

「いくつかあるんだけど…」

 カップを並べて、座り込みジェイルと会議する。どれがよいかしら。


「あ、そのカップ素敵ですね」

「そう?じゃあこれにしよっと!……ん?」

 今上から声が。

「…あ。つい…」

「だーーーっ!!子供はサンタさんを見ちゃ駄目なんですっ!」

「僕成人してますし、君より年上ですよ!?」

「いいから!!」

 ルクトル様をベッドに押し込み、カップをラッピングし直す。
 よし…完璧。ほとんどはみ出てるけどセーフ。次行くぞ!


「全く…子供の夢を壊すところだったわ」

「(なんか…年下に子供扱いされると…ほっこりしますねえ)」




 ※




 皇宮ラスト、ルシアン!

「くぅ……すぅ…」

 寝顔可愛いなあ。つい頭を撫でてしまう、起こさないようにね!
 さて、これまで多くのプレゼントを配ってきた僕ですが。ルシアンが一番難しい…。

 彼はオシャレだから、アクセサリーは厳しい。
 好みそうな骨董品は…素人の僕には訳わからぬ。
 エロ本…エリゼと同じサイズのくつしたには入んない。
 カメラ?…写真立て?ちょっと地味…ピコハン?

 ベッドに腰掛け、袋を漁りうんうん唸っていたら…


「………セ、レス…?」

「!!!……起きた…?」

 びっくりしたぁ~…!
 振り向けば上半身を起こしたルシアンが、ぼや~っと半目でこっちを見てる。寝惚けてるのか…?

「ああ…さんたくろーす、だったか…」

「お、おう。えーと…どしぇえっ!?」

 んな…っ!僕を後ろから抱き締めてきた!?近い近い、顔に熱が集中する…!心臓がけたたましく音を鳴らす!ジェイル、距離取らないで!!


「ルシアン…は、離れて?」

「ん~…」

 彼はぐりぐりと、額を僕の首に擦り付ける。ぶははは、くすぐったい!!

「じゃなくて!んもう…僕彼氏(仮)いるんだからね!」

「ぬ…ふわ~ぁ…」

 今度は大きな欠伸をして、ゆっくりと離れた。重さが無くなって…一瞬喪失感が。


「プレゼント…何か、其方の証が欲しい」

 証…?ルシアンは横になり、目を閉じた。そっと布団を掛けてあげると、まさかのリクエストが。

「其方を思わせる物…其方から貰った、と判る物」

「なんで…そんなもの…」

「……友達…だから…」

 ……そう言われても。
 僕がどうしようか困っていたら、ヨミが影の中から「これなんてどう?」と何か差し出してきた。

 それは…以前僕が女子力を上げよう!と奮い立ち。手を出した編み物…で生み出された、歪な膝掛け。
 いやいや、そんな素人丸出しの作品!皇子様の持ち物には相応しくないって!

「気付いたら無くなってて、不思議だったけど…ヨミが持ってたんだ」

「まあね。どう?ルシアン」

「ん…。
 ああ…これがいい…」

 ルシアンは薄っすら目を開けて受け取り…大事そうに抱えて眠ってしまった。

 ……仕方ないなあ。
 さて、気を取り直して次行きますか!!



「しかしルシアン、サラッとああいう事するよね…不覚にもドキッとしたよ」

「モテる男は違うよなー…」

 あれで無意識だもんねえ。僕に特別な感情は…無い、はず…。
 ルシアンは家族はもちろん、僕とエリゼにも甘やかされてるから…甘えん坊さんなのだ。
 だが顔の熱が引かない…手でパタパタと仰ぐ。
 ん?口元がスッキリ…お髭どこ行った?

「ああ、殿下が握り締めてたぞ」

「なんでー!?」

 いつの間に奪った!




「……何してるんだ私は…!」

 朝。お髭を手に、頭から膝掛けを被って丸まるルシアンが目撃されたとか。



 ※



 一旦ルシアンは脳内から追い出し、次はルネちゃん!!
 公爵夫妻も僕が女の子だとご存知なので、深夜の訪問許可は貰ってまっす。


「お邪魔しまーす…」

 ルネちゃんは普段「夜更かしは美容の大敵!」と言っているので、多分寝てるはず。
 抜き足差し足忍び足…到着。

 …くつしたちっちゃい!!幼児用サイズじゃん、欲無いなー…。
 うーん…ピアスとか?ペン…ミニ金の延べ棒…。

 ……そうだ!

「テレレレッテレー!温泉の素~!!」

 取り出したるは、5cm程の瓶。
 んふふふ…実はコレ、箏からの贈り物の1つなのだ!!3つあるのでお裾分け。

 量は少ないが、浴槽に1滴垂らせばあら不思議。一瞬にしてお湯が温泉に早変わり!
 メモメモ…使い方、効能を書き記して…同封してラッピング。
 じゃ、湯上がりたまご肌をのルネちゃんを期待してるよ!




「ふあぁ…あら?ふふ、セレスちゃんったら本当に来てくださったのね!」

 ルネちゃんは早速使ってみてくれたらしい。だが…


「セレスちゃ~ん!!あの入浴剤、どこで買いましたの!?爽やかないい香りで癒されましたわ、ありがとうございます!
 それで…お母様にもお試ししてもらったら…すっごく気に入ってしまって。大量注文したがってますの~!!」


 ははは…ルクトル様に相談してみるよ。



 ※



 では最後…実はラウルスペード領から一番遠い、マクロン領までやって来ました。もう時間は夜の2時を回っております。
 なんだろう、他の人は平気だったのに…部屋に入るの緊張する。

「……オレら外で待機してようか?」

「変な気ィ使わんでよろしい!!」

 んもう…!ジェイルの首根っこ掴んでお邪魔します!!!


 窓を開けると、パスカルの匂いがしてくる。
 そっとベッドに近寄れば、部屋の主が穏やかな寝息を立てている。
 …相変わらずイケメンだなこんにゃろう!!寝顔も格好いいとか反則だろ!!

 見つめていると…何故か先程のルシアンを思い出してしまった。彼の体温を忘れる為に、床に膝を突きパスカルをぎゅっと抱き締めた。
 暫くそうした後に顔を上げると、間近にある彼の唇から目が離せない…………ちらり。
 僕の視線に気付いたのか、ジェイルがあからさまにため息をついて背を向けた。


「…寝てるよね~…?」

「…………………」

 念の為頬をぺちぺち叩き、両側に思いっきり引っ張る。だが無反応…寝てるね!!

 ふうっと深呼吸。僕はパスカルと…唇を重ねた。


「……ひー、ひぃーーー!!やっちゃった、きゃーーー!!!」(小声)

 いやーーー!!も、もう1回…ぴゃあーーーーーっ!!!シャーリィってばだいたーーーん!!!
 段々と調子に乗ってきた僕。耳をつまんで髪を結んだりやりたい放題である。


「(全く…ん?なんだアリャ)」

 僕が楽しんでいる時、ジェイルは何かを発見した。
 ソファーのテーブルに…『お付きの方はこちらで待機』というメモとお茶セットがあったのだ。

「(まさか…マクロン…?)」



 いっそ布団に潜り込んじゃおうかしら?いやん、流石にそこまで無理だわー!!
 最後にもう1回キスをして、本命のくつしたを探す。が…見当たらない?

「どこー?……ん?」

 ふと気付く。パスカル…大きいベッドなのに、やたらと左に寄って寝てない?そんで右側に、赤い布が見える…。
 ずるっと引っ張り出せば…なんじゃこりゃあっ!!?


「デデデ、デッカ!!!あはははは、ネイよりもっと大きい!!!」

 直前のルネちゃんが最小だったから、毛布サイズのくつしたに笑いが止まんねえ!!最早寝袋じゃん!!足入れてみようっと…僕の肩まである!!

「ひははっ、一体どんだけ欲しかったのさー!!
 見てみてジェイル、僕がすっぽり入っちゃう!!」

 なんだか面白くて、満面の笑みで披露した。
 だがジェイルの反応は…可哀想なものを見る目をしていた…。


 ……あれ?このくつした…まさかサンタホイホイ?
 その頃ようやく、セレネがいないと気付いた。
 ヘルクリスもいない。それどころか、ずっと頭上にいた暖炉も…。

「ヨミ?ヨミー?」

「なあに?」

「お、いた。いやね、精霊達どこ行ったか分かる…?」

「分かるよー。ぼくも今からそっちに合流するから」

「え?」

「じゃあジェルマン、あとよろしく」

「はい、見張っておきます」

 え、え?ヨミが窓の外に出てった。
 と同時に。ジェイルがくつしたにインした僕を横抱きにして…パスカルの布団を捲って…隣に寝かせた?


 おい、ちょっと。これは…まさか…


「ふー、さんたさんとやらも終わりだな。最後のプレゼントも配り終わったし…オレはお茶タイムにしてるわー」

 最後の、プレゼント?
 いや…僕はパスカルに、何もあげてない…。

 その時。僕の頭の下に、が滑り込んできた。腕…?


「シャーリィ。君は一昨日…俺に何を言ったか覚えてるか?」

「一昨日…?僕達の誕生日…パスカルに会ってないよ、ね?あれ…?」

「……………俺は…あの後すっごく悩んだんだけど…なんかさっきので吹っ飛んじゃったな」

 何が?君は何を言っている?
 恐る恐る横を向けば…満面の笑みのパスカルが…!!
 逃げようにも身動き取れず…お助けえええっ!!!


「付き合うまで、口へのキスは禁止だったよな?」

「うん…ソウダネー…」

「でも君はさっきしたよな?」

「……起きてマシタカー…」

「先に約束を破ったのはシャーリィだ。つまり…俺も3回まで許されるよな?」

「…………お手や、んむっ!?んーーーっ!!?」

 返事をする前に、唇を塞がれてしまった…!
 僕がしたのと違って、1回が濃厚で長い…!ジェイル助けてええええっ!!!


「安心しろー、キス以上されそうになったら止めてやっから」

 今すぐ止めろー!護衛のくせにいいい!!!
 ようやく離れたが、僕はすでに息も絶え絶えですよ…!

「ふふ…あと2回だな?」

「ひいい…!!」

 パスカルは舌なめずりしながら言い放つ。ご…ごめんなさ~~~い!!!




「……ハァ~…何が悲しくて、バカップルのラブシーン眺めなきゃいけないんだ…。
 オレも彼女欲しいな~…」

「ぎょえええええぇぇ…!!」




 ※※※




 朝になり、やっと解放された…!
 キスの後はずっと抱き枕状態だったのでな…もちろん一睡もできなかったけど!!サンタさんは二度とやんねえ!!!


 家に帰って来て、魂の抜けた僕をジェイルがベッドに放り投げる。もう…昼まで寝よう…。


「あー疲れた。オレも仮眠を…ん?」

 彼も自室に戻り、着替えようとしたその時。
 ベッドの上にある包みに気が付いたようだ。

 それはもちろん、セレスサンタからの贈り物。ジェイルも対象なのでな。


「これは…財布?」

 お会計の時、格好いい財布でスッと支払う男性は素敵だぞ。という意味を込めました。

「ふ…ははっ。ありがとうな、セレス」





 最後は散々な目に遭ったけど、楽しいサンタ活動でした。
 そして年明け、冬も終わり…


 春の足音は、もうすぐそこまで来ていた。


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