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閑話

ヨミが死神になった日

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 3年生夏期休暇中。

 ******


 とある日のこと。僕はルシアンに呼び出された。


「すまないな、休暇中に」

「構わないけど…どしたの?」


 ただし場所が…グランツ皇国を飛び出し、遠く離れた砂漠の国・クフル王国まで来ているんですが…!?
 元々グランツは大きな国なので、国内の移動と更に小国を挟んではるばるここまで来てしまった。
 遠すぎてクフルに来るまでにも10日ほど掛かっている、こりゃ夏期休暇は消えたな…。帰りはヘルクリスに乗せてもらおう。で、何事?


「私が遺跡発掘チームに所属しているのは知っているだろう?ここクフルは歴史の古い国でな。古代の城やら遺跡が沢山あって、世界各国から私のような探検家が多く訪れるんだあ…!」

「ほーん…」

 目を輝かせるルシアンには悪いが…それほど興味ねえや。
 でも砂漠の国の遺跡って、なんとなくファラオの墓ってイメージが…!大丈夫?呪われない!?ツタンカーメンいない!?
 
 というか暑い!むしろ熱い!!日差しが強すぎるので外套羽織ってるし、頭にはストールを巻いて完全防備。じりじりするう…日陰どこさ?




 拠点にしている近くの村で少し休憩。ルシアンは腐っても皇子なので、それなりに良いテントが用意されているのだ!お邪魔しまーす。
 ここに来るまでの道中、話は少し聞いたけど…ルシアンはヨミの力を貸して欲しいとのこと。
 ここには僕とルシアンしかいないので、ヨミも出て来て僕の隣に座り、一緒に話を聞いている。

「オレもいますよお嬢様…」

 あ。忘れてた。


「こほん…私は去年の夏もここに来ていてな。数年前とある遺跡から、砂に埋もれた地下に続く階段が発見されたんだ!
 崩れないよう先行隊が安全を確保し、ようやく専門家が入れるようになった。
 その階段を降りた先は…1つの扉があった。しかしどうしても開かないんだ」

「開かない?壊さないの?」

「壊してたまるか。まあ壁や扉は特に装飾も無い、古いというだけのものだから…最終手段で慎重に壊すかもしれないが。
 それより、その扉の前に立つと…足が震え、今すぐに逃げ出したい衝動に駆られるんだ。
 百戦錬磨の騎士でも、聖職者でも。多くの者が扉の前まで到達しても、すぐに駆け上がって逃げてしまう。
 魔術が掛かっている訳でも無い。だが…もしも扉を壊したら、開けたら死ぬ。と…直感?本能?そういったもので理解してしまうんだ」

 …んー?それってどこかで…


「そう。私も一度だけその扉の前まで行ってみたが…初めて闇の精霊様とお会いした時のような恐怖を感じたんだ。
 だからもしや…精霊様は何かご存知ではないか?と思って…」

 なるほど…それでか。僕とルシアンはヨミに目を向ける。
 だが肝心のヨミなんだけど…この国に来てからなんかおかしいんだよね。

 ぼーっとしてるし、普段から物静かだけど更に無口だ。こっちから話し掛けても、「ん」とか「あー…」しか言わない。


「…もちろん精霊様が嫌がるのなら、無理を言うつもりは無いのですが…」

「…………いや、いいよ。でも……その部屋は……」

「「?」」


 やっぱりヨミは何か知っているようだ。
 よく分からんが、彼の承諾も得たので早速その遺跡に向かう事に。テントの外に出ると…なんか賑やかだな?
 そういやさっきから大荷物の人やラクダがいたなあ。そんで今、市みたいなものが開かれてる?


「お、セレス。キャラバンが来ているぞ!見に行ってみるか?」

「行く行く、お土産買おう!」

 キャラバン!砂漠っぽい!!僕らは遺跡に向かう前にそっちに顔を出した。
 彼らは旅をする商人達だからね、帰る頃にいなくなってたらやだし!と言っても今すぐ移動はしないだろうけど。

 

 わー、色々ある!このブレスレット綺麗!!僕とロッティとルネちゃんでお揃いにしようっと。あとモニクとアイシャには…それと…あれも…。
 あとこれ、それ、あれ…お父様からお小遣いを貰っているので資金は潤沢さ。そのお父様には何買おうかなー…。

「おお!これは古代の儀式に使われたという杖のレプリカ!くれ!」

 ルシアンも楽しんでるう。そっとしておこう。


 1人で買い物をしていたら…店番さんに声を掛けられた。頭にターバンを巻いた、カレーが似合いそうな濃い顔のおじさんだ。

「****!**!?」

「はえ!?は、はろーぅ?さんきゅー!」

 どうしよう、クフル語はわからん!!
 身振り手振りで意思の疎通を図るが…伝わってない!
 いやそれいらんの、こっち!いやいや5個じゃない!だーもう、埒があかん!!

「ジェイル助けてー!」

「こういう時だけオレの存在を思い出す!!オレだって分かりませんって…!」

 お馬鹿が2人になっても何も変わらんかった。通訳さんカモーン!!
 その時…僕の後ろを歩いていたヘルクリスが前に出る。
 


「…おい人間。セレスはそれを望んでいない。そっちの装飾品を寄越せ」

「*?****」

 え…ヘルクリスが言葉を発すると…おじさんに伝わった?

「セレス。他に何が欲しいのだ」

「え、あー…まず、それはいらない。で、これを2つと…」

 どういうこと?ヘルクリスはいつも通りグランツ語を話している。なのになんで相手に伝わってんの?
 

「そっちではない」
「***」
「ああ。それと…」
「**!***~!」
「セレス、合計2万4千クルだそうだ」

 という具合に。僕もジェイルも首を傾げるばかり。



 買い物も終え、建物の陰で休憩。早速ヘルクリスに、さっきの事を聞いてみた。
 すると彼は目を閉じ何事か少し考え…

「…まずお前ら、普段私達が何語を話していると思っている?」

「え、グランツ語でしょ?」

 僕の答えにジェイルも頷く。違うの?

「違う。そうだな…ヨミ、お前のが分かり易かろう」

「……呼んだ?」

 何が分かりやすいの?2人はボソボソと会話し…ヨミがこっちを向き、いつも顔を覆っているマスクを取った。久しぶりに素顔見たな。
 

「…こんにちは、ぼくはヨミです。闇の最上級精霊死神で、セレスタンと契約をしています。
 ………分かった?」

 なんで急に自己紹介……あれえ?今、ヨミの口の動き…発音と合ってなくない?
 なんと言うか、外国の映画を吹き替えで観ている感じ。これだから僕は字幕派なんだ…って事はまさか。


「2人共…多分セレネも。グランツ語じゃなくて、別の言語を使ってるの?それを受け取る僕らが、脳内で変換してるのか!」

 例えばヨミは「ハロー」と言っているのが、僕には「こんにちは」と聞こえるんだ!ヨミはいつもマスクしてるし、動物系2人じゃ口の動きなんて分からんわ!

「その通りだ。私達はいつも精霊の言葉を使っている。ここは精霊語と仮称するぞ。
 セレス、お前は漢語とやらを使えるだろう。グランツ語と混ぜて話してみよ。ジェルマンは全て記憶せよ」

 実験か。よし…

「えーと…僕はセレスタンです」『ところでここ暑くない?僕干からびそう』「コレ難しいな…結構脳ミソフル回転しないと…」『お父様へのお土産の怪しい仮面、なんか呪われそう』「ふう…どう?」

「ジェルマン。お前にはどう聞こえた?」

「はい。僕はセレスタンです。不明…コレ難しいな。結構脳みそフル回転しないと。不明。ふう、どう?です」
 
「そうか。私には
「僕はセレスタンです。ところでここ暑くない?僕干からびそう。コレ難しいな、結構脳味噌フル回転しないと。お父様へのお土産の怪しい仮面、なんか呪われそう。ふう、どう?」
 と聞こえた。もう分かるな?」

 分かった!!精霊語は受け取る側にんげんが勝手に翻訳して、こっちの言葉も向こうせいれいには全部精霊語に変換されて伝わってるんだ…!
 じゃあ通訳要らずじゃん!!もっと早く知りたかったなー!




 ※※※


 
 さて。目的の遺跡へとやって来ました!!
 場所は拠点の村から、ラクダで30分程歩いた所。
 遺跡の外観は…小さいけど、古代の神殿って感じかな。正面に柱が何本かあるの。ピラミッドじゃないんか…。

 その発掘メンバーは僕、ルシアン、ジェイル、他5人。あとは通訳も兼ねたクフルの案内人さんが1人のみ。
 遺跡に足を踏み入れると…なんだか、空気違うなあ。あんなに暑かったのに、中は冷んやりしている。
 メンバーは壁画や石像なんかにゃ目もくれず、真っ直ぐに地下への階段に向かう。それが気になったので、隣を歩くルシアンに声を掛けた。

「ねえ、壁画とかはもう分析し終わったの?」

「ああ、残るは地下のみなんだ。ちなみにこの遺跡は、水の神を祀っていた神殿らしい。あの石像がそうだ」

 ほー。彼が指差す先には、水瓶を持った男性の石像が。砂漠じゃ水は貴重だよね。
 というか…奥に進むにつれて、どんどん気温下がってない?心なしかメンバーの顔色も悪いぞ。


「……ここです。皆さん、心の準備はよろしいですか?」

 ガイドさんが立ち止まった場所は、遺跡の最奥に位置する部屋。そこに地下室への階段はあった。
 全員ランプを持ち、階段を降りる。結構長いな…体感的に2階分くらい降りたんだけど。
 そして例の扉の前に立ち、ガイドさんの許可を得てからぺたぺた触ってみた。
 しっかし…ノブとか無いし、何かを嵌めるような凹みも無い。これ本当に扉なの?四角い模様の壁じゃないの?とすら思う。


「…………特に何も感じな…!?」

「……う…」

 寒さはあるけど、恐怖は無い。にしても、他の8人が静かだな…と思い振り返ると…全員酷い顔色だよ!?

「ちょっとルシアン、大丈夫!?こんなに震えて…!!」

「……むし、ろ、其方は…平気、なのか…?」

 ルシアンに触れると体も冷えてるし、唇も紫色ですよ!?話を聞いた時は「大袈裟だな~」とか思ってたけど、只事じゃないねこれ!

 何故か僕は平気なので、皆には上で待ってもらう事に。1人で調べてみます、と言ったら遺跡を傷付けないように気を付けてください!と念を押された。
 ルシアンなんかは心配そうにしているが、僕は大丈夫。だから早く安全な場所に行ってね。

「……すまない。頼んだ…!」

「うん!」





 …うん、1人になったところで。

「ヨミ」

「………………うん」

 ずるっと姿を現したヨミ。彼は僕が何を言うでもなく…扉をじっと見つめている。
 その表情は、何かを懐かしむような優しいもので。だというのに…哀しげにも見える。

 僕はヨミのやたらと長い袖を捲り…彼の手を握った。ヨミも、静かに握り返してくれた。


 
 暫くそうして2人で扉を見ていたが…ついに、ヨミが口を開いた。



「………ヘルクリス。他の精霊達も。全員、ルシアン達の所に行っていて。
 もう分かっていると思うけど、ここはぼくの領域だ。いくら最上級の君でも…危険だよ」

「ふん、だろうな。セレスに害は無かろうな?」

「うん。必ずぼくが守るよ。それよりも、君はルシアン達を守って。出来れば神殿から出てね」

 何が危険なの…?という疑問を抱きつつも、ヘルクリス達を見送った。
 ヨミは精霊だけど、外見は完全に人間の男性だから…この薄暗い空間で、手を繋いで2人きりというのは。少しドキドキするな…。
 

「………シャーリィ。ぼくの事、好き?」

「ファッ!?そりゃ、好きだけど…」

「本当に?」

「うん…」

 嘘ではない、本当に好きですよ。ペットに近い感覚だが…そこまで言わなくてもよかろう!

「……この先に、ぼくの秘密…みたいなものが、ある。君は…それを、知りたい?」

「…気にはなるよ。でもヨミが知られたくなければ…無理強いはしたくないかな」

 笑顔でそう言えば、彼も目を細めた。
 すると突然ヨミが…服を脱ぎ始めた!!?

「ちょ、ちょちょちょ!!?」

 シュ…パサッ

 彼はいつも完全に肌を隠している。それが…今露わに!!!
 マスクも外し、ブーツも脱ぎ…彼は普段、ニッカポッカみたいなズボンを履いているのだが、それ一枚になってしまったよ!!
 上半身は完全に裸で…あらん、細いけどよく締まってらっしゃる…じゃないよ!!!
 床に引き摺る長い髪も纏めて縛り、なんかいつもと雰囲気違う…。

「シャーリィも脱いで」

「…ええええええ!?なんで!?」

「この先は本当に危険だから…肌が触れ合っているほうが、安全なの…」

 じゃあ帰ろうか。と言える雰囲気では無い!!!
 ヨミが言うには、触れ合っていれば僕らの親和性が高まって、影響を受けにくくなるとの事。なんの影響よ!!?


「この扉の先は、冥府と同等の死の世界。生者の存在を赦さず、命を奪おうとする。
 ぼくと契約しているシャーリィは多少は平気だけど…危険に変わりはない。ぼくに触れていれば、かなり軽減されるから。だから…」

 ………分かりましたよ、もう!!腹を括って脱いでやりますとも!…サラシは取らんぞ!!
 僕も脱ぎ、ズボンとサラシのみという格好に…!

「ひえ!?」

「………行くよ」

 だだだだだ抱っこだとおう!?彼はひょいっと僕を持ち上げ腕に座らせ、しっかり掴まっているように指示してきた。言われた通り、彼の首に両腕を回すが…心臓が!めっちゃ早鐘打ってますが!!
 何より顔が近い!!彼の顔をこんな間近で見たのは、契約した時以来かもしれないな。…ヨミ、睫毛長いなあ…それに翠の目が宝石みたいにキラキラしている。
 …って互いに半裸状態でこんな密着して…君が人間だったらアウトだぞ!

 僕の動揺などお構いなしに、彼は扉に空いてるほうの手を触れた。
 そう、触れただけ。なのに…僕が触った時と違い、扉が勝手に開いた…!?


 ゴゴゴゴ…と音を立て、ゆっくりと左右に開く…。
 その瞬間。まるで底が知れない穴に落ちたような…激しい恐怖に襲われた。
 全身が脈打ち、血の気が引き呼吸が荒くなる。体の震えが止まらない…!さっきのルシアン達も、こんな感じだったのだろうか?

 僕はあまりの恐怖に過呼吸になりかけていたのだが…ヨミが、ぎゅうっと強く抱き締めてくれた。


「大丈夫だよ、ぼくがいる」

 その言葉に…全身の力が抜ける…。ああ、確かに。こうして触れていると安心するなあ…。

「うん…ありがとう。行こう」

 僕が笑顔を作ってみせると、彼も安心したように笑った。
 そして、部屋に足を踏み入れる。




 そこは小さな部屋だった。特に装飾も施されていない、シンプルな部屋。小さなランプでも全体を薄く照らせるほどの小部屋。
 壁には燭台を置くための小さな突起があるくらい。

 ただ、部屋の真ん中に…丸い祭壇のような台がある。その上に…誰か寝ている…!?
 僕は恐ろしくなり、ヨミに抱き着く手に力を入れた。

「こ、ここ、ヨミが開けるまで、ずっと閉じてたよね…?あの人、いつからここに…」

「………多分、2~3千年前」

「……はあ!?単位がおかしくない!?」

 2、3日前の間違いじゃなくて!?もし仮にそうだとしても、あんなに人の形を保ってる訳ないじゃん!とっくに骨になって…骨って、残りますかね?
 いやいや、仮に骨が残っていたとしても。服やら装飾品まで綺麗に残ってるのおかしいでしょ。
 
 僕が色々考えているうちに、ヨミはすたすたとその人に近付く。抱っこされている所為で、必然僕も近付いてしまうんですが!
 ひいぃ~!…ちらり。

 そこに寝ているのは…男性。僕より少し年上?
 ……いや待て。この人…髪の色は違うけど、この顔…


「…………ヨミ?」

「うん…」

 男性は痩せ細って窶れているし、髪も短いけど…間違いない、ヨミだ。
 

「どういうこと…?ヨミはここにいるじゃない」

 僕はそう言って、両手で彼の頬を包んだ。
 そうだ、ここにいる。照れ屋さんで穏やかで優しい、僕の死神。

 僕達はそうやって、暫く互いの目を見つめていた。君は、一体誰なの…?




「今から数千年前。人々の信仰心が比べ物にならない程強く、神が身近にいた時代。

 人は火山が噴火すれば山の神がお怒りだと恐怖し。
 地震が起これば大地の神がお怒りだと絶望した。
 そして…その怒りを鎮める為、人間が何をしたか…分かる?」

「……お祈り、儀式、捧げ物……生贄…」

 思いつく限りの解決策を口にする。
 え、まさか。祭壇に眠る彼は、まさか…!!


「そしてこの地でかつて、オアシスが涸れてしまったことがあった。それはあり得ないこと…しかし実際に起きてしまったこと。
 人々は水の神がお怒りだと結論付けた。だから…

 ここ、水の神を祀る神殿に。1人の男を生贄に捧げた」

 
 ヨミは僕から目を離し、男性に目を向ける。つられて僕も…。
 よく見れば彼は、上等な服を着ている。装飾品も…ネックレス、ブレスレット、アンクレット…金と、宝石で出来ている…?


「生贄に選ばれた男は、奴隷だった。どうして男が選ばれたのかは知らない。身寄りのない奴隷を使うというのはなんとなく理解出来た。
 だが、同じく肉親のいない奴隷は沢山いた。その中で何故男が選ばれたのか…分からない。
 適当、選んだ人間の好み、神のお告げ?どうでもいい。

 人々は抵抗する男を飾り、この部屋まで連れて来た。
 魔力を封じ、扉を外側から固めて逃げられないように。更に階段を砂で埋め…完全に、彼は世界から隔離された。

 
 それがぼく。もう生前の名前も思い出せないけど…人身御供として封じられた奴隷の男。

 世界を怨み、神を憎み、人間を恐れながら孤独に死んでいった…1人の人間だったんだよ」


 ヨミはまた、僕の目を見てそう言い切った。
 人間…ヨミが?独りで死んでいった、ただの人間、だった。
 
 僕は何も言えなかった。ただただ彼の目を見続ける。君はかつてその両目で…どんな世界を見てきたの…?


「……精霊は自然から生まれる。ただし最上級は…原初の8体以外は皆、元々生ある存在だったんだ。
 フェンリルは犬。エンシェントドラゴンは蜥蜴。ベヒモスは河馬。リヴァイアサンは鰐。ドライアドは樹。死神は…人間の中から次・が選ばれる。フェニックスとクロノスは原初のまま君臨し続けているから分からないけど。

 ぼくはこの部屋で死に絶えた。その時…先代の死神に見初められた。
 そしてこのまま死ぬか、死神となるか…選択を迫られた。

 ぼくは、死神になる道を選んだ。どうしても、欲しいものがあったから…。

 この部屋は、1人の人間が死んだ場所。同時に…新たな死神が生まれた場所。その時から時間が止まったまま、動いていないんだ…」


 そう語るヨミの表情が儚げで、気付けば僕は…涙を流しているのであった。


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