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学園1年生編
シャルロットの想い
しおりを挟むお兄様は昔から、他人と深入りしようとしなかった。学園に入学しても同じ、私、バジル、ジスラン以外に友人を作ろうとしなかった。
お兄様の魅力を知ってしまえば、誰も彼もお兄様にメロメロになってしまうのに…その可愛いお顔まで隠しちゃうし!
…いや、悪い虫はジスランだけで充分ね。やっぱいいや。
そう思っていたのに、入学して数ヶ月。お兄様は変わった。いや可愛いのは変わらないのだけれど、明るく…元気?強くなったと言うのかしら?
エリゼがフェニックスを喚びやがった時も、果敢に助けに入ったし!流石ねお兄様!!
でもエリゼ…私も邪魔が入らなければ、駆け寄ってその顔面を殴り飛ばしてやったのに!
「お兄様が怪我でもしたらどうするの!?」と言ってやったのに…!!まあお祖父様にこってり絞られたと聞いたので許してやろう。
お兄様とエリゼは、そこから仲良くなったみたい。悔しいけれど…エリゼは頼りになる人で、お兄様も信頼していた。悔しいけど!!
初めての夏期休暇は、丸々孤児院問題に費やす事になった。
もちろん不満なんて無いわ、苦しんでいる子供達が最優先だもの…!
ところで私は、孤児は皆帰る家がちゃんとあると聞いていたのだけれど…?お父様…私に、嘘ついたわね?
お兄様は心を痛め、苦しんでいたというのに…お父様は…何をしていたのかしら…?
この時、孤児院問題が明らかになった日から私はもう、お父様を父親だと思っていなかった。元々信用してなかったけど…決定的になった感じね。
あれはただの無能な同居人。そんな無能に追随するお母様も同様。
でも…私が態度を変えてしまったら。あの無能はお兄様に「貴様、ロッティに何を吹き込んだ!?」とか言うのだろう。ならば私はお兄様の為、可愛い娘を演じてみせましょう。
心底嫌だけど。吐き気がするほど気持ち悪いけど。実際何度か吐いたけど。
そんな風に自分を偽り、愛想笑いを周囲に振り撒く日々。あ、お兄様に見せる笑顔は本物よ!私はお兄様さえいてくれれば、どんな場所でも笑顔でいられるわ!
しかし私が危惧していた通り、お兄様の事をいやらしい目で見る生徒が増えてきた…!!
お顔を隠さなくなってからは、男も女もお兄様に群がろうとした。まあ全部…私とジスランとエリゼがカットしていたけれど。
お兄様はどんどん逞しくなり、なんと皇子殿下とまで友人になってしまった。
流石だわお兄様、あの性根の腐りかけていた皇子を更生させちゃうなんて!!私だったら面倒だから、適当に持ち上げてあしらっていたと思うわ。
それにルシアン殿下だけでなく、兄皇子までもがお兄様の魅力に気付いてしまったようね…ふっ。
で、あのランドール様。あの人はなんだか…お兄様に近付いても嫌な感じがしないというか。ドヤっとされるのは腹立つけど、お兄様を任せられる人。
いずれお兄様とは、本当の兄弟のように仲良くなっていた。でも…私にとっては兄という訳でもない。向こうも私を妹扱いする訳でもない。
上手く言えないけれど、それでいいと思うの。本当に不思議な人ね…。
あ。そういえば、いつだったかジスランが…私に打ち明けて来た事があった。今までお兄様に剣の鍛錬として、酷い事をして来たと…ね。
私はあまり、2人の鍛錬を見た事がなかった。お兄様やバジルが「見ないほうがいい」と言うから。お兄様は努力する姿を見られたくない人なのかと思って、言う通りにしていた。なのにまさか…信頼していたジスランが、お兄様を痛めつけていたなんて、ねえ…?
理由を聞けば、ジスランは幼い頃からお兄様が好きだったと言った。まあ気付いてたけど…それでどうして好きな人に暴力を振るうの…?そういう性的嗜好でもあったの…?
と思ったら、お兄様をムキムキに育てて、幻想を断ち切り恋心を消し去ろうとしたらしい。
その身勝手な理由を聞いた途端私は気が遠くなって…気付いたらバジルに羽交い締めにされ、ジスランの胸ぐらを掴みフルボッコにした後だった。
ジスランは顔の形が変わっても抵抗しなかったという。手も痛いし…彼の行いは許せないが、反省と後悔は伝わったのでそこでやめた。
一生掛けて償え、顔が治るまで学校に来るな。そう吐き捨てたら、彼は最後にもう一度謝罪した。
私はジスランに、悪い感情は抱いていなかった。それどころか…将来私の隣に立つなら、ジスランかしら?と想像した事すらある。全部吹っ飛んで好感度はマイナスになったけど。
だがお兄様は、謝罪を受け入れて彼を許したらしい。ならば…私にはこれ以上、何も言う事はないわ。複雑だけれど…。
本当にお兄様は素敵な人。可愛くて優しくて慈悲深くて強い人。様々な困難を乗り越え、味方を増やしていく。
でもお兄様が目の前で斬られた時は…取り乱してしまったわ。お兄様にもしもの事があったら…私は、正気でいられる自信が無い…!!ルネが喝を入れてくれたお陰で、なんとか正気でいられたけど…。
ただその時、ジスランは私の側にいて支えてくれた。それはとても安心出来て…少しだけ、見直したわ。
お兄様はすぐに回復した!本当に、元気になってくれてよかった…!エリゼと先生達には感謝してもしきれないわ。
最上級精霊と契約したと聞いた時は驚いたけれど、お兄様の魅力を持ってすれば容易いわ!!
少し…寂しくもあるけれど。お兄様が私以外の人と親しくなり、私以外を褒めたり頼ったりするのは…。
いえ、駄目ねそんな考えは。お兄様が強くなって…お父様から解き放たれるのはいい事なのだから!!
そしてついに無能な父親は消えた。ついでに母親も。私は彼らの最期に思うところが無い訳ではないけれど…今までお兄様、いえお姉様にしてきた仕打ちを考えれば。
死を悼む事は出来ない。むしろお姉様が伯爵の為に涙を流した事に、本当に驚いた。
その涙に私は…本当に、自分が嫌になる。私はあの伯爵の為に涙なんて流せない。母親にもね。泣く演技なら余裕よ。
私はきっと、冷酷な人間なのだろう。もしも誰かがお兄様を害そうとするならば。このバズーカで躊躇いなくぶち抜くわ、慈悲は無い。
まあエリゼとか、友人達は別だけど。「撃つわよ」と言っても、直撃は避けるわよ。
特にパスカルは…お姉様の命の恩人、そしてお姉様を愛してくれている人。
でも最初の告白が、酔っ払ってパンツ一丁って…酷すぎるわよアレ…。私も半分眠っていたけれど、しっかり覚えているわ。
私が目を覚ました時、パスカルが…顔を赤らめトロンとした表情のお姉様の首筋に…キスしやがっている姿を…!!しかも好きだなんて言うし!!
私は酔っていてあまり頭が回らなかったけど…彼の本気は伝わった。一時の気の迷いかとも思ったけれど、そんな事もなかったみたい。
そしてお姉様も、彼の事が好きだと言った。なら私は…反対する理由も無い。パスカルを信じて…お姉様を託す事に決めたの。
家族のほうも、無能な父親は消え。ゲルシェ先生という、本当にお姉様(とついでに私)を案じてくれる人がお父様になってくれた。お姉様もすっごく嬉しそう、その笑顔だけで1週間は食っていけるわ…!!
お姉様は家族も友人も恋人(仮)も、全てを手に入れた。諸事情あってまだ男装は続けるけど…昔と違い、本当に幸せそうに笑ってくれる。
だからこれからはもう、何も心配する事は無い。お姉様が苦しんで悲しみの涙を流す事は、もう無い!!…はずよね…?
そしてジスランとエリゼの会話が聞こえたのは、偶然だったの。ルネとカフェで過ごしていたら…珍しくジスランの姿が見えたから、ついそっちに耳がいっちゃって。
そしたら…お姉様の話をしているじゃない?しかも、何?お姉様が…私と比較されて、傷付いていた…って?
「………………」
「あ、あの…ティーちゃん…?」
「……ごめん、ルネ。私用事が出来たわ」
そんな話を聞かされて、黙っていられる訳がない。気が付けば私は、2人の前に立っていた。そして…彼らの話を聞いて、絶望した。
私の評価が高いから…兄ではなく、妹が爵位を継げればよかったのに?
凡才の兄が天才の妹に追いつこうと努力をする姿は、滑稽を通り越して憐れだ。
自分が無能だから、持っている人間にくっ付いて守ってもらっている…。
彼らは、自分達が知っているのはこの程度だと言う。知らないだけで…もっと色々言われている可能性が高い…わよね…?そして、それらがお姉様の耳に入っているかは…知らない。
でもお姉様は、いくら努力しても結果が出ないと…泣いた事があるらしい。そんな風に足掻く姿を、皆が嘲笑う…どうすればいいのかわからない、と叫んだ事があるらしい。
なんで…私に相談してくれなかったの…?
嘘…私、知らなかった…。だ、だって、私はお姉様の、自慢の妹で…あれ、え?
その後私は目が回ってしまって…立っていられなくなってしまった。ジスランに抱えられ…タウンハウスまで帰る。
先に帰っていたお姉様とバジルに心配されたけど、ただの貧血だと言って誤魔化した。そこへエリゼが…ジスラン達がいなくなった隙に、教えてくれた。
「………シャルロット。セレスは先に生まれたから男に仕立てられた。ボクの考えでは、彼女は…お前に重荷を背負わずに済んで良かった。と思っているんじゃないかな。
同時に…お前に、女性としての全てを奪われたとも思っている。だがな、その2つの相反する感情が混ざり合って、今のセレスを形作っている。
あいつはお前を心の底から愛しているが、同じくらい憎んでいた。今はもう、先生やパスカルやランドール先輩から愛情を貰っているから…お前への憎しみも、無いかもしれない。
そして。セレスはお前にそういう感情を抱いていたと…お前にだけは知られたくないと思っている。だから今日聞いた話は絶対にセレスにはするな。いいな?」
という言葉に、私は静かに頷いた。
誰も部屋に近寄らないよう言い、暗闇の中私は1人考える。
テストで一番になった時、お姉様は本当に嬉しそうにお祝いしてくれた。でもその裏で、口さがない者の言葉に傷付いていた?
お姉様の努力する姿が…滑稽だ?お姉様の事を何も知らないくせに…?
私は確かにお姉様を守りたいと思って頑張ってきた。でも…私はいつも、お姉様に救われている、癒されている。それはバジルもジスランも同じ、私達の中心はお姉様だもの。
ただこれらは入学当初の話で、最近は聞かないらしい。それでも、お姉様の心が傷付けられた事に変わりはない。
あんなにも心優しいお姉様。私がこうやって怒るから、傷付くから…自分の苦しみを打ち明けてくれなかったのでしょう。
男装だってそう。エリゼの言う通り…私はずっとお姉様を傷付けてきたのだろう。
今でこそお姉様にはパスカルがいるけれど…多分昔は、ジスランに好意を寄せていた。
そんなジスランはお姉様の前で私のドレスを褒めたり、贈り物をしたり。お姉様は…その光景を、どんな顔で見ていた…?
というか…贈り物は半分は、お姉様宛のを私が奪った物だけれど。私もお姉様を男性だと思っていたから…「男性に花を贈るとか、マナーがなってないわ」とか考えて。あれ…私、最低だわ?よかれと思って…え、私を殺したい。
他にも幼少期、私が新しいドレスを見せたら大泣きした事があった。あれ…自分も着たい、って事だったのよね…?お姉様本人に直接聞けやしないから、全ては想像でしかないけれど。
男装に関しては無能伯爵が全ての元凶だから、死後も苦しむよう呪いを掛けておこうっと。
ベッドに横になり、布団を頭から被ってこっそりと涙を流す。
私は、お姉様の為になると思って…世間に良い顔をし続けて来たのに…。それが全部、裏目に出ていたなんて…。
しかも私には、それを謝罪する事も出来ない。
「……ごめんなさい…お姉様…!」
だけどこのままでいられる訳もない。だから——…
※※※
今すぐ自分をぶっ殺してお姉様に償いたいというアクロッティと。
お姉様が悲しむわ、私が笑顔でいる事が彼女の喜びでもあるのよ!と言うヨシロッティが争い続けて約1週間。あれ、この場合善悪逆かしら?
どうやら私は、誰かから嫌がらせをされているらしい。
私は別にダメージも無いけれど…お姉様が私の為にぷりぷり怒ってるのが超可愛い。なので犯人もっとやれという思いもあるが、段々とエスカレートしてきたわ。
ついに今日は植木鉢が降ってきた、避けたけど。そろそろ動かないとね…今まで泳がしていた間に、犯人の目星はつけてある。いい加減、誰に喧嘩を売ったのか教えてあげましょうね。
ルネに協力を頼み、お姉様を教室から追い出す。お姉様の前だけでは私、いつでも愛らしい妹でいたいもの♡
「さて、と…。この場の全員に、聞きたい事があるわ」
教卓の前にルネと並んで立ち、クラスメイトを見回す。右手にバズーカを構えて。
その様子に全員が騒つく。バジルとパスカルは私がお姉様を追い出した時点で何かを察したのか、教室から逃げようとした。残念、窓もドアも魔術で塞いであるわ。
バルバストル先生には申し訳ないけど、このクラスは私が乗っ取った。
「まずね。私最近…嫌がらせをされてるのよね。心当たりのある人、だあれ?」
私達は、左右に別れて全員の反応を見る。一瞬たりとも見逃せない、視線や挙動がおかしい奴は…あぁ、みーつけた。
私と目を合わせようとしない、教室全体の反応を窺っている、共犯者とアイコンタクトを取ろうとする女子。予想通りの相手だわ。
「こっちにも1人…見つけましたわ」
「ありがと。そいつらは後で全て吐かせるとして…次ね。
ねえ…この中で…一度でもお兄様を悪く言った事がある、傷付けた事のある人…手を挙げて?」
その発言に、真っ先にジスランが手を挙げた。あんたはもういいっての…馬鹿真面目なんだから…。でも、他にはいないのかしら…?
私から目を逸らすのが半数はいるわね。同志(セレスタンファンクラブ・天使同盟メンバー)は険しい顔をしているわ、よきかな。
「はあ…ここで素直に手を挙げれば赦してあげたのに…いいわ、連帯責任ね。エリゼ!」
「あーもう!この馬鹿め…!」
エリゼが私の足元に魔障壁を展開する。先生も私が何をしようとしているのか気付き、教室全体に展開した。これなら…!
「2(ドゥ)!!!」
私は足元に向かってバズーカを発射した!!
実はこれ、使用者である私には無害なのよ。爆風で吹っ飛ばされる事もない。なのでルネは私の後ろにピッタリとくっつき…他全員吹っ飛びやがれえええええ!!!!
ドゴオオオオォォォン!!!
クラスメイト達は、声もなく吹っ飛んだ。男も女も。エリゼと先生のお陰で…目立った怪我人はいないわね。
脳震盪くらいは起こしているかもしれないけど、すぐには死にゃしないわ。さあてっと。
目的の女生徒を瓦礫(机と椅子)の中から見つけ出し、首根っこを掴み持ち上げた。
「ご機嫌よう、クライ令嬢。貴女にお聞きしたい事がありましてよ」
「ひ…!ひ、人違いじゃありませんか!?私は何もしていません…!」
「あらそう?…………私、拷問苦手なの。出来れば尋問の時点で全て吐いて欲しいわね」
にっこりとそう言えば…彼女は静かになったわ。こういう時の為に、バティストに尋問の技術を教わっておいてよかったわ。拷問は教えてくれなくて本で読んだだけだから、うっかり殺してしまうかも。
『拷問はねえ…かなーりの技術が必要だぜー?あたしも詳しくねーし。専門家の知り合いならいるけど…シャルティエラお嬢様が悲しむぜえ?
んだからやめときなー。相手が素人だったら、道具チラつかせるだけでも効果あんぜ』
という言葉を信じて、とりあえず道具は借りて来た。いざとなったら使おう。
その時、教室のドアが刻まれお姉様が入って来た。…あーあ、見せたくなかったわ。でも丸い目でぽかんとしている可愛い姿が見られたから、それはよし。
ルネが捕まえたもう1人も引き摺り、外に出る。私が微笑めば誰もが道を空けるわ。ああ快適。
やはり私は特別なのよね。私が微笑むだけで、全て解決しちゃうんだもの。なんちゃって。
捕まえた2人は、意外と簡単に吐いたわ。どうやら彼らはそこまで愚かでは無いようで、どちらに付いたほうがいいのか…理解しているみたいね。
男のほうは一回爆発したけど。その衝撃でアフロになって、面白かったから在学中はそのままでいるよう命じた。今後はアフロ男爵と呼ぼう。
で…私に嫌がらせをしたのは、ゼルマ・サルマンとかいう女の命令。いや誰よあんた…?
どうやらソイツはパスカルに執着しているらしい。そして彼には愛する人がいるという情報を得て、その相手(笑)である私が憎いらしい。
はあ…要するに勘違い?でも本当は…お姉様を狙うはずだった、という事よね?
ふーーーん…………そう。ヤるか。
その後も2人から、他には仲間はいないのか等聞き出す事に成功。もう用済みだけど…今後何かに使えるかしら?
「情報感謝するわ。これから調べるから…もし貴方達の言葉が間違っていたら、分かってるわね?」
「「イエス、マム!!!」」
よし。こうして彼らを五体満足、無傷で帰してあげた。私って優しい。
それから数日後。現在私は、サルマン邸の前にいる。もちろん、カチコミよ。お供にバジルとバティストを連れて来た。
正々堂々乗り込み、侯爵に面会を申し込む。玄関で待たされる事数分、侯爵はやって来た。
「はあい、ご機嫌ようサルマン侯爵。ご令嬢について、お話よろしくて?」
「………ラウルスペード令嬢。いくら公爵令嬢といえど、事前連絡も無しにこうして…」
「ぐだぐだうっさいわね。コレを見てからモノ言いなさい」
説教しようとしやがるから、とっとと本題に入る。
バティストがスッと出した資料を、顔を顰めながら乱暴に受け取った侯爵は…すぐに青ざめさせた。
それはバティストに頼んで調査してもらった報告書。
ゼルマが今まで何をしてきたかが事細かく記されているわ。ついでに侯爵の浮気の証拠も。サルマン家は奥方が強いと聞いていたから…コレ、見せちゃおっかな?
「どうやら今までも、パスカルと少しでも親しくなった女性達に嫌がらせをしていたみたいねえ?
他人の弱味を握り、操り、気分は女王様かしら?見てくださらない?彼女のこれまでの行動を。殆どが幼児レベルのものだけど、殺人未遂もしてるみたいね。
…まあ、大変!!サルマン令嬢ったら、怪しい男達と密会をしていたみたい!何々…「赤髪の女を襲って、女としても人間としても再起不能にして欲しい」…なんて依頼してたみたい?
あらまあ…赤髪の女、誰の事かしらあ?教唆犯って確か、実行犯と同様の処罰を受けるのよね」
私は自分の真紅の髪を弄りながら言った。
侯爵は今にも泡を吹いて倒れてしまいそう。まあ可哀想、やめてあげないけど。娘の教育を間違えた結果よ。
「ふう…立ちっぱなしで足が痛くなっちゃったわ」
「今すぐ応接間にお通ししなさい!従者の方も丁重におもてなししなさい!」
「あら、そんなつもりは無かったのに。じゃあお言葉に甘えて…ふふふ」
「「………………」」
バジル達は引き攣った笑顔のまま、私の後ろをついて来るのであった。
「(シャルロットお嬢様マジこええ…。学園で女帝と恐れられているだけの事はある…)」
その後サルマン令嬢がどうなったかって?さあ、知らない。クラスも違うし顔もうろ覚えだから、学園に来てるかも分からないし。
まあ私への嫌がらせは無くなったけど。更にパスカルは、「なんか知らんがサルマン令嬢が、婚約者候補を辞退した」と言っていたわ。不思議ねえ。
さて、トラブルも解決したし…もうくだらない演技はやめにしよう。好きでもない、益にもならない相手に愛想を振り撒いて、得たものなんて何も無い。
でもお姉様には褒めてもらいたいから…勉強とかはこれからも頑張るけど。ラウルスペードの家紋に泥を塗るのも嫌だし。
今後は敵と味方、完全に分けよう。嫌なものは嫌とハッキリ言ってしまおう。
……私の素行が悪くなったら、お姉様の評価は上がるかしら?でもお姉様を悲しませたくない…その辺は今後の課題ね。
さて…お姉様の快適な学園生活の為、あらゆる手を打っておかねば。
「それでは本日の集会を始める!!!」
「「「はい!!!」」」
放課後、私達の教室で。お姉様ファンクラブの集会は不定期にここで開かれている。
天使同盟メンバーは着実に増えているのよ。現在は40人ちょっとかしら、そろそろ教室じゃ狭くなってきたわね…。
「知っている者もいるでしょうけど…お兄様はかつて、他人から悪様に言われていたようなの。…証拠も無いから全てを罰する事は出来ない。
でも、今後はこの私が許さない!!お兄様に関する噂話は、善し悪しに関わらず全て私に報告なさい!!いい働きをした者には、秘蔵写真を贈呈するわ!!」
「「「イエス、マム!!!」」」
よし。アフロ男爵含むサルマン令嬢の手下は、全員メンバーになったわ。これからは私の手足として働いてもらいましょう!
あら?お姉様が…空をぼんやりと眺めているわ。何か面白いものでもあった?
「ん…あの雲…肉の串焼きに似てるなって…。お腹すいた…」くきゅうぅ~…
お…お姉様!!なんという観察眼、着眼点の素晴らしさ!!そして可愛いお腹の音…飴食べる!?
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その頃、ラウルスペード邸にて。
「なあバティスト。なんかロッティへの求婚が激減したんだけど。この間教室でバズーカぶっ放したってのと関係あんのかな…?」
「………さあ~?(無関係なワケねえだろ…)」
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