92 / 224
学園1年生編
sideオーバン
しおりを挟む話は遡り、セレスタン達が司法省に訪れた日のこと。
「願いの前にまず、爵位の話からしたい。
あんたは俺が皇室を抜けるっつった際、ラウルスペード公爵となるよう言っていたよな」
「そうだ。それは私だけでなく、父上と母上の願いでもある。
だがお前は奥方…イェシカ殿は根っからの平民だから、とても公爵夫人は務まらないと…保留にしたな」
そうだ。…ただでさえ身体の弱いイェシカに、重荷を背負わせたくなかった。
俺が初めてイェシカ・ゲルシェと出会ったのは…まだ学生の頃、4年生だったか。
俺は第二皇子として生まれ育ったが…どうしても、周囲の態度が気に入らなかった。皇子という立場に生まれた以上仕方のない事だと理解しているのだが…。
廊下を歩けば使用人も貴族も道を開け、頭を下げる。俺が言えば黒も白くなる。そういった全てが…疎ましかった。
俺はそれほどの人物なのか?学業や魔術、剣術、芸術…あらゆる面において俺は、一応平均以上の成績を収めてはいるが。
どうしても…他人に敬われる生活が嫌だった…。
そんな中、一度だけ皇太子である兄に聞いてみた事がある。
『兄貴…あんたはいずれ皇帝になる。その事や今の生活に…不満はねえのか?』
『不満?…特に考えた事無いな』
兄…ローラン・グランツはあっさりとそう言い放った。膝の上にポチを乗せ、頭をわしゃわしゃしながら「なんで?」とすら言いやがったのだ…。
ポチはそんな兄の膝から逃れ、俺のとこに来た。
『…皇帝って、重責じゃねえか?俺はな…今の扱いでさえ重いんだ。
かと言って「もっとフランクに接して欲しい」と思っても…「皇族として、誰に対してもそのような事を許してはいけません!」なんて家庭教師に怒られて。
でも俺…そんなご立派な人間じゃねえよ…』
俺はポチの腹を撫でながら言った。
そんな風に考えていたら俺は…なんかもう、疲れた。人と関わるのが面倒になってきたんだ。
子供の頃からずっとそう考えていたせいか、いつの間にか俺は家族以外の人間を遠ざけるようになった…。
兄貴には「お前って0か100しか無いの?真面目な面倒くさがりなんだな」と言われた。
『んー…まあ重責なのは確かだな。私達は国の象徴としてあり続ける必要もあるし…。
将来は、私がよほど人格等に問題がなければ自動的に皇帝になるんだよなあ。そこを辛く感じた事はある。
私より優れた人間なんざいくらでもいる。だが…王の在り方も人それぞれだ。
私は民の生活を見て言葉に耳を傾けて、よりよい生活にしたい…そういう皇帝で在りたい。
それに優秀な部下さえ揃っていれば、国は回るものさ。ただし私は玉座にふんぞり返っていればいいって話でも無いがな。
まあ確かにお前には…今の生活は向かないのかもしれない。
というかな、「そういうものだ」と割り切るしかない。私達は皇族という…他者から一線を引かれ、無条件で敬われる存在だと。
ま、お前が今の暮らしを窮屈に思うなら。他の道を行けばいいさ。
国は私に任せとけ。皇族のまま生きるもよし。臣籍降下するもよし。…どっちにしても皇弟という身分からは逃れられないがな』
兄はそう言って笑った。
『それよりもっと友人を作れ、と言いたいところだが。
お前には1人、いるじゃないか。気の置けない友人が。きっと彼は、お前の力になってくれるさ』
そう。幼馴染でもある友人、ジャン=バティスト・ファルギエールは、俺が唯一家族以外で心を開ける相手だ。
奴はファルギエール辺境伯の次男であり、奔放な自由人。
初めて会った時は…「おお、あんたが皇子さまか!よろ!」とか言ってニコニコで手を出して来た。
その時俺らは6歳。バリバリ人見知り発動中だった俺は…戸惑いながらも、無言でゆっくりと右手を出した。
奴はそんな俺の手をガシッと掴み、上下にブンブン振り回した。
そして俺を強引に連れ回し…「これうまいんだわー」「なあなあ、木のぼりしたことある?」「そのはっぱ、どくあるぞ。食うなよ?」と…色々な世界を俺に教えてくれた。食わねえよ、ボケ。
まあ父親である辺境伯は…いつもめっちゃ怒って奴を追っかけ回してたな…。
『お前はまた皇子殿下に変な事をーーー!!!』
『なんだよ!父上が母上とけっこんするまえに、5人くらいのれいじょうにフラれた話をしただけだぞ!』
『なんで知ってるんだお前は!!!誰に聞いた、コラーーー!!!』
『とあるすじからのじょーほーさ!!おしえらんねえなー!!』
と…。お決まりのその光景に、俺の両親も兄も、バティストの兄と母もいつも笑っていた。俺も、笑っていたのだった。
そんな男との縁は、アカデミーに入学してからも続く。
「なーなー。オメー、あたし以外にも友達作れよー」
「あ?…めんどいから、いい」
「はーーーっ!ったく…まあいいや」
いいのか…。
「それよりよお、最近首都に出来た香水の専門店。そこの店番の子がちょー可愛いんだわ!
行こうぜ行こうぜ、会いに行ってみようぜ!」
「えー…?」
こいつは女好きというか…色んな女性にちょっかい出しまくっている。
それでも決定的に手を出す事はせず、やたらと女友達がいる状態だ。
「女を敵に回すとこえーぞ!」とは本人の談。
そしてこんな風に、「可愛い子見に行こう!」と言うのも日常茶飯事。
色んな令嬢や平民の女性の元に足を運んでは、「可愛いけどタイプじゃねーや」と言いやがる。
ただしコイツは誰に対しても可愛いと言うので…筋肉逞しい女性に「ちょー可愛いー!!」と言っていた時はビビった。
後になって知った事だが…これは、俺に彼女を作ってもらおうと行っていたらしい。
俺の好みが分からないから、様々なタイプの女性に片っ端から会わせていたらしい。
だからと言って…熟女と幼女は除外して欲しかったかなー…。
確かにそのお陰で、俺はイェシカと出会えたのだが…。
結局私服に着替え、お忍びで街までやって来た。俺は一体何してんだ…?
「ここか?流石に男2人じゃ入りづれえ…」
「はー?男だって香水くらい付けるっつーの。
で…どうどう、どう思う?」
「どうってお前…」
バティストに連れられ、店の外から中の様子を見る。
んん…?あの、カウンターにいる女性か?俺らより少し年上かな。確かに可愛らしいが…彼女よりも美しいご令嬢達なら、いくらでも見てきた。
騒ぐほどでもないが…。
「……ああ、可愛いんじゃないか?」
「!!?(これは、アタリか!?今まで「いーんじゃねえの?」しか言わなかった男が…!!)
よっしゃ会いに行こう今すぐ行くぜー!!」
「はあ!?ちょ、おい!!」
俺の言葉など一切合切無視して腕を引っ張り、店の中に入ってしまった…!
「いらっしゃいませ」
「…………」
「わー、おねーさん声可愛いねー!」
「まあ…ふふ、ありがとうございます」
バティストの言葉に頬を染め微笑む彼女は、確かに可愛らしかった。
それに、その鈴を転がすような声が…心地よいと思った。
いや。そんな姿も演技かもしれないし…うん。
「贈り物ですか?」
「そーそー。あたしの彼女に贈りたくってー。でもこーいうの詳しくないんだわ、教えてくんねー?」
「はい、喜んで。例えば…」
バティストに対する姿を…なんとなく目で追ってしまう。店番を任されるだけあって、所作はそれなりだ。
「そうですね…若い女性でしたら、こちらなど如何でしょう?
香りはもちろん、瓶も可愛いと評判なんですよ」
「おっ、可愛いねー!色違い無いの?」
そして香水の知識も豊富で、特に興味の無い俺も聞き入ってしまったほど。
「……ほー!じゃコレちょーだい」
「ありがとうございます」
どうやら買い物は終わったらしい。結局この2人が香水トークで盛り上がっている所を見ていただけだった…というか、俺は店に入ってから一言も発していない…。
商品をラッピングしている間も、バティストは彼女に声を掛ける。
「ねえねえ!お姉さん名前教えてよ~。
あたしはジェイド・ファロだよ。こっちの静かなのはアウル・スラント。
普段は無口じゃねーんだけど、可愛い子の前だと上がっちゃって声出せね~の!」
「違うわっっっ!!!?…あ、いや…えっと」
ジェイドとアウルというのは、お忍び中の俺達の偽名だ。
彼女は俺達のアホなやり取りも…笑顔で見ていた。
「ふふ、ファロ様にスラント様ですね。
わたしはイェシカ・ゲルシェと申します」
イェシカ…か。
「イェシカちゃんね!そんな様付けなんてやめてさ~名前で呼んでほしーな!」
「えっと、では…ジェイドさんと、アウルさん?」
「おっけい!!」
…アウルさんか…。
この日バティストは「また来るねー!」と言って店を後にした。
そして…次の日早速俺を連れ突撃したのだった…。
「イェシカちゃん昨日ぶり!
今日はさー、アウルに付ける香水いいの無い?こいつさあ、男が香水付けてどうすんだって言うんだよー!」
「んな事言ってない!!」
「まーまー!んでさ、イェシカちゃんだったらどういうの彼氏に付けて欲しいと思う~?」
俺はバティストの背中を思いっきしつねってやった。
イェシカは、奴のアホな質問にも真面目に答えてくれる。
「うーん…そもそも香水は種類によって持続時間も変わりますが…普段はお付けにならないのですよね?」
「…ああ」
「でしたらこちらのオーデコロンがお勧めです。
香りはシトラス系が定番、ハズレ無しと言えます。私でしたら…フゼア系の香りが好きです。
ですがこちらは大人の男性向けですし…やはりシトラス系にしてみてはいかがですか?」
「うーん!どうする?」
「え、俺?」
「おめーの買いに来たんだろーが!!」
そう言われても…分からん。なので勧められるがままに、シトラス系というやつを買った。使う予定は無いが…。
「今度からイェシカちゃんに会う時は、ぜってー付けろよー?」
「……お前は、彼女の事が気に入ったんじゃないのか?」
「もち!可愛いーし!でもあたしのタイプじゃねーんだわ…いってぇ!!」
俺は無言で奴の頭を叩いた。
これが、俺達の出会い。
それからも俺達は…度々店に足を運んだ。
まあ大体喋っているのは2人で、俺は相槌程度だが…それでも、楽しい時間だった。
そんなある日、バティストがイェシカをお茶に誘った。もちろん俺も一緒にと…彼女は迷ったが、受けてくれた。
「……何着て行こう…」
「…お前、服屋でも開くの?」
「だあぁ!?あ、兄貴!ノックくらいしろボケっ!!」
「したわボケ。叩きすぎて私の手は真っ赤だわアホ」
その日の夜。俺はクローゼットを漁り…来て行く服で迷っていた。
お茶と言っても貴族のお茶会ではなく、カフェに行くだけ。
平民っぽくて…でも小綺麗で…堅苦しくなくて…お洒落?分からん!!!
と、持ってる服を床やらベッドの上に並べていたら…兄貴が部屋に入ってきた。そして赤くなった手を見せつけてくるが…全然気付かなかった…。
「で、どこに行く服だ?」
「……別に。カフェ行くだけ…」
「ふむ…黒はいいな。困った時は取り敢えず黒着てろ。でも明るい色も少し入れろよ。まあ…白でいいか。
シャツは白で、うーん…このグレーの七分袖ジャケットとか?」
と、兄貴はホイホイ決めて行く。それでいいのか俺…。
結局兄貴に全身コーディネートされ、次の日俺は待ち合わせ場所に向かう。もちろん、香水も付けた。
まだ2人は来てないか…少し早く来すぎたかな。と思っていたら、イェシカが現れた。
「あら?アウルさん早いですね。お待たせしてしまいましたか?」
「あ、いや…俺も今来たところで…」
「そうですか、良かった」
そこで会話は終了してしまった。
……お願いバティスト早く来て。
「香水…付けてくださっているんですね」
「あ、ああ…ジェイドがうるさいから」
余計な事言ったな俺…!まるで嫌々付けてるみたいじゃないか!!!
だが彼女は気を悪くした風でも無く、「本当に仲良しなんですね」と笑った。つられて俺も笑った。
そこにバティストが「わっりー!遅れたー!」と走って来た。
だが合流した途端…奴の頭上に紙が落ちてきた?手紙か…なんだ一体?
「んあ?なんだコレ。
………大変だアウル!父さんがスーツに革靴で雪山登山を決行し遭難し眼鏡のレンズだけ発見されたらしい!!
あたしは残る眼鏡のパーツを探しに行ってくる、カフェは2人で楽しんできてくれ!!!!」
「はああぁ!?お前それ先に父上探してやれ…っていねえ!!?」
俺の返事を待つ事もなく、奴の姿は消えていた…。
あの野郎…ここまでくれば俺にも分かる、あいつは俺達をくっ付けようとしていると…!!
だが…分かってるのかあいつは?俺は皇族で、彼女は平民だ。仲良くなれたとしても…結ばれるはずが無い…。
俺がそう考えていたら…イェシカが蹲っているのに気付いた。
どこか具合が悪いのか!?そう不安になった俺は、彼女の背中をさすった。
「イェシカ、どうした!?具合でも…!」
「……ん、んぶっふ…!!」
「………ん?」
どうにも…様子がおかしい。
「は、あは、あっはははははは!!!ちょ、ジェイドさっ、あはははは!!!?」
俺はぽかんとしてしまった。彼女はいつも笑う時は、控えめにお淑やかに「ふふ」と微笑むのだが。
今の彼女は地に膝を突き腹を抱え超笑っている。周囲の視線も憚らず、ここが室内だったら笑い転げているに違いない。
「ひっひぃ~…んふふふ…!!なんっで、バレバレの、ふふふふ…!!
しかも、アウルさんっもっ、ジェイドさんのお父様を、「本体」呼びって…!!
あーっはっはっはっはっ!!!!」
………………俺は一体どうすればいいんだろう。
とりあえず……笑いの収まらないイェシカを引き摺って、目的地のカフェに向かうのであった。
「お恥ずかしい所をお見せしました…」
「………いや、意外な一面だったが」
「わたしは…ツボにハマるとああなってしまうのです…」
その後正気に戻ったイェシカは、顔を真っ赤にして謝罪してきた。
だが俺は全く気にしてないし…面白いもん見れた、くらいにしか考えていない。
その後はポツポツと会話をする。そして気付いたが…彼女もあまり口数が多いほうでは無いらしい。
よく考えたらいつも喋ってるのはバティストばかりだったな。とはいえ…俺との会話がつまらなくて静かなのかもしれんが…!!
それでも俺は。話題が途切れた時の沈黙も、苦では無かった。彼女がどう考えているかは分からないが…。
結構な時間が経っていたので、店を出る事に。金額を確認し、財布を開いたら…何か紙が入ってる?俺入れた記憶な………………
『女性に支払いをさせるな!デート中は全てお前が支払え!!
カフェだけで終わらせるな、どっかショッピングでも行って来い!!買うもん無かったら私に土産の1つでも買って来い!!』
………クソ兄貴ぃ…!!何故バレ、ってデートじゃねえ!!!元々3人の予定だったし…!!俺はそのメモを握り締めポケットに突っ込んだ。
「?どうかなさいましたか?」
「!!!あ、や。あー……ここは俺が持つ」
「え。い、いえいえ!悪いですし!」
だがイェシカは自分の分は払うと言って聞かなかった。なので俺は…無意識に、言ってしまった。
「じゃあ、次は折半しようか」
「え…次?また…一緒にお茶をしてくれるんですか?」
「………………あ」
しまった!!?つい…!今の俺、気持ち悪くないか…?ウザいとか、引かれてないか…?
恐る恐る彼女の顔を見ると…頬を染め、嬉しそうに笑っていた。
「じゃあ、約束ですよ」
「……ああ」
「ではこの後どうしますか?」
「あ…っと、買い物に付き合ってくれないか?」
「はい、喜んで!あ…それと」
彼女は足取り軽く外に出た。そして遅れて出て来た俺のほうを向き…
「さっき。初めてイェシカと呼んでくれましたね!アウルさん」
と、言った…。その時の笑顔がすごく眩しくて、俺は……
自分が彼女に恋をしていると、ようやく気付いたのだった。
どうして彼女だったのか。大人になっても30も過ぎても、未だによく分からない。多分、死ぬまで分からないと思う。
彼女より美しい、可愛らしい女性なら沢山見てきた。
令嬢には無い素朴さが良かったのか?そうでもない。
豪快に笑い飛ばすところ?いや…面白かったけど。
ただ、初めて会った時からずっと…何故か惹かれていた。
そして彼女も同じ気持ちだったのだと俺が知るのは…もう少し後の事だった。
「ローラン殿下、ナイスタイミングで手紙くれましたねー!」
「うん、もう少しマシな言い訳は無かったのか?」
「今頃きっと、2人で盛り上がってますねー!」
「……………そのイェシカ殿とオーバンが…結ばれると、本当に思っているのか?」
「………あたしはねー、オーバンの味方なんですわ。あいつが望むのなら。いくらでも手はあるんですよー」
「…そうか」
17
お気に入りに追加
558
あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

心を病んだ魔術師さまに執着されてしまった
あーもんど
恋愛
“稀代の天才”と持て囃される魔術師さまの窮地を救ったことで、気に入られてしまった主人公グレイス。
本人は大して気にしていないものの、魔術師さまの言動は常軌を逸していて……?
例えば、子供のようにベッタリ後を付いてきたり……
異性との距離感やボディタッチについて、制限してきたり……
名前で呼んでほしい、と懇願してきたり……
とにかく、グレイスを独り占めしたくて堪らない様子。
さすがのグレイスも、仕事や生活に支障をきたすような要求は断ろうとするが……
「僕のこと、嫌い……?」
「そいつらの方がいいの……?」
「僕は君が居ないと、もう生きていけないのに……」
と、泣き縋られて結局承諾してしまう。
まだ魔術師さまを窮地に追いやったあの事件から日も浅く、かなり情緒不安定だったため。
「────私が魔術師さまをお支えしなければ」
と、グレイスはかなり気負っていた。
────これはメンタルよわよわなエリート魔術師さまを、主人公がひたすらヨシヨシするお話である。
*小説家になろう様にて、先行公開中*
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる