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学園1年生編

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 依頼料はお父さんて…まさか先生!?

 いやいやいや!!紹介してもらっただけで充分なのに、お金まで出させらんないよ!?

「気にすんな、バティストに飯奢るだけだから」

「……そんだけ!?もしや最高級フルコースとか?」

「いや、その辺の呑み屋」

「綺麗なお姉さんがいる系?っでえ!!」

「どこで覚えるんだそういうの!!普通の!居酒屋!!!」

 痛って~…拳骨ぅ。

「あ、今のちょっと親子っぽかった!」

「(父娘の会話じゃねえよ…)」

 でもやっぱ申し訳ない…と食い下がったら、「じゃあ出世払いな」と無理矢理納得させられてしまった。
 …ちくしょう!僕は周囲に助けられてばっかりだなあ…はあ。

 それでも一応依頼は受けてもらえたんだから、僕は大人しく結果を待つ事に。


 こうして先生と一緒に歩いていると…周囲からは本当に親子に見えるのかな?と考えて…なんだかにやけてしまうのだ。先生には内緒だけどね。







 そうこうしているうちに…今日は12月24日、僕の誕生日である。
 ちなみにロッティとバジルには、便利屋さんを雇った事を伝えてある。お代は出世払いってのもね!

 するとロッティはやる気満々。「覚悟しろよお父様…」とか言っちゃってたぞ。ヨミも軽く慄くレベルの殺気出してたぞ!!
 エリゼとルシアンにも無事完了と報告した。ルシアンが先生を頼れって言ってくれて、本当に助かったよ~。



 さて…屋敷は朝からバタバタと忙しそう。誕生日パーティーだもんね~、僕には関係無いもんね!
 関係無いが、ロッティにプレゼントは渡したい。この日の為に用意した…ラピスラズリのイヤリング。これがお金の限界なんだよう…明日のクリスマスプレゼントもあるし。


 さあて、彼女はどこかな?っと部屋に向かう。

 ノックをして、返事を聞き扉を開ける。そこには…綺麗におめかしした、超可愛いロッティが…!

「わあ!凄い綺麗!いつも可愛いけど、今日は磨きがかかってるね!」

「ありがとうお兄様!ふふ、私はお兄様に褒めてもらえるだけで、天にも昇っちゃうんだから!」


 本当に綺麗…朝からメイドに磨かれてメイクも施されたロッティは、どこからどう見ても主人公。
 そのドレスも初めて見る…宝石が適度に散りばめられ、キラキラ光って綺麗…!

 対する僕は普段着さ。
 ……うん、正直に言おう。ロッティが羨ましくて仕方ないと。僕も…こういうドレスが着たい、と…。
 …いいもん。あんな親から、ドレスなんて貰いたくない!
 でも他にくれる人なんていないしな…。家族以外から貰うって事は、求婚と同義だし。普段使い出来るようなドレスなら別だけど。

 …いつか、自分で買おう!


「っと…はいコレ、誕生日おめでとう、ロッティ。君が生まれてきてくれた奇跡に感謝を」

 コレは本心。僕の大好きな妹なんだもん!

「ありがとう…お兄様!!私からもコレ、プレゼント!
 いつも私の心の支えのお兄様。ずっとずっと、愛してるわ」

 ロッティは眩しい笑顔で言ってくれた。うん、僕も愛してる!



 自分の部屋に戻り、早速開けてみる。
 ロッティからのプレゼントは…タンザナイトの、ネックレス?
 綺麗…光の当たり具合で色が変わる…。

 でもコレ…男が着けて、おかしくない…?まさかロッティ、僕が女だって気付いてる…?訳ないか。
 とりあえず着けてみて…鏡を見る。素敵…いや、どう見ても女物…いやいや、男が着けて何が悪い?…考えすぎてしまう!!



 とそこに、ノックの音が響く。誰かと思ったらバジルだったので、どうぞ~と通す。


「失礼します。おや、そちらはお嬢様からのプレゼントですね?大変お似合いですよ!」

「本当?ありがと!…じゃなくて!!ねえこれ、僕が着けてておかしくない!?」

「いいえ?素敵です」

「そっかな~?えへへ、じゃあいっか!」

「(いいのか…。僕も「失礼ながら…コレは男性に贈るには不適当なのでは?」と言ったけど、「似合いそうだからいいじゃない!」って押し切られたんだよな…。
 でも確かにお似合いだ…すごいなお嬢様)
 僕にもお祝いさせてください。お誕生日、おめでとうございます!貴方と出会えた事、僕の最大の喜びです。
 そしてこちら…僕からの贈り物です。受け取っていただけますか?」

「ありがとう、バジル!もちろん貰います、嬉しいよ」

 僕が喜んで受け取ると、バジルも笑顔になってくれた。
 何かな?後でゆっくり見よう!


「ところで坊ちゃん…風の精霊様はいらっしゃらないのですか?」

 ?ああ、ヘルクリスか!
 彼、結構僕から離れる事多いんだよね。こないだファロさんち行った時もそうだけど、気ままに飛んでるか教会で子供達と遊んでるか。
 呼べばすぐ来てくれるからいいんだけどね。「常にヨミがいるのだ。私は自由にしていて構うまい」ってさ。夜は必ず僕と一緒にベッドで寝てるけど。

 …ん?精霊といえば…




「…坊ちゃん?」

「……え、あ!?ごめんね、考え事してた!何か言った?」

「あ、いえ…もうじきエリゼ様とジスラン様がお見えになる頃かと」

 もうそんなか。2人もなんかくれるのかな~?なんてね!




 さて。バジルが退室した後…僕はヨミに声を掛けた。

「ねえヨミ。この間のファロさんちの猫…シグニさあ。君の事、怖がってなかったよね…?」

 あの時はまるで気付かなかったけど。ヨミは死神だから、森羅万象が彼を恐れるって聞いたけど…?
 シグニはヨミの事を横目で見てたけど、ずっと僕の膝の上で丸くなってたし。

 まさかあの子、最上級精霊じゃないよね?そんな僕の問いに、ヨミは影から出て来て僕のネックレスをいじりながら答えてくれた。


「精霊じゃないよ。ただの猫でもないけど…。あれは、魔物だよ」

「へー。…え、ええぇ!!?」

 魔物って…大丈夫なの!?

「ん…大概の魔物は凶暴で人や動物を襲うけど…何事にも例外はあるでしょ?
 あの子はどうやら、そういう欲が無いみたいだね…。だから、ぼくも見逃した。
 それにああ見えてぼくの事を恐れてたから、シャーリィの膝から降りなかったんだよ…。
 あの建物の中で、そこが一番安全だって分かってたから。
 なんであそこにいたか知らないけど…あの子は誰かを襲う気は無いよ」

「そう、なの…。だよね…魔物だからって、偏見の目で見ちゃ駄目だよね…!」

「いや、人畜無害な魔物なんて滅多にいないよ。数百年に1匹レベルじゃないかな…だから普段は、ガンガン警戒したほうがいいよ…」

 うそん。じゃああの子以外の魔物は即殺って事か!
 すごいな、魔物なんて初めて見た!完全に普通の猫だったな、見分けつかないよ。

「あれはアダンダラっていう魔物だよ…。高位の個体になると、その赤い目で睨むだけで相手の命を奪える…。それこそ、精霊で言うところの最上級クラスなら。
 で…あの子はまさに最上級クラスの個体だね。でも自分で赤い目を1つ封印してるし…うっかり睨んじゃっても、気絶程度で死にはしないと思うよ…。
 まあ…目に頼らなくても充分強いけど」

「こっわ!?睨むって…見るだけなら大丈夫なんだ?僕ばっちり目、合っちゃったけど」

「うん…魔力を込めて無いから大丈夫」

 ひー。アダンダラか、覚えとこう。
 ファロさん…気付いてるのかなあ?気付いてて飼ってるのかな?



 そんな話をしていたら、バジルがジスランとエリゼを連れて来てくれた。2人とも正装だ、格好いいね!
 シグニの話はここで終わり。今度会った時…声掛けてみようかな?




「セレス、誕生日おめでとう!」

「お前も13歳になったな。これからもよろしくな」

 2人も僕にプレゼントをくれた。ジスランは…短剣。このセンスよ。
 エリゼからは魔術の本。ほほう、この術興味深いですね。
 ちなみにバジルからはブレスレット!ロッティとお揃いなんだって、嬉しい!


「えへへ…皆ありがとうね」


 うん…ほんとに、嬉しい。パーティーには参加出来ないしする気もないけど…本心から祝ってくれる友人達がいる。
 それだけで僕は…頑張れる。


「パーティーが始まる頃には僕、教会に行くつもりだけど。2人はパーティーに参加するんだっけ?」

 それぞれ僕の部屋で勝手に寛ぐ。
 僕は早速貰った本を、ベッドの上に座って読みながら聞いてみた。彼らの予定はどうなってんだろう。

「俺は毎年参加しているから…こっちにいるだろうな。
 お前にもお祝いを言えたしプレゼントも受け取って貰えたし、充分だ」

 ジスランはソファーに座りながらそう言った。うんうん、僕の代わりにロッティの側にいてあげて。

 そういやルネちゃんとかは来るのかな?
 大体の家は、成人の誕生日パーティーは盛大にやるけど、それ以外は身内だけで済ませる。
 この2人以外は来るって聞いてないし…多分プレゼントだけ送られてくるのかな。僕もそうしてるし。


「ボクは一緒に教会に行く。でも…パーティーも最初だけ顔を出すから、少し待っていてくれないか?」

 エリゼは僕の勉強机で本を読んでいる。…それバルバストル先生から借りた恋愛小説ー!!!
 まあいいけど…君、そういうの興味あんの…?
 エリゼとは明日の話もしたかったし、2人きりになれるのはありがたい。


 僕達はパーティーの時間まで部屋で時間を潰す。
 時間が来ると2人は出て行った。さて、エリゼが来るまで教会に行く準備でもすっか。

 …ん?ヨミが窓の外をじっと見てる。


「……ちょっと待っててね」

「え?うん」

 ん?そのまま外に出ちゃった。すぐに戻って来たけど…なんだったん?



「待たせたな」

 暫くするとエリゼが戻って来た。そして時計をちらっと見て…

「…少しここで明日の話でもして行くか!」

「え、いいけど…僕移動中にするつもりだったよ」

「いいからいいから」

 ???エリゼは強引に僕をソファーに座らせる。

 明日の話といっても…僕は昼、一度バルバストル先生の家に行くよう言われている。
 そこで支度をするらしい。予定は全部兄様が考えているらしいから、僕はついて行くだけ。


「エリゼも兄様から連絡受けてるんでしょ?」

「ああ。ボクは5時に集合場所に向かう。その後は知らない」

「ほほう。ねえねえ、クリスマスプレゼント何買った?」

「そりゃ、秘密だ」

 だよね!僕もちゃんと皆の分用意したよ!
 この国ではクリスマスプレゼントは、送ってまで渡すもんじゃないんだよね。
 あくまでも家族や一緒に過ごす人に贈るの。だから3人とー…ロッティとバジルの分はある。今年はジスランの分は無し。一緒に過ごさんのでな。


 …って、明日の話終わっちゃったよ。じゃあそろそろ教会に…

「あ、あー!セレスはこういう本好きなのか!?」

「だああ!びっくりした!…その本は借り物なのっ!!」

 立ち上がろうとしたらエリゼが大声で、恋愛小説を僕に見せてきた。君だってさっき読んでたじゃん!


「ボクはまあ、参考に。
 でだ。セレスはこういう…ストレートに告白されるのと遠回し、どっちがいい?」

「返さんかいっ!……僕はストレートがいいかな。察しがあまり良くないし…」

「確かにな!」

 なんとなくイラッとする…何故僕は、エリゼとこんな会話をしているのだろう…?


 暫くそんな話をしていたら満足したのか、エリゼが「教会行くか!」と立ち上がった。
 全く…ヘルクリスを呼び、空を飛ぶ。


「……なんかヘルクリス、今日はゆっくり飛ぶね?」

「気分だ」

 気分かー。いつもは1分もかかんないのに、今日は10分くらい飛んでるぞ。
 暖炉のおかげで寒くはないが…皆おかしいぞ?






 時間をかけて教会に到着。夕飯中みたいで、皆食堂にいるって。邪魔しちゃいけないし、部屋に行こうかなーと思ってたら…。


「うわっ!?」

 な!?ヨミが…僕を急に抱っこして、食堂に歩を進める!!
 後ろからエリゼとヘルクリスもついて来るし、なんなんだよう!

「ぼく食堂行きたい…」

「君なんも食べないじゃん!?」

 そんなこんなで食堂に到着。んもう…とりあえず子供達に挨拶しとくか…。



 観念し扉を開けると…



 パン!!パパン!!


「っ!!?」


「「「「誕生日おめでとーーー!!!」」」」



「…………へ?」


 いきなり発砲音っぽいのが響いたと思ったら…僕は…色とりどりのテープと紙まみれ…。

 …え?クラッカー?
 犯人は…超笑顔のルネちゃんと、パスカルと、ルシアンと、ラディ兄様…?

 奥には…子供達も?ゲルシェ先生もいるし、まさかのファロさんも…壁には『セレスタンさまおめでとう!』の文字が。
 テーブルの上には…美味しそうな料理と、ケーキ含めたデザート…。



 まさか…これ、は…。




「改めて、セレスちゃんお誕生日おめでとうございます!」

「手作りで悪いけど、俺達でパーティーをやってみたんだ。ロッティ達も協力してくれた」

「料理は皇宮の料理人に頼んだぞ!「精霊姫の為ならば」と気合を入れて作ってくれてな」

「直接祝いたかったが、セレスは家のパーティーには参加しないって聞いて。
 これ、ルキウスとルクトルからもプレゼントが…あ、る…ぞ?」


「…セレス?」


 無反応の僕を心配し、エリゼが後ろから覗き込んできた。


「(わ、びっくりした!わーい、皆ありがとー!くらいの反応だと思ってたのに…!?)」

 というのは、エリゼ含む全員が同じ事を思っていた。





 しかし僕は理解が追いつかず固まってしまったのだ。

 理解すると…途端に、涙が溢れてきた…!!



「う…く、ひっく……うぅ…」

「!?どうしたセレスタン、なんで泣いてる?」

 するとパスカルが驚いて僕の涙を拭ってくれた。
 それでも…どんどん出てきて止まらない…止められないよう…!!

 ゲルシェ先生や兄様は困り顔で頭を撫でてくれる。他の皆も慌ててる…すまんが止まらんのだわ。
 ファロさんは…リボンでまみれたシグニを顔面にぐぐいと押し付けてくる。あ、プレゼントはこの子ですか?
 そのシグニをぎゅっと抱き締め…僕は、なんとか言葉を紡ぐ。



「あり、がと、みんな…。うっ、嬉し、い…!
 ありがとう…ありがと、う…!!」



 こんなにも沢山の人が、僕の誕生日を…生まれた事を祝ってくれる。

 それが、すっごく嬉しい…!



 すると…直後僕は、揉みくちゃにされてしまった。

 皆が一斉にぎゅーっと、むぎゅっと抱き締めてくれたのだ。温かいな…。


「ちょっとパスカル様!貴方くっつきすぎですわよ!」

「ルネ嬢こそ、淑女が男に抱きつくとははしたない!俺は男だからいいんだ!!」

「ぎぃ~~~…」

 カシャカシャカシャッ


 うおっ。一緒に潰されてるシグニが変な声出した!!もうちょい我慢してね。

 もうちょっと…このまま…





 暫くそうしていたら…ゲルシェ先生が僕を救出してくれた。
 その後改めて皆から「おめでとう!」と言ってもらい、今度は笑顔で「ありがとう!」と返せた。


 美味しい料理をいっぱい食べて、プレゼントもいっぱい貰った。

 子供達も…それぞれ手作りの木彫りの動物をくれた。上手いのからちょっと歪なのまで、僕にとっては宝石以上の価値があるモノ。

 貰った時も…ちょびっと泣いた。


 そんな風に楽しんでいたら、ファロさんがテーブルを部屋の端っこに寄せるよう言った。
 そうしてヴァイオリンを取り出し…


「おりゃー、お兄さん達のスペシャル演奏始まんぞー。
 ちびっ子もおっきい子もみーんなクルクル回れい。
 男はレディーのエスコート忘れんじゃねーぞ!」


 なんと…ゲルシェ先生と一緒に演奏を始めた。普通に上手いな2人共…!

 するとルネちゃんが僕の手を取って走り出す。


「踊りましょう、セレスちゃん!ほら、皆様も!
 ステップもリズムも適当でいいのよ、楽しむ事が大事なのですから!」

 その言葉を聞いた子供達も…思い思いに踊り始めた。
 僕はルネちゃんと踊る。こうしていると、エリゼの家でのパーティーのダンスが蘇る…。


 もうあんな風に、心から楽しんで踊るなど…出来ないと思ってた。

 でもそんな事はなかった!これからも…何度でも思い出を作ろう。


 ルネちゃんが終わったら、次はラディ兄様。僕が女性パートを踊れる事に驚いていたぞ。
 グラスはステップが踏めないので、2人で手を繋いで揺れてクルクル回っただけだった。それでも、自然と笑顔になってしまう。

 気付けば精霊達も、音楽に合わせて楽しんでいた。
 一番衝撃だったのが、ヨミがシグニを持ち上げて踊っていた事。いつの間に仲良くなった?



 エリゼとルシアンと踊り。最後に…パスカルと踊る。


「誕生日、おめでとう。君が生まれてきてくれて、俺と出会ってくれて…ありがとう」

「うん…ありがとう。僕もパスカルと出会えてよかった。これからも、よろしくね!」

「ああ…俺はこの先もずっと、君と一緒にいたい」

「ふふ…まるで告白だね。でも嬉しい」



 この日は夜遅くまで楽しんだ。
 明日は皆寝坊だね…たまには、いっか!


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