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学園1年生編
ルネの計画
しおりを挟むセレスちゃん達がフェンリルと共に去って行った後。残された者達は、忙しく走り回っていましたわ。
ルキウス様が主体となり、動ける生徒は騎士団に通報したり…遺体を、運んだり。
他にも学長への報告、ラサーニュ家及びサイカ家へ連絡したり…周囲に根回し、倒れた方々を介抱したり。本当に、お忙しそうにしていましたわ。
ルシアン様も顔色が悪いけれど、なんとかお兄様を見習い動き回っております。
本当に…この短期間でご立派になられましたね…。
ただ私とティーちゃんは、座り込んだまま動けずにいましたが…。セレスちゃん、どうか無事で…!!
「ロッティ!!」
「お嬢様!!」
そこへ、放送室にいたジスラン様とバジル君が駆け寄って来ました。彼らはちょうど仕事を終えてこっちに向かう途中だったらしく…セレスちゃんが斬られた現場は見ていなかったようなのです…。
「悲鳴が聞こえてきて、急いで来てみれば真っ白な狼がいて…その姿を見た瞬間、足が竦んでしまったんだ」
そうなのです。フェンリルは最上級…フェニックス事件同様、生徒達の殆どが動けずにいましたわ。なので彼らが去った後、こうして後処理に奔走しているのです。
「どうしたんだロッティ!なんで泣いて…それに、その服は!?」
「ジス、ラン…!」
ジスラン様は涙を流すティーちゃんに戸惑いながらも手を差し伸べました。彼らに説明する前に…ここにいては邪魔になります、移動しましょう。
ジスラン様はティーちゃんを横抱きにし、私はバジル君に腕を引いてもらいながら医務室まで移動しました。
恥ずかしながら、まだ足が震えて真っ直ぐに歩けませんの…。
主のいない医務室には、失神した令嬢達がちらほらと…彼女達の家にも連絡が必要ですわね。
私達はいつもの椅子に座り、一息つきました。
「お兄様…」
ティーちゃんは涙こそ止まりましたが、セレスちゃんが心配で堪らない様子。
でも…エリゼ様は危機は脱したと仰っていました、私は彼を信じます。彼は普段の言動には難ありですが…絶対に、嘘は吐きませんもの。
「それで…何があったのでしょう?この騒ぎは…」
バジル君が私達にハーブティーを淹れてくださいました。
そして…ティーちゃんに代わり、私が全て説明します。
あの放送が流れた後。
退学を認められないサイカ様が…セレスちゃんに刃を向けた事。
瀕死状態に陥ったセレスちゃんをエリゼ様とバルバストル先生が治療してくださった事。
そしてフェンリルが現れ…サイカ様を殺害した事。
そのフェンリルが彼らを乗せ、何処かに走り去った事…。
私が説明している間、バジル君は次第に顔色を失っていきました。
対照的にジスラン様は…顔を強張らせ、テーブルの縁を握り潰してしまいましたわ…。
普段の朗らかな彼からは想像もつかないほど、全身で怒りを表現していらっしゃいます…。
「落ち着いてくださいませ、ジスラン様。
エリゼ様達が彼を治療してくださっています、私達は信じる事しか出来ません。
そして…犯人はすでに死亡しておりますもの、貴方の怒りを向ける相手はどこにもおりません」
「ああ…分かっているよ、ヴィヴィエ嬢。だが…」
もしもこの場に私達がいなければ…恐らく彼は、このダイニングセットを粉砕していたことでしょう。それほどまでに、手を震わせていらっしゃいます。
「俺が、側にいれば……!いや、バジルを守るのも大事な役目だった。それは事実だが、だが…!!」
「はい…!ジスラン様には、僕なんかよりも坊ちゃんのお側にいていただくべき、でした…!」
「いいえ…私は、目の前でお兄様が斬られるのを、ただ眺めていたの、よ…!」
これは…いけない!
私はテーブルを渾身の力で叩き、ダアン!!と大きな音を立てました。
「「「!?」」」
「皆さんいい加減になさいませっ!!驕るのも大概になさい!!!」
そして大きく息を吸い…自分の感情のままに叫びました。
3人は肩を跳ねさせ驚き、周囲の方々も私に注目していますが…知った事ではありません。
淑女がこのように声を荒げるなどはしたない。そんな事言ってる場合ではありませんわ!!!
「まずジスラン様!!自分が側にいれば彼は怪我をしなかった?己を過信しすぎですわ!!
そもそもあの場には、私達のすぐ側に貴方よりも腕の立つジェルマン様もいらっしゃったのですよ!!
彼すらも反応出来なかったのです、全て自分で抱え込むのはおやめなさい!!!」
「そ、その…すま、ない。兄上…いたのか…」
「ええ!…多分!!
そしてバジル君!!「僕なんか」と仰いましたね?次に同じ発言をしたら、その頭丸刈りにしますわよ!!!
ジスラン様に貴方を守るようお願いしたのはセレスちゃん本人です、それだけ貴方を大事に思っていると理解してますわよね!?
そんな貴方が万が一怪我でもしようものなら…彼は泣きながら後悔するだろうと想像つくでしょうが!!?」
「はいぃっ!その通りです…!申し訳ございません!」
「そしてティーちゃん!!
一番近くにいたからといって、女の子である貴女が反応出来ないのは仕方のない事。
むしろその後…倒れるセレスちゃんを受け止めた貴女は素晴らしいのです。彼があのまま地面に叩きつけられていたら、などと…考えたくもありません。
その後も服が血に染まるのも厭わず、セレスちゃんをずっと抱き締めていらっしゃったでしょう?
貴女は自分に出来る最大限の事をしたのです、そんなに自分を責めないで…!」
「ルネ…」
ああ…駄目だわ、ルシアン様も、エリゼ様もパスカル様もいない今…せめて私が冷静でいなくてはならないと思っていたのに…!!
止まったと思っていた涙が、また溢れてきてしまいました。こんな情けない姿、お父様には見せられませんわ。
「よろしいですか!!私達が怒りを向けるべき相手はサイカ様!!!
ですが彼はフェンリルが処罰してくださいました、当然の報いです!!
明確な殺意を以て貴族の殺害未遂など…どちらにせよ彼を待っていたのは絞首台だったのですから!
裁きが少し早まっただけです、全部彼の所為にしてしまいなさい!実際そうなのですから!
私達がこれからすべき事は!?今後同じ事を繰り返さぬよう頭でも捻りなさい!
それが無理なら…セレスちゃんに心配を掛けないよう、そのなっさけない顔をどうにかしなさいな!!」
私はそう言い切って、3人を睨み付けました。すると…
「そうよね…ごめんなさい、ルネ。
貴女も辛いでしょうに…叱ってくれて、ありがとう…」
ティーちゃんはそう言って、私の手を握ってくださいました。2人も…さっきまでとは表情がまるで違います、もう大丈夫そうね…。
するとその時。ティーちゃんの頭の上に、紙切れが落ちて来ました。まさか…!そう思い、シュバっと拾います。そこには…
『シャルロットへ
ボク達は現在ラサーニュの教会にいる。
安心しろ、セレスは完治した。今は静かに眠っている。
こちらに来る時は、セレスの部屋にいる精霊達も連れて来てやってくれ。多分今頃、心配してると思うから。
エリゼより』
それは、エリゼ様からの手紙でした。良かった…!4人で確認し、私達は喜び合いました。
「いた、ルネ!大丈夫か?家に帰るなら送って行くから、もう少し待っていてくれ」
「ルシアン様!私は大丈夫ですわ、それより…」
丁度ルシアン様が現れたので、手紙を見せました。すると彼も安堵し、涙を流して喜んでくださいましたわ。
そしてそのままルキウス様に報告に行くと仰いました。
「今から出発しては到着が夜中になってしまいますので、私達は明日ラサーニュ領に向かいます。それも伝えていただけますか?」
「ああ、必ず」
彼はまた、慌ただしく医務室を出て行きました。
精霊はバジル君に、寮監の先生にセレスちゃんの部屋の合鍵を貸してもらって、連れ出してもらうようお願いしました。
明日は金曜日ですが…この状態じゃまともに授業なんて受けられません、朝一で教会に向かいます!
「それにしても…」
「はい?」
明日の予定を確認していたら、ジスラン様が何か仰いました。
「いや…俺はロッティが泣いているところを初めて見た。ちょっと驚いてしまった」
「あのねえ…私をなんだと思ってるの?というか忘れなさい、お兄様に言ったら怒るわよ」
「すまん。あたっ」
ティーちゃんはジスラン様の事をど突いています。少しずつ…元気を取り戻してきたみたいですね、いい事です。
その後解散しましたが、私は寮に住んではいないので…ティーちゃんのお部屋にお泊まりさせていただきましたわ。
その日の夜、私とティーちゃんは抱き合って眠りました。
しかしすぐには眠れず…少しお話ししてましたの。
「ルネ…今日は取り乱してごめんなさい。でももう、大丈夫だから。
未来の女伯爵として…私、もっと精神を鍛えるわ!」
「ふふ…その意気ですわ。私も女公爵を目指し、精進します!」
私達が、何を言っているか分からないかしら?そうですわよね、この国では女性は爵位の継承権などありませんもの。
そう、それは…私が、ずっと前から計画していた事。
ずばり、女性の社会進出について!!
その一環として女性が家を継げるよう、何年も前から考えていました。近隣諸国では珍しい事でもありませんし、法改正の為の資料を作成中ですの。
それが完成したら、まず議会で過半数以上の票を獲得。その後元老院で過半数以上の賛同を得られたら…最終的に皇帝陛下の判断により、新法案は可決されるのです。
今は1人でも多くの票を得る為、味方作りに勤しんでいる段階ですが…あと2年もすれば、陛下の下まで持っていけるはず!
そうしたら、いずれ…遠い未来で、女帝も誕生するかもしれませんわね?
ティーちゃんにも協力してもらっているのです。セレスちゃんは伯爵になりたくないとの事ですから…。
びっくりさせたいからセレスちゃんには、ティーちゃんが伯爵になると考えている事は告げていません。でもきっと喜んでくれると思います!
「お兄様も数ヶ月前までは、嫌がりながらもすっごく頑張っていたの。だから私とバジルは応援しながら…なんとか手はないかって考えていたんだけど。
でも最近はお兄様…完全に開き直ってるというか。こんな家断絶してしまえ!くらいに思ってそうなのよね。
言ってしまうと私達、爵位と領地を国に返還してバジルと3人で旅に出る計画をしてたのよ。でも私が伯爵になったら、その心配もいらないわね。
お兄様は私が養うわ!そして今まで苦労してきた分、自由に生きて欲しいわ」
ティーちゃんはそう語っていましたが…私は最近、もう1つ考えていることがあります。
セレスちゃん…騎士になる気はないかしら?と。
剣術大会で女性の身ながらもジスラン様に迫る姿を見て…これだ!!!と思いましたの。
女性は体格の差もありますし、武力では男性に敵わないとずっと思っていました。
ですがセレスちゃんは違います。桁違いの鍛錬を積むことにより、男性をも凌ぐ強さを見せつけました。
しかもジェルマン様にお話を聞きに行ったところ、彼女はまだまだ伸び代があるとのこと。
更に、今日見たあの剣…あれを使い熟せるようになれば、彼女は益々強くなるのでは?
いずれ女性に戻ったら…彼女が女性騎士を牽引し、頂点に立ってくれたら。そんな風に夢想してしまうのです。
騎士の上に立つ者として、強さだけではいけません。しかし弱くてもいけません。
強さと優しさと人柄という魅力を兼ね備えた彼女なら…きっと皆、ついて来てくれますわ!
もちろん、彼女が望んでくれたらの話ですが。そう簡単な話ではありませんもの。まずは私の計画を遂行してからですわね!
「あ…でも…パスカルがお兄様を連れて行ってしまったらどうしよう…」
「パスカル様?彼がどうかなさいまして?」
「実は…この間の飲酒事件。あの時パスカルが…お兄様に告白したの」
!!!!??
え、ど、な…なんで?どういう事…???
「酔っ払ったパスカルが…お兄様に「男だろうと女だろうと関係無い、セレスタンが好きだ」なーんて言ったのよ…。まあお兄様本人は覚えていないみたいだけど。
私としては…お兄様が幸せならそれでいいの。でも男性同士なんて障害も多いし…お兄様に不必要な苦労はさせたくないの…って聞いてる?」
「聞いてますわ。もっと詳しく!」
「そ、そう?」
あんら~!!素敵…!!!セレスちゃんはどう考えているのかしら、パスカル様のこと!
しかもあの場にいた中で、眠ってしまった私とジスラン様。記憶の無いバジル君とセレスちゃん以外は彼の告白をばっちり聞いてしまった、ですって!?
いいなあ、私も聞きたかったですわ…!!
!これは…私の夢の1つ、恋バナをするチャンスでは!?私とセレスちゃんとティーちゃんで…ってセレスちゃんが女の子に戻ってからですね。
その頃には…私にも、誰か良い人がいればよいのですが…。
私は幼い頃より「公爵になる!」と家族には宣言しています。どうやらお父様、お母様も同じ事を考えた経験があったようなのです。
賛同してくれた両親の思いもあり、ヴィヴィエ家はこれまで養子を迎える事もなく、私はずっと1人娘のままでした。いずれ婿養子を迎え…私を支えてくださる人を探すのです。
ルシアン様との婚約話をずっとお断りしていたのもその為です。もしも彼が皇族を抜けてヴィヴィエ家に来てくださるというのであれば…彼との結婚もあり得るかも?
出来ればやっぱり、恋愛結婚には憧れますわ。…もしもセレスちゃんが本当に男性だったら。私、彼に夢中になってしまったかもしれませんわね。あんなに魅力的な方ですもの。
「あ!もしもお兄様とルネが結ばれて、お兄様がヴィヴィエ家に嫁ぐというのなら応援するわ!頑張ってね!」
「ふふ…ありがとうございます!」
やっぱりセレスちゃんは嫁ぐ側なのですね。なんだか笑ってしまいましたわ。
明日、ラサーニュ領に行ったら…セレスちゃんが目覚めていると良いのですが。そうでなくても、彼女が目覚めるまで私はずっと側にいます。
そう願いながら私達は、眠りにつきました。セレスちゃん…どうか、無事に……。
※※※
次の日。ラサーニュ領に向かうメンバーは私、ティーちゃん、ジスラン様、バジル君。
それからルシアン様と…ナハト様。彼も不思議な人ですね…突然セレスちゃんを「俺の弟だ」と宣言してから、ずっと彼女を構っていますの。
でも下心は一切無さそうですし、セレスちゃんに近づく者は徹底的に厳選するティーちゃんすらも、すんなり受け入れていました。本当に不思議…。
そういえば、ナハト様といえば。気さくな方ではありますが…友人であるルキウス様やルクトル様にすら、ご自分を愛称で呼ばせないのです。
なのにセレスちゃんには自分からランディとか提案し、最終的に「ラディ兄様」と呼ばせています。どうしてかしら…?噂では、今まで彼を愛称で呼んでいたのはご両親のみとか。
「?ヴィヴィエ嬢、俺の顔に何か?」
「!いえ、なんでもありませんわ、失礼しました」
いけない…ついお顔をじっと見てしまいましたわ。
今馬車の中には、私とルシアン様、ナハト様しかいません。精霊達も向こうの馬車に纏めて乗りましたし…今のうちに…
「あの…パスカル様がセレスちゃんに告白したというお話、本当ですの…!?」
「「んん…っ!」」
その反応、やっぱり!!!どうしましょう、私応援すべきかしら!?
彼はセレスちゃんを幸せにしてくれるかしら、お任せ出来るかしら!?私は1人、静かに興奮しておりました。
「ま、まあ…それは当人同士の問題という事で、私達外野は静かに見守ろう。
しかし兄上達は早く婚約しないのだろうか…?」
「ルキウス殿下は何度かお見合いをしていらっしゃいますよ。
ですが令嬢達が彼の形相に慄き…全て破談となっていらっしゃいます」
「「んぶ…!!」」
ナハト様のお言葉に、私とルシアン様はそろって吹いてしまいました。
確かに、慣れないと彼のお顔は恐ろしいかもしれません…そこが魅力でもあるのですが、難しいですわね。
「ルクトル殿下はルキウス殿下に婚約者が出来てから…と公言していますから。まだまだまだ先でしょうね」
「まだが多いな…それで、ナハトはどうなんだ?確か其方も婚約者はいなかっただろう」
「確かに婚約はしていませんが…好いている女性ならいます」
「「ええーーーーー!!!?」」
「そ、そんなに驚く事ですか…?」
驚きますわよ!!?だってそんなお話、噂でも聞きませんもの!!
ちょ、ちょっと詳しくお聞かせ願えませんか!?
「えっと…彼女は年上なので…俺は卒業したら、正式に求婚しようかと…」
「「フーーーゥ!!!」」
ひゃー!!!セレスちゃんに聞かせたいですわ…!!!
ナハト様のお相手は、彼の告白に応じてくださらないそうですが…脈はあるとの事。どうやらその女性は、自身が年上である事を気にしていらっしゃるようです。素敵…!
ああ、早くセレスちゃんと語り合いたい…そして2人で、彼の恋の行方を見守りたい…!
「しかし…私達も誰も婚約者とかいませんよね。生まれた時から決まっている方だっているのに…人の事は言えませんが、遅すぎませんこと?」
「?いるぞ、婚約者持ち」
「………………はい?」
え。いつものメンバーですよ?私、ルシアン様。セレスちゃん・ティーちゃん・エリゼ様・ジスラン様・バジル君・パスカル様の事ですよ?
「だからその中にだ。知らなかったのか?」
「しっ知りません!!!誰ですか、誰なんですか!!!?」
「落ち着け!!」
私は思わず、ルシアン様に詰め寄りました。
まず私は除外。セレスちゃんも違います。ティーちゃんも、いないはず…!まさかバジル君とか!?
「まあ確かに、本人は言い触らしてはいないな。私も偶然知ってただけだし。
いずれ分かるだろう、それまで静かに待つ事だな」
ぐう…!言う気は無いということですね!ルシアン様はにやにやしながら、それ以上は何も語ってくださいませんでした…。
ルシアン様でもなさそう…一体誰が?
しかし詮索するのは無粋ですし…気になりますがここは大人しく、待つ事にしますか…。
馬車に揺られる事数時間、そして歩くこと約10分。お話は聞いていましたが…ここが…。
素敵な建物に清涼な空気。心が洗われるよう…。
中も拝見しましたが…ここ、普通に観光名所とかになるのでは…?
しかも、霊脈ですって…!?そんなの、大陸中にも数える程しか存在しないじゃないですか!国はご存知なのですか?
「ルキウス兄上が報告したし、国から調査も来たんだが…何故か彼らは、ここに辿り着けなかった。
案内人がいたにも関わらずだ。調査の名目で来る者は皆、見えない壁に阻まれてこの地に近付けないんだ。
セレスが言うには…「精霊曰く、この土地がここを軍事目的に使わせないようにしている」との事だ。不思議なものだな。
それで父上は、定期的に霊脈の様子を報告するようセレスに命じた。それで終わりだ」
そうなの、ですか…。セレスちゃん、そんなお仕事もあったのですね…。
肝心のセレスちゃんは、まだ目覚めていないとの事。
その後ゲルシェ先生がティーちゃんとバジル君と共に、ラサーニュ邸へと向かいました。どうやら…サイカ侯爵夫妻がお見えになるそうなのです…!
もしもセレスちゃんが責められるような事態にでもなれば。私は、家の力でもなんでも使って争ってみせます。
そう決心しているのは私だけではありません。パスカル様もエリゼ様も、ジスラン様も。
だからセレスちゃん。これからも…貴女の眩しい笑顔を、どうか私達に見せてくださいな。
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