【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野

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学園1年生編

sideパスカル

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「待ってくれー!俺を置いていくな!!」

「とっとと契約を済ませてしまえ!!」

 エリゼと先生はセレネに踏み潰されている俺を放ったらかし、教会内に駆け込んでしまった。ああもう!


「わかった!!俺はパスカル・マクロン。お前はフェンリルのセレネ!
 俺と契約して、セレスタン…シャーリィを共に危険から守ってくれ!!」

 そう叫んだ瞬間…魔力がセレネと繋がった気がした。これが契約…。



「よし、とっととシャーリィのとこに行くんだぞ」

「喋った!!?」

「最上級だからだぞ」

「語尾ムカつく…」

「シャーリィが喜ぶと思って、可愛い仕草と語尾を勉強したんだぞ」

 可愛くねえ…その言葉は飲み込んだ。
 セレネと共に教会に向かう。正面から入ったが…おお、見事なステンドグラス。あとでじっくり見せてもらおう。
 だが奥に続く扉で…


「こんのおおおお…!」

「もうちょっと優しく押すんだぞ!!!」

「やかましいこんの巨体があああ!」

 セレネが詰まった。なんでお前が先に入るんだ!!俺はセレネのケツのほうから押すが…びくともしない!!
 なんか…小さくなれないのか!?

「なれるぞ」

「最初からやれ!!」

 セレネはミニサイズになった。その姿は…初めて会った時の、毛玉のようだった…。
 毛玉になったセレネを抱え、廊下を走る。


「あーーー!!!きんきゅうじいがいは、はしるのきんしなんだよ!」

「すいません」

 途中で小さい女の子に怒られてしまった。面目ない、早歩きでセレスタンの部屋を目指す。が、場所を知らない!

「くんくん…こっちだぞ」

 よし!セレネの案内のもと辿り着き扉を勢いよく開けると……


「ノックなさーい!!!」

「ごふっ!!」

 瞬間、バルバストル先生の蹴りを喰らった…。確かに、俺が悪かったな、うん。
 よく見ると、エリゼとゲルシェ先生も横たわっていた。やられたんだな…。


「なあセレネ。本当に…闇の最上級精霊がいるのか?」

「いるぞ。今は彼女の影の中に潜んでいるぞ」

 …そうか。
 え、彼女?ああ…そういやあの時セレスタンは、女の子の格好をしてたもんな。精霊にとっては、人間の性別なんて大差ないんだろうな…。


「先生…先生は、ずっとこの部屋にいましたか?」

「ええ」

「うう…途中で、セレスに異変は無かったか…?」

 エリゼが復活した。先生がずっといたのなら、何か見ているはずだ。

「…つい数分前。か…れの魔力が大きく膨れ上がったわ。本当に一瞬だったし気のせいかと思ったけれど…身体には異変なしよ」

 そう、なのか…。ベッドで眠るセレスタンに目を向ける。
 その寝顔は穏やかで…本当に、ただ眠っているだけに見える…。


「ほら、貴方達は食事に行きなさい。ここは私が見ておきます」

 そう言われては抵抗出来ず、俺達3人は追い出された。セレネはちゃっかり残ったが…仕方なく食堂に向かう事に。
 その道すがら…俺は、初めてセレスタンと会った日を思い出していた。




 それは、俺がまだ6歳の頃。
 家族旅行の帰り、ラサーニュ領の近くを通りかかった時…姉が寄り道をしたいと提案したのが始まりだった——…。




 ※※※




「…ねえきみ、泣いてるの?どうしたの?」

「ふえ…!?」


 その日俺は、建物の隙間に蹲る赤髪の少女を見つけた。
 いつも2人の姉から理想的な紳士になるよう色々仕込まれていたので、自然とその子に声をかけたんだ。


『『紳士その1!困っている女性を見捨てるな!!』』

「(泣いている…まいごかな?ボクもこのあたりはくわしくないけど…みすてるな!)」


 なるべく笑顔で話しかけたつもりだったんだが…その子は怯えた顔になり更に涙を流す。何か間違えたのか!?と、焦ったものだ…。

「うう~…!」

「ええ!?なんで!?…あれ、その子は…?」

 よく見ると、少女は膝の上に何かを抱えていた。薄汚いが白くてふわふわの…子犬と思われる毛玉。
 彼女はその毛玉を、ぎゅっと胸に抱えた。


「…さっきね、おおきいお兄ちゃんたちが、この子をけっとばしてあそんでたの…。
 おかあさんがおこって、おいはらってくれたけど…」

「そんな…!なんてことを…!!」

 その言葉を聞き、俺は幼いながらに憤った。
 だがその様子を見た少女は、また震え上がった。かなり臆病な性格なのかと思ったけれど、今にして思えば…誰かから恒常的に叱責されていて他人が怖かったのかもしれない。

「…あなたも、ひどいことするの…?」

「え!し、しないよ!ね?」

 どうやら今は、俺に怯えているようだった。
 そうか、だから最初声を掛けた時あんなにも驚いたのか。俺もその毛玉を虐めるんじゃないかって思ったんだな。


「この子…ぜんぜんうごかなくて、うぅ…」

 微動だにしないその毛玉。俺は少女に断りを入れてそっと撫でた。
 毛玉はまだ温かかったが、呼吸もせずに微動だにしない。死んでしまったばかりか…。

「今…おかあさんが、この子を入れるかごをかいにいってるの…しぜんにかえしてあげるんだって…」

 ごめんね。もっと早く見つけてあげることが出来たら…助けられたかもしれないのに。
 そう言って少女は更に涙を流す。俺は戸惑い、一生懸命に姉の言葉を思い出す。


『『紳士その2!女性が涙を流していたら、そっとハンカチを渡して優しく抱き締めろ!!』』


「(…よし!まずハンカチ…)」

「……んえ?」

 俺は教えに従い、少女を毛玉ごと優しく抱き締める。
 今だったら初対面の相手に絶対やらない…。姉上達は一体、俺をどうしたかったんだろう…?

 俺の行動に最初は驚いた少女も、温もりに安心したのか少しずつ泣き止んでくれた。


 その時。


 ぴょこっ


「「…あれえ?」」

 毛玉から、耳と尻尾が生えた。
 そしてぱちっと青い目を開ける。その姿は完全に子犬で、どうやら単に丸まっていただけらしい。

 だが完全に死んでいると思っていた俺達は理解が追いつかない。
 同様に毛玉も状況を理解していないらしい。俺と少女を見比べ、首を傾げる。


「…かわいい…」

 少女がぽつりと呟く。すると毛玉は、少女の頬…涙を舐めた。

「ひゃあ!?…あはは、くすぐったいよう、けだまちゃん!」

 少女は次第に笑顔になった。毛玉も彼女の顔に鼻を寄せたり頭を擦り付けたりしている。


 そんな少女と子犬が戯れている姿を見て…

「かわいい…」

 俺も呟いた。

「ね!けだまちゃん、かわいいよね!」

「うん…(そっちの犬もどきじゃなくて、きみのことなんだけど…)」

 流石にそれを口に出すのは照れくさく、顔に熱が集中しているのが自分でも感じられ…赤い顔を見られたくなくて俯いた。


「ねー、けだまちゃん…あれ?」

 毛玉はつーんと顔を逸らす。けだまちゃん、けだまちゃん?と少女が呼ぶ度につーんとする。

「もしかして…そのよびかたがイヤなのかも?」

 そう言ってみたら、毛玉がフンスと鼻を鳴らす。どことなく偉そうだが…「その通り!」と言っているようだった。

「えー…けだまちゃんかわいいのに…。じゃあ… ぽんた」

 つーん

「えー?…わんた」

 つーん

「(どういうネーミングセンスしてるんだこの子…)」

「えええ!?んー……わたげ!」

 つーん!

 少女の提案は悉く却下される。俺も「レオン」「チャッピー」と提案してみたが同様に却下された。いいと思ったのに…。

「もおお!!じゃあねー…んっと、白…ゆき、くも、わた、かみ。
 んん…ひかり、いし、つき…セレネ!」

 ぴくっ

「セレネ…?つき、っていみだったっけ?」

「うん、さいきん本でよんだの。どう?」

 毛玉はその名前が気に入ったようで、「きゅーん!」と声をあげた。


「あ!」

「んぎゃ!?」

 毛玉は少女の腕の中から飛び出し、俺の頭を踏み台にして塀の上に乗る。
 そうして少女には「くるぅ」と言葉を掛け、俺には舌を見せて挑発し、その場を去った…!

 そのすぐ後に、少女の母らしき女性が籐の籠を持って小走りで近付いてくる。


「あら?貴方は…?シャーリィ、わんちゃんは?」

「あのね、けだまちゃん…はしってった…」

「え?」


 俺達は一生懸命に今の出来事を説明した。
 女性は自分の頬に手を当て、「あらまあ、不思議ねえ」と一応納得したようだ。


「じゃあこの籠、いらなくなっちゃったわね」

 そう呟く女性の籠を見た後、ピーンと来た俺は「それちょっとかしてください!」と手を伸ばした。
 快く渡してくれたので受け取り、2人にここで待つよう言って走り出した。

 確か、ここに来る途中で…あった!


 用事を済ませ急いで戻ると、ちゃんと待っていてくれた。良かった…。
 俺の手の中には…籠いっぱいに、花が入っている。


「わああ…きれい!」

「はあ、はあ…。あのね、これあげる」

「え、ぼ…わたしに?」

「うん!」

 差し出した籠を、シャーリィと呼ばれた少女はおずおずと受け取り…。


「わたし、お花もらったのはじめて…ありがとう!」



 その笑顔を見た俺は……。


「…………うん……」


 自分でも理解出来ない感情に襲われた。
 1つだけ分かったのは、彼女の笑顔をずっと、誰よりも近くで見ていたいと思った事。


 後になって理解した、確かにそれは俺の初恋だったらしい…と。




 そろそろ戻らないと家族が心配する…と思い、俺はシャーリィの手を握り、目を合わせた。

「ボクはパスカル。また、きみにあいにきてもいいかな?」

「…あえるかどうか、わからないけど…」

「それでもいいよ、やくそくしよう?」

「それでいいの?」

 それでも良かった。また会おう、と約束してくれるだけでいい。
 俺はその約束を胸に…再会する日を夢見ることが出来るから。

「うん、いいの。シャーリィ。またあえたら、いっしょにセレネをさがしに行こう。
 そして…セレネもいっしょに、たくさんあそぼう。
 つかれたらやすんでひるねして、本をよんだりおかしを食べたり…ね?」

「うん…うん!やくそく!」

 そして俺は籠の中から1つ花を取り、彼女の髪に飾った。


「あのね…そしたら、いつか…いつ、か…!」


 ボクの、およめさんになってください。


 と言いたかったのに、流石に言えなかった…。
 だが彼女の母親には勘付かれたのだろう、優しい目で俺達を見ていたから…!
 俺は照れ臭さを隠すため、ばいばい!!と叫んでその場を去った。


 お小遣いは使い切ってしまったが…それを上回る喜びを彼女から与えてもらったんだ。



 あの日から君は俺の…太陽なんだよ。






 ※※※





 食堂に着くと、突然の来客である俺達に子供達は興味津々のようだ。だが近付いては来ない…警戒されているな。
 そっちを気にしつつも夕飯をご馳走になりながら、俺はエリゼに問い掛けた。


「なあ…闇の最上級精霊ってなんだ?」

「……不明だ」

「「不明?」」

 エリゼの話によると、闇の精霊は…他の最上級と比べて、伝承すらもロクにないらしい。
 姿形も能力も…強制召喚(エリゼがフェニックスを喚んだアレ)しようものなら、術者は即座に殺されるらしい…。
 だから、誰にも何も分からないらしいのだ。
 セレネなら何か知っているかもしれない、後で聞いてみよう。




「……おい」

 食べ終わりセレスタンのもとに行こうとしたら…子供の1人が、話しかけてきた。子供と言っても俺達より年上そうだが。
 ゲルシェ先生は先に行く、と席を立つ。タイミング逃した…。


「どうしたグラス。こいつとさっきの大人は信用していい人間だぞ」

「見れば分かる。そこの」

 俺か?エリゼにグラスと呼ばれた少年だが…なんか、威圧感を放っている気がする。つい気後してしまうな…。


「お前は、お嬢様のなんだ」

「………ロッティの事か?」

 何故ここで彼女が。俺が不思議に思っていたら、エリゼが小声で教えてくれた。

「詳細は省くが…こいつはセレスを女だと思っている。こいつに限らず子供達の中であいつは性別不明だ、話合わせとけ」

 その詳細を教えてくれよ、と思ったが後回しだ。
 なら彼の言うお嬢様とはセレスタンの事か。俺は、彼の…


「セレスタンの…友人だ」

「ただのか?」

「……今は。いずれ、友人以上になりたいと思っている」

 俺はグラスの目を真っ直ぐ見て言った。その直後…彼の威圧感が倍増した…!?


「………そうか」

 だが彼はそれ以上何も言わず、背を向けて食堂を出て行った…なんなんだ!?

「……多分だけどな、グラスもセレスに惚れてんだよ」

「は?いやでも、平民と貴族だし…あの年なら、その壁は理解しているだろ?」

「してるだろうよ。まあ…今は置いとけ。それより、行くぞ」

「ああ…」



 エリゼと連れ立ってセレスタンの部屋を目指すが…俺はずっと考え事をしていた。


 ライバル…多くないか?俺としてはルネ嬢が最大のライバルだと思っていたが。こんな所に伏兵が存在していたとは…!
 他にも男女問わずセレスタンは人気者だし…本人がそれを自覚していないのがまた可愛い。

 くそ…!なんとか、一歩先に行きたい…!もう告白してしまうか?いや、駄目だ!そもそも…俺の家族が受け入れてくれるかどうか…。



 姉上達は、きっと賛成してくれると思う。両親も、最後は折れてくれると思う。

 だが…祖父が問題だ。彼は非常に厳しい人物で、特に後継である俺には殊更厳しかった。
 姉上達も祖父が選んだ家に嫁ぐ事が決まっている。幸いにもどちらもいい人で姉達の心配は要らなそうだが。

 そして俺の結婚相手は…かなり候補がいる…。特に祖父が勧めてくるのが、同じ侯爵家のゼルマ・サルマン令嬢だ。
 なんとか先延ばしにしているが…いつまで保つか。

 あの頭のかったい祖父は、俺が同性婚の法案を作成し可決させる為に勉強していると知れば…俺の事をぶん殴って廃嫡にするかもしれないな。

 …そっか。いっそ、それもいいかもな。





 そんな事を考えていたら、いつの間にかセレスタンの部屋に着いた。
 今度はちゃんとノックし中に入る。だがバルバストル先生しかいない、ゲルシェ先生は…?


「少し話をして出て行ったわ。学園に報告する書類を作成すると言ってたわよ。
 じゃあ私も食事を頂いてくるから…彼女、今サラシ巻いて無いから。布団捲っちゃう駄目よ?」

「分かってる」

 ?最後のほうは、エリゼに小声で何か言っている。何故俺には秘密なんだ…?



 先生も出て行き、俺はベッドに腰掛けエリゼは椅子を引っ張ってきて座った。セレネは…セレスタンの顔の近くで丸まっていた。
 彼を突つき、話を聞く。


「セレネ…闇の最上級精霊について教えてくれ」

「ん?ちょっと待て。おい、こいつはセレネの契約者なんだぞ。お前の事、教えていいか?こっちのピンク頭にも」

「「?」」

 セレネがそう発言すると…セレスタンが眠る布団の中から、影が伸びてきた…!?
 そして俺の目の前で…影が『いいよ』と形作って霧散した…あ、いいんだ…。


「良かったな、パル」

「…パル?俺か???」

「他に誰がいる。そこのピンクも、心して聞くんだぞ。そして他言無用だぞ」

「ボクはエリゼだ!!」

 憤るエリゼを無視し、セレネは語り始めた。



「闇の最上級精霊…その正体は、死神だぞ。
 こいつは普通に召喚しようとしても、命を吸われて終わりだ。一度縁を結ばないといけない」

「どうやって結ぶんだ?」

「冥府に触れること。簡単に言えば、一度死にかける必要があるんだぞ」

 ……じゃあつまり。
 今回本当に、セレスタンは死にかけてたのか!?


「そうだぞ。でもシャーリィは…いや、これは言わないでおく。
 とにかく彼女は死神と邂逅した。もちろんそれだけで契約は出来ないぞ。死神本人も望まなくては」

「シャーリィ?」

 あ…エリゼは知らないよな。シャーリィとはセレスタンの事だ、と言ったらすぐに納得した。


「それで…なんで死神はセレスと?」

「どうやらシャーリィが夢の中で…
『あああああ!!エリゼに言われた通り、闇の精霊と契約しとくんだった!!!今からでも間に合うかなあ!?僕死んじゃったかなあああ!!!?』
 と大騒ぎしていたらしいんだぞ。それを見兼ねた死神が、契約を申し出たらしいぞ」


 セレスタンのその様子が…ありありと目に浮かぶ。不謹慎だが、笑ってしまった。エリゼもな。


「まあ最大の理由は、シャーリィがセレネとフェニックスのお気に入りだからなんだぞ。それでどんな人間なのか気になって、夢の中まで見に行ったらしい。

 死神はその名の通り、死を司る。彼自身は争いを好まない優しい精霊なんだが…その性質故に、姿を見てしまえば森羅万象が彼を恐れるんだぞ。死そのものだからな。
 平気なのは神々やセレネ達最上級の者くらいだ。だから当然シャーリィも死神の姿に恐れたんだが…同時に、目を輝かせて『格好いい…!』と呟いたらしいんだぞ。
 それで死神はシャーリィに惚れて、強引に契約を結んだらしい。彼女が天寿を全うしたら、その魂を嫁にすると意気込んでいるぞ」


 そこまでセレネが語ると、また影が伸びてきて…拳の形になり、セレネをぽかっと叩いた。恥ずかしかったようだ…。
 それにしても、フェニックスも彼を気に入っているのか。そうかそうか。

 だが俺は、それどころじゃなかった。


「俺も……セレスタンに格好いいって言われたい…!!
 エリゼ!!俺は格好いいと思うか!!?」

「……ノーコメントで」

 死神…!一体どんな顔をしてるんだ、参考までに見せてください!!!


「死神は照れ屋さんなんだぞ。まあシャーリィが目を覚ませば姿を現すだろ、それまで待つんだぞ」


 セレネは「今はこれ以上話す事はないぞ」とそのまま眠ってしまった。
 仕方なく…俺達も用意してもらった部屋に向かう。個室ではなくエリゼとゲルシェ先生と同室だったが、特に不満は無い。



「あ、そうだ。明け方…日が昇る前に礼拝堂に行ってみると、いいものが見れる」

 へえ…エリゼはそれだけ言うと、すぐに眠ってしまった。俺も…起きれたら、行ってみよう。

 この教会…孤児院は、セレスタンが立ち上げたんだよな。
 子供達の誰もが彼の容体を心配し、何度も面会に来ていた。

 彼はきっと、『自分1人の力じゃない』と言うんだろうな。それでも彼が奮い立ったからこそ、子供達は救われたと聞いている。そんな話を聞いてしまえば…俺は益々、彼を好きになる。


 明日も学校だが、彼が目を覚ますまで側にいよう。息子を殺されたサイカ侯爵家がどう動くかとか…気になる事は沢山ある。
 でも、そうだな。彼を殺したセレネは、俺と契約した。ならば責められるのは俺のはず、そうでなくとも…絶対に、セレスタンを守る。



 そんな事を考えながら、俺は眠る。明日は、セレスタンの笑顔が見られますようにと祈りながら……。







 *****



幼少期簡単時系列

夏。パスカル6歳、セレスタンと出会う。

12月。セレスタン&シャルロット誕生日、6歳になる。同時に乳母・アイシャが解雇される。

3月。バジルを拾う、その日が彼の誕生日になる。

約1年後の春。全員7歳、ジスランがラサーニュ領に初めて来る。
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