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学園
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しおりを挟むフィクションでは強すぎるラスボスに、主人公はどう勝つのだろうか。
やはり王道はレベル上げ。道中ひたすら経験値を稼ぎ、圧倒的で暴力的に敵をねじ伏せる!
それが出来なければ?うーん…相手の能力を大幅ダウンさせる?敵を自分の土俵に落とさないと。
それか…存在自体が幻扱いされている、神話級の武器を手に入れる。大勢の協力を得て、新兵器を開発する。
あ、ラスボスと匹敵する力を持つ仲間をゲットするとか?
全部ダメとなると…うーん無理ゲー。完全に負けイベント、最初から勝ち筋が見えない。伝説のクソゲーの仲間入りですね!
「……ってな事も、手紙でパメラちゃんに教えてもらったんだー。」
「あの分厚い手紙…そゆこと…。」
ハァ~…。私は閉じ込められている(かなり自由に過ごしてるけど)塔の最上階で、お父様とのほほんとお茶会中。
お父様は以前から日本の話を聞いて、ゲーム…特にRPGに興味津々だ。そのせいで今回、状況をゲームに見立てて遊んでやがる。
そのうち異空間を移動する魔法を編み出して、日本に行きそうな勢いまである。
パメラの言う通り、人間がこの魔王に勝つ道は無い。それこそ…月光の雫でも無ければね。クソゲーの仲間入りおめでとう!
最上級精霊ならお父様に勝てるかもだけど、グレフィールやカル様は出ないだろうね。たかが人間の結婚問題ですし…。
「んもう…アシュレイは本気なんだよ?あんまり揶揄わないで。」
「もちろんだよー。」
信用できねえ~…。そうだ、今私がお父様をKOすればいいのかしら?
「ところで、なんでさっき窓から髪飾りをぶん投げちゃったの?」
なんとなく…イラっとして、そうするべきだと思ったから、かな?説明できん。
「ふーん?
…人間のレベルは精々7が限界。同様に、魔族は50前後で成長が止まる。」
「今戦ってるアンリエッタも48だっけ…。まあレベルが劣っていても、勝てない訳じゃないけど。ここはゲーム世界ではなく現実だし。」
「そうだね。」
お父様はニコニコとクッキーをつまむ。…本当はとっくにアシュレイを婿に認めてるくせに、面倒な人なんだから。
その時…ズウウゥン… と城が揺れた。随分と張り切ってるな、アンリエッタ。
「もう決着がつくかな?さーて、ラスボスも行きますか!お姫様はここで勇者を待っててね。」
お父様は仮面を装着、私の額にキスをして出て行こうとする。ふいに、その背中に問い掛けた。
魔族のレベル上限を超える者…それが魔王という存在。正確には、ステータス上で『魔王』という職業を得た者達。
「お父様は今、何レベルなの?」
「んー?んふふふふ。
僕はね、103だよ。」
「………え?」
バサッ! と外套を翻し、お父様は笑顔で去って行った……え?
100…以上?これは…
アシュレイ……本気でヤバいんじゃ…?
「ぐ、うおおおぉ…!!」
両腕にアンリエッタさんの魔法が伝わってくる。アル達が防いでいても、衝撃を完全に殺す事はできない。
障壁はオレの盾を起点にしているから、押し負けたら終わりだ…!
絶対、耐える!!!
長いようであっという間の数秒、アンリエッタさんの魔法が止まったと思ったら…
「そこだ。お前は高火力の魔法を使うと、必ず隙が生じる。」
「!!」
ガッ! ダァンッ!!
土煙で何も見えないが、上空からディードの声がした。直後に、何かが叩きつけられるような衝撃音。
視界が晴れると…アンリエッタさんが地面に倒れている。魔法が止んだ瞬間に、彼女の背後を取ったらしい…よっしゃ!!
「うふふ…負けちゃった。はい鍵どうぞ。」すぽっ
「ああ。」
あ。アンリエッタさんはあっさりと鍵を取り出して、ディードに手渡しした。
「じゃ、この後も頑張ってね。」
「はい!」
アンリエッタさんはにっこり笑い、姿を消した。残りは…ガイラードさんと、魔王陛下!!
しっかし…周囲を見渡すと。オレらの足元を除き、地面が抉れてクレーター状態。ヤバいな…直撃してたら、人間の脆い身体なんて蒸発してたんじゃないか…?
「……うっし!行くぞ!!」
尻込みしている場合じゃねえ!自分の頬をバチン!と叩いて気合いを入れ直す!
ふう… 深呼吸。門を通過して、いよいよディスター城に足を踏み入れた。
「……なんじゃこりゃ。」
外観とは違い、中はそれなりに綺麗だった。が…廊下にはよく分からん絵が飾ってあったり、各階に地図が貼ってある…?
「現在地はここかあ。」
「この◯のマーク何かしら?」
「廊下に点在してるね。行ってみる?」
「ええ!」
なんでリリーとアルは楽しげなの?オレ、エヴィ、会長は警戒しながら歩を進めているけども、2人はキラキラと目を輝かせて探索している。
途中の部屋もバンバン開けて、クローゼットとか漁ってるし…オレらは強盗か?
「魔力回復の薬見っけ!」
「この棚には金貨(※魔国の通貨)が入ってるわ!」
「こっちは…ただのゴミだ!」
「誰かの日記ね。いえ、手記かしら。」
「「「「…………。」」」」
おいおいおい、マジで犯罪行為だぞ。やめるよう言っても…
「「ほら、あれ。」」
2人が指差す先。城の地図に…
『ここからは居住区だから入っちゃだめ。それ以外は自由にしていいよ。城の中にある物は好きに持っていって~』
と…書かれている…。じゃあ…いいのか…?
「ディード…いいのか…?」
「普段は…よくないが…。あれは紛れもなく陛下の字だし…。」
……うん!!!
廊下をてくてく。ん…?廊下の端っこに何か置いてある。大きな金と赤の箱…あの曲線は。
「「た…宝箱だーっ!!」」
うおっ!アルとリリーが満面の笑みで駆け寄った!罠だったらどうすんだ!?止める間もなく開けやがった!!
「見てみて!魔法の杖が入ってる、攻撃力アップの効果があるみたい!!これリリー使いな!」
「ええ!」
ええ~…?納得いかないが、喜ぶ2人に水差すのもな。どうやら地図の○は、宝箱の在り処を示しているらしい。ここ…曲がった先にも1つあるな。
次もリリーが意気揚々と手を伸ばすと。
ばくっ!!!
「あっ。」
宝箱が、ひとりでに開いて。牙だらけの大きな口と変化し…リリーを呑み込ん……
「「ぎゃああああああっ!!?」」
あああ、あ゛ああああっ!?オレは飛び出ているリリーの足を掴むが、これ攻撃していいの!?エヴィがテンパりながら、ガンガン箱の横を叩いてるけど!!
「ふう。ありがとう、助かったわ。」
「「はあ、はあ、はあ…!」」
最終的に、喰われても冷静だったリリーが中で魔法を使って脱出した…。なんだったの。
「うわあー。僕も喰われてみたい!もっといるはず、探そう!」
「ちょっと面白かったわ。」
「「やめなさい!!!」」
心臓に悪い!!
次からは、危険を確認してから開けるようにした。
「…これは平気だな。ん?」
ん?膨れっ面の魔導師コンビは遠ざけて、オレとディードで宝箱を開けていたら。
とある箱から…小さな指輪が1つだけ。ディードがつまみ、まじまじと眺める。
「…魔法が掛かっているが…効果は不明。だがこれは、陛下の魔力…ふむ。」
「?」
「レイ。お前がこれを持て。」
「わわっ。」
ぽーん と投げられ、慌ててキャッチ。嵌められている宝石は、真っ赤な…ルビーか?綺麗な指輪だけど…。
「なんでオレ?女性のリリーのがよくない?」
「勘だ。」
???まあ…邪魔でもないし…反対意見もなし。右手の人差し指に着けてみた。しっくり。
城の中を歩いて、30分程経過した。その時。
「全員止まれ。…あの部屋だ、ガイラードの魔力を感じる。」
「……!」
それは、他の部屋より若干飾りのある扉。
オレ達は顔を見合せ、頷いた。
……行くぞ!!
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