158 / 164
学園
71
しおりを挟むそれからについて、少し語っておこうか。
キャンシー・グラウムの蛮行は知れ渡り…国内外から批判が相次いだ。特に国民からは、皇帝を降りろ!というデモが起こる程だった。
当時を知る者達が証言をする事で、信憑性が増したのだ。生き残った騎士や…レストランを無理やり奪われて、燃やされたという男性も声を上げた。
全てを失ったキャンシーは廃人のようになり…大人しく玉座を明け渡した。
悲しいかな貴族は、平民を殺しても大した罪には問われない。悪質ではあるけれど、腐っても皇族。身分剥奪も容易ではなく…代わりにグラウムの僻地にて、生涯軟禁生活を送る事となった。皇婿殿下も自主的について行ったよ。
…本当に愛しているのなら、あの時に彼女を止めるべきだった。今更詮無い事だけどね。
すっきりしなくとも、これが結末だ。物語のように「悪い王様は首を刎ねられました」とはならないんだよなあ。
あと、これはティモから聞いたけど。キャンシーはついに最後まで…ティモとエヴィに、一言も謝罪の言葉を発しなかったらしい。公式的にはもちろん、非公式な場でも。
「それでいいんです。半端に謝罪されては…「許さなくちゃいけない」と自責の念に苛まれる可能性もありましたから。
お陰で俺は、死ぬまであの女を憎み続けられるんです。」
と…ティモは苦しげに吐露した。いつか…彼の心が完全に救われる日が来ますように。
空席となった玉座だけど。本来ならば第二皇子である、エヴィの弟が座るのだが。母親の行いもあり…貴族や平民からの支持は、殆ど無いと言ってもいい。
本人もそれを分かっているようで、自分に皇帝となる資格は無い…と公言している。私にはそれが、無責任としか思えないけどね。
皇子・皇女のエヴィとの関係は…特に変わらず。今更仲直りもなく…
「……お元気で、イヴリン殿。」
「…皇子殿下、皇女殿下もお元気で。」
最後まで他人行儀のまま、お別れをした。もうエヴィは、グラウムに足を踏み入れる事は無いだろう…。
ま、誰が皇帝となろうとも、私には関係無い。帝国の公爵家とかから選べば?と思っていたんだが。
なんとまあ…皇族の血を引くベイラーの王妃殿下。の…子供。アルとジェイドに、その役目が回ってきたのである。
「え、僕が皇帝とかできると思ってる?ぶっちゃけ公爵でもギリギリだよ?リリスの支えがなきゃ無理無理だし。」
「「「………………。」」」
「……そうなるよねぇ…。分かった、僕が引き受けるよ。」
という事で。いずれジェイドが寄宿学校を卒業したら、即位する事がほぼ内定した。実際もっと話し合いとか葛藤とかあったけど、それは割愛させていただく。
ベイラーは我がディスジェイスの友好国という事もあり…魔族が味方になる!?と国民は歓迎ムードらしい。まあその、頑張れ!私も力になれる事があったら言って!
それで、エヴィに保護して欲しいと頼まれたステファニー殿下。彼女に、現在ジェイドとの婚約話が上がっている。まだ確定ではないが…そうすれば、彼女は守られるはずだ。他の2人は知らん。
ステファニー殿下は最後、涙を堪えながらエヴィに挨拶していた。私はその姿に…彼女はもしかして、エヴィの事を…と感じたけど。私が首を突っ込んでいい話じゃないね。
それと、タンブルが。今回の騒動を起こした元凶…という扱いと。キャンシー・グラウムの犯行を明るみにする、切っ掛けを作ってくれた!という勢に分かれている…。
その結果…侯爵家の後継にはなれないが、貴族社会から追放まではされていない。まあタンブル家には私が圧を掛けておいたので、もう好き勝手な振る舞いはできないだろうよ。
アンナ・ナイトリーは謹慎中。現在実家の男爵家に連れ戻され、今後は未定…かな?多分また出てくんじゃね?
ふう…こんなところかな。
それで、肝心の2人だけど。
「え。エヴィとティモ…学校辞めるの?」
「そりゃそうだ。元々俺達は…「皇子とその従者」として留学していたんだ。」
そか…。今私達は、学校のカフェを貸し切ってお茶会中。あれから2週間以上経ち…11月も後半、冬の寒さが本格化してきた。忙しくて学校はサボりがちだったけど、やっと戻って来たんだわ。
彼らは今すぐじゃないけど、一足先に魔国に渡る事となった。2人がいなくなったら寂しいなー…いずれあっちで会うけどさ。
「………?なんか、忘れてるような…?」
「ああ…私も…?」
?アシュレイとディードが、揃って眉間に皺を寄せている。忘れてるといえば…私も。チラッと隣の席を見上げる。
「ねえお父様。結局なんの用でベイラーに来たの?」
「ん?」
学生でもないってのに、この人ちゃっかり同席してやがるんだわ。しかも最近ずっと、パメラと親しげに…ハッッッ!!?まさか、再婚…!?おいパメ公、いやお義母様!アギラールの双子はどうする!!
「違うわよっ!!!」
わかってらい。で、実際なんの用よお父様?
「んー…んふふふふ。」
え…何その笑顔?皆ドン引きなんだけど。
「いやあ…実はね。城の改装が終わったんだ!」
「へ?ディスター城を…?」
マジで改装してたんかい。で…それが何???
私の脳内が疑問符で埋め尽くされる。するとお父様は魔法で、一瞬にして正装に着替えた。あの格好いい仮面も着けて。
「はい、アシュリィもお着替えしてね。」
「は?」
私の制服も、ふんわり可愛らしいドレスに早変わり。頭の上にはミニクラウン………どゆこと?誰もついて行けないんだが?
「ん?んんん?」
「♪」
何事???お父様は次に、鼻歌交じりに私をロープでぐるぐる巻きにする。待って、説明して?
「陛下、何をなさっているんですか…?」
「んふふ~♪」
んふふじゃねえよ?終わったと思ったらお父様は…私を抱っこして…?
「あー、こほん。
……はっはっはぁーーーっ!!姫はいただいた!!」
「は?」
「「「え?」」」
「勇者よ!!姫を返して欲しければ、我がディスジェ…いやディスター城…じゃないな。うーん…あっそうだ。魔王城まで来るんだな!!!」
「え?え?え???」
何々、何が始まった!!?
「では、さらばっ!!」
「えーーーっ!?ちょ、アシュリィ!?陛下ーーーっ!!?」
うっ!?ヘンテコな寸劇後、お父様は私を抱えて窓の外に飛び出したぁっ!?
「ちょっとー!?お父様、何してるの!?」
「えー?囚われのお姫様を、勇者が助けに来るんだよ!」
……………は?説明聞いても分からん。その時、ディードが慌てて追い掛けてきた。
「陛下ーっ!なんですかこれ!?」
「こら!君はあっちでしょ、戻りなさい!後はパメラちゃんの指示に従って!!」
「「へ…?」」
あの…ちょっと。お願いだから、最初から説明してもらえませんかね?
0
お気に入りに追加
3,547
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる