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学園
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しおりを挟む後半胸糞注意
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誰も何も、デムに声を掛けられない。だから私は…そっと手を繋いだ。アシュレイも、何も言わなかった。
タンブルはレイヴァン様に連行されて、パーティー会場を後にし…あ、その前に。
私はリアちゃんとフィオナさんの腕を取り、セルジュさんの前に立つ。
「タンブル令息。私…この子達が欲しいの。譲ってくださる?」
彼は反論する力も無いのか、はんっ!と鼻で笑った。この先自分がどうなるか、大体悟っているみたいね。賢いんだか馬鹿なんだか分かりゃしない。
「お好きにどうぞ?ですが鍵を渡す義理は」
「ソイヤッサ!!」ばかんっ!
「………は?」
「これを壊せばいいのか?よっと。」ばきゃっ!
ソーリー、これは単に軽量化した石なのでな。ちょっと捻ればあら不思議、首輪が取れちゃった♡
ただのパフォーマンスだけど、ディードも手伝いながら3人を自由にする。
「それでは令息、ご機嫌よう。この子達は私が責任持って幸せにしますので!」
「……は…は、ははははっ!!!」
何を考えているのか…彼は狂ったように笑いながら、今度こそ出て行った。
それが彼を直接見た最後だった。まあこの数時間後…全力でぶん殴っておくべきだった…!と後悔する事になるが。
「はい注目!」
談話室に5年生&4年生組+を集めて、今後について話し合う!
「まず本日のMVP!マルガレーテ、お疲れ様~!」
「ありがとうございます、光栄ですわ!」
わー!パチパチパチ!皆で拍手を送る、いや本当大助かりです。ちなみにだが、ナイトリーも連行されてった。
「今までは付き纏い程度でしたが…今夜は違います。ナイトリー令嬢は多くの目がある中、侯爵令嬢に暴行を働きました。これにより我がトゥリン家は、正式にナイトリー男爵家へ抗議致します。」
ヨハネスが淡々と報告するが…さぞ我慢した事だろう。この兄妹は意外と、シスコンブラコン気味なのである。
あ、付き纏いなんだけど。放置してたって事で、アルとジェイドはベルディ殿下に怒られてた。会場の隅っこで、2人揃って正座してたわ。
「もっと早く言いなさい!!」
「だ…だって~。喧しいだけで、実害は無かったし…。」
「僕は…それ程被害が無かったので…。」
そう、ジェイドは年下なのもあってか、目立ってアタックはされてなかった。アルはただ面倒くさがって放置しただけだけど。
「そういう問題じゃありませんっ!お前達には立場ってものがあるんだから!!」
「「う…。」」
弟ズはしゅんとしてた。お兄ちゃんは大変ねえ。なんかオカンっぽくなってらあ……というやり取りがあったのです。そんでジェイドと殿下は帰った。それは一旦置いといて。
「恐らく明日には…いや今にでも帝国に話が伝わっているでしょう。ベイラーの権力者が多数集まっている場所で、帝国の秘密が知れ渡ったんだから。
なので先手必勝!向こうが接触してくる前に、こっちから乗り込む!異論は無いね!?」
私が力強く問い掛ければ、誰も反論しない。という訳で!明日の朝出発だ!!
「メンバーは…私、ディード、アシュレイ、アル、リリー、デムだ!ティモは…どうする?」
「…………。」
ティモは眼鏡を外して、胸ポケットに仕舞い。真っ直ぐに私を見据えて、スッと差し出したメモには…
【どうか俺も連れて行ってください】
と。…うん、分かったよ。彼の素顔を初めて見る皆は、微妙に目を丸くしていた。
それで、四天王Jr.含む皆はここで待機!少数精鋭で攻める…保護者にトレイシーを連れて行こうかな?
「ん?保護者欲しいの?じゃあ僕が行くね。」
「本当!?やったあ、お父様なら威嚇にはもってこいだねっ!……は?」
は?お父様…?
「「「ええええっ!?」」」
「はあい、久しぶりだね~。見ない子が増えてるね?あ、君がパメラちゃんかな?」
「あ、は、はいっ!(うわ、アシュリィのお父さん若っ!それに穏やかそう…よかった~)」
なんでいる!!何呑気にパメラと握手してんの!?気配を完全に消していたのだろう、ディードも全然気付いてなくて、めっちゃ驚いてるがな!!
「えー、パーティーの途中からいたよ?取り込み中みたいだったから、声は掛けなかったけど。」
「?一体なんの用で」
「お、君がラリーかぁ。父上に聞いてるよ!うちの娘が可愛いくて好きになっちゃうのは仕方ないけど、交際はお父さん許しませんよ!」
「へっ?」
「聞けや!!!」
「(流石親子…これでシュリも、俺の気持ちが分かっただろうに)」
ああもう、お父様のペースに呑まれるうううっ!!!
はあ、はあ…!お父様にも部屋を用意して、明日に備えて解散した。
私は部屋に、従者と新たな仲間3人を呼んだ。
「じゃ、改めまして。リアちゃん、フィオナさん、セルジュさん。今まで…大変だったね。これからは、絶対私が守る!!」
「……う……ううぅ…!」
リアちゃんは私の胸に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。従者達もつられて目に涙を浮かべている…私も。フィオナさんも静かに涙を流して、私の肩に額をつけて震えている。……じっ。
「…!………。」スッ
私の視線に気付いたセルジュさんが、少しの迷いの後。私の横で膝立ちになったので、頭をわしゃわしゃ撫でた。
この程度で彼らの傷が癒えるとは思っちゃいない、けど。ちょっとでも軽くなるなら…その手助けが出来るなら、私も少し救われる。
たっぷり泣いた3人は、床に正座しようとしたので…させるか!!
私がベッドに座り、リアちゃんとフィオナさんが両隣!更にその隣にララとパリス!メンズはソファーね、この空間は男子禁制じゃあっ!!両手に花~、フゥーッ!!
「リアちゃんの耳可愛い~!フィオナさんも素敵!」
「ありがとうございます、お姉様!えへ…どうぞ触ってください♡」
「いいの?嬉しい!では……すべすべ~。」
「アシュリィ様、私の尻尾もどうぞ。貴女達もよろしければ。」
「ありがとフィオナさん!ぼくの尻尾もよかったらどうぞ!」
「フィオナさんって三毛猫かな?左右でお耳の柄が違うね、お洒落~!」
「「「…………………。」」」
5人でキャッキャうふふしてると、メンズが気まずいんだか寂しいんだか、変な顔しとる。あ、もう部屋戻っていいよー。私達5人で寝ますので!私の魔法でベッド拡張くらい余裕さあっ!
3人に今後を聞くと、是非魔国に行きたいって。じゃあ冬に、一緒に帰ろうね。
そんな話をしていたら…リアちゃんが俯いて、カタカタ震える手で私の袖を引っ張った…?
「(……何か、言いづらい事が…?)ごめん皆、一旦部屋出てくれる?リアちゃんと…」
「…いいえ。いずれ分かる事ですし…聞いてください。」
「…うん。」
彼女の手を取って、続きを待つと…
「……私、今…お腹に…赤ちゃんがいるんです…。」
「………………え?」
え……いや。貴女さっき、14歳って…聞いたけど…?私以外は全員…憂い顔で受け止めている。
あ そうか。彼らにとっては…驚きじゃないんだ…。
「…っ。一応、聞くけど。その…父親は、貴女の愛する人…?それとも…」
「……いいえ。信頼している人ではありますけど…愛してはいません。」
じゃあ…誰が…?困惑していると、セルジュさんが私達の前に膝を突いた?
「……恐らく。父親は…俺です。」
「え…えええっ!?」
なんでっ!?セルジュさんはやり切れない表情で、リアちゃんを見上げる。
2人とフィオナさんが、苦しげに説明してくれた…。
タンブルは…獣憑きの両親なら、同じく獣憑きの子供が産まれる可能性が高いのでは?と考え。セルジュさんに、リアちゃんとフィオナさんと関係を持つ事を強要した。逆らえないセルジュさんは、謝罪を繰り返して泣きながら2人を…と。
「もう察してるとは思いますが、私達はタンブルの相手もさせられていました。けど、ただ欲を発散させる行為で…最大限気遣ってくれるセルジュの相手は、それ程苦ではなかったんです。
あの男は私達に対しては避妊していたので、セルジュが父親の可能性が高いかと…。」
フィオナさんが苦笑しながら言った。そんな…無理して笑わないで…。
セルジュさんも床に額を擦り付けて、何度も謝罪の言葉を口にする。私達が顔を上げるように言っても聞かないので、アイルに引っ張り上げてもらった。そのままソファーに連行だ。
「……アシュリィ様。僕達の主人が貴女でなかったら、僕とパリスも同じ事をさせられていた可能性があるんですよ。」
ラリー…パリス。そうか…だからあのクソ男、男性の獣憑きは1人で充分なんて言ってたのか…!
だめ、怒りで頭が沸騰しそう。腹が煮える…冷まさなきゃ。
……待って。もしかして…すでに何人か、産んでる…の?
「私は、2回目です。最初は12歳の時でしたが、その時は産まれる事なく…お別れしてしまいました。」
リアちゃんがお腹をさすりながら、一筋の涙を流した。彼女の肩を抱いて…フィオナさんを見上げると。真っ青な顔を両手で覆い、震える声を出した。
「……私もすでに…3人産んでいますが。皆、普通の人間で。
う、産まれて、すぐに。私の…目の前で…。………こ、ころ、さ…」
「もういい。それ以上言っちゃだめ。」
「え…?」
まずい。視界が真っ赤に染まる。
頭がクラクラして、何も考えられない。
「「「アシュリィ様…!?」」」
従者の声が、フィルターが掛かっているように遠くに聞こえる。
……今私の胸に育っている感情は、明確な殺意。
殺す…殺す。女性を弄び、男性に悔恨の念を抱かせ、命を…軽んじた。
吐き気を抑えるように、自分の口を手で塞ぐ。喉が燃えるように熱い…今言葉を発したら、魔力を纏って呪詛となってしまう。
窓や壁にヒビが入り、私の周囲に魔力が渦を巻いている。
アイルとパリスとララは、静かにその場に控え。
ラリーは戸惑いつつも、私の側に寄り。
セルジュさん、フィオナさん、リアちゃんは…私が怖いのか、額に汗を滲ませて喉を鳴らした。
駄目…感情のコントロールが利かない!!!
誰か…このままじゃ私、本当に殺してしまう。
……たすけて…誰か、私を止めて…
「──アシュリィッ!!!」
え。
部屋の扉が勢いよく開き、一直線に私を目指し。
怒り狂う私を迷いなく、強く抱き締めるのは…
「……アシュレイ…。」
ああ…顔を見なくてもすぐに分かる。
いつだって、私を見つけて受け止めてくれるのは…アシュレイなんだもの。
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