私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 イベントは流れで終了、生徒達は寮に帰って行く。ドラゴンはまた空に飛んでった。
 オレ、アル、リリー、アイルの4人で学園のサロンを借り。アシュリィのお祖父様…ライナス様に色々聞いた。

 魔王陛下の父君で、あのリンベルドの息子…。聞いてはいたけど、ずっと苦労してきたのかな…。
 彼はその人当たりのいい性質から、国交を主な仕事にしているという。夏にいなかったのも仕事だったとか。


「君らの話はリャクル達から聞いてたよ。特にアシュレイくん、孫娘にご執心らしいじゃないか。
 いいね~、若いねえ、青春してるね~。」

「えっと…ありがとうございます…?」

 なんか気が抜ける…。ていうか、魔族の中じゃオレの片想い知れ渡ってたの…?

 ライナス様は赤目じゃないけど、公家なんだよな?そんで、ディーデリックも敬意を表していた。
 アシュリィが「魔族は下の者の指示は聞かない」って言ってたの…立場の事じゃないんだな。それもあるだろうけど、自分が尊敬出来るかどうか…ってのが大きいのかな。


 
「まあまあ、今は僕の話は置いとこう。
 ディーデリック対策はできそうかい?」

「…オレは…何が足りないのか分からない…。
 いや、多すぎて…たった3日で、補えないんです…!!」

「……うーん。」

 情けない、悔しい…って思いが再び熱を持つ。
 なんだあの野郎、オレを笑い者にでもしたいのか!?アシュリィに相応しいのは自分だ、って言いたいんだろ!?


「それは違うかなあ。3日後って言ったんだから、3日あれば君に充分勝機があるって意味だよ?」

「へ…?」

「ちょーっと回りくどい言い方かもしれないけど。君を相手する価値も無いって判断したら、軽く腕の1~2本でも斬り落として戦意喪失させて終わりじゃないかなあ。」

 あはは~ なんて笑うけど。いや、発想こわ…。
 でも…それなら、オレはどうすれば…?


「うーん、それは課題って事で!色んな人に相談するのもいいと思うよ。
 じゃあ僕、この国の王様に挨拶してくるから。また3日後にね~。」

 わあ自由な人。その辺、魔王陛下にしっかり受け継がれている気がする。
 アルは陛下に会いに行くなら、とライナス様と共に出る。残されたオレ達は…。



「なあ…オレに必要なものって、何…?」

 早速相談した。とにかく時間がないんだ、プライドとか気にしてる場合じゃねえ!!!


「うー…ん。実は…俺は心当たりがあります。けど…言えません。」

「そっか…。」

 そうだよな…アイルは今魔国在籍の人間だもんな。ライナス様も答えを知っていそうだったけど、教えてはくれなかった。じゃあリリー…。


「……魔力?魔法の腕?」

「はは…3日でMP10000くらい増えねえかな…。」

「い、言ってみただけよ!!」

 本気だったクセに。彼女も「考えてみるわ…」と頭を抱えてしまった。
 なんだろう…強力なスキルを増やすとか?でも簡単じゃないし…腕力?うーん…!


 駄目だ、もっと意見が欲しい!サロンを飛び出し情報収集だっ!!!



「……ねえアイル~?」

「駄目です。」

「まだ何も言ってないわよっ!?」

「ではヒントだけ。リリーナラリス様…貴女も他人事ではありませんよ。」

「へ…?」




 廊下を走り、まず助言を求めたのは!!!

「会長!オレの駄目なとこってなんだ!!?」

「冷静さ皆無。お嬢が絡むとアホになるところ。魔法がてんで駄目。泣き虫。ヘタレ。あと~…」

「こっちは真面目だぞ!!?」

 こんの野郎ぉ~…!!指折り数えてオレの欠点をつらつらと…!

「それが全部だ。俺にだって、どうすればお前がディーデリック殿に勝てるのかわかんねえ。」

「……うぅ…。」

 つまり…オレの力量、ステータスなんかは…問題ないって思ってくれてるんだな。


「だから、そうだな。装備…って線もある。」

 え?俯いていたが、ガバッと顔を上げて続きを促す。
 どれだけ剣の腕があっても、得物が無ければ意味が無い。そして…なまくらよりも、名剣の方がいいに決まっている。…と教えてくれた。

「そっか…公爵家で探してみる。ありがとう会長!!」

「あいよー。……それでも、戦力としては寡少だけどな。っていねえし…。」



 装備か。以前貰った…魔力が3倍になる杖!MP303で何が出来るんだよ…一応用意はしとこう。
 他に、物理・魔法攻撃軽減のアイテムとか。そっか、道具に頼ればいいのか!…それじゃ逃げる事しかできねえよ…。

 ディーデリックに勝つには足りない。次は…!




 寮までやってきた、ここは。デメトリアス殿下の部屋!…の前!!
 最近は彼とも親しくなれたと思うし…一緒に会長と鍛錬してるし!部屋を訪ねるのも慣れたもんだ、いざアドバイスください!


 コンコンコン
「殿下、アシュレイです。今よろしいでしょうか?」


 数秒後…ティモが顔を出す。
 ?なんか…顔色悪いし、焦ってる?来ちゃまずかったかな…。


「……アシュレイ、か。悪いが…今お前と話している余裕はない…。」

「殿下…?」

 そろっと部屋の中を覗くと…殿下の背中が見える。なんだ?拳を震わせ…いや。手紙のようなものを、握り締めている。


【申し訳ございません。今はお引き取りを願います…】

「……うん、分かっ……た?」

「アシュ~、アシュレイ♪」

「「……………。」」

 なんで、ミニアシュがここに?オレの肩によじ登り、キスをして…殿下の元に走った。


「………そいつも、連れてけ。」

「イヤ!!デ、デ、デ…デム!アシュリィ、イッショ!!」

「なんか言葉覚え始めてる…。」

 デム…デメトリアスの愛称?殿下の足にくっ付き、離れようとしない…。


 結局ミニアシュは置いて行く。なんとなく、今の殿下にはあの子が必要な気がするから。
 じゃ、ごきげんようっ!!



「……本当に、なんなんだお前は。」

「アシュ?ンー…シュ!」

「指差すなコラ。」

「ウシュ~。」

「…全く。」

「(デム…笑ってる。ん?ミニアシュ様が…俺のメモ帳と、ペンを使って…なになに?)」


【あしゅりぃと でむ ともだち てぃもも たいせつ だから そばにいる】

「「…………………。」」





 たたたた… ん?ここはディーデリックの部屋…。
 まさか、今ここに。アシュリィが…いんのか…!?
 大丈夫かな、何かされてないかな…!意識の無い状態で…あわわ…!!

 突撃したい、でも…!精霊様もいるだろうし…無理ぃ。パリスとララを信じて…うう…!!

「ハッ!!なあラッシュ、お前侵入出来ない?」

「………………。」

 ラッシュは蚊サイズにもなれる。こう、隙間から…え、嫌?そっか…。


 無理強いはできねえ…ちくしょう!!次は堂々と迎えに来てやる~~~っ!!!




 その後も次々と助言を求めて走った。トゥリン兄妹は…。

「やっぱり情報では?ディーデリック様の得意な戦闘スタイルを存じていれば、対策も取れますもの。」

「普段使う武器、とか。」

「……全然知らない…。」

 魔法は自然を操るのが得意って言ってたけど…。授業で剣を使ってるのは見るけど、特に慣れてるって感じじゃないんだよなあ。



 次、ランスとミーナ!

「え~…。アシュレイに分かんないのに、俺にどうしろと。」

「ディーデリック様の弱点を突くとか?」

「弱点って…何…?」

「「………………。」」



 ううう…ジェイド…。

「えと…。この場合の勝利条件って何かな?」

「?そりゃ…真っ向勝負で勝つ事?」

「そうだけど。降参させればいいのか、戦闘不能まで追い込むのか。もしくは力を認めさせるだけでいいのか…とか。」

「………勝つ事しか考えてなかった…。」

「………………。」




 トボトボと歩き、サロンに戻る…。
 皆オレの為に一生懸命考えてくれたけど…あまり進展しなかった…。

 窓の外がオレンジ色に染まる。残りは…2日半。こうなったら…少しでも鍛錬するしか…。


「ん?」

「あ、戻って来た!」

 リリー…アイルも。待っててくれたのか?それに…。


「ライナス様は王宮に泊まるってさ。さて、作戦会議しよっか。」

「とにかく装備だ。殿下、何かありませんか?」

「そだね。武器庫を漁ればいいのがあるかも。」

「武器か~…父上にも相談すっかな。アシュシュの為なら喜んで応じてくれると思うし。」


 アルだけでなく会長…相談した人達が揃ってる。デメトリアス殿下とティモはいないけど。
 オレの為に…もう夜なのに、わざわざ…。


 ヤバい、泣きそう。だけど…
 ここにアシュリィとディーデリックもいて欲しい。だから…なんとしても勝利を掴む…!!

 オレも加わり、特に勝利条件について話し合う。様々な意見が飛び交う、その時。



「あら…?皆様、こんな遅くまで何を?」

 あれ、パメラ嬢だ。サロンの扉が開いていたらしく、ひょこっと顔を覗かせた。
 彼女は正直戦力外なので、相談もしてない。でも折角だし、とリリーがこれまでの流れを説明してくれた。


 するとパメラ嬢は人差し指で頬を掻き、ぽつりと一言。



「えっと…アシュレイ様に足りないものは。一緒に戦ってくれる仲間、なのでは…?」




 …………………え?


 オレらが呆然とする中。アイルだけは、満足気に微笑んだ。

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