私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
128 / 164
学園

41

しおりを挟む

 イベントは流れで終了、生徒達は寮に帰って行く。ドラゴンはまた空に飛んでった。
 オレ、アル、リリー、アイルの4人で学園のサロンを借り。アシュリィのお祖父様…ライナス様に色々聞いた。

 魔王陛下の父君で、あのリンベルドの息子…。聞いてはいたけど、ずっと苦労してきたのかな…。
 彼はその人当たりのいい性質から、国交を主な仕事にしているという。夏にいなかったのも仕事だったとか。


「君らの話はリャクル達から聞いてたよ。特にアシュレイくん、孫娘にご執心らしいじゃないか。
 いいね~、若いねえ、青春してるね~。」

「えっと…ありがとうございます…?」

 なんか気が抜ける…。ていうか、魔族の中じゃオレの片想い知れ渡ってたの…?

 ライナス様は赤目じゃないけど、公家なんだよな?そんで、ディーデリックも敬意を表していた。
 アシュリィが「魔族は下の者の指示は聞かない」って言ってたの…立場の事じゃないんだな。それもあるだろうけど、自分が尊敬出来るかどうか…ってのが大きいのかな。


 
「まあまあ、今は僕の話は置いとこう。
 ディーデリック対策はできそうかい?」

「…オレは…何が足りないのか分からない…。
 いや、多すぎて…たった3日で、補えないんです…!!」

「……うーん。」

 情けない、悔しい…って思いが再び熱を持つ。
 なんだあの野郎、オレを笑い者にでもしたいのか!?アシュリィに相応しいのは自分だ、って言いたいんだろ!?


「それは違うかなあ。3日後って言ったんだから、3日あれば君に充分勝機があるって意味だよ?」

「へ…?」

「ちょーっと回りくどい言い方かもしれないけど。君を相手する価値も無いって判断したら、軽く腕の1~2本でも斬り落として戦意喪失させて終わりじゃないかなあ。」

 あはは~ なんて笑うけど。いや、発想こわ…。
 でも…それなら、オレはどうすれば…?


「うーん、それは課題って事で!色んな人に相談するのもいいと思うよ。
 じゃあ僕、この国の王様に挨拶してくるから。また3日後にね~。」

 わあ自由な人。その辺、魔王陛下にしっかり受け継がれている気がする。
 アルは陛下に会いに行くなら、とライナス様と共に出る。残されたオレ達は…。



「なあ…オレに必要なものって、何…?」

 早速相談した。とにかく時間がないんだ、プライドとか気にしてる場合じゃねえ!!!


「うー…ん。実は…俺は心当たりがあります。けど…言えません。」

「そっか…。」

 そうだよな…アイルは今魔国在籍の人間だもんな。ライナス様も答えを知っていそうだったけど、教えてはくれなかった。じゃあリリー…。


「……魔力?魔法の腕?」

「はは…3日でMP10000くらい増えねえかな…。」

「い、言ってみただけよ!!」

 本気だったクセに。彼女も「考えてみるわ…」と頭を抱えてしまった。
 なんだろう…強力なスキルを増やすとか?でも簡単じゃないし…腕力?うーん…!


 駄目だ、もっと意見が欲しい!サロンを飛び出し情報収集だっ!!!



「……ねえアイル~?」

「駄目です。」

「まだ何も言ってないわよっ!?」

「ではヒントだけ。リリーナラリス様…貴女も他人事ではありませんよ。」

「へ…?」




 廊下を走り、まず助言を求めたのは!!!

「会長!オレの駄目なとこってなんだ!!?」

「冷静さ皆無。お嬢が絡むとアホになるところ。魔法がてんで駄目。泣き虫。ヘタレ。あと~…」

「こっちは真面目だぞ!!?」

 こんの野郎ぉ~…!!指折り数えてオレの欠点をつらつらと…!

「それが全部だ。俺にだって、どうすればお前がディーデリック殿に勝てるのかわかんねえ。」

「……うぅ…。」

 つまり…オレの力量、ステータスなんかは…問題ないって思ってくれてるんだな。


「だから、そうだな。装備…って線もある。」

 え?俯いていたが、ガバッと顔を上げて続きを促す。
 どれだけ剣の腕があっても、得物が無ければ意味が無い。そして…なまくらよりも、名剣の方がいいに決まっている。…と教えてくれた。

「そっか…公爵家で探してみる。ありがとう会長!!」

「あいよー。……それでも、戦力としては寡少だけどな。っていねえし…。」



 装備か。以前貰った…魔力が3倍になる杖!MP303で何が出来るんだよ…一応用意はしとこう。
 他に、物理・魔法攻撃軽減のアイテムとか。そっか、道具に頼ればいいのか!…それじゃ逃げる事しかできねえよ…。

 ディーデリックに勝つには足りない。次は…!




 寮までやってきた、ここは。デメトリアス殿下の部屋!…の前!!
 最近は彼とも親しくなれたと思うし…一緒に会長と鍛錬してるし!部屋を訪ねるのも慣れたもんだ、いざアドバイスください!


 コンコンコン
「殿下、アシュレイです。今よろしいでしょうか?」


 数秒後…ティモが顔を出す。
 ?なんか…顔色悪いし、焦ってる?来ちゃまずかったかな…。


「……アシュレイ、か。悪いが…今お前と話している余裕はない…。」

「殿下…?」

 そろっと部屋の中を覗くと…殿下の背中が見える。なんだ?拳を震わせ…いや。手紙のようなものを、握り締めている。


【申し訳ございません。今はお引き取りを願います…】

「……うん、分かっ……た?」

「アシュ~、アシュレイ♪」

「「……………。」」

 なんで、ミニアシュがここに?オレの肩によじ登り、キスをして…殿下の元に走った。


「………そいつも、連れてけ。」

「イヤ!!デ、デ、デ…デム!アシュリィ、イッショ!!」

「なんか言葉覚え始めてる…。」

 デム…デメトリアスの愛称?殿下の足にくっ付き、離れようとしない…。


 結局ミニアシュは置いて行く。なんとなく、今の殿下にはあの子が必要な気がするから。
 じゃ、ごきげんようっ!!



「……本当に、なんなんだお前は。」

「アシュ?ンー…シュ!」

「指差すなコラ。」

「ウシュ~。」

「…全く。」

「(デム…笑ってる。ん?ミニアシュ様が…俺のメモ帳と、ペンを使って…なになに?)」


【あしゅりぃと でむ ともだち てぃもも たいせつ だから そばにいる】

「「…………………。」」





 たたたた… ん?ここはディーデリックの部屋…。
 まさか、今ここに。アシュリィが…いんのか…!?
 大丈夫かな、何かされてないかな…!意識の無い状態で…あわわ…!!

 突撃したい、でも…!精霊様もいるだろうし…無理ぃ。パリスとララを信じて…うう…!!

「ハッ!!なあラッシュ、お前侵入出来ない?」

「………………。」

 ラッシュは蚊サイズにもなれる。こう、隙間から…え、嫌?そっか…。


 無理強いはできねえ…ちくしょう!!次は堂々と迎えに来てやる~~~っ!!!




 その後も次々と助言を求めて走った。トゥリン兄妹は…。

「やっぱり情報では?ディーデリック様の得意な戦闘スタイルを存じていれば、対策も取れますもの。」

「普段使う武器、とか。」

「……全然知らない…。」

 魔法は自然を操るのが得意って言ってたけど…。授業で剣を使ってるのは見るけど、特に慣れてるって感じじゃないんだよなあ。



 次、ランスとミーナ!

「え~…。アシュレイに分かんないのに、俺にどうしろと。」

「ディーデリック様の弱点を突くとか?」

「弱点って…何…?」

「「………………。」」



 ううう…ジェイド…。

「えと…。この場合の勝利条件って何かな?」

「?そりゃ…真っ向勝負で勝つ事?」

「そうだけど。降参させればいいのか、戦闘不能まで追い込むのか。もしくは力を認めさせるだけでいいのか…とか。」

「………勝つ事しか考えてなかった…。」

「………………。」




 トボトボと歩き、サロンに戻る…。
 皆オレの為に一生懸命考えてくれたけど…あまり進展しなかった…。

 窓の外がオレンジ色に染まる。残りは…2日半。こうなったら…少しでも鍛錬するしか…。


「ん?」

「あ、戻って来た!」

 リリー…アイルも。待っててくれたのか?それに…。


「ライナス様は王宮に泊まるってさ。さて、作戦会議しよっか。」

「とにかく装備だ。殿下、何かありませんか?」

「そだね。武器庫を漁ればいいのがあるかも。」

「武器か~…父上にも相談すっかな。アシュシュの為なら喜んで応じてくれると思うし。」


 アルだけでなく会長…相談した人達が揃ってる。デメトリアス殿下とティモはいないけど。
 オレの為に…もう夜なのに、わざわざ…。


 ヤバい、泣きそう。だけど…
 ここにアシュリィとディーデリックもいて欲しい。だから…なんとしても勝利を掴む…!!

 オレも加わり、特に勝利条件について話し合う。様々な意見が飛び交う、その時。



「あら…?皆様、こんな遅くまで何を?」

 あれ、パメラ嬢だ。サロンの扉が開いていたらしく、ひょこっと顔を覗かせた。
 彼女は正直戦力外なので、相談もしてない。でも折角だし、とリリーがこれまでの流れを説明してくれた。


 するとパメラ嬢は人差し指で頬を掻き、ぽつりと一言。



「えっと…アシュレイ様に足りないものは。一緒に戦ってくれる仲間、なのでは…?」




 …………………え?


 オレらが呆然とする中。アイルだけは、満足気に微笑んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?

ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。 そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。 彼女に追い詰められていく主人公。 果たしてその生活に耐えられるのだろうか。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...