私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
121 / 164
学園

34

しおりを挟む

 ちょっとした説明イラストが下の方にあります。イメージを崩される可能性もありますが、ごめんなさい!

 ******



 何考えてんだあの(元)ハゲは…。
 部屋に戻りベッドに突っ伏す。さっきの感覚が…温もりが忘れられず、胸の高鳴りが治らない。

「……ばか。」

 次顔合わせたら、思いっきり股間を蹴り上げてやろうかしら。とか考えてたら、いつの間にか寝てた。



「おはよう、アシュリィ。」

「アシュレイ…おはよ。」

「?」

 あー、パリスもだったけど…アシュレイの顔をまともに見れない。なんか裏切った気分…いやそれは自惚れか?でも、彼の好意は確実…。


 …………いつか。正式にお付き合いしたら…言おう。それまでは…。
 犬に噛まれたもんだと思っとこう!!







「それでは諸君!!!来週に迫る魔法イベント…陣取りゲームテリッカドクの作戦会議を開始します!!!」

「「「おおおーーー!!!」」」

「……って、戦力偏ってないー!?」

「仕方ないわよ…。」


 うちのクラスは魔法の精鋭が8人いる。なのに…こっちチームは私とリリーしかいないじゃん!?パリス、デメトリアス、ティモ含む6人が敵なんですけど!!アシュレイ、アイル、ララも向こうで寂しい…。
 もっと言えば、こっちは15人中11人が魔法の授業を選択してない!!(3年までは義務で授業があったらしい)
 向こうは16人いるから、1人は補欠。イベントは4・5年生のみで、8チームに分かれたトーナメント戦なのだ。
 まずは同じクラスで戦い、次に隣のクラスの勝者と。そして5年の勝者と…人数は少ない方に合わせるシステム。


「しかも見てよコレ!『アシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス。ディーデリック=レイン=ウラオノス両名は、上級以上の魔法使用禁止』ですって!?これじゃ飛行も使えない!!」

「いや…私がこっちなのも、ギリギリの采配だと思うわ…。
 貴女が本気出したら敵無しじゃない。」

 ぐぬぬ…!ま、まあ、中級で充分だもんね!リリーもいるし、絶対勝つぞ!!
 私の…Aチームとしよう。デメトリアス達はBチームね。多分彼がリーダーやってるだろうし。


 放課後、Aチームを全員集めて会議をする。魔法の練習場は3ヶ所、交代制で毎日使える訳じゃない。時間が惜しい、サクサク行くぞ!!


「では、作戦だが…。」

 私の言葉に、メンバーがごくりと息を呑む。


「作戦は…とにかく突っ込む!!特攻!敵を見かけたら攻撃!以上!!!」

「「「えええーーーっ!!?」」」

「という訳でそれぞれ魔法の練習!!総監督は私だから、なんか質問あったら来なさい!!」

 パンパン!と手を叩き解散を促す。


「いや待ってアシュリィ様!?もうちょい細かな作戦無いの!?」

 む?うーん…じゃあせめて役割分担するか。


 このゲーム…テリッカドクは陣取りゲームである。広いグラウンドを15のエリアに分け、2チームで奪い合う。
 真ん中は中立地帯で、両端に最初から割り当てられた不可侵領域がある。その3つは互いに奪えないエリアだ。

 ルールは上記の3つを除く12エリア。この内7つを先取した方の勝ち!
 え、6対6になったらどうするって?実はこの12エリアは、奪い返す事も可能なのである。

 そしてもう1つ。それぞれのチームから大将を1人選出するのだが…大将を捕獲されたら、その時点でゲームセットなのである!



「まず大将を決めよう。そして大将の護衛を…2人。積極的にエリアゲットに向かう攻略チーム6人。防衛戦を請け負うのが5人ね。」

「「「(よかった、まともな作戦だ…。)」」」

 なんで皆ほっと息を吐くのかな?

「……ん?アシュリィ、あと1人は?」

「ふふ…私は…速攻で大将を獲りに行く!!!」

 ボキボキと指を鳴らす。ふふふ…戦力で負けている以上、短期決戦でケリをつけるべし!!



 Aチームの不可侵領域及びゲットしたエリアにBチームの人が入ると、行動制限が掛かる。5分以上滞在すると、足に男子は20kg、女子は10kgの重りを付けられるのだ!

「まあ私には小石程度の枷だけど。つまり防衛側が圧倒的に有利!とはいえ油断はできない。むーん…。」


 とにかく、最初にエリアをゲットするまでは防衛チームも攻略チームに助力ね。ただしMPが0になったら脱落なので、ステータスの確認はこまめに!
 他に、大怪我をさせるのもアウト。判定は先生がするけど、ある程度はいいんだわ。難しいな…。他の細かいルールはやりながら説明すっぞ!


「肝心の大将だけど。私としては、ランスにやってもらいたい。」

「…俺?アシュリィ様は…駄目か。分かった、引き受ける。」

 何故私が駄目かと言うと…テリッカドクは!!そして大将は、敵チームに鬼ごっこの如くタッチされたらおしまいだ。なので素早くて、気配に敏感なランスが適任。


「私が大将をすぐ捕まえるのが一番ラク。でも…そこまで甘い相手じゃないよね。」

 メンバーが全員深く頷く。とにかく、目指すは優勝!!!


 この日は遅くまで練習し、練習場を使えない日はリリーとランスと会議&個人練習。
 そうしてついに…テリッカドク、当日を迎える。






 下級生と試合の無い上級生が見守る中、イベントは始まった。会場を大歓声が包む…でも緊張する程細い神経してねえんだわ私。
 審判にはトレイシーもいる…蹴り損ねたが、今はどうでもいいや!


「よーし!!練習の成果を見せたれええええいっ!!!!」

「「「うおおおおおっ!!!!」」」

 イエーイ!!男子も女子もノリノリだねっ、いけるぞこれは!!!


「ふ…勢いだけで勝てると思っているのか?」

「む。士気が高いのはいい事でしょ。」

「まあ否定はしない。だが勝つのは俺達だ!!」

 ぬぬぬ…!試合前に、デメトリアスと睨み合う。こいつにゃ負けねえ!!


 トレイシーがルールを簡単に説明する。

「大将は…ランス・ベンガルドとアシュレイ・アレンシア。」

 アシュレイか、中々いい判断だ。大将同士のバトルを避ける為、最初に発表しておくのだ。


「アシュレイ!あんたは私がとっ捕まえるからな!!」

「へ…(アシュリィが…オレを求めてる…!?)」

「大変です殿下、アシュレイ様は積極的に捕まりに行きそうです。」

「アイル、お前がそいつ見張ってろ!!」

「はいっ!」

 むう。私の従者なのに…楽しそうで何よりです!



 さあて、それぞれグラウンドの両端に移動する。そして…舞台が変化する!

「おおっ!!」

 ただの平坦なグラウンドじゃつまらないからね、魔法を駆使したバトルフィールドが組み立てられるのだ。
 グラウンド全体がボコボコと形を変え…これは、廃墟のステージ!!何百年も前に滅びた街の残骸、と思ってくれればいいよ。空間も拡張されて、サッカーコート2面分はある。


「ふむ…見通しは悪いけど、身を隠す場所も多い。下手に崩して相手を大怪我させる可能性もある…。」

 こりゃ一筋縄じゃいかないな…。でも負けないんだから!!



 スタート地点はエリアが決まっており…私は最もデメトリアス陣営に近い場所を取った。セオリー通りなら大将は恐らく、不可侵領域にいるはず。待ってろよアシュレイ…!

 私達の姿は、あちこちにある魔導具カメラによってモニターに映し出されてるはず。よ~し、格好いいとこ全校生徒に見せちゃる!!



〈それでは…ゲームスタート!!!〉


 トレイシーの開始宣言と共に駆け出す!!!すると、すぐに敵が…!

「やはりいたなアシュリィ!!」

「デメトリアス!ティモも…想定内だよ!!」

 彼なら私の行動を読んで、近くに待機してると思った!だけど…ふふ、ふふふ!


「あーっはっはっはっ!!この私が大人しくルールに従うと思ったか!!
『上級以上は使えない』、それはつまり…魔導書に載っていないオリジナル魔法なら、使い放題って寸法さ!!!」

「何っ!!?」

「出でよ!!『分身の術コピー・アシュリィ』!!!」

 忍者のように印を結び、私の分身を4人生み出す!!ふっ、1人生むのにMP500減ったがな!!これで19対15イエーーーイ!!!


「このアシュリィ…いや亜種リィ達は、HPを共有する上に魔法は使えない!ただしそれ以外はオリジナルと同等の能力を持つ、さあ行くぞ私達!!」

「「「「おーーーっ!!!」」」」

「く…っ!」

 5人で拳を突き上げ気合を入れる!さあて…!



「「「「「じゃあ私がアシュレイを捕まえるね!!」」」」」



 ………………あ?



「「「「「…いや、他の私はエリア攻略に行きなさいよ。」」」」」

「「………………。」」


 ……ちょっと。おい、私達?


「…待て、待って。ごめんデメトリアス、ちょっと会議を」

「行くぞティモ!まずはこのエリアを奪う!!」


 うわああああっ!?早速取られるううう!!!

「ああもう、あんたらオリジナルの言う事聞きなさいよっ!!」

「何言ってんの!私は全体の指揮取ってなさいよ、私が捕獲に行くから!」

「アホ、私が行くの!!そっちの私はランスを守りに行け!」

「ふはははっ、この隙に抜け駆けする私であった!!」

「バーカ、私の思考など手に取るように解るわ!!!させるかあっ!!」

「こらーっ、私達!!仲間割れしてる場合じゃないでしょー!?」


 もう、何これ!?前にマルガレーテが言ってた…「自分が2人いるとか恐怖でしかない」という意味を痛感してるよ…。
 危うく取っ組み合いになりかけた、その時。


「今すぐ分身解除しなさいっ!!!」

「「「「「ごめんなさい…。」」」」」


 遠くから聞こえて来るリリーの怒声。ああ…MP無駄に消費した…。
 ギャラリーからも笑い声が上がる…格好いいとこがぁ…。



「……何をやっているんだアシュリィは…。」

「あっはははは!!!アシュリィらしいー、最初っから飛ばすね~!!」

「笑い事なんですか…?アシュリィ大丈夫かしら…。」

「これはもう、リリーナラリス様が頑張るしかないのでは?」

「ランスもな…。」

「ふふ…っ、勢いだけはいいね。」


 観客席から、5年生組+ジェイドの呆れた声が聞こえたような…。




 その頃のアシュレイ。


「沢山のアシュリィが、オレを狙ってる…!?」ふらふら…

「だーーーっ!!!どこ行くんですかアシュレイ様っ!!」


 こっちもこっちで、笑いを誘っていた。
 もうアシュレイ…微笑の貴公子様の仮面剥がれてるね!








 ちなみに理想図

「じゃあオリジナルわたしはアシュレイを捕まえるね!」

「オッケー!亜種1わたしはここでデメトリアスと勝負だっ!」

「なら亜種2わたしはランスの護衛に向かうよ。」

亜種3わたしはリリーの援護かな。」

「よおーし!亜種4わたしは大暴れして引っ掻き回してやるぜ!!」


「「「「「行くぞ、アシュリィ軍団!!!」」」」」



「的な…ね?」

「砂上の楼閣って知ってる?」

「やかましっ!!!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

完 あの、なんのことでしょうか。

水鳥楓椛
恋愛
 私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。  よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。  それなのに………、 「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」  王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。 「あの………、なんのことでしょうか?」  あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。 「私、彼と婚約していたの?」  私の疑問に、従者は首を横に振った。 (うぅー、胃がいたい)  前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。 (だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)

処理中です...