私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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「アシュリィ様、元気出してください~。」

 いや、別に落ち込んでいる訳では。
 アシュレイが去り、私はまだ混乱している。彼が私を…好き。

 ブチギレ告白…ムードなんざありゃしない。以前聞いたお父様とお母さんの馴れ初め思い出すわ~。
 何処からともなく現れたトレイシーも風のように去り、次に三人衆が。お父様達も…さては覗いてたな?


「ねえアシュリィ、君はアシュレイ好き?」

 そりゃ、どっちかと言わなくても好きだ。ただ…恋愛としてはどうなんだ?
 ぐるぐると同じ思考がループする。考えが纏まらない…。
 ここで考えても仕方ない。お世話になってる屋敷に帰ろうと立ち上がった瞬間。

 お父様が何かを察知、全員隠れるよう指示する。私を残して…。
 原因はすぐ分かった。逃げたはずのアシュレイが戻ってきたのだ。


「アシュリィ!!」

「アシュ…レイ…。」

 ハアハアと肩で息をして、私の両肩を掴む。


「…待ってくれ!!」

 はっ?

「あの…さっきのはオレの本心だ!!けど、その…ちゃんと言いてえんだ!!」

 もう聞いてるんですが。

「お前に相応しい男になったらもう一度言う!覚えてろ!!」

「あ…!」

 なんと私に一切口を開かせずまた逃げた。
 …それまでに私も、答えを出そう…。



「陛下、どう思われますか?」

「うーん…これは…早いとこ城を改装しなきゃ!」

「「「えー!?」」」

「勇者がウチのお姫様を攫いに来るよ!大人として全力で叩き潰さねば!」


 大人気ねえ!と誰もが思った。





 それからアシュレイは、私と目を合わすと赤くなって逸らすようになった。意識してるのがバレバレで…こっちまで照れるわい。
 なんか…水着が恥ずかしくなってきたぞ…?海水浴はやめて、ディスター城でまったりお菓子パーティー。


「いやあ…ナイトリー嬢がいないだけで平和だなあ。」

 確かに。ここなら凸される心配は万に一つも無い…そうだ。

「ねえ、スプリングフィールド嬢の事教えてよ。」

「ちゃんと言えるじゃないの…。」

 もう1人の問題児。なんか私を避けてるけど、一部で威張り散らしてる侯爵令嬢。
 放っておいても問題ないが、何が目的なのかハッキリさせたい。
 …そういえばアルの事狙ってるんだっけ。リリーがいるから惑わされる事はなくても、ちょっと心配かな。

「そうだ。今年になってディーデリックと行動してたら、全然近寄って来ないんだ。」

「去年までは酷かったわよね…私達がお茶してるところに許可してないのに同席したり。」

「剣術の授業で、やたら差し入れされてたらしいね。」

「ちゃんと全部断ってたよ。」

「女性は追い出そうとしても、オレとかジェイド殿下には見向きもしなかったな。」


 行動が分からん…情報班!!

「「はいっ!!」」

 メディアはお任せ、トゥリン兄妹の出番だ!!

「では私からご報告を。お察しの通り、パメラ・スプリングフィールド令嬢は魔族を恐れていると思われます。」

「次はマルガレーテです!彼女の言動には、侯爵夫妻も困っているそうですわ。家は関係無く、彼女の暴走みたいです。」

「令嬢本人はアルバート殿下狙い。成績は良いけど周囲の評判は最悪。ちょくちょくマナーがなってません。」

「超常識な「下の者が親しくもない上の者に話し掛けてはいけない」すら守れていない。」

「ナイトリー令嬢は「人間は皆平等でしょ!?」な感じですけど…彼女はちょっと違うような。」

「「同じ世間知らずでも、ナイトリー令嬢は世間を知ろうとしない。スプリングフィールド令嬢は世間を知った上で無視している。」」


 ふむ…分かるのはこれくらい。他の評判は全部似たり寄ったり。

 やっぱ…直接問い詰めるしかないかあ。



 これ以上考えても意味は無い。私達は海に山に森に…夏を満喫した。
 ベイラーに帰る時、お父様が私に耳打ちをしてきた。

「冬も帰って来るよね?」

「うん!お迎えよろしく。」

「うん、それまでに改装しておくよ!」

 …何を?


 ベイラーでは友人とショッピングをして、課題をやって、鍛錬をして。中々に充実した夏期休暇だったのではあるまいか!?

 私は毎晩寝る前にアシュレイの事を考えるようになった。彼をどう思っているのか、どうなりたいのか。…まだ答えは出ないや。
 例えばディード。彼との結婚は考えられない。数百年後は分からないけど、今はと断言できる。
 ではトレイシー。正直言って、彼は私のタイプだと思う。でも…パリスもいるし…分かんないなあ。



 あー、恋愛とかガラじゃないのに!
 モヤモヤを抱えたまま、休暇は終わりを告げた。

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