私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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「じゃあ皆、それぞれ着替えて集合ね!」

 渡された…水着?パンツじゃねえか…に着替え、海岸で女性陣を待つ。
 魔王陛下、ガイラードさん、ルーデンさん、会長、ヒュー兄上は水泳勝負を始めている。いいなー…オレ泳げないんだよな…。騎士になると鎧で泳ぐ訓練もあるとか。


「…なあ、ディーデリック。アシュリィとデメトリアス殿下、仲良くなってねえか?」

「そうか?」

 そうだ。今まで顔を合わせりゃ睨み合ってたのに…急にフレンドリーになりやがって。
 ただでさえこのディーデリックだって強力なライバルなのに…!会長も。


 いい加減オレを意識してもらわんと。手遅れになる前に!


「それより…。」

 ?ディーデリックが気まずそうに顔を逸らす。

「そろそろだ…覚悟しておけ。」

 何を…と言う前に、アシュリィの「お待たせ~」という声が響いた。


 ……はあっ!!?

「お、おま…!!ななんてはしたない格好してんだっ!!?」

「予想通りすぎる反応ありがとうございます。」

 現れた女性陣は、胸と腰元を布で隠すだけ!!馬鹿たれ、旦那以外にそんなあられもない姿見せんなっ!!!
 オレはテンパってタオルでアシュリィを巻いた。多分顔は真っ赤だと思う。


「やっぱり恥ずかしいわ、これ…。」

「ほう…いい眺めだ、やるじゃないかアシュリィ。リリーナラリス嬢、よければ俺様と…」

「どこ見てんの!リリスに触んないで!」

「ちょっとお兄様、鼻の下伸ばさないで頂戴!」

「いてて、仕方ないだろうマルガレーテ!」

「予想通りの反応ですねー。」

「皆すぐ慣れるよ。アシュレイ、いつまでやってんの?」

 これでよし。が、アシュリィはすぐにタオルを取ってしまった!ひいい!


「準備運動を怠っちゃ駄目だよ~!」

 く…!アシュリィが手足を伸ばす度に、目が離せなくなる…。ちくしょう、他の男共に見せたくね…あ?
 どいつもこいつも…アンリエッタさんやリリー、ララに注目してる。それはそれで腹立つ。


「なんだ、アレンシアはあの凹凸のない身体が好みか?」

 む、殿下が絡んで来た。ふぃー…まあいい、アシュリィの魅力はオレだけが知っていればいいんだ!!

「やはり出ているほうが魅力的だろう。アンリエッタ殿を見てみろ、同じ女性とは思えんぞ。」

「いいえ、オレは…巨乳だろうが貧乳だろうが関係ありません。あのスラっとした手足、弾ける笑顔、微妙なくびれ、控えめに主張する胸が…!」


「お前らの頭をスイカにしてやろうか?」

「「すみません…。」」


 オウ…アシュリィのアイアンクロー久しぶり。


「ったく!では…突撃イィーーー!!!」

「「「おーーー!!!」」」

 あ!待って、オレもー!!



「こん中で泳げない人ー?」

 魔国組と殿下以外手を挙げる。パリスとドロシーさんは海岸で留守番か。

「デメトリアス泳げるんだ。」

「俺様に不可能は無い!」

「あそ。じゃあティモに教えてあげなよ。
 浮き輪で漂うのもいいけど、泳ぎたい人は教えるよ。」

 …じゃ、じゃあ…アシュリィに教えて…

「ディード、アシュレイ見てあげてよ。私はリリーに教えるから。」

 えー!?オレが絶望していたら、見かねたのかララが口を挟む。

「アシュリィ様、リリーナラリス様にはわたしがお教えしますよ!」

「そうね!ララにお願いするわ!」

「えー…?じゃあ…」

「僕はアリスと一緒に浮かんでるね。」

 アルはフェンリルのアリスを飼っている。今回もついて来たのだが、すでに浮かんでいる。

「…ジェイドには私が教えよう。」

「では俺はヨハネス様に。マルガレーテ様はアンリエッタさんにお願いしてよろしいですか?」

 ディーデリック、アイル!ありがとう、この恩は忘れない!!

「うーん…私は浮き輪とやらください。」

「俺も。」

「ミーナとランスはそっちか。私達余っちゃったね。じゃあ行こうか、アシュレイ。」

「おう、よろしく。」

 ああ…オレは今アシュリィと手を繋いでいる…!
 2人だけの時間…ずっとこうしていたい…。




「ねーねー。ジェイドとディーデリックはアシュリィ好きじゃないの?譲っちゃっていいの?」

「僕はとっくに諦めてますよ。彼のように魔王に宣戦布告する勇気も無いし。
 彼女とは友人として仲良くしていたいと思っています。」

「ん…もちろん好きだが。アシュレイが必死そうだからなあ…。
 それにお前達に聞いた話では、彼は幼い頃から一途だったというし。
 まあ私は…4~500年後でもいいかなと。」

「スケールが違うねえ。」


 なんかアル達の声が聞こえるけど集中。

 オレの手を引き微笑むアシュリィから目が離せない。昔から変わらない…いや、ずっと綺麗になった。
 この先も隣で、お前の笑顔を見ていたい。その為ならオレは…魔王陛下にすら打ち克ってみせる。

「ん、どうしたの?」

「いいや…オレ、頑張るからな。」

「…?」


 アシュリィに会えないこの数年、ずっと自分を鍛え続けてきた。次に会う時に…成長したオレを見て欲しくて。
 もう泣き虫で短気で怖がりなオレじゃないぞ。そして…この旅行中にオレは。


 アシュリィに…告白する…!
 

「…?(なんかアシュレイがさっきから百面相してる…面白~)」




 海から上がると、パリスがタオルを持って来てくれた。…前から思ってたんだけど。

「ありがとう、パリス。」

「えへへ。」

 こいつ…アシュリィに近くないか…!?
 アイルみたいに適度な距離を保てよ!男のくせに、いつもベタベタして!ララはいいけどお前は駄目だろ!

 が、アシュリィの可愛がっている従者にそんな事言えん…。オレ情けない。
 近くを通りがかったディーデリックに相談だ。


「パリスはアシュリィが好きなんだろうか…。」

「え?好きだろう。」

「こう、恋愛的な意味で!」

「…それは無いと思うぞ?」

 分からないだろ!?魔国は身分差とか気にしないみたいだし。アシュリィ好みの可愛い系だし!!オレ勝ち目無いじゃん!!

「(無いと思うんだけどな…)まあ確かに、パリスは好きな人がいるらしい。」

 !?そんな…誰かまでは知らんって、もう本人に確認するしか!
 その前に。周囲は誰もいない…よし。


「ディーデリック!オレは…アシュリィに告白するぞ!」

「そうか。」

 …そんだけ!?いや、もっとないの!?

「私に止める権利は無い。アシュリィがお前を選ぶなら…私はそれまでだったのだ。
 彼女は不誠実を嫌う。好意が無ければ友人であろうともキッパリ振るだろう。私も散々「貴方とは結婚しないよ」「兄にしか見えない」と言われてきたからな…。」

 ディーデリックは悲しげに笑った。そうか…。
 オレもたとえ振られても。諦められない…彼女の隣に立ちたい!!


「…私も人間のように短命だったなら。恋に一生懸命になれたのだろうか…。」


 その問いに対する答えを、オレは持ち合わせていない。無言で背中を向けて歩き出す。


 アシュリィ…オレは。
 初めて会った8歳のあの時から。ずっと…お前の事が好きだ。
 そう言ったら、お前はどんな反応をする?笑い飛ばされる気がするが…どうか、オレの気持ちを聞いてほしい。



 ん…?はっ!!パリス発見、しかも1人だ!!
 チャーンス!こっそり手招きし、彼の正面に向かい立つ!!

「どうかされたんですか?」

「パリス…お、お主は…」

「(お主て)」

「アシュ……すっ好きな奴がいるとはまことか!?」

「…うええっ!?なんですかいきなり!?」

 いいから答えて!!
 パリスは徐々に顔を染めて…両手で頬を覆い、口元を綻ばせる。尻尾を揺らし、耳を後ろにぺたっと寝かした。

「…います。誰かは、秘密です。」

 ぐ…!いや、想定の範囲内だ。
 じゃあヒントくれ。どんな奴だ!?

「(アシュレイ様、恋バナ好きだったの…?)んーと…優しくって格好良くて、頼りになる人です。」

 アシュリィじゃねーか!

「いい匂いがして、笑った顔は可愛くて、仲間想いで。」

 アシュリィじゃねーか!!

「すっごく強くて、男らしくて!」

 アシュリィしかいねえじゃねーか!!!


「ちくしょおおお!!オレだってあいつが好きなんだからな、ぜってー諦めねえぞ!!」


 うわああああん!オレは居た堪れなくて泣きながら逃げた。
 次に泣く時は、アシュリィに想いを告げる時って決めてたのに…!!わああああぁぁ!!


「…え。へ…?あなたも…が好きなんですか…!?」





 ぐすん。誰もいない砂浜で膝を抱える。
 太陽が水平線に沈んでいく…オレの気分も…はぁ。


「…アシュレイ」

 !?アシュリィ…!

「…パリスに、聞いたよ。」

 え…言っちゃったの!?そんな…!オレからちゃんと言いたかったのに!

 血の気が引く感覚を覚えるが…アシュリィは隣に腰を下ろしオレを見つめる。
 眉を下げて切なそうな表情だ。まさ、か。


「アシュリィ…?」

「……………。」


 お前の頬が染まっているのは、夕日のせいか?それとも…

 オレと…同じ想いなのか…?


「アシュレイ…。」

「……!」


 目を伏せて両手を胸に当てている。可愛い。
 オレの心臓がうるさいくらいに鳴っている。頭が真っ白になって、無意識に彼女の肩に手を置いた。このまま、抱き締めてもいいだろうか…。


「……アシュレイは、本当に…」


 ……!



「本当に…トレイシーの事が好きなの…!?」




 …………は?

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