私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 さて、もうじき学期末テストがある。私達は4年生メンバーで寮の談話室に集まり、勉強会を開く事に。ミーナとランスは寮が違うからいないけど。
 まあ私には勉強は不要、教師役に徹する。大体心配なさそうだけど…アシュレイだけ不安かな?彼の隣に座り重点的に教えた。心なしかニヤけている気がする、集中しろや。
 デメトリアスはどうかな~と覗いてみるとキッと睨まれた。お前もう見てやんねーからな!!!

「ねえ、夏期休暇には魔国に遊びに来ない?皆の水着も用意するからさ~。」

「水着って?…海で泳ぐの?私、鍛錬はちょっと…。」

 そこからかー。そっか、少なくともこの国に海水浴の文化は無いのか。精々騎士とか戦闘職の体力作りくらいか。
 なので懇切丁寧に海水浴の楽しさを教えてあげた。アイル達の話もあり、皆段々と乗り気だぞ。


 そこへアル、ディード、ジェイドがやって来た。3人共ゲッソリしている、どした?

「……ナイトリー嬢が…このアスル寮に入ろうと、後を付いて来てな…。」

「なんとか振り切ったよ。代わりにヨハネスが捕まったから任せてきた。」

 ヨハネス…!頑張って堰き止めてもらおう。




 それから数週間、テストの結果が出た。ふふん、私1位!当然よね!
 ちなみにこれまではリリーが1位だったらしい。アシュレイは真ん中くらい、デメトリアスは…教えてくんなかった、コンチクショウ!

 さて、休暇に入る前に…色々挨拶回りしてこよう!まずやっぱり、教会だ!!!


 アシュレイ、リリー、アル、ディード、三人衆を連れてリュウオウに乗りシュタンの街を訪れた。懐かしい…もっと早く来れば良かった。

「お久しぶりです、ヒュー様。」

「はい、お久しぶりです。私に敬語は不要ですよ、ヒューとお呼びくださいね。」

 護衛にヒューさ…参戦!移動中雑談していたのだが…ななんと、彼はジュリアさんと2年の交際期間を経て結婚したらしい!?やっだー、詳しく!

 ふむふむ…あの事件の夜に知り合って、それから仲良くなったとな?マジか…結婚祝い用意しとくわ…。



「シスター!会いたかった!!」

「まあまあ、アシュリィ!大きくなって美人さんになったわね~!」

 教会に到着、私は思いっきり飛び付いた。シスターはゔっ…!と唸り痙攣を…ぎゃーーー!!!
 ふう…彼女を寝かせて子供達とも再会を喜び合う。知らない子も増えているが、懐かしのカルマやパイルは抱き付いてくれたぞ。

「てめえは離れろ馬鹿!!」

「む、なんだよ。ねーリィちゃん。」

 ん?アシュレイは真っ赤な顔でカルマを剥がす。私は気にしないけど…。
 その後も一通り回り、ちょっと祈らせてもらって。また来るねーと挨拶をし、街を散策する事に。

「…あそこに見える山で、よくアシュリィは猪を狩っていたんだ。オレらが初めて出会ったのは…」

「ふんふん…」

 なんか…アシュレイとディードが2人で盛り上がってる。混ぜてもらおうと思ったら、リリーとアルに両腕を掴まれて引き離されてしまった?なんでぇ…?





 さて、お次は…ベンガルド伯爵邸!!予め手紙を送っておいたので、レッツゴー!!


「旦那様ー!!アシュシュが来ましたよー!!」

「はは、いらっしゃい!」

 わーい!大歓迎されて、私は嬉しくて泣きそうになってしまった。
 なんとか堪えて、これまでの話をする。三人衆も旦那様に改めて挨拶をして、騎士達にも会いに行った。
 トレイシーの仲間達は皆フサフサになっており、その事をネタにして笑い合った。騎士達は魔族であるディードへのリスペクトが半端なく、なんか崇拝している。あの、私は?

 アシュレイが団長と手合わせをすると、勝ってしまった!?団長は飄々と笑っているが、あんたどんだけ強くなってんの…。

「まだまだ、オレはまだ強くなる。」

 そう語り拳を握る横顔は…大人の男性を思わせるものだった。少し寂しいが、彼はもう子供じゃないんだな…。

 私達はかつてこのお屋敷で修行をした。なんとなく…その時の感覚が抜けてなかったみたい。
 ふふっと笑ってみせると、彼は顔を逸らしてしまった。照れ屋さんは変わらんのお。


「いたいた、2人共久しぶりー」

 そこへトロくん登場!彼は相変わらずに接してくれるので、それが嬉しい。
 ふんふん…現在一児のお父さんですって!?いやー、時間の流れを感じるわぁ。初めて会った時は、ヒョロくて頼りない兄ちゃんだったのに…。


「それで、アシュリィちゃんは結婚しないの?」

 彼の発言に周囲が聞き耳を立てている。無視だ無視。

「相手がいないよ。」

「…全然?気になる人もいないの?」

 うーん?そう言われても…。
 トロくんは「まだ早いかー」と笑った。いやいや、そんな事ないし!最初の人生では結婚だってしてるし!

「…初めまして、私はアシュリィの婚約者候補のディーデリックだ。」

「「えっ。」」

 ディードが私の手を取ってそう宣言した。するとギャラリーは大歓声、マジかー!!と大騒ぎ。
 いや…彼とは年が近いからってだけの理由なんだが。そう説明しようとしたら、反対側の手を誰かに取られた。

「………………。」

 アシュレイ?彼は無言で手を握るばかり。なんだこの状況。
 周囲に視線で助けを求めるも、全員目を逸らす。訳が分からず…そのまま帰る。ディードはすぐ離れたが、アシュレイは移動中も離さなかった。



「旦那様ー、どうなると思います?」

「うーん…アシュレイが一歩踏み出せればなあ…。」

「「ヘタレだからなぁ…。」」





 最後に王宮へやって来ました!流石にアシュレイも手を離し、陛下に謁見である。

「お久しぶりにございます、陛下。アシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノスがご挨拶申し上げます。」

「お初にお目に掛かります、ディーデリック=レイン=ウラオノスと申します」

「うむ、2人共顔を上げてくれ。…この礼儀正しさを、何故あの魔王は持たないのか…。」

 ははは…やっぱなんか失礼して帰って行ったな、お父様。
 ふと陛下の横を見れば、王妃殿下と目が合った。軽く挨拶をすると、彼女が被っているティアラはお父様が贈った物だと気付いた。なんか、忘れてるような…?

 あ!そうだ、リリー達にお土産まだ渡してない!!思い出した今のうちに、早く帰ろう!
 休暇中はアル達を借ります!と許可も貰い、さっさと王宮を後にする。



「なんというマイペースさ。リャクルの血を感じる…。」





 さてさて!談話室に3人を集めて、私は包みを開いた。
 リリーにはララが。アルにはアイルが。アシュレイにはパリスが手渡す。

「これは…僕とレイにはマント?」

「私のはショールかしら。」

 イエス。それはただの布じゃないぞ。
 ディグリーハヤブサという大型鳥魔物の羽根を編み込んであるのだ。それを羽織るだけで簡単に空を飛べるのだ。

「飛行魔法が使えるって事か?すげえ!試そうぜ!!」

 アシュレイは目を輝かせて、マントを握り締めて外へ…待たんかい!!
 暴走したら危ないから、私かディードと一緒に練習するの!!


 ぞろぞろと外に移動、まず私がアシュレイと向かい合って両手を握った。

「ど…どうすりゃいいんだ?」

「集中して、マントに魔力を流して。ゆっくり…少しずつ。」

 アシュレイは目を閉じて…言った通りにする。徐々に背中のマントが風を帯び、彼の体が浮かび上がる。
 私もそれに合わせて飛行し、ゆっくりと上昇する。


「……うお。これがお前の、いつも見てる世界なんだな…。」

「うん、そうだよ。」

 上空30m程で止まった。アシュレイは感激しているのか、呆然と景色を眺める。
 時刻は黄昏時。暗くなっては危険なので降りようとするが…アシュレイは動かない。おいコラ。

「…もう少し、駄目か?」

「駄目…じゃ、ないけど…。」


 そんなに空を飛びたかったのだろうか。それならもっと早く渡してあげればよかったかなー…。
 反省しつつ、彼の気が済むまで付き合う事にした。無言の時間が流れるが…不思議と気まずさは感じない。
 私達は手を繋いだまま、太陽が沈むのを眺めていた。



「アルビー、彼らいい雰囲気じゃないかしら?」

「うーん…レイが気の利いた事でも言ってれば…。」

「ぼくは無言に一票です。」

「あ、わたしも!」

「俺も。」

「じゃあ僕も!」

「私も…って全員じゃなーい!」

 あっはっはっ!!!賭けになりませんねー!
 地上ではそんな会話が繰り広げられていたらしい。全員勝利ですが。




 それから数日後、夏期休暇が始まる。お父様が迎えに来る予定なんだけど…全員揃ってるかな?寮の前に集合なんだが。

「あ!?ちょっと、デメトリアス!」

「うおっ、なんだ。」

 なんだじゃないよ!?皆で魔国に行こうって話してたじゃん!!なんで支度してないの、フラついてないで急げや!!

「………俺様も行くのか?」

「え、行かないの?」

 行くと思ってた。あれ…そういう流れじゃなかった?

「私、ディード、三人衆。アシュレイ、リリー、アル、ジェイド。その後トレイシー、ヒュー、ランス、ミーナ、ヨハネス、マルガレーテも誘ったし…貴方とティモも行くでしょ?
 大所帯だけど、ディスター城は広いから問題無いぞ。」

 と言うと、デメトリアスは目を真ん丸にした。

「……支度って、何を。」

「とりあえずパンツだけ持ってりゃいいよ。」

「女がパンツ言うな野蛮人!!…ちょっと待ってろ!!!」

 なんじゃその言い方!?奴はドタドタと寮に走って行く、マナー悪いぞ!!
 しかしティモは楽しげに笑っているので…まあいっか。


 
 待つ事数分、全員揃った。

「久しぶりアシュリィ~!!パパに会えなくて寂しかったでしょ?今日は一緒に寝ようね~!!」

「寝ないよ!!」

 約束の時間には、ハイテンションのお父様が迎えに来た。全く恥ずかしいんだから!!
 軽くど突いてから、皆で転移の魔法陣に足を踏み入れる。


 さあ…レッツバカンス!!!
 
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