私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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「このボールは俺様の物だ!!邪魔をするなああ!!」

「こっちのセリフだよ!」

 
 おー、やってるやってる。
 アメフトの方はこっちチームの圧勝に終わり、アシュレイと共にサッカーの応援に来た。いやー、ナイトリーを撒くのに時間かかった…。

 アルとディードは敵だから、アイルとデメトリアスとランスの応援を…と思ったのだが。王族2人がすんげー張り切ってるようだ。


「…なあ、オレサッカーのルール詳しくないんだけど…なんか無茶苦茶じゃないか?」

「確かに…。」

 私もそれほど詳しくないけど。アシュレイとパリスと並んで観戦すること数分。なんか…全員めちゃくちゃな動きしてる。


「一切パスとかしようとしませんね…。」

「どいつもこいつも我こそは!ってボール追いかけてんな…。」

「ポジションとかまるで無いね…。」

 なんならキーパーもフィールド走り回ってる。何があった?


「説明致しましょう!」

「「「わあっ!!?」」」

 
 びっっくりしたあ!!いきなり後ろからマルガレーテが出てきて、心臓止まるかと思った…。

 そのマルガレーテ曰く。
 最初はルールに則って進んでいたらしいのだが…ほとんどの生徒が完全にルールを理解しておらず、何度も試合を止めるハメになった。

 そこで審判のトレイシーが
「面倒だから、エリア内でキーパー以外が手を使うのとラフプレーは禁止。それ以外は自由!!」
 というルールに変更したらしい。そこからもうこうなったとか。


「いやあ、その後大変でしたわ。
 それならば、とキーパーのディーデリック様がボールを抱えて相手ゴールに直接運んだり。流石にそれは駄目だ、と言われまして。普通にペナルティエリア以外ではキーパーも手を使ってはいけない、となりました。
 そしてラインの外では手を使っていいのでは?とアルバート殿下がわざと外にボールを出し、抱えて走ったり。それは先生に怒られていましたが。
 その後もちょくちょくルールを調整して、ようやく試合っぽくなりましたの。」

「なんだそれ…。」

「アメフトも少しだけルールは簡略化されてたけど…こりゃ…去年よりひでえ…。」

 そして今、ひたすら全員でボールを奪い合うというこの状況に落ち着いたらしい。
 小学生か。いや小学生でもちゃんとルール守るわ。なんで前もって勉強しとかない?

「この国ではあまりスポーツは浸透していませんから…このイベントも特に重要なものではないのですよ。」


 そういえば、練習時間も少なかったな…。
 全員ひたすら走り回ってるせいか、体力切れで倒れてる生徒も少なくない。よく見たらヨハネスも横たわってるわ。

 さっきからアルとデメトリアスがラフプレーギリギリのやり取りをしている。「貴様あああ!」「邪魔だってば!」「貴様には絶対負けん!」「僕だって!!」と。楽しそうだなお前ら。


 そういえばリリーはどこかなー?と思って探していたら…すぐ見つかった。



「アルバート様、頑張ってくださーい!デメトリアス様もー!!
 …リリーナラリス様は、婚約者だっていうのに、アルバート様の応援をしないんですか?」

「今の私達は敵同士。敵を応援出来ないわ。それにどちらも頑張れ、なんて…真剣勝負をしている者に対する侮辱だわ。」

「そんな言い方無いんじゃないですかあ?みんな頑張っているんだからみんな優勝、でいいじゃないですか。」

「それは貴女の考えよ。私に押し付けないで頂戴。」

「ふーん。
 どっちも頑張れー!!」



 おおう。撒いたと思ったナイトリーはここにいたのか…。さーて、どうするか。
 アシュレイが出て行くとまた面倒なことになりそうなので、パリスと一緒に残して私だけリリーの元に向かう。
 私に気付いたララが席を立ち、後ろに移動した。うんうん、リリーとナイトリーの間にいてくれたんだな。そして今度は私に押し付…託したな。
 そして私はナイトリーは完全無視してリリーに話しかける。


「リリー、今どうなってるの?」

「あらアシュリィ。見ての通り…89対76よ。こっちが劣勢ね。」

「何その点数!?点取り合戦じゃん!!
 まあいいか…デメトリアスー!頑張れ!!アルに負けんなー!!
 パスしろパス!!ランスがガラ空きだぞ!アイルも走れ走れ!!」


 私が応援を始めたら…リリーがくすくす笑ってた。令嬢として、あんまり大声を出すのははしたないって言われるけど…私にゃ関係ない。そーれ!

「ディード邪魔すんなー!!キーパーなんだからゴール守ってろ!
 デメトリアス、根性見せろー!!」

「ふふ…デメトリアス殿下ー、頑張ってください!」


「!!ああ、もちろんだともリリーナラリス嬢。アルには絶対負けな…あ。」

「私の声援は無視かコラあ!?ボール取られてんじゃないか、しっかりしろー!!」


 あんのクソ皇子、リリーの声援に応えようとしてボール取られてやがる。負けたらはっ倒す!


「わー、アシュリィ様女の子なのにそんな言葉使い駄目ですよう。」

 無視しろ私。

 私とリリーが一切無視して応援し続けていたら、「何それ、偉ければ他人を無視してもいいの!?ありえない!」と言ってナイトリーは消えた。
 いやよくは無いけどさ。私にも感情というものがありまして…やっと静かになって安心したわ。



 その後も点を取っては取られ、アルとかオウンゴールして「よっし!!」とか言っちゃう始末。アホか。
 最終的に102対97という結果に終わった。はい、こっちの負けです。
 でもアメフトとテニスでは勝ってるので…総合的にはうちの勝ち。ただ勝ったからといって何かある訳でもなし、ひたすら疲れただけである。


 でもまあ…面白かったよ。たまにはルール無用のバトルってのも悪くない。私達はプロじゃないんだしい。
 デメトリアスもこれを機に、勝ち負けにこだわらず試合を楽しむという…


「くそ…負けた!次は絶対勝つ…!!…違う!次なんて考えるから…!」

 駄目だこりゃ。彼は一体何と戦ってんだ…。

 皆でお疲れ様ーとかこの後どうするかー。なんて言いながら移動するのも、学生って感じでいいよね。ここが日本だったら、この後ファミレスにでも行く勢いだ。
 

「ええい!アルバート、次は俺様が勝つ!!」


 ビシっ!!とアルを指差しそう宣言し、デメトリアスは去って行った。そんなに勝ちたいんかい。



「いやー…次って来年だけど。僕もう卒業してるんだけどなあ…。」



 そんなアルの呟きは、彼に届くことは無いのでした。








※よく見たら100話超えてましたね。応援ありがとうございます!これからものんびり頑張ります!
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