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学園
03
しおりを挟む「ぐはっ!何をする、アルバート!!」
「こっちのセリフだよね。僕の婚約者にちょっかい出さないでくれる?」
蹴っ飛ばされた皇子だが、それなりに鍛えてはいるらしく、よろめいたが倒れはしなかった。そしてアルの婚約者発言に目を丸くしている。
「婚約者?お前の?この美しいご令嬢が、お前の?こっちの野蛮そうな魔族殿でなく?」
「…ディード、野蛮そうな魔族って言われてるよ。しかも男性の婚約者扱いされてるぞ。」
「……………ああ、そうだな…。」
……言いたいことあんなら言えば!!?ええそうですよ、どーせ私は野蛮ですよーだ!!いっそ開き直ってこのクソ皇子ボッコボコにしたろうか!!
とはいえ…腐っても皇子。アルだったら従兄弟同士の戯れで済ませられるけど…私は別に皇子と親しい訳でもないし。余計な騒ぎを起こすつもりはないですよーだ。
というか、左側。アシュレイが笑顔でむっちゃ強く私を引っ張るんですが。それは「手は出すなよ」という意味合いですか?まだ私なんでもかんでも殴って解決するような女だと思われてる??
※お前の魅力はオレが一番分かってるぜ!という意味合いです※
そんなアシュレイは放っといてリリーに目配せをし、頷いた彼女が私から離れてアルの腕に抱きついた。
「殿下のお気持ちは有り難く存じます。ですが私は、アルビーのことをお慕いしておりますの。」
そう言いながら微笑み合う2人はまさにお似合いですわー。皇子の入る隙間なんぞ無いんじゃーい!
「うむ、だがまだ婚約の段階だろう。いくらでも破棄なり解消なり出来るだろう。」
「「「…………。」」」
………よし、無視しよう。というか…私達、まだ舞台上にいるんですけど。よく公衆の面前でそういう発言出来るね…。
「おい!無視するんじゃ無い!!」
アルとリリーの背中を押しながらとっとと舞台袖に引っ込む。この後まだまだ忙しいんだから、お主に構ってる暇無いのでな。
相手にされないと解ったのか、彼は従者を連れ去って行った。その際従者の彼はこっちに一礼して行ったんだけど…そういえば名前聞いてないな。後で教えてもらおう。
「お疲れ様でした、アシュリィ様、ディーデリック様。」
せっかくなので、迎えてくれた3人を改めて紹介する。
「皆1回は会ってるよね。紹介するよ、私の従者兼友人だよ!」
「「「従者です。」」」
…そういや3人とも「畏れ多い」とか言って友人とは言ってくれないんだよな。ただそう言うだけで、態度とかは結構崩してくれてるけど。
この感じ…あれだな、お父様と四天王に似てるな!じゃあ今日からこの3人は…三人衆と呼ぼう。
「ほんじゃ改めて、従者三人衆です。ほい、挨拶。知ってるだろうけど、この人達は私の大切な友人だよ。貴方達にも優しくしてくれるから!」
「お久しぶりです、どうぞパリスとお呼びください。」
「わたしはララです。よろしくお願い致します。」
「俺はアイルです。お見知り置きを。」
そしてそのまま3人は、アシュレイにお礼を言った。オークション会場で、彼も居たことを言ってあるからね。
「オレは大して役に立てていなかったよ。でも無事で…元気になってよかった。こちらこそ、よろしく。」
「よろしくね。僕のことはアルバートでいいよ。」
「私はリリーナラリス。どうぞリリーと呼んで。」
そのままついでになるが、ディードも紹介した。
魔族に貴族制度は無いけど…彼は言うなれば公爵家ってところか?ぶっちゃけ次期魔王候補だけど。
まあ…いつもの歴史なら本当に彼が次期魔王なんだけどね。お父様の死後は、先代魔王陛下がまた代理としてその地位についた。その次、今から約90年後に彼が即位するのだ。
でも歴史は変わったから…任期が100年とはいえ、大体皆2~300年は継続する。だから、お父様もまだまだ現役だろうな。
ちなみに私は魔王になる気は無いよ。頑張れディード。
「では改めて、私はディーデリック=レイン=ウラオノスだ。初対面ではあるが、いつもアシュリィから話は聞いていたのでお前達のことは知っている。
アシュリィの友人であれば私に敬語は不要だし、好きに呼んでくれて構わない。こちらも名前で呼ばせてもらう。
私は5年生として編入するので、1年間だけではあるがよろしく頼む。」
「よろしく。……ところでオレらのこと、アシュリィから何を聞いている…?」
さて、寮に向かうか!今夜は新入生の入学パーティーがある。編入組も参加するよう言われているので、急いで支度せねば!
三人衆を連れ静かにこの場を離れようとしたのだが…。
「そうだな…リリーナラリスは正体不明の木の実を食べてへそから芽が出た事がある。大泣きしながら医者に行ったら引っこ抜かれて、下剤を処方された。
アルバートは幼少期、生まれて初めて可愛いと思った女の子が男子トイレから出てきたもんで、現実を受け止めきれず3日間部屋に篭った(ヒュー談)。
アシュレイはカルマという少年に「これは超貴重な薬草なんだぞ」と言われて、ただの雑草を毎日水やりをして周りの草だけ抜いて大切に丁寧に育てていたことがある。」
「「「アシュリィイイィィーーー!!!?」」」
「ご、ごめんなさーーーい!!!」
「だがリリーナラリスは聡明で美しく、自慢の親友だと言っていた。アルバートは誰よりも繊細で、優しいと。アシュレイは実は一番頼りになる…あれ。誰もいない?」
ディードが辺りを見回すと、笑いを堪えている三人衆しかいないのであった。
私?鬼ごっこの最中だヨお!?
いーじゃん、どれもこれも私の大切な思い出なんだからーーー!!
補足しとくとアシュレイは約1ヶ月間騙されていて、気付いたシスターに慎重に指摘された。こってり絞られたカルマに謝罪され、かなりショックを受けていたが笑って許していて…コイツ器デカいなあと思ったものだ。きっと誰かを傷付けるような、貶めるような嘘だったら本気で怒ったんだろうな。
多分、カルマも信じるとは思わなかったのだろう。あれからもうくだらない嘘や冗談は言わなくなった、アシュレイのお陰だと思う。ただまあ彼に勝てないと思ったのか、態度はますます悪くなったが。
私そこまでディードに話したよね!?なんで途中で切った!?
ていうか…私もっと色々語ったじゃん!なんでそういう面白エピソードばっかり言っちゃうの!?覚えてろよディード!!
結局鬼ごっこはリリーが力尽きるまで行われ、その後4人で芝の上に倒れ込んで笑い合ったのだった。
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