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幼少期
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しおりを挟む「——…ここ、は…?」
「…アシュリィ?」
私が目を覚ますと…何やら豪華なベッドに寝かされていたようだ。
側には…アシュレイ…。
「よかった…起きたんだな…。お前のお父さんは、心配いらないって言ってたけど…もしもお前がこのまま目を覚さなかったらって…不安だった。」
「アシュレイ…ごめんね、もう大丈夫。」
泣きそうな顔で私のことを見るもんだから、思わず抱き寄せた。すると彼は顔を真っ赤にさせたが…逃げようとはしなかった。心配かけて、ごめん。
それよりも。なんでボロボロなの?
「へ?あ…えーと…け、稽古。」
彼の姿は酷いもんだ。服は破れてるわ怪我してるわ、折れてないでしょうね?というか、抱き締めちゃったけど痛くなかった?
「だ、だ、大丈夫…。」
こいつに何があったんだ…とにかくアシュレイの手を取り回復させようとしたら…
「あ、いい。」
「そうなの?」
「ああ…これからももっと怪我するだろうし、いつまでもお前に頼りたくねえ。」
…そっか。成長期か?このこの。
しかしこいつ手を離さない。そんなに寂しかったか?ん?
「…うん、寂しかった。」
…素直に返すんじゃあない!!!こっちまで赤くなっちゃうじゃんかあ!!?
なんだか互いに無言になってしまった…。聞きたいことは沢山あるのに。私は何日眠っていたのかとか、事後処理はどうなったのか、とか。
でも今は…このままこうしていたい。と思っていたのだが……扉の向こうから、なんか感じる。つかよく見ると、隙間空いてる…。
「アシュレイィィィ…約束の10分は過ぎたよ…もうこないだのお詫びには十分だよねえ…?」
「おじさま…もうちょっと2人きりにしてあげてくださいな。」
「大人気ないですよ。」
そこから覗くのは、お父様にお嬢様、そして殿下。なんだこの組み合わせ…?
「アシュリィの目覚めの挨拶は譲ったんだし、もう入ってもいいよね?」
子供相手に何言ってんだ…。お父様は私の返事を待つことなく部屋に入ってきた。
「おはよう、アシュリィ!お祖父様とは話せたかい?」
「あ、知ってたんだ。うん…少しね。」
お父様は私のことをぎゅっと抱き締めてくれた。
「アシュリィ、目が覚めて良かった…ちょうど1週間眠っていたのよ。」
「その間色々大変だったよ…。」
あの殿下が遠い目をしている…!詳しくよろしく。だがその前に話がしたい、とお嬢様が言った。そんでお父様は追い出された。子供だけで話したいそうだ。お父様は抵抗したが…私と殿下で廊下に追いやった。
「部屋の前で聞き耳立ててやがる…遮音してやろう。それでお嬢様、お話とは?」
「それよ。」
どれよ?
「アシュリィ、貴女は今回魔王陛下のご息女だと判明したわ。貴女の地位は私より上なのよ。だから本来なら、私は貴女に敬語を使わなくてはいけない立場なの。」
「え、嫌ですよそんなの!」
「ふふ、そう言うと思ったわ。だからこのままでいさせてもらうけど…私も、貴女にリリーと呼んで欲しいわ。アシュレイに対するように、私にも砕けて欲しいの…。その方が、お友達って感じもするし。」
ぐう…。お嬢様の言うことはもっともだ。私だって言い換えれば王女の立場だし…魔王は世襲制では無いけど、赤い目を持つものは魔族の中でも尊ばれるもんだし。
でも…今までずっとお嬢様呼びで敬語使ってきたしなあ…でも…うーん。
「…アシュレイ相手みたいにってのは無理…かな。でも、頑張る。…リリー。」
私がそう言うと…お嬢様、じゃなくてリリーが抱きついてきた。やーだー、美少女のハグいただきましたー!!これはリリーの友人である私の特権だ。殿下にはまだ早いぞ!!
「ああ、僕もアルって呼んでね。敬語無しで。」
「…善処する。」
そうきましたか。まあ…本人がいいって言ってるんだからいいのかな?でもアシュレイは?
「オレも昨日から、アルとリリーって呼んで…呼ばされてるよ。そのことで報告があるんだ。」
…アシュレイが、養子!?しかもアレンシア公爵家!!?出世したなオイ!!そんで大将軍のお父様に扱かれている、と。…頑張るなあ。
「強くなりたいんだ。…今は、それ以上は言えない。」
思春期か?…ちょっと違うか?話はそのまま、事後処理の状況に移った。
アミエル侯爵家は爵位と領地を王国に返還。当主は今回の騒動を巻き起こした主犯だが、すでに故人のため罰はそこまで。
子供達はお咎めなしだが、成人(15歳)までは侯爵家扱いでその後は自分で生活する。正確には、寄宿学校卒業(17歳)まで国で支援してくださると。リリーは、まだ兄2人と話していないらしい…。
「魅了にかかっていたと聞いているけど…やっぱり怖いわ。」
大丈夫、その時は一緒にいるから。相手の第一声によっては武力行使もやむなし。
そして…子供達と言ってもアイニーは別。そもそも魅了にかかっていなかったし、リリーにしてきたことは許されるものではない。リリーが王子様の婚約者候補(いつまで候補付いてんだ)ってのも大きかろう。魔族を敵に回してしまったし、お茶会での醜態も知れ渡ってるしね。
昨日目を覚ましたらしいのだが…私を探して大変だったらしい…。彼女はそのまま国境近くの修道院行き。私が死ぬまで出てこないでくださいね。「それって何百年後?」さあ?
侯爵含め犠牲者達の葬儀は終了している。生き残りはリリーに謝罪したらしいが…物心ついた頃から自分を虐げていた人を信用は出来ないだろう。使用人達は次の就職先探し中。リリーは公式では許すとは言ったが、二度と関わる気はないらしい。
トロくんとライラさんは、なんとベンガルド家で雇ってくれるらしいのだ。安心だが…トロくん、いい加減にベラちゃんにプロポーズせいや?
ついでにザイン子爵はまだ調査中だが、おそらく極刑は免れないだろう。そして家族も共犯で投獄。お家取り潰しでこちらも国に返還。
「僕とリリスが卒業後結婚して、僕は王族を離れて公爵になる。旧アミエル領とザイン領は公爵領として僕が統治する予定だよ。
…結婚式、絶対来てね?」
「え。そりゃあもちろん。」
何を当たり前のことを言ってらっしゃる。しかし、そっかー。リリーは公爵夫人かあ。…リリーの支えが無いと大変だろうしね。
「おじょ…リリーはこれからの生活は?屋敷は壊れてるし。」
「あ、もう屋敷は元通りよ。魔族の魔法ってすごいわね!!まるで新築みたいにピッカピカだったわ!でも家具とかは無いのよね、すぐには住めないわ。いずれ私達が住む予定だけど…暫くは空き家ね。」
「とりあえず寄宿学校入学まで王宮で暮らすことになったよ。僕がいるのとは別棟だけど。」
そりゃそうだ。
でも…よかった…リリーも幸せそう。…やっぱり、私の生きる世界はここだ。心からそう思う。
「そうだ。アシュリィー。君が目を覚ましたら、来て欲しいってジルベールが言ってたよー。そこの3人もね。」
扉の向こうからお父様の声がする。まだいたんかい…って。
「そういうことは早く言ってくれないかなあ!?」
陛下をお待たせしてるんかい!!急いで支度…何着ていく?私が悩んでいたら…アンリエッタとドロシー登場!
「お任せください!アシュリィ様がお休みの間に準備は全て終了しております。さあ、やるわよドロシー!」
「アシュリィ様、お覚悟!!」
あ、この感じ懐かしい!!ベンガルド家でメイド軍団に捕まった時に似てる!いやー、仕上げられちゃうううう!!
「じゃあよろしくー。リリーちゃんも仕上げておいて。男の子はこっちね。」
アシュレイとアルはお父様に連れて行かれた。仕方ない、大人しくしてますか。
「はい、お2人とも完成です!」
「可愛いです…。」
おお…こ、これは…。
なんというか…軍服ドレスってやつ?一応魔国での女性の礼装だ。豪華な装飾も散りばめられ、私は青、リリーはオレンジの色違い。やっべ、リリーめちゃ可愛いい!!お揃い!写真撮りたいいいい!!
お父様め、いいもん用意してくれたな!こりゃ男子チームの仕上がりが楽しみですな!
私達が廊下に出ると、すでに2人は待っていたようだ。その仕上がりは…
「2人共…めっちゃ格好いいね…!」
「そ、そうか?似合うか?」
似合う似合う!!彼らも軍服を着ている。もちろん魔国の礼装である。この国に軍服って無いんだよね。騎士の戦闘服は鎧だし、正装はスーツだ。それなりに豪華なスーツであるが…やっぱ軍服ってかっこいい!!惚れる!!
「!!!そそそそうか…アシュリィ…とリリーもよく似合ってる、ぞ。」
「ねえリリス、僕はどう?」
「とっても素敵…。この国には無い礼装だけど…見惚れてしまうわ…!」
「ありがとう。リリスもアシュリィも綺麗だよ。」
2人は型は違うが色は同じ黒い軍服だ。それにアシュレイは灰色、アルは金色という色違いのブーツにマントを羽織っている。ん?この色は…。
「ああ、私達の髪色か。」
私の青はアシュレイの色。
リリーのオレンジはアルの色。
アシュレイの灰色は私。
アルのはお嬢様の金髪だな。
お父様もニクいことしてくれんねえ。じゃ、エスコートでもしてもらおっかな!なんつって…
「…お手をどうぞ、お嬢様。」
「……は、い…。」
流れるように手をとられた…まあ、アシュレイはこれから公爵家の子供として社交の場に出ることもあろう。練習だな、うん!!!
「ああああ僕がエスコートしたかったのにいいい!!!」
そう喚くお父様は無視して、私達は陛下の待つという玉座の間に向かうのだった。
というか、お父様も正装だ。2人のよりも少々凝った仕立ての、魔王の正装。…うん、素直に格好いい…!しかしなんか…コスプレの一団にしか見えなくなってきた…格好いいんだけども!!
向かっている途中、いろんな人とすれ違った。ガイラード、ルーデン、ヒュー様は騎士団の訓練に参加していたようで、私達の姿をみかけると駆け寄ってきてものすごく褒めてくれた。少し離れたところから、なぜかいるトレイシーも微笑んでくれた…。
王妃様と王太子、第三王子殿下もいた。王妃様は私達の装いに目を輝かせ、殿下方もよく似合っていると言ってくれた。
すれ違う使用人達は話しかけてはこないものの、皆見惚れているようだ。
ここは私が生まれ育った国。そして、かけがえのない友人と出会えた土地。その場所を魔族の正装で歩く。
どちらも私の…大切な故郷であることに変わりない。でもいずれ、どちらかを選ぶ必要があるだろう。その時…私の隣に誰かいてくれるのだろうか?
※幼少期編残り2話予定※
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