64 / 164
幼少期
64
しおりを挟む「時にアシュリィ。其方から微かに神力を感じるが…『天空の箱庭』に行ったことがあるのか?」
「…?いや。どこそこ、天国?」
世間話のようにグレフィールが聞いてきた。神力…神の力?いつ私は神になったんだ?
「正確には残滓だ。『天空の箱庭』とは、神々がおわす場所。生者が足を踏み入れることは叶わず。のはずだが…ふむ。」
ふむ。じゃないわ。説明しーや。と、言いたいとこだがもう屋敷が見えてきた。
…屋敷に近付くにつれて、濃い魔力を感じる。良かった、お嬢様を置いておかないで…。魔力の低い人間には影響は無いが、高い魔力を持つ者は別。あの距離ですら意識が飛んだんだ、この屋敷にいたら…死んでいただろうね。この街にはそれほど高魔力を持つ者はいないはず。…私は平気だよ、人間じゃないし。
「ふうむ、禁術か。…誰かおるな。」
彼女の言う通り、屋敷の上空に人影がいくつか。あれは…!!
「なあ、陛下は何処だ?さっきまでここにいたじゃねえか。」
「この周囲に結界を張っているわよ。人間に被害を出したくないのでしょう。」
「私に命じて下さればよいのに…!」
「陛下の攻撃に耐えられる程の結界を張れまい。お戻りになったら屋敷ごと破壊しよう。」
……!!私は、彼らを知っている。あれは、(自称)魔王の側近!ルーデン、ドロシー、アンリエッタ、ガイラード!!
「待たんかーーーい!!!!」
今にも屋敷をぶっ壊しそうな4人に、遠くから待ったをかける。いや屋敷を破壊すんのはいいけど、中にいるモノは駄目だと私の記憶が叫んでいる!
「何者だ!!」
彼らは戦闘態勢に入った。そりゃそーだ、彼らにとっちゃ私は初対面だし。…説明するのも面倒だ!
「私が何者か、などどうでも良いわ!!今破壊されては困る、聞かぬなら力尽くで止めるのみ!」
私の言葉に、4人が一斉に飛びかかる。大人気無いぞ!!そっちがその気なら、こっちだって本気で行ったるぞ!!!
「グレフィール、止まって!!」
彼らの戦法はよく知っている。ゲーム風に表現するならルーデンがタンク、ドロシーは暗殺者、アンリエッタは戦士、ガイラードは格闘家。要するに…遠距離担当と回復担当がいないんだわ!!
だったら当然、こっちは遠距離攻撃じゃい!!
…この4人は、私の仲間だ。お母さんと…※※※まで亡くした私を必死になって励まそうとしてくれた。元気出して、みんな付いているからと。私は、それに応えられなかったけど…。
ごめんね。でも…それとこれとは別!手加減なぞしようもんならやられるのはこっちだ!!どうやらこの周囲に結界が張られ始めてるから、遠慮なくぶっ放す。
魔力刃を使ってもいいけど…あれは消費が激しい。グレフィールの召喚にも魔力7000くらい持っていかれたし、この後を考えて節約したい。
…今から繰り出すのは中級魔法だが、魔力を多く込めて数を増やせば上級をも上回る破壊力をもつ。
上空に浮かぶのは無数の氷の礫。それを彼らに…全方位からガトリングガンのように発射する!!
『降り注げ、氷雨!!』
ガガガガガガガガガガガガ!!!と周囲に轟音が響き渡る。完全なる近所迷惑、ごめんなさいね!
連射、連射、連射!!!どんどん発射、いけいけ礫!!これが人間相手だったら肉片になりかねないが、彼らは頑丈だから大丈夫!!!むしろ結構防御されてる。そーれ、追加追加!
「ぐう…!」
よっしゃ、効いてきた!このまま……
轟音が、止む。急に静かになったもんだから、なんだか耳が痛い。彼らは急に攻撃が止んだことで、困惑しているようだ。
「……?何故止めた。続けていれば我々を倒せたろうに。」
「私はね…あなた達を傷付けたい訳じゃないんだよ、ガイラード…。」
「…何故私の名前を知っている。」
知ってるよ、4人共。特にあなたはね。ああ、思い出してきた。
そうだ、本来の私は…8歳の時父親が迎えに来てくれた。正確には、父の使いだが。それがガイラード。そのまま私は魔国に渡り、父をはじめ魔族の皆と仲良くなれた。でも…。
「!待って、あの子の、いやあの方の目…。」
「は…赤目…!?…もしや、貴方はウラオノスの名を持つ方でしょうか。」
「…ええ、そうだよ。その名を賜った。」
私がそう言うと、全員その場に跪いた。まあここ上空だけど。魔族にゃ飛行魔法なんて朝飯前ですから。
「ご無礼を、お許しください。罰は如何様にも受けましょう。」
「必要無いよ。」
私はグレフィールから降り、彼らに近付く。記憶が戻ってきたことにより、知識も増えてきた。人間には最上級魔法に分類される飛行の魔法も、魔族には標準装備だったりする。
はあ…記憶が無くなっていたことにも気付かなかったとは。あとちょっと、最後のピース。それがあれば、完全に思い出せる。私が何者で、何故未来を知っているのか。
間近で私の顔を見た4人は、驚きに目を見開く。どうやら言葉を無くしているようだ。そんな空気の中、緊張感の無い声が響く。
「おーい、張り終わったよ。というよりお前ら、さっき暴れてたでしょ。…ん?」
そう言って近づいて来る彼は、魔王リャクル。彼は普段穏やかでのんびり屋で寛容で、だけど典型的な…怒らせたら恐い人。
「君、は…。」
そして、そして私の…
「…お父様。」
だ。4人は目だけでなく顎が外れそうな程に口を開いている。ええそうでしょうよ、我ながらそっくりな父娘ですよ!!
傾国の美女である(アシュリィ談)お母さんの要素皆無だよ、髪の色以外完璧にお父様のクローンだよ私!!女の子は父親に似るって言うけど、似過ぎて怖いわ!まあそれが父娘の証明になってるけどさあ…。
というかお父様、いつまでフリーズしてんのさ。
「き、み、の…お母さんの、名前は…?」
「…シルビア。」
そう答えた瞬間、私はお父様の腕の中にいた。
ああ…最後のピースが、揃った。
そうだ、私は…私が15歳になると、お父様が死んだ。殺された。私はそれを受け入れられなくて、長い時間をかけて時間遡行魔法を編み出した。
でも…何度繰り返しても運命は変わらなくて。どうしても諦められなくて…!
…まるで、走馬灯のように蘇る。私の、最初の記憶。あれは、そう——…
※次回から過去編です。現在それどころじゃないけど過去ったら過去編です。あるいは真相編とも言う※
5
お気に入りに追加
3,551
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる