私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 侯爵が、禁書を所持しているってこと…?ゲームでのお嬢様は禁術を扱ってたけど…家にあったからなの?…そういえば、ゲームで侯爵は影も形も無かったよな。なんでお嬢様が禁書を…?


「報告は以上だ。もしまた依頼があれば訪ねられよ。」

 ハッ!!また考え事しちゃってた…今は侯爵の事を考えている場合じゃない。闇オークションに集中しないと。残りの報酬を影に渡し、確認が済んだら彼は消えた。すげー…。お世話になりました!




「さて、禁書も気になるが…まず今夜のオークションについて計画を立てようか。セイドウも呼ぶから待っていてくれ。」

 旦那様はそう言い、ドアの外に控えていたハロルドさんに騎士団長を呼ぶよう指示した。するとすぐに団長と、なぜかトレイシーがやって来た。


「よっ、坊主に嬢ちゃん、久しぶりだな!
 早速だが相談があってな。こいつら傭兵団、ウチにくれ!!」

 …はい?団長はトレイシーの肩を叩きながらそう言った。くれって…騎士団に?

「おう!こいつすげえぞ、俺に一騎打ちで勝ちやがった!!まあ足元払うとか騎士らしくない動きはあったが…実力は本物だ!!こいつだけじゃねえぞ、部下達もだ。どいつもこいつも隊長クラスの実力を持ってやがる、傭兵にしておくのは実に惜しい!!
 だから勧誘してんだがな、トレイシーは「俺の上司は今んとこお嬢と大将だ」っつって首を縦にふらねえんだ。」


 お嬢…私か?あと、アシュレイ?どゆこと?トレイシーに視線を送る。

「…だからよ。手伝ってやるって言っただろーが。それが終わるまではお前らに従ってやるよ。」

 いやそんな言葉聞いてねーのだが?と思っていたらアシュレイは納得していた。私の知らない何かがある!?
 まあ真面目な話、どうやら私達に判断が委ねられたらしい。っつってもなあ…アシュレイの家族の無事が確認された今、私達に彼らをどうこうするつもりも権利もない。彼らは傭兵として仕事をしただけだし、むしろ保護の手伝いしてくれたようなモンだし…ねえ?私達が彼らを裁きたいなんて言ったら、傭兵という職業を否定してるのと同じだ。
 アシュレイもそう考えていたらしく、私達の意思を伝えた。それでもトレイシーは、手伝うと言って聞かない。

「でも…出来りゃアイツらは入団させてやってくんねえか?騎士っつーもんに憧れてたし…実際ここで世話になってから、アイツら生き生きしてんだよなあ。ロットなんてメイドの1人と良い仲になってるし。」

「その話詳しくっっ!!」

 ロットって、アレでしょ!?高所恐怖症で、~スが口癖の奴!どのメイドさん!?ご結婚の予定はおありですか!?他の騎士にボコられなかった!?
 興奮気味にそう聞いたら、全員に「後にしなさい!!」と怒られた。すんません。今度こそ話し合いに戻ります。メンバーは私・アシュレイ・旦那様・団長・ハロルドさん・トレイシー。「はいはーい!アタシも!!」…ドアをばーんと開けて登場したジュリアさん。


「えー、気を取り直して。場所が少し遠いから、時間的に今すぐ向かわないと間に合いませんね。なんでまず俺以外の団員は、先に出発させましょう。俺含む数人は嬢ちゃんの精霊で行けるよな?」

 私は頷いた。屋敷の警備に数人残し、非番の人も全員出動らしい。デート中だったらすまん。目立たないように数組に分かれて移動。現地集合し、作戦もそこで伝える。
 団長は一度そのことを団員達に伝えるため席を外す。その間に私達は、誰が招待状で会場内に入るか決める。

「まあ妥当なところで俺だろうな。」

 とはトレイシーの発言だ。まあ、そうなるよね。私とアシュレイは子供だから無理だし、団長は外で指揮を取る必要がある。旦那様とハロルドさんは留守番なので論外だし、ジュリアさんは任務忘れそう。大人で自由に動けるトレイシーが適任だ。
 じゃあまず外見なんとかするか。ウィッグ着けて…旦那様ー、トレイシーにぴったりのスーツありませんかね?

「うーん、私のでは小さいし、ハロルドか副団長のが良いだろう。ハロルド、何か見繕ってあげなさい。」

「かしこまりました。」

 そう言ってハロルドさんも席を外す。トレイシーは適当でいいと言っているが、分かってないなー!

「潜入ってのは、周囲にいかに溶け込むかが重要なんだよ!身なりの良い貴族や金持ちしかいないとこに、明らかに身体に合わないスーツ着てる奴いたら浮くでしょうが!!」

 旦那様もうんうん頷いている。流石は服飾系の会社を経営するだけあるね、分かってるう!

「あとアシュリィちゃん透明化出来るでしょお?一緒にくっついてったら?」

 なるほど。採用!
 ではまず計画として。私とトレイシーが潜入し、タイミングをみて暴れる。オークションには人間がかけられている可能性も考慮し、私は保護担当トレイシーは暴走担当…トレイシーのステータスを参考程度に知っておくべきか?

「トレイシー。嫌なら答えなくて良いんだけど、ステータスの攻撃と素早さはどのくらい?」

「んー、攻撃1450、素早さ1980だな。」

「「「「高っ!!?」」」」

 嘘でしょ、攻撃に至っては私より上じゃん!!そりゃ苦戦するわ…!いや、カラスマ亭で手加減してたな!?他のみんなも呆然だよ、最初は傭兵以外選択肢無くても、後からいくらでもチャンスはあったでしょ!!

「俺だけならな。引き抜きの話も多くあった。だがあいつら全員引き取ってくれる奴はいなかったんだよ。」

 …そうかい。じゃあもう何も言わないよ。
 団長達も戻ってきたところで作戦のおさらいだ。
 トレイシー1人で会場内を引っ掻き回し、合図したら外の騎士が乱入。実際の騎士の待機場所なんかは会場を見てみないと完全には決められない。そしてジュリアさんは上空から、怪しい奴が逃げようとしていたら捕らえる。団長含む精鋭は、抜け道で待機だ。オークションの開催者なんかはここを使う可能性が高い。アシュレイもそこに参加する。

 方針が決まったところで早速行動開始。私達は動きやすい服に着替え、外に集合だ。騎士の戦闘服は鎧なので、団長はガッツリ着ている。鎧には視覚的にも相手をびびらせる効果があるらしい。制服姿の警官を見かけると、思わず逃げたくなるのと一緒か?
 外に出たら、ちょうど殿下達がやってきた。ランス様も一緒だ…第三王子も。
 殿下に私達の現状を伝え、お嬢様の側に居てもらうよう頼んだ。今日何時に帰れるか分かんないからね。快く引き受けてくれたので、これで作戦に集中出来る。
 

 空を見上げればそろそろ夕陽が沈む頃。ついぼやーっと眺めてしまう。
 …私は別に正義の味方とか、熱血漢って訳じゃない。そういうのはゲーム版ランスの役割だ。なのにこんな…闇オークションを潰して悪徳貴族共とっ捕まえる、なんてねえ。…柄じゃ無いけど、始めた以上はやり遂げる。

 首洗って待ってろカエル野郎。私の家族に手を出したこと、精々後悔するんだな!


 
 
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