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幼少期
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しおりを挟む無事会場内に通されました、我らリリーナラリス一行。王妃殿下が見えるまで、それぞれ談笑をしているようだ。
「お嬢様、以前のお茶会であなたを見下した令嬢を全て教えてください。」
「わかったわ。まずあそこの大きな帽子の方、その隣の…」
ふんふん。ふーんふん。ふふん。よし覚えた!私のぶん殴リストに追加だ。実際には殴らないけどね?いやマジで。
それにしても誰もお嬢様に話しかけて来ないね。本来侯爵令嬢であるお嬢様なら、沢山ご友人がいてもおかしくない。
現在この国に公爵家は3家のみ。しかも令嬢はブルジャス公爵家にいる16歳のお嬢様だけ。ここにいるのは大体12歳以下のご令嬢だから、ブルジャス公爵令嬢はいない。
つまりお嬢様より身分の高い方はいない。同じか下のみだ。もちろんまだ見えてない王妃殿下は除く。
うーん、遠巻きにされてるね。別に友達作りに来た訳じゃないし、このまま終わってもいいんだよね。
というのはお嬢様の意見。私達は…ご友人を作って欲しいと思っているよ。
だからこそ、私達が見極める。さっき教えてもらった令嬢達は、どれだけ態度変えても仲良くしないよ。…でもまだ子供だから。自分の言動を本気で恥じて、心の底からお嬢様に謝罪してくれたら。
そしてお嬢様が望んだら…お友達になって欲しいな。私は彼女を護りたいけど、独占したい訳じゃないのでね。
まあ現状だーれも話しかけて来ないから、どうしようもないね!!ただヒソヒソ話しているのは分かる。どれどれ、耳をすましてみましょうかね。
「あれがアミエル侯爵家の…」
「なんて短い髪。信じられません」
「まあ、男性を2人も侍らせていますわ」
「なんてはしたない。でも、どちらも素敵…」
「あちらの青い髪の子、格好いいわ」
「私は灰色の髪の方が素敵だと思います」
「あのドレス、どこのブランドかしら?下から上にかけて色が変わってるなんて…見た事ないわ」
「随分短い丈ね。でも、靴も綺麗だわ」
「ふん、どうせアイニー様の物を欲しがったのでしょう」
…あれれ~おっかしいぞ~?
私、男の子に間違えられてるぞ~??
さっきからお嬢様とアシュレイが小刻みに震えてたのは、笑いを堪えていたからか!!こんの…!
…ふう、落ち着くんだ、アシュリィ。どうあれ話題を独占してるではないか。ところでアイニー様は、と…おお、いたいた。
「ア、アイニー様…本日のドレスは…?」
「ふふ、今日は王子様にお会いできるのでしょう?メイド達がはりきってくれましたの!」
「そ、う、ですか…。よく…お似合いです…。」
「そうでしょう!うふふ、まだかしら?」
よかったね、目的達成してるね。この会場内で、誰よりも目立ってるよ。誰よりも輝いてるのはお嬢様だけど。
…お?そのお嬢様に近づく、1人のご令嬢。
「あ、あの…アミエル様!わたし、ロイスタン伯爵家の娘、リエラと申します!少々、お話よろしいですか…?」
「…ええ、よくてよ。私はアミエル侯爵家が次女、リリーナラリス・アミエル。何か聞きたいことでも?」
ふむふむ、リエラ・ロイスタン様。さっきのリストには入っていない、ちょっとオドオドしてる感じの女の子。
うん、チャーンス!!すっと後ろに下がる私達。さあ、レッツ・ガールズトーク!
「その…今お召しになっているドレス、とっても素敵です!もしもよろしければ、どこのブランドかお聞きしてもよろしいですか…?」
「ふふ、教えてあげたいところですけど…こちら、まだ発売前なんですの。ごめんなさいね?」
「うう…そういう事でしたら、残念ですが諦めます…。ですが、ドレスだけでなく、靴もアクセサリーも素敵ですわ。」
「まあ、ありがとうございます。こちら、私の見習い執事のアシュリィがコーディネートしてくださったのよ。ね?」
早速困ってますね、お嬢様?こういう会話した事ないんでしょうね…。よし、任されました!
「はい。私が選ばせていただきました。どれもお嬢様にお似合いであると自負しております。」
「まあ、そうなのですね!…あら?あなた、女の子?」
「ええ、そうでございます。」
「えっええっ!?嘘、男の子より格好いいわ…。
え。もしかしてそちらも女の子…?」
ブフォアッッッ!!!あっぶな!本気で噴き出す所だった!!
「いえ…ボクは男です…。」
「そそそ、そうですよね!ごめんなさい!」
ヤバい、ヤバい!早く話題変えなきゃ、私とお嬢様の腹筋が限界を迎えてしまう!!特にお嬢様はさっきから堪えっぱなしだ!!
そして周りもザワついてるわ。私が女で悪いんか!!こうなったら、今日の私は宝塚モードだ!見事男役を演じきってみせる…!
「ふふ、ありがとうございます。ロイスタン様も、そちらの髪飾りとても美しい。あなたの赤い髪によく映えておりますね。」
「まあ、本当ですか!?これ、わたしのお気に入りなんです。でも、数年前に流行したものだから…メイドは新しいのを勧めてきたのですけど。わたしはこっちがいいと我が儘言ってしまったの。」
「よろしいと思いますよ?流行を追うのも大切ですが、自身のお好きなものを付けるのもいいと思うのです。」
そんな感じでリエラ様とお話していたら、他のご令嬢も近寄ってきた。リエラ様は毒味役かい?
でもやっとお茶会らしくなってきたぞ。やっぱり綺麗なドレスを着た可愛い女の子達がきゃっきゃしてるのはいいね~。
と、そこに。
「ねえ、私も混ぜてくださらない?」
さっきぶん殴リストに追加した令嬢がやってきた。その目に浮かぶのは、嘲りの感情。お嬢様がこっちをちらっと見たので、アシュレイ共々力強く頷く。
「まあ…私は我が儘で癇癪持ち、勉強も魔法もマナーも全然駄目な女でしてよ?ねえ、確か以前そう仰られてましたわよね?」
「な…!」
「あら、全然そのような事ありませんよ?アミエル様とお話していると、とっても勉強になりますもの。」
「実は…わたしも以前その噂聞いた事がございます。ですが実際にお話すると、デタラメだって分かりますね。」
「まあ、まさか噂を鵜呑みにしてアミエル様を貶していらっしゃったの?あらあら。」
イイゾー援護射撃!!やれやれもっとやれー!!
どうせお嬢様のドレスに興味持ったんだろうけど、教えてあげないよーだ!!
結局その令嬢は去っていった。ふっ、口程にもない奴め。
「遅くなってしまったわね。皆様楽しんでいらして?」
その時、とても澄んだ声色が会場内に響き渡る。
…本日の主役、王妃殿下のお出ましか。令嬢達は皆礼をとる。もちろん私達も。ああ、私はスカートじゃないから男性の礼をとるのだ。
「楽にしてちょうだい。今日は気楽なお茶会なのですからね。
それと、私の息子達を紹介させてくださいね。」
そう言われて現れた3人の男の子。言わずもがな、王子殿下ですね。あらまあ、アイニー様が早速目の色を変えていますよって。
まずご長男で王太子のベルディ様。第二王子のアルバート様。第三王子のジェイド様である。
それぞれ立派な挨拶をし、席に着く。王族の方々の近くに座るのは爵位順。つまりお嬢様は割と近くに座った。
というか、お嬢様の隣にはアルバート殿下が座っとる。こんなとこで悪役コンビが揃うとは…。
「お初にお目にかかりますわ。アミエル侯爵家が娘、リリーナラリスと申します。」
「ああ、アルバートだ。」
「………。」
「………。」
会話終わった!!!
お嬢様、困ってるのは分かるけど頑張って!!こっちに視線寄越さないで!流石に私達が王族の方との会話に加わる訳にゃいかんのよ!!向こうが許可すりゃ別だが。
私もアシュレイも、目を合わさないようにしている。お嬢様、これは試練だぞ…!
そしてそこに割って入るピンクの塊。
「まあまあアルバート様、私とお話してくださらない?」
アイニー様、今この時だけあなたに感謝致します。一瞬だけ。でも殿下を名前で呼ぶのはやめた方がいいよ?
あれ、さっき王太子様にアタックしてなかった?あ、フラれたのか…早っ。
「…君はどこのご令嬢か。」
「あらいやだ、申し遅れましたわね。私はアイニー・アミエルでございます。」
「アミエル…姉妹か。」
「ええ、残念ながら。」
「残念…?ああ、そのドレスか。確かに残念だが。」
「へ?」
…殿下あああーーー!!!ああ、王妃様も王太子も第三王子も頭を抱えてらっしゃる!!
実はこの第二王子。思った事をそのまま口に出すクセがある!!成長すれば多少マシになるのだが…この歳じゃまだまだコントロール出来ていない。
ここは現実だと分かっているけど、ゲームがヒントになるのは確かなので割り切ることにした。
「なぜそこまでピンクなのか。そして装飾過多なのか。まるで1つの皿にステーキとスープとサラダとケーキとワインをぶち込んだかのような混沌さ。
それぞれは素晴らしい素材なのに、混ぜる事で互いに互いを潰し合っている。
ぜひ今日のドレスのテーマを聞いてみたい。」
「な、な、な…!!」
真っ赤な顔でわなわなと震えるアイニー様。でもお嬢様も震えていらっしゃる。お嬢様が楽しそうで何よりです。
てか第二王子悪気は無いから。本気で感心してるから!!だからタチ悪いんだが。
つかお嬢様今は堪えて、後で人がいない所で遮音の魔法かけてあげるから!!そこで大笑いでもなんでもして!!
「…失礼させていただきますっ!!!」
先に耐えきれなくなったのはアイニー様の方。別のテーブルに移動した。第二王子は「まだ聞いてないのに残念だ」とか抜かしてるし。
「あの…この子はこういう子なの…ごめんなさいね。」
王妃様が謝るってよっぽどだね!心中お察しします。これも他の兄弟と比べられる理由になるのだが…殿下の悪堕ちは遅いんだな。今はまだ素直すぎる子供だ。
「そういえばリリーナラリス嬢は他の女性と違って髪が短いのだな。」
空気凍っちゃった。
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