私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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「これで全部かな。」

「よし、ありがとうトロ。大体把握出来た。
 そろそろ部屋戻っても良いかな…。」

「僕らには見せられないってことは、やっぱ…。」

「…何考えてんだお前!!」

「こっちのセリフだよ…顔赤くしちゃって。」


 アシュレイお年頃ですから。
 ちなみにトロは、純粋にお嬢様の怪我を気にしているだけである。




 そうして屋敷内の散策を終えて部屋に戻ってきた。

「そういやお前、仕事は?」

「今日は君達のサポートが仕事だって。」


 部屋をノックし、出迎えたのは…


「「うわっっ!!」」

「…ってラッシュ!びっくりしたあ…!」


 ラッシュは2人を抱えて部屋に放り投げ、ドアを閉める。そしてまた門番に戻るのだ。
 
 ああ、ラッシュはお嬢様の守護を了承した。やっぱお嬢様の魅力にメロメロに…という訳では無いらしい。
 私の熱意に圧されたってのと、多分私の側より仕事があるって思ったんだろうね…。私は自分でどうとでも出来るし。
 ラッシュの仕事は、私、アシュレイ、トロくん以外の人間がお嬢様に触れようとしたら止める事。でもお嬢様が「この人は大丈夫」と言えば良し。
 武器を持って襲いかかって来られたら、死なない程度に吹っ飛ばす事。他の細かい事は自己判断に任す。
 

「「……。」」

「あ、おかえり。どう?お嬢様、素敵でしょう!」

「「……。」」

 ちょっと…なんか言ってよ。もしかして…気にしてる?



「な、なんでお前まで短くなってんだよっ!!?」

「イメチェンさ!!」

「はああーーー!!?」

「…止める暇も無かったわ。」


 アシュレイもトロくんも、私がバッサリと髪を切った事に驚いている。
 ふふふ、今の私はサイド長めのショートボブだ!パッと見少年執事って感じ?長さ的にはアシュレイといい勝負だ。
 でもねえ、髪の長さなんて私にとっちゃ大した事ないんだよなあ。前世のヘアカタログを見せてやりたいわ。ショートヘアの魅力を分かってない!!

 語りたいとこだがもう夕方だし、まずお嬢様のご飯だね。
 お嬢様、普段食事は?大体貴族って食堂で食べるでしょ。あ、ダイニングルームって言うべきか。



「…前は部屋に食事が運ばれてたけれど、今はそれすらも無いわ。
 だから自分で取りに行くの。食事をちょうだいって言えば、無言で出てくるわ。使用人と同じ物だけど…。」

 …まあ、食事を出さないよりマシと考えよう。



「じゃあ今日からオレらが交代で取りに行くか。」

「少なかったら、食材勝手に使ってアレンジしよう。」


「あの…2人も一緒に食べてくれる?1人の食事はもう嫌なの…。トロは駄目だし…。」


 はい喜んでー!!!お嬢様が可愛すぎる…アシュレイと私でぎゅーっとする。ほら、トロくんも来いってば。
 こういう時トロくんは遠慮するんだよねえ。使用人だからって言って。そんな君にいい言葉を教えよう。それはそれ、これはこれ!!
 本来主人と食事なんて許されないけど…知った事か!「いやあ、私ら客人なんで」でごり押す。



「今日は挨拶も兼ねて、2人で行ってきます。」

「ちょっと遅くなるかもしれないけど、ラッシュが側にいますから。頼むよ、ラッシュ!」

—心得た—

 
「ほい、トロくんも。私今日は皆に話したい事もあるし、トロくんも一緒に食べるよ。今日だけね。」

「ああ、オレも。トロも聞いてくれ。」

「えええ?いいのかなあ…?」


 ぐだぐだ言うトロくんを引き摺り廊下に出る。








 さて…そろそろいいかな?

「トロくん、聞きたい事あるんだけど、いい?」

「だよねえ…なんでも聞いて。」


「大前提として、お嬢様はこの屋敷で虐げられています。トロくんは?お嬢様と仲の良いトロくんもいじめとかあるの?」

「それが、無いんだよ。」

「やっぱりか…。さっきオレら散策してた時な、何人かの使用人に会ったんだ。
 そんで、オレとアシュリィが執事見習いで来るのは聞いてたらしい。もちろん、お嬢様の執事として。
 でもなあ…んだよな。オレら、自分達以外は全員敵!って意気込んで来ただろ?
 どころか頑張ってね、とか言われるし…拍子抜けっつーか…。」
 
「やっぱり…ちょっとそれに関しては、夜じっくり話し合うよ。とにかく!今は屋敷の人達に友好的に接する事。
 お嬢様を悪く言われても、「自分はそう思いませんけどね」くらいに留めとく事。いいね?」


 アシュレイが頷いたのを確認し、厨房に急ぐ。トロくんは複雑そうな表情をしている。…今まで、この屋敷でお嬢様を1人で守ってくれてありがとね。



「ここか…すいませーん。」



「ん?おお、お前ら見習い執事かい、ちびっこいなあ!」

「あら、可愛いわねえ。でも男の子と女の子って聞いてたけど…。」

「あ、私女です。」

「あらやだ!どうしたのその髪型!?」

「ふっふっふ、おかしいでしょう。でも、ステキだと思いません?常識抜きに考えたら。」

「ま、まあ、確かに?可愛いけど…。」

 厨房にいたのは4人。料理長っぽいのと女将さんって感じの人が話しかけてきた。


「それより、ボク達食事を貰いに来ました。リリーお嬢様とボク達3人。4人分ください。
 それと使用人は専用の食事スペースがあると聞いてますけど、ボク達毎日お嬢様と食べますので、毎回貰いに来ますね。」

「……おうよ!今用意すっから、ちと待ってな。」

 そう言って2人共奥に引っ込んだ。



「どう思う?」

「そうだね…なんて言ったらいいんだろ。ちょっと気持ち悪い…。」

「オレも…。」



 その後出された食事をワゴンに乗せて、とっとと移動する。内容は…まあ良し。貴族のお嬢様にお出しするモンじゃないが…栄養は問題無いだろう。





 そしてお嬢様の部屋で食事する。お嬢様が楽しそうでなによりです。



「それで2人は、お話があるんでしょ?」

「そうそう、アシュレイからどうぞ。」

「ん…実は…」



 …ふむふむ。つまりアシュレイはスラムの仲間…いや家族達を探したいと。そんでその目的の為に執事になりたかった。それを謝罪したいと。


「なんで謝罪するのかしら?」

「へ…?いやだって…こう…お嬢様を護りたい気持ちに嘘はないけど、利用してるような気がしまして…ですね?」

「いや、謝罪いらないよ?ねえアシュリィちゃん。」

「その通り。むしろあんたが「オレはスラムから解放されたんだっ!過去は忘れて自由に生きるぜヒャッハー!!」とか言う方が嫌だわ。」

「言わねーよ!?」

「じゃあいいじゃん。利用出来るものはなんでも利用しなさいよ。私は一緒に執事の勉強して、ずっとあんたの本気を見てきたんだぞ。
 お嬢様を護りたい気持ち、その為の努力に嘘は無い。というより、私だって微力ながら協力するよ?ねえお嬢様。」

「ええそうよ。私も…出来る事は少ないと思うけれど、手伝える事があったら遠慮なく言って?ねえトロ。」

「そうそう。僕は何も出来ないかもしれないけど…愚痴や弱音くらいいつでも聞くよ。」

「……。」


 アシュレイ、そんな事考えてたのか。
 教会に初めて来た時から、ずっと悩んでたのは気付いてた。ご飯食べててもちびっ子達と遊んでる時も。お手伝いしてる間もお風呂…は知らん。

 多分ずっと…ここに家族がいればって思ってたんだね。目の前で家族を失うのは…そりゃ辛いよ…。
 無事でいてくれればいいけど…流石に楽観は出来ない。でも調査は早い方がいい。
 そしてアシュレイの、権力ちからのある貴族と繋がりたいってのに可笑しな所はないぞ。
 …ハロルドさんには話したんだよね?伯爵家で何か調査してくれている可能性もある。


 …うお!?アシュレイ泣いてらっしゃる!?
 えーと、えーと、えーっと…!お嬢様もトロくんもあたふたするしかねえ!
 トロくん、そのデザートのミカンに親指つっこんでハンドパワ~ってやつ、私が教えたんじゃん!アシュレイも知ってるよ!!見事にテンパってるね。


「わり…もう、大丈夫だから…。早く言わなくて、ごめんな。今度から…すぐに相談するから。」

 
「えーっと、あ、そうだ!私も皆に報告があるんだけど!」

「何々!?」

「すっごく聞きたいわ!」

「…あははっオレも!」


 ふいー。…皆、受け入れてくれるといいけど…。
 私が真顔になったもんだから、皆も真剣な顔をする。





「私自身まだ受け入れられてないんだけど…私…私…。」


 3人が緊張してるのが伝わる。ええい、ままよ!


「私…人間じゃないかもしれないの…!」



「「「…は?」」」


「だから…っ純粋な人間じゃないんだって!もしかしたら魔族かもしれないし、それすらも違うかもしれない…!」





 …………。






「「「人間だと思ってたの!!?」」」




 ……おん?

「どどど、どういう意味よーーー!!!?」

 何この反応!?すんごいカミングアウトじゃん!ここは「お前が何者だろうと、オレ達との友情は変わらない…!」とか言うとこでしょーーー!!?

「いや友情は変わんねーけど!今更だろーが!」

「あなたのステータス、詳しい数字は知らないけど人間のものじゃないわよね?」

「魔族どころか、魔王様って言われても納得するよ?」


 んな…!三者三様に言いたい放題言ってくれる…!いや人間離れしてるのは分かってたけど!人間じゃないとは思わなかったの!!!


「はあ、緊張して損したわ。早く食べちゃいましょう。」

「そうですね。」

「アシュリィ、冷めるぞ?」


 


「もう…!もおーーー!!!」






 清水の舞台から飛び降りる気持ちでカミングアウトしたのに…!

 でも…皆笑ってるから…ま・いっか!!

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