私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 トロくんに案内されるがままに進む。ああもう!どこの世界も廊下は走ってはいけませんって言うんだから!!
 猛ダッシュしたいのに小走りでチョコチョコ移動するしかないんだから、もう!!
 

「トロくん、お嬢様何かあった?」

「それが…最近お姉様から、その…折檻されるようになったんだ。」

「「は、はああああ!?」」


 トロくんによると。
 最近お嬢様の姉が、特に何もしていないお嬢様に難癖つけては暴行を加えるらしい。
 お嬢様は抵抗出来ずにされるがままで…トロくんの近くにいる間は平和らしく、それで彼はなるべく側にいたらしい。
 それでも24時間ずっと一緒な訳でもなく。お嬢様は精神的にも肉体的にもボロボロらしい…。


「最近は心の支えの教会にも行けなかったし…アシュリィちゃんとアシュレイくんが帰って来るのを楽しみにしてたんだよ。
 そこ、そこの部屋!」

 …そんな事になってたなんて…!



 ドンドンドンドン!!!!
「おじょーさまー!!ダブルアシュが帰って来ましたよーーーっ!!!」

 ドドドドド!!
「おーい、お嬢様ー!!あーけーまーすーよー!!?」

「わあああ、2人共落ち着いてっ。お嬢様びっくりするよ!?」


 ああもう、反応してお嬢様!もうドアぶっ壊し…あら、鍵空いてら。っしゃい!!

「「お嬢様!!!」」




「……アシュリィ?アシュレイ…トロ…?」



 薄暗い部屋の中、ベッドの上で蹲っているお嬢様は…明らかに憔悴しきっていた。それになによりも


「お嬢様…その、髪の毛…。」

 アシュレイが茫然と呟いた。
 お嬢様のふわっふわな長い金髪は…肩の辺りで不揃いに切られていた。



「…っアシュリィーーーっ!!」

 そしてお嬢様は私に飛びつき泣いた。ああ、1ヶ月前もこんな風に泣いてたな…。

 あの日私は、もうお嬢様を泣かせたくないって思った。今度お嬢様が泣くのは、嬉し涙にしたいなって。
 それなのに…なのに!!
 こうして近くで見てみると、身体に痣があるのが分かる。しかも…もしかして背中…。



「アシュレイ、トロくん。ちょっと出てて。
 というか屋敷内散策して、アシュレイは内部構造把握しとくように。」

「…分かった。行くぞ、トロ。」

「うん…。」


 そしてぱたんとドアが閉められたのを確認し鍵を閉め…鍵が無え!!?…後でごっついのつけてやろう。
 とりあえずラッシュをドアの前に配置。もちろんジャイアントパンダサイズで。
 ちなみに大きさを変えられるのはラッシュの能力。リュウオウは小さくならないし、守護の力と関係あるんだろうね。




 そして落ち着いてきたお嬢様に断りを入れて、今着ている安っぽいドレスを脱がせる。


 その露わになった背中にあるのは…鞭の傷。



 ここまでするか、この家は。





 暴走しそうになる魔力を抑え、深呼吸。落ち着けアシュリィ。今はまだ暴れる時じゃない。
 だが私のぶっ殺リストには姉を一番に記しておこう。


「お嬢様…この身体の傷は……エミリー様が?」

「…?……!アイニーお姉様よ…。」

 誰だよエミリー!!!

 興味ない事は覚えられないこの頭どうにかなんないの!?
 それより、まずは怪我を治す!まだ新しいし、大怪我では無いな。よし。



『早く、良くなりますように』


「…?痛くないわ…。」

「はい、治療しました。お嬢様、他にはありませんか?隠さないでくださいね。」

「大丈夫よ。…アシュリィ、あなたは本当に…執事になって帰ってきてくれたのね。」

「手紙で書いたでしょう?ダブルアシュ執事がお護りしますって!アシュレイも私も見習い執事です!もう…お嬢様を1人にはしません。」

「…ありがとう。本当に…!」


 そうしてお嬢様はまた泣いた。私にはただ、抱き締める事しか出来ない。






 それから約10分ほど。ようやく落ち着いて話が出来る様になった。色々聞きたいが今気になるのはその髪型。


「これは昨日、お姉様がね。お母様譲りの金髪が気に食わないのでしょう、お姉様は茶髪だから。」

 この国の女性は皆髪を伸ばす。それこそ貴族も平民も皆、だ。私だって背中まであるし。
 逆に男性は長くて肩までかな。もっと長い人もいるけど…少数だ。


「こんな髪じゃあ出歩けないわね…それが目的でしょうけど…。」

「でもお嬢様、隣国では…そうだ!じゃあまずは、髪を整えましょう。綺麗に切り揃えて、セットしましょ。」

「出来るの?」

「お任せを!」


 うんうん、このくらいなら長めボブってとこかな。アレンジは難しい…ハーフアップにして、ヘアアクセで…ロクなもん無え…ちょっと編むか…?

 伯爵家でも長い髪のセットばかり習ったからなあ。ここはうろ覚えの前世の知識でなんとか…。
 うん、まあまあの出来!

「出来た!いかがですか、お嬢様?」

「…!凄いわ、アシュリィ!さっきとは見違えるよう!」

 そうでしょうそうでしょう!ふふーん、鼻高々。
 さてと、まだ終わりじゃないぞ。


「…?アシュリィ、ハサミを持って何するの?もう終わりでしょう。」

「終わりですよ。これはねえ、こうするんです!」




「え。ええーーー!!?」





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