私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 ふう。アシュレイも大分落ち着いたかな。では…アシュレイの耳を塞ぎまして。
 それでは皆さん、ご一緒に。




「こぉらあああーーーーー!!!!」



「見つかったーーー!」
「逃げろー!!」
「きゃー。きゃー。」
「アシュリィちゃーん、俺の怪我も治してー!」
「あー、私の手荒れも!」
「顔のシワ消せるかしらっ?」
「「「ムリムリー。」」」
「何よーーーっ!!」
「「「わーーー!!」」」





 お、思ったよりいっぱい隠れてた…!そして蜘蛛の子を散らすように逃げていく…。


「……ハッ!?うわあっごめん!」

 そしてようやく状況を理解したアシュレイが、真っ赤になって私から離れる。ふっ可愛いやつめ。
 その後またお礼を言ってくれて、仕事に戻って行った。きっと揶揄われるんだろうなー。


「さて…おお、MPが400減ってる…。」


 なるほど。流石は上級魔法ですな。でも24600/25000って数字だけ見るとまだまだ余裕だね。



「すごいわねえ。治療魔法は暴走するような事態も特に無いし、合格よね。他の魔法見せてちょうだい?」

「はい。」


 さってと。今は試験中みたいなもんだからね、集中集中!

 
 そしてそこから私は魔法を連発してみた。とりあえず大物をいくつか。

『燃え盛れ、炎の柱』
『動き出せ、ゴーレム』
『空気よ重くなれ』等々。

 言霊は分かりやすさ重視にしてみたが…なんかイタい子っぽくないかね…?
 べべべべつに良いよね!?日本語だし、分からないよね!?

 …うん、色々試したが消費は2500ほどか。思ってたより余裕だね!さーて次はっと。



「…なるほど。ちょっと危ないとこもあるけど、コントロールは及第点。やるわねえ。
 今度はリクエスト、召喚見たいな?」

「召喚…ですか。はいっ!」


 召喚魔法は種類が少ない。それこそ低級、中級、上級だ。だが呼ぶ人間の力量によって現れる精霊の力は違うし、能力も千差万別。
 なんかこう…「炎を操れる子出てこ~い」という感じでいいらしい。そんで双方の合意のもと契約。
 その後出しっ放しだとちょびっとずつMP持ってかれるし、一旦帰しても名前を呼べばまた召喚出来る。
 最初の召喚が一番MP持ってかれるから…そもそも力量の低い魔法師は召喚出来ない。
 多分ジュリアさんのムーン、上級だ。ああ見えて王宮魔法師に匹敵する実力者だろうな。

 さて人の事は良いとして…どんな精霊を呼ぼうか?当然上級だが…あっ!



「よっし、行くぞー!」





 思い浮かべるは護りの精霊。私の足下に召喚サークルが展開される。



『力を貸して、精霊よ』



 一層召喚サークルの光が強くなり、現れた精霊は…パンダ。…可愛い。





—私を呼んだのは其方か—


 こいつ、直接脳内に──!?なんちゃって。
 召喚者と精霊は意志の疎通が出来るのだ。


「そうだよ、私はアシュリィ。あなた、人を護るの得意?」

—うむ。私は守護の精霊。其方を守護すれば良いのだな?—

「ああごめんね、私じゃないの。私の主、リリーナラリス様を護ってほしいの。
 とっても優しくて、危なっかしい人なの。」

—ほう?—


 そう。恐らく私達が必ず側にいられる訳じゃ無いと思う。他にも仕事はあるんだし、何よりお嬢様だって1人になりたい時くらいあるだろう。
 そんな時、精霊さんがいれば安心できる。…というか思ったよりMP余裕だな。攻撃特化の精霊さんも呼ぼうか…?
 まあまず、契約してくれるかどうかだね。


「どうかな?契約…してもらえる?」

—ふむ…私はそのリリーナラリスという人間を知らない。その者を守護するかは顔を合わせてから決めよう。
 だが其方には興味がある。我が名はラッシュ。アシュリィと契約し、守護する事を誓う—

「——ありがとう、ラッシュ。これからよろしくお願いします。」


 良かった…契約してもらえない事も多いらしいからね。まあラッシュも、お嬢様に会えば分かるでしょう!可愛さにメロメロになっちゃうぞ!!…オスかな?この子。

 おお?おおお…!なんかぽかぽかする!魔力が繋がった感じ?
 しっかし…なんとなくわかるけどラッシュはハイスペックぽいな?護りだけじゃなくてそれなりに攻撃も出来そう。他の精霊さんは必要に応じて呼ぼうっと。



「おめでとう、アシュリィちゃん!すごいじゃなーい、アタシなんて、初めての契約は大分時間かかったのよ~?」

「ありがとうございます。では次、何かリクエストありますか?」

「…休憩は必要ないかしら?」

「はい。まだ大丈夫です。」

「そお?じゃあね~…」


 その後も私はジュリアさんのリクエストに応えてまくった。
 その間私の事を鋭い眼光で射抜いていたのは気付いてたが…なんだろ。






 その後もいくつか魔法を使った後、ジュリアさんが声をかけてきた。


「…そろそろ終わりにしましょうか。最後に、私達の周囲に遮音の魔法張れる?」

「はい。んーと。」

『音よ、遮断せよ』

 その瞬間、空気がピシッと鳴った気がした。見た目は変わって無いが、成功のようだ。


「…完璧ね。ねえアシュリィちゃん。

 …アナタは人間なのかしら?」



「へ…?そりゃ、はい。」

 ジュリアさんは何を言うのだろう。どっからどう見ても人間じゃないですかーやだー。耳も尻尾もございませんよ?


「…質問を変えるわねえ。アナタ、?」



 …おおん?


「私が…?」

「…アナタが今日使った魔法、最低でも魔力を5000は使ってるわ。
 ハッキリ言って人間には無理よお。しかも休憩も無し、特に疲労感も無し。アナタが魔族で、それもかなり上位種だったら説明がつくのよね。
 それにその言霊、聞いたことない言語だわ。適当じゃなくて意味があるんでしょう?魔国の言葉かと思ったのよお。
 …あ、別に差別するとかそういうのじゃないわよお!?逆にアタシ、どっちかっていうと魔族にお近づきになりたいし?」

「そうなん、ですか?えーっと、ちょっと待ってくださいね。」


 私が魔族…?当たり前のように人間だと思ってたけど…よく考えたら人間離れしたこのステータス、お前は人間じゃねえって言ってるようなもんじゃん!?
 

「…私魔族って、角とか尻尾とか翼とか生えてると思ってましたよ…ついでに耳が尖ってて牙生えてて変身できて。」

「それ最早悪魔よねえ?
 アタシ一度魔族と会った事あるけど…見た目は普通の人間よお?見分けなんてつかないわ。でもねえ、精霊には判るのよ。その人の事もムーンが教えてくれたわ。
 それでムーンもねえ、アナタの事よく分かんないみたいなの。魔族とは違うけど純粋な人間とも違う。もちろん精霊でもない…アナタは何者なのかしらね…?」

「そうなんですね…。」


 私はラッシュをちらっと見た。すると彼(?)はこくりと頷いた。
 もしも私が魔族だとして…そうしたら今までの生活はもう出来ない…か?


「えーっと、もし私が魔族だったとして…魔国行かなきゃ駄目ですか?」

「え?良いんじゃない、此処にいても。そもそもこのベイラー王国と魔国の距離が遠過ぎるから魔族は殆どいないけど、魔国に近い国は普通に交流してるって話よお?
 それに魔族を差別するのは、大昔の和平条約に触れてしまうわ。別に「魔族は敵だ!」とか聞いた事ないでしょお?」

 確かに!!私ってたまにものすごいアホだよね?知力ちゃんと仕事しろや??
 …知力と知能って別か!!?


「とにかく、私が魔族でも問題はないんですね?ならばよし!
 でも私とお近づきになっても益はありませんよ?」

「受け入れ早っ!ま、まあいいわ。
 アタシは魔族の魔法に興味があるだけよお。さあて、今日明日、沢山魔法見せてねえ!」

「お任せください!」


 そうか、私って純粋な人間じゃないのかあ…。それって私に前世の記憶があるのと関係あるのかな?

 私にとってこの世界は最初、「ゲームの中の世界」っていう印象が強かった。でも悪役令嬢リリーナラリスは悪役…いや悪人じゃあないし、アシュリィやアシュレイなんて執事は存在してなかった。
 今後主人公のミーナとランス、悪役のアルバート。そういったゲームの関係者と出会ったとしても…ここは現実だ。ゲームは関係ない!あ、ないこたないけど…。
 私、まだ半分現実見てなかったな。もうゲームの事は一旦置いておこう。ヒントにはなるだろうけど…お嬢様とアシュレイと現実を生きていくんだから!

 じゃあまずは、今出来ることをしよう。本当に魔族が攻めてきても、対処出来るように!
 そうして私は魔法をぶっ放しまくった。私が魔族か…。ん?この国と魔国って遠く離れてる…?




 ゲームの魔王…この国に到達するまでに、いくつ国滅ぼしたの!!?
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