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幼少期
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しおりを挟むベンガルド伯爵家まで、乗合馬車に乗ってプチ旅行!初馬車!!めっちゃお尻痛いんですけど!
いやー、シスターのアドバイス通りクッション持ってきてよかった。早朝に出発して、休憩を挟みつつ進み、途中の町で1泊。そして明日の昼には着く予定だ。
しかし…
「なあアシュリィ。あの屋台行こうぜ!すっげーいい匂いしてる。」
「なあ、あれなんだ?…へー。吟遊詩人っつーのか。何言ってるか分かんねーけど、歌上手いな。」
「あ!どこ行ってたんだよ!探したんだぞ!?…あ、いや、はい。猫を追いかけてはぐれたのはオレです…反省してます。なのでアイアンクローはやめていただけませんかね?」
旅の同行者が、やかましい!あんたいつもそんなに喋んないクセに。
前から思ってたけど、アシュレイって内弁慶だね?私、リリー様、トロくん以外の人とはあまり喋ってないし。まあ年下には優しくしてるけど。
…ただまあ、アシュレイの存在は心強い。1人でもリリー様を護る!って思ってたけど…彼がいてくれてよかったって、今なら思う。本人には言わんが。
そんなこんなで騒がしい旅路も終点までやってきた。いざ、ベンガルド伯爵家に突撃だあ!!
「遠路はるばるようこそ、2人とも。私はこの伯爵家で執事長を任されているハロルド・ニクスだ。」
「私は侍女頭のヴァニラです。」
「初めまして、アシュリィと申します。シスター・サラティナにはいつもご迷惑をおかけしております。」
「はじめまして。アシュレイ、と申します。…よろしくお願いします。」
なんとまあ応接室に通されまして、使用人トップのおふたりが挨拶に来ちゃったよ?
いやまあ、それは分かる。短いが、彼らは私達の上司になるんだからね。アシュレイはやっぱ人見知りかコイツ!?私の服の裾掴んでるよ!彼らのイメージダウンしてしまう。だが可愛い。
ハロルドさんは白髪混じりの髪を見事にオールバックにしている、細身で長身の男性。年はシスターと同じくらい?
ヴァニラさんはこちらも髪をきちっと乱れることなく纏めている、40代くらいの女性。
いやあ、どっちも背筋はピーンとしてるし眼光が鋭い。…できる!なんてね。
怖気付いてはいられん。この1ヶ月で、2人から盗めるだけ盗んでやる!!
問題は、挨拶を終えたと思ったらやってきたお2方。
「やあ、むしろ叔母様の方が迷惑をかけてるんじゃないかな?この屋敷にいる間は、我が家だと思って寛いでくれ。」
「まあ~可愛いわね。お友達のお嬢様を助けたいなんて、健気ねー!」
「はあ、旦那様…執務室でお待ちくださいと申しましたのに。
こちらはベンガルド伯爵、リチャード様とアリーナ夫人だ。ご挨拶をなさい。」
なんで当主夫妻がいらっしゃるのか!!
流石に想定してなかった。だが…ここで退けん!
マナーはまだよく分からんので、とりあえず45度でお辞儀しとく。
「お初にお目に掛かります。ベンガルド伯爵様、奥様。サラティナ様に紹介していただきました、アシュリィと申します。
この度は私達の我が儘を聞いてくださり、その寛大な御心に感謝致します。短い間となりますが、お世話になります。」
「(えっとー…お偉いさんに挨拶する時は…)アシュレイと申します。お会いできて光栄です。よろしくお願い致します。」
ぺこりと挨拶する私達の頭を、優しく撫でてくれてるのは伯爵夫人…?
顔をあげれば、旦那様もハロルドさんもヴァニラさんも微笑んでくれている。
「あらまあ。手紙には「殺人タックラー」と「ヘタレ大将」の異名を持つ子達が来るって書いてあったけど、どちらも礼儀正しくていい子じゃな~い?」
奥様の言葉に、私達は仲良く床に勢いよくキスをした。
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